2019年07月12日
ビットコインとLibraは何が違うのか?
Facebookが6月に発表した「Libra」。世界に27億人ものユーザーを持つ企業が関わる暗号通貨であるだけでなく、VisaやMastercardのような決済事業者、UberやeBayのようなマーケットプレイス事業者など世界的な大企業28社が参加していることから、大きなインパクトを持って迎えられた。
ホワイトペーパーは公開されているものの、Libraがどういったものなのかを理解するのはなかなか難しい。7月10日に行われたブロックチェーン大学校FLOC主催のセミナーで、ブロックチェーン技術の専門企業コンセンサス・ベイスの志茂博CEOの講演から、ビジネスパーソンが理解しておくべきLibraについてまとめる。
決済に使われなかったビットコイン
馴染みの深い暗号通貨といえば、ビットコインがある。Libraはいったいビットコインとどこが違うのだろうか?
「ビットコインは決済や支払いに使えるのではないかといわれていたが、どうも最近は価値の保存が中心になってきている。一方、Libraは価値の交換に特化して、支払いなどに使えるようにしようとしている」
当初、お店での買い物などの決済に使われるのではないかと期待されたビットコインだが、実際にはほとんど使われていない。持っている人は、値上がりを期待して保有しているのが中心だ。
一方で、Libraは決済用に利用されることを目指している。そのために2つの工夫がされている。「価格の安定」と「サービスを提供する協会メンバー」、これがビットコインとの大きな違いだ。
価格が安定することで決済に利用できる
Suicaなどの電子マネーに1万円チャージしても、使うときに8000円になってしまっていては安心して利用できない。ビットコインのような暗号通貨にはこんな問題があった。
Libraでは、「主要通貨のバスケット」を裏付けとすることで価格の安定を目指した。
「一番の特徴は価格が法定通貨に対して安定していること。法定通貨と主要国短期国債を裏付けにする。比率はまだ決まっていないが、主要通貨のバスケット構成になっている。価格は多少上下するが、安定するだろう」(志茂氏)
国内の電子マネーでは、法定通貨の1円に対して利用するときは1円の価値で利用できる。全世界での利用を目指すLibraでは、特定の国の通貨ではなく、複数国の通貨を組み合わせたものに対して、連動する価値を維持するかたちだ。
全体としてはビットコインのような価格の乱高下は起きないが、特定の通貨、例えば円に対しては細かく価格が変動することになる。価格が一定なのではなく、「価格があまりブレたりしない」(志茂氏)ということには注意が必要だ。
Libra支払いを採用するだろう大企業の存在
もうひとつが、Libra協会に参加している大企業の存在だ。
「協会にはVisaやMastercardがいる。Libraをクレジットカードに入れて、カード決済のときにLibraで決済されるのではないか。またECでの決済にはかなり使われるのではないか。協会にUberやeBayが入っている。そこで使われることが想定される」(志茂氏)
海外でクレジットカードを使って買い物をするとき、その日の為替レートにもとづいて日本円で決済されるのが普通だ。二国間の為替レートは変動も大きく、タイミングによっては高い買い物になってしまうこともある。クレジットカードにLibraをチャージして使った場合、その国の通貨とLibraのレートで決済されることになるだろう。通貨バスケットに連動するLibraのほうが価格が安定している可能性がある。
Uberの利用やeBayでの買い物も、Libra建てで決済できれば、事業者側も利用者側も手数料が安くなる可能性がある。
Libraは本当に決済で使われるのか?
しかし、こうした工夫だけで本当にLibraは法定通貨に代わって決済に使われるようになるのだろうか? 志茂氏は、国内の決済にはあまりメリットがないだろうと話す。
「ビットコインと同じで、わざわざ日本円をLibraに変えてそれで支払いをするか? 1000円をLibraに変えるときに手数料を取られて、店舗決済でもまた手数料を取られる」
Libraを使った決済が威力を発揮するのは、国際間取引とインターネット上の取引にある。例えば、法人間の取引でも、小口の輸入業をやっていて支払いをLibraで行うということはあるかもしれないと志茂氏はいう。
Libraのポテンシャルが最も生きるのがインターネット上での決済だ。
「海外のお金がない人が、お金がないのにLibraを買うのか? オンライン上で稼ぐ仕組みができてLibraで支払われたときに、Libraが使われる理由が出てくる。ビットコインで(決済の普及を目指して)やってきた人たちを見ると、そういった世界を作らないと、難しい」
例えばUberの運転手をやってLibraを稼ぎ、そのLibraを使ってeBayで買い物をしたり、Visaにチャージしてスーパーマーケットで買い物をしたりという世界だ。インターネットの中を中心として、そこで収入から支出までがLibraで完結する。こうした経済圏を作り出す可能性をLibraは秘めている。
「ネットでLibraを稼いで、ネットでLibraを使う世界観が現れるのではないか。物理的な世界ではなく、インターネット内で使われる通貨になるのではないか」
引用元:ITmedia ビジネスオンライン
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190711-00000052-zdn_mkt-bus_all
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