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2017年12月27日

東野圭吾『白馬山荘殺人事件』

〜『白馬山荘殺人事件』7つのポイント〜

『白馬山荘殺人事件』は、『放課後』『卒業 雪月花殺人ゲーム』に次ぐ東野圭吾の3作目。
過去2作のような学園ミステリーではなく、冬の信州のペンションを舞台に起こる密室殺人と暗号解読に挑戦した本格推理小説です。

一年前の冬、「マリア様はいつ帰るのか」という言葉を残して自殺した兄・公一。
その死に疑問を抱いた妹の女子大生・ナオコは、親友のマコトと、兄が死んだ信州・白馬のペンション「まざあ・ぐうす」を訪ねた。
常連の宿泊客たちは、奇しくも一年前と同じ。
各室に飾られたマザー・グースの歌に秘められた謎、ペンションに隠された過去とは?
暗号と密室の本格推理傑作。

さあ、『白馬山荘殺人事件』について語りましょう。

白馬山荘殺人事件

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感想(0件)




1 あらすじ

一年前の冬に信州・白馬にあるペンション「まざあ・ぐうす」で服毒死した公一。
部屋が密室であったこと、公一がノイローゼ気味であったこと、ペンションの従業員や他の客と公一の接点が見つからなかったことから、警察は公一の死を自殺と判断します。
しかし、公一からは『「マリア様が家に帰るのはいつか?」を調べてほしい』と絵葉書が届いています。
兄の自殺に納得がいかないナオコは親友であるマコトと共に「まざあぐうす」を訪れます。
「まざあ・ぐうす」の各室には「マザー・グース」の絵と歌が飾られており、それが暗号になっているのではないかと思い至ります。
公一が死ぬ1年前、このペンションでは転落事故で1人の客が亡くなっていました。
そして今年も、宿泊客の1人が石橋から落ちて死んでしまいます。
3年連続で起きる宿泊客の死。
果たしてこの3つの死に関連はあるのでしょうか。
マザー・グースの歌に秘められた暗号の謎とは?
ナオコとマコトは少しずつ真相に近づいていきます。





2 登場人物

ナオコ    
大学3年生。兄・公一の死に疑惑を抱く。
マコト    
ナオコの親友。ナオコと共に事件の真相を追う。
マスター   
「まざあ・ぐうす」ペンションのオーナー。
シェフ    
「まざあ・ぐうす」ペンションの共同経営者。大男。
高瀬     
ペンションの20歳過ぎの男性従業員。
クルミ    
ペンションの20代半ばの女性従業員。
ドクター夫妻 
老夫婦。「ロンドン・ブリッジとオールド・マザー・グース」の部屋に宿泊。
芝浦夫妻   
30代半ばの夫妻。「ガチョウと足長じいさん」の部屋に宿泊。
上条     
30代の男性。「ミル」の部屋に宿泊。
大木     
30歳前の男性。スポーツマンタイプ。「セント・ポール」の部屋に宿泊。
江波     
29歳。「ジャックとジル」の部屋に宿泊。
中村・古川  
20代前半の男性。「旅立ち」の部屋に宿泊。
村政警部   
ペンションで起きた殺人事件を捜査。




3 密室殺人

公一の死体が発見された部屋が完全な密室であったことが公一の死が自殺であると判断された理由です。
しかし、公一は自殺ではなく誰かに殺されたと確信したナオコとマコト。
果たして犯人はどのようにして密室を作り上げたのでしょうか。
密室トリックについては図解で説明がありますが、その結論には賛否両論分かれるところではないでしょうか。


4 転落死

ナオコとマコトが宿泊しているときに、宿泊客の1人が石橋から転落して死亡します。
警察は事故死と判断しますが、独自で捜査していたナオコとマコトはこれが単なる事故死ではないと考えます。
何故被害者は石橋へ向かったのでしょうか。
犯人はどのようにして宿泊客の死を事故死に見せかけたのでしょうか。
2年前から続く3つの死の謎がつながっていきます。
 




5 暗号解読

各室に飾られたマザー・グースの歌が暗号になっており、どうやら公一はその謎が解けた模様。
歌が英語で書かれていることもあり、この暗号をしっかり解こうと思ったらかなり骨が折れます。
解読はナオコとマコトに任せ、ストーリーを先に進めようとする読者も多いのではないでしょうか。
マザー・グースをモチーフにした推理小説は、ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』や、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』などが有名ですが、当時の日本でマザー・グースを使ったのは新しい試みではないでしょうか。
 

6 ナオコとマコト

物語序盤にちょっとした遊びが仕掛けられています。
その仕掛けが物語上必要かどうかは別として、ちょっと驚く人もいるのではないでしょうか。
性格も見た目も正反対なこの2人。
しかし見事な共同作業で公一の死の真相に迫っていきます。
一見か弱そうなナオコの実は芯が強いところ。
まさにカッコイイの一言がぴったりなマコト。
この2人の探偵コンビのチームワークが作品を面白くさせています。





7 終盤のたたみかけ

正直、この作品は東野圭吾作品にしては全体的に弱い、という印象がぬぐえません。
若者を主人公にした本格ミステリーではありますが、密室のトリックはちょっと意見が分かれるところだと思います。
マザー・グースは素材としては面白いのですが、そこまで日本人に馴染みが無く、解読も難解なため、流し読みする人も多いのではないでしょうか。
登場人物の1人1人を魅力的に描く東野圭吾作品にしては珍しく、明らかに存在が薄く、ストーリー上どうしても必要なのかどうか分からないキャラクターもいます。
刑事の村政が的外れの推理をする役割ではなくきちんと探偵役を担っていることはいいのですが、この刑事の登場が物語中盤であること、あまりいい印象で書かれていないことから、犯人を特定するクライマックスのシーンも盛り上がりに欠けていると感じました。
犯人にしても、「ふーん」という印象。
犯行に至った動機もあまり深みがないような気がします。
この作品は不完全燃焼かな・・・、そう思っていたときに、様々な仕掛けが一気に発動します。
この終盤のたたみかけは爽快でテンポも良く、グッと作品に引き込まれていきます。
これまでの鬱憤を一気に晴らしてくれるような展開に息を呑んでしまいます。
真相の真相、真相の奥にあるものとは一体何でしょうか。
是非楽しんでいただきたいと思います。

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まとめ
『白馬山荘殺人事件』7つのポイント

1 ナオコとマコトの友情・共同推理
2 密室の謎
3 転落死の謎
4 3つの死のつながり
5 マザー・グースの暗号解読
6 終盤のたたみかけが見事
7 真相の真相とは?



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