所属する伊勢ケ浜部屋付きの安治川親方(元関脇安美錦)に「何勝できますか」と尋ねると、冗談交じりに「3勝12敗」と返された。7月の名古屋場所の西前頭11枚目から10勝5敗で一気に出世を果たした格好となり、兄弟子は率直にそう思ったのだろう。
「番付は生き物」と言われる。8勝7敗で一つ勝ち越せば1枚上がり、6勝9敗なら3枚落ちるのが目安とされるが、先場所は新型コロナウイルス関連で幕内だけでも15人が休場。それまでに勝ち越し、負け越しが決まっていなかった場合、特例措置として原則、地位を据え置かれた。
異例の状況により、番付編成を担当する審判部の親方衆は頭を悩ませた。「みんなと話し合って公平にやった」と伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士)。会議は通常と比べて大幅な時間を要した。
翠富士は勝ち越し五つで10枚も上がった。8勝4敗の時点から休場した翔猿は西6枚目から東筆頭に、9勝6敗だった明生は西10枚目から西2枚目となった。
初めて幕内上位を経験する翠富士は「同い年の貴景勝関を倒して、10番ぐらいは勝ちたい」と威勢が良く、翔猿も「相撲をやっているからには上位で取りたい。いつもより気合が入る」。巡ってきた好機に、共に目の色を変えている。
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