2016年11月03日
<憲法公布70年>「24条改正への布石ではないか」批判も
◇「家庭教育支援法案」自民検討、「家族の役割固定化」批判も
家庭での教育について国や自治体が支援の責任を負うとする「家庭教育支援法案」を、自民党が来年の通常国会に提出しようとしている。家庭教育を公的に助ける内容だが、公権力が家庭に介入していくとも受け取れる。「家族は互いに助け合わなければならない」とうたう同党の改憲草案と合わせて、「家族生活での個の尊厳をうたう憲法24条の改正への布石ではないか」との批判も出ている。【中川聡子、遠藤拓】
法案の素案は、目的について、核家族化の進行や家庭と地域社会の関係希薄化で家庭教育の支援が緊急に必要だと説明。家庭教育を「国家と社会の形成者として必要な資質を備えさせる」などと規定する。その上で、まず文部科学相が「家庭教育支援基本方針」を定める。これに沿って自治体も基本方針を定め、地域住民も国と自治体に協力するよう努める、とうたう。
法案の前提には、家庭教育を保護者の一義的責任と明記した第1次安倍政権時代の改正教育基本法がある。
法案の検討は2014年秋、自民党青少年健全育成推進調査会(会長・中曽根弘文元外相)に設置されたプロジェクトチーム(PT)で始まった。調査会とPTの事務局長を務める上野通子参院議員(元文科政務官)は「地域で困難を抱えた家庭が目に余る。子の命に関わることで、国も自治体も見て見ぬふりはできない」と説明。「家庭教育ができていない親は責任を負っておらず、明らかに法律(教育基本法)違反。支援法で改めて正す必要がある」と語った。
改憲への布石と見るのは、24条に基づく選択的夫婦別姓訴訟で原告弁護団事務局長を務めた打越さく良(ら)弁護士だ。「戦前は家長が家族を支配し、妻には何の法的権利もないという家制度があった。戦後の24条は家制度を否定し、個人を基礎とした」と指摘。法案について「国に役立つ人材を育てよ、と保護者に命じる内容。家族が基礎的集団で国家を支えるという発想が改憲草案に通じる」と批判した。
立命館大の二宮周平教授(家族法)も24条を念頭に「法案は男女や親子の役割を固定化しかねない」と批判。「人々は家族生活を営む上で保育所や高齢者施設の整備、労働環境改善など多様な生き方や家族関係を支える社会保障政策を国に求めている。法で家族のあり方を定めれば、育児や介護に縛られてきた女性の社会進出や社会保障の充実を阻害しかねない」と語った。
国会では12年4月、安倍晋三氏を会長とする超党派の「親学推進議員連盟」が発足し、今回の家庭教育支援法案と同趣旨の立法も模索された。「親学」は伝統的な子育てを重んじる内容で高橋史朗・明星大教授(教育学)が提唱したが、伝統的な子育てが発達障害を予防するなどの主張が強い批判を浴びた。
上野氏らによると親学議連での立法の動きは自民が政権に復帰した12年末以降うやむやになったという。今回の法案について、高橋氏は取材に「自分とは無関係だ」と話した。
◇家庭教育支援法案の骨子
・保護者が子に社会との関わりを自覚させ、人格形成の基礎を培い、国家と社会の形成者として必要な資質を備えさせる環境を整備する
・保護者が子育ての意義を理解し、喜びを実感できるようにする
・国と自治体、学校、地域住民などの連携の下、社会全体で取り組む
・文部科学相は家庭教育支援基本方針を定める。自治体は実情に応じて基本的な方針を定めるよう努める
・国と自治体は、家庭教育に関する保護者への学習機会の提供や相談体制の整備に努める
家庭での教育について国や自治体が支援の責任を負うとする「家庭教育支援法案」を、自民党が来年の通常国会に提出しようとしている。家庭教育を公的に助ける内容だが、公権力が家庭に介入していくとも受け取れる。「家族は互いに助け合わなければならない」とうたう同党の改憲草案と合わせて、「家族生活での個の尊厳をうたう憲法24条の改正への布石ではないか」との批判も出ている。【中川聡子、遠藤拓】
法案の素案は、目的について、核家族化の進行や家庭と地域社会の関係希薄化で家庭教育の支援が緊急に必要だと説明。家庭教育を「国家と社会の形成者として必要な資質を備えさせる」などと規定する。その上で、まず文部科学相が「家庭教育支援基本方針」を定める。これに沿って自治体も基本方針を定め、地域住民も国と自治体に協力するよう努める、とうたう。
法案の前提には、家庭教育を保護者の一義的責任と明記した第1次安倍政権時代の改正教育基本法がある。
法案の検討は2014年秋、自民党青少年健全育成推進調査会(会長・中曽根弘文元外相)に設置されたプロジェクトチーム(PT)で始まった。調査会とPTの事務局長を務める上野通子参院議員(元文科政務官)は「地域で困難を抱えた家庭が目に余る。子の命に関わることで、国も自治体も見て見ぬふりはできない」と説明。「家庭教育ができていない親は責任を負っておらず、明らかに法律(教育基本法)違反。支援法で改めて正す必要がある」と語った。
改憲への布石と見るのは、24条に基づく選択的夫婦別姓訴訟で原告弁護団事務局長を務めた打越さく良(ら)弁護士だ。「戦前は家長が家族を支配し、妻には何の法的権利もないという家制度があった。戦後の24条は家制度を否定し、個人を基礎とした」と指摘。法案について「国に役立つ人材を育てよ、と保護者に命じる内容。家族が基礎的集団で国家を支えるという発想が改憲草案に通じる」と批判した。
立命館大の二宮周平教授(家族法)も24条を念頭に「法案は男女や親子の役割を固定化しかねない」と批判。「人々は家族生活を営む上で保育所や高齢者施設の整備、労働環境改善など多様な生き方や家族関係を支える社会保障政策を国に求めている。法で家族のあり方を定めれば、育児や介護に縛られてきた女性の社会進出や社会保障の充実を阻害しかねない」と語った。
国会では12年4月、安倍晋三氏を会長とする超党派の「親学推進議員連盟」が発足し、今回の家庭教育支援法案と同趣旨の立法も模索された。「親学」は伝統的な子育てを重んじる内容で高橋史朗・明星大教授(教育学)が提唱したが、伝統的な子育てが発達障害を予防するなどの主張が強い批判を浴びた。
上野氏らによると親学議連での立法の動きは自民が政権に復帰した12年末以降うやむやになったという。今回の法案について、高橋氏は取材に「自分とは無関係だ」と話した。
◇家庭教育支援法案の骨子
・保護者が子に社会との関わりを自覚させ、人格形成の基礎を培い、国家と社会の形成者として必要な資質を備えさせる環境を整備する
・保護者が子育ての意義を理解し、喜びを実感できるようにする
・国と自治体、学校、地域住民などの連携の下、社会全体で取り組む
・文部科学相は家庭教育支援基本方針を定める。自治体は実情に応じて基本的な方針を定めるよう努める
・国と自治体は、家庭教育に関する保護者への学習機会の提供や相談体制の整備に努める
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