2019年06月14日
家族の木 THE SECOND STORY 俊也と真梨 <30 離婚>
離婚
その夜、大阪の聡一と美奈子さんが小樽へ行くという連絡が入った。僕も、もう一度小樽へ行くことにした。
ホテルで長谷川の姑と婿、聡一夫婦、僕たち夫婦で会うことになった。美奈子さんとはあまり面識がなかったが品のいいおとなしそうな人だった。
向こうの言い分は離婚だった。それはこちらも同じだったが謝罪を要求された。大事な跡取りを死なせておいて、勝手にいなくなるとはどういう了見だと婿が激しく絵梨を罵った。僕たち夫婦は怒りを通り越して余りにも悲しくて言葉が出なかった。
最初に口火を切ったのは意外にも美奈子さんだった。「長谷川さん、なに、その派手なネクタイ、それにお母様も大きな石の指輪。跡取りなくしたって言われる割には無神経な格好ですこと。その無神経さで絵梨さんにひどいことされたんやないの?学会って何?どこのアホボンが妻が流産で泣いてるときに学会でぼんやりしてるのよ?もうちょっとしっかりした人かと思ってました。」いきなり、関西弁の大砲がさく裂して僕たちはあ然となった。
長谷川の姑も息子も言葉が出なかった。「長谷川さん、お母さんが無神経なら間に入って調整するのが夫の役目でしょ!あなた一体何をしてはったの?えらいコキつこうてくれはったらしいですわね。お知り合いの間で有名ですよ。流産の責任、そちらのお家にあるでしょ。謝罪で済ます気はありません。弁護士立てて慰謝料請求させてもらいます。」
と一気にまくし立てた。
僕も「こちらには、証言してくれる人もいます。お金の問題ではないけれど責任は取っていただきます。絵梨の体に今後この流産がどのように響くかわかりませんし。特に長谷川君、君には本当に失望しています。もう少し、まともな男だと思っていた。娘を任せるんじゃなかった。本当に後悔しています。責任は取ってもらうよ。」と言って解散した。
僕はこの時、美奈子さんと叔母を重ねていた。普段穏やかでおっとりした感じなのに大事なところで大砲がさく裂する。関西弁だから似ていると感じるのだろうか?予想もしない方向から突然ゆさぶりをかけて交渉を勝に持って行くスキルは僕にはなかった。このスキルが叔母にそっくりだった。
聡一は、もともと、この縁談の内容にあまり詳しくないらしく、きょとんとしていた。ただ「お前んちの叔母さんに似てるやろ?真梨ちゃんもこうなるで。」といった。真梨は帰りの車の中でもハンカチが離せなかった。
僕は、今、この瞬間、純一と絵梨を二人きりにしたことを後悔していた。純一は絵梨の弱り切った姿をみて冷静でいられるだろうか?
早く真梨と相談しなくてはならなかったが、それもなんだか空恐ろしかった。真梨は純一を大切な一人息子としていつくしんで育てたのだ。
数年間の純一の女遊びは女親には堪えただろう。絵梨の流産で気持ちはずいぶん落ち込んでいるだろう。そこへ純一が絵梨を愛しているという話をするのは余りにも酷だった。真梨にとっては二人は仲良し兄弟だ。
ホテルの部屋へ帰る時、僕は少し躊躇した。純一は絵梨の前で取り乱すことが多かった。たいていは悪態をつくのだが、それが恋心の裏返しだったことが昨日分かった。もしも純一が取り乱していたらどうしていいかわからなかった。
だが、ホテルの部屋では絵梨がソファーに腰かけたまま居眠りをしていた。純一はホテルのテーブルでPCを触っていた。静かに付き添っていたようだ。僕には純一が病床の妻をいたわる夫のように見えた。
絵梨をそのままにして純一も僕たちの部屋に移った。純一は「姉ちゃん、まだ不安定になる。時々急に泣き出すんだ。僕怖くて一人にできない。」といった。普通の姉思いの弟だった。
美奈子さんは「私がお世話した縁で絵梨ちゃんに苦労させてしもて。ホントに不調法で申し訳ございませんでした。」と土下座しそうになった。真梨がかろうじて美奈子さんの上体を支えた。
続く
いつまでも美しくありたいと願う全ての女性に
高濃度プラセンタとアスタキサンチンの抗酸化作用でお肌を内側からケアします。
その夜、大阪の聡一と美奈子さんが小樽へ行くという連絡が入った。僕も、もう一度小樽へ行くことにした。
ホテルで長谷川の姑と婿、聡一夫婦、僕たち夫婦で会うことになった。美奈子さんとはあまり面識がなかったが品のいいおとなしそうな人だった。
向こうの言い分は離婚だった。それはこちらも同じだったが謝罪を要求された。大事な跡取りを死なせておいて、勝手にいなくなるとはどういう了見だと婿が激しく絵梨を罵った。僕たち夫婦は怒りを通り越して余りにも悲しくて言葉が出なかった。
最初に口火を切ったのは意外にも美奈子さんだった。「長谷川さん、なに、その派手なネクタイ、それにお母様も大きな石の指輪。跡取りなくしたって言われる割には無神経な格好ですこと。その無神経さで絵梨さんにひどいことされたんやないの?学会って何?どこのアホボンが妻が流産で泣いてるときに学会でぼんやりしてるのよ?もうちょっとしっかりした人かと思ってました。」いきなり、関西弁の大砲がさく裂して僕たちはあ然となった。
長谷川の姑も息子も言葉が出なかった。「長谷川さん、お母さんが無神経なら間に入って調整するのが夫の役目でしょ!あなた一体何をしてはったの?えらいコキつこうてくれはったらしいですわね。お知り合いの間で有名ですよ。流産の責任、そちらのお家にあるでしょ。謝罪で済ます気はありません。弁護士立てて慰謝料請求させてもらいます。」
と一気にまくし立てた。
僕も「こちらには、証言してくれる人もいます。お金の問題ではないけれど責任は取っていただきます。絵梨の体に今後この流産がどのように響くかわかりませんし。特に長谷川君、君には本当に失望しています。もう少し、まともな男だと思っていた。娘を任せるんじゃなかった。本当に後悔しています。責任は取ってもらうよ。」と言って解散した。
僕はこの時、美奈子さんと叔母を重ねていた。普段穏やかでおっとりした感じなのに大事なところで大砲がさく裂する。関西弁だから似ていると感じるのだろうか?予想もしない方向から突然ゆさぶりをかけて交渉を勝に持って行くスキルは僕にはなかった。このスキルが叔母にそっくりだった。
聡一は、もともと、この縁談の内容にあまり詳しくないらしく、きょとんとしていた。ただ「お前んちの叔母さんに似てるやろ?真梨ちゃんもこうなるで。」といった。真梨は帰りの車の中でもハンカチが離せなかった。
僕は、今、この瞬間、純一と絵梨を二人きりにしたことを後悔していた。純一は絵梨の弱り切った姿をみて冷静でいられるだろうか?
早く真梨と相談しなくてはならなかったが、それもなんだか空恐ろしかった。真梨は純一を大切な一人息子としていつくしんで育てたのだ。
数年間の純一の女遊びは女親には堪えただろう。絵梨の流産で気持ちはずいぶん落ち込んでいるだろう。そこへ純一が絵梨を愛しているという話をするのは余りにも酷だった。真梨にとっては二人は仲良し兄弟だ。
ホテルの部屋へ帰る時、僕は少し躊躇した。純一は絵梨の前で取り乱すことが多かった。たいていは悪態をつくのだが、それが恋心の裏返しだったことが昨日分かった。もしも純一が取り乱していたらどうしていいかわからなかった。
だが、ホテルの部屋では絵梨がソファーに腰かけたまま居眠りをしていた。純一はホテルのテーブルでPCを触っていた。静かに付き添っていたようだ。僕には純一が病床の妻をいたわる夫のように見えた。
絵梨をそのままにして純一も僕たちの部屋に移った。純一は「姉ちゃん、まだ不安定になる。時々急に泣き出すんだ。僕怖くて一人にできない。」といった。普通の姉思いの弟だった。
美奈子さんは「私がお世話した縁で絵梨ちゃんに苦労させてしもて。ホントに不調法で申し訳ございませんでした。」と土下座しそうになった。真梨がかろうじて美奈子さんの上体を支えた。
続く
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