2019年07月29日
トランプも無視できない存在に成長した、暗号通貨の「現在地」を知る
<激動の2017年を経て世界に定着した暗号通貨について知ることは、「業界外」の人間にも実利をもたらす>
「暗号通貨界隈は変化が早すぎる」と溜息混じりに言うのは界隈の人間だけで、大多数の人間にとっては暗号通貨(仮想通貨)は今も昔も「投機の対象」であり、「本源的な価値を持たない怪しげなもの」だろう。
しかし、実際のところ暗号通貨のイメージは、2017年を境に大手メディアでも界隈でも大きく変化してきた。
私が暗号通貨界に参入した2015年は、今とは対照的に「暗号通貨同士のトレードや特定の銘柄のホールドによって一攫千金を狙う」人は少なく、ビットコイン論文の著者であるSatoshi Nakamotoの思想に共感し無償で情報共有や技術開発を行ったり、ビットコインそのものの将来的な値上がりに期待してビットコインのみをホールドする人が多かった。
また、業界での起業も同様で「この業界でどのように事業として利益を出すか」は大きな課題として認識されており、国内外の取引所が既存の金融業界を驚かせるほどの利益を出し始めた2017年までこの認識は変わらなかった。
当時は今以上に暗号通貨の認知度は低く、暗号通貨といえば市場シェアの9割を占めるビットコインであり、ビットコインといえば東京を拠点にしていた取引所マウントゴックスでの流出事件というイメージであった。これらのイメージは強力で、大手メディアがビットコインを中立的、または好意的に取り上げることはほぼなく、誤解に基づいた報道も多かった。
当然、暗号通貨関連企業が大手メディアに広告を出すような状況ではなく、当業界での起業は完全に将来の需要をターゲットにしたものであり、今以上に先見性とリスクテイクが必要であった。
その後、正しい予測と適切な実行力を持った企業やベンチャーキャピタル(VC)は莫大なリターンを獲得し、現在はこれらのリターンを再投資する形で業界内で資金が還流している。イーサリアム関連のプロジェクトに大きく投資するConsenSysや、CoinbaseやRippleに初期投資したアンドリーセン・ホロウィッツは好例だ。
2010年以降のビットコインを巡る物語は、今も界隈に残る著名人のエピソードも含めてナサニエル・ポッパー著の『デジタル・ゴールド』(邦訳・日本経済新聞出版社)が詳しい。ビットコインが数ドル程度で取引されていた時代において関係者が何を考え、どのように行動していたのかが説明されている。余談だが、東京は暗号通貨の聖地であったといっても過言ではなく、現在も業界を牽引する有名人の中には東京を拠点にしていた者が少なくない。
もはやビットコインがなくなることはない
■暗号通貨の現在地
昔の話は『デジタル・ゴールド』に譲るとして、暗号通貨の現在地はどのようなものだろうか。そもそも、暗号通貨は一部のIT企業や大手VCだけではなく、我々のような一般人にも何らかの実利をもたらすのだろうか。業界で働いていない人間がわざわざ時間を使って学ぶ意味があるのだろうか。
暗号通貨の外側の動きを見ると、アメリカ大統領が(ネガティブではあったが)ビットコインに言及するほどに認知は広まり、FATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会)が規制に動き出すほどに影響力を持ち始め、一般人のビットコインに対する拒絶反応も緩和されてきた。
かつては「ビットコインが分裂等をきっかけに消えてしまうかも」というリスクが現実のものとして存在したが、現時点では価格が暴落することはあってもビットコインの存在自体が消失してしまうリスクは極めて限定的なものとなった。ビットコインを取り巻くこれらの現状を踏まえると「暗号通貨界隈の変化の早さ」は、もはや観測者の立ち位置を問わず認めるべきものだろう。
■ビットコインとイーサリアム
暗号通貨の種類は有象無象のコインも含めると数千規模になってしまうが、基本的にはビットコインとイーサリアムの2つを起点に眺めるのが効率的だ。なぜなら多くのプロジェクトはビットコインとイーサリアムが抱える問題の解決策として開発されているからだ。
イーサリアムもビットコインができないことを実現するためにVitalik Buterin等によってスタートしたが、スマートコントラクトプラットフォームとしてトップの地位を獲得してからは様々な欠点を抱えながらも追われる立場となった。スマートコントラクトは、自動販売機やピタゴラ装置のように一定の条件を満たしたときに自動執行される仕組みのことで、たまにバグが見つかる点もそうした機器に似ており、スマートかどうかは主観的判断に依る。
本コラムでは次回以降、ビットコインとイーサリアムの2つを軸に現在の暗号通貨を俯瞰しながら、あまり暗号通貨には馴染みがないビジネスパーソンなどにとっても有用な、暗号通貨界隈から得られる思考の種を共有していきたい。
indiv
2015年にイーサリアムに出会い暗号通貨界隈へ参入。2017年からはフルタイムで業界の仕事に従事。フリーランスとして複数の企業に関与しつつ、暗号通貨関連の調査研究・アーカイブを行うTokenLabにて業界の経営者や投資家に対して知見の共有を行う。
引用元:ニューズウィーク日本版
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190726-00010005-newsweek-int
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