2019年05月09日
フィンテック時代の決済や金融に革命を起こす? ハイブリッド銀行の構想計画
OmiseGoの普及がもたらすもの
大きな可能性を秘めた新しいフィンテックの仕組み
「仮想通貨全体の普及に貢献するかもしれない新仮想通貨」として、本連載の第6回の記事で「NEM(ネム)」「OmiseGo(オミセゴー)」「Fusion Coin(フュージョンコイン)」を取り上げました。
今回はその中から、新興国の決済インフラとなり得るオミセゴーについて、さらに詳しくご紹介。加えて、フュージョンコインから発展し、金融業界に革命を起こす可能性を秘めているハイブリッド銀行「フュージョンバンキング」の構想と計画についてご紹介します。
ICOの成功事例としても知られるOmiseGo(オミセゴー)
「OmiseGo(オミセゴー)」
単位:OMG
総発行枚数:1億4,024万5,398枚
オミセゴーは、オミセというオンライン決済会社が開発した仮想通貨です。銀行口座を持っていない人でもスマートフォンなどで簡単に送金や決済ができるという特徴があります。
オミセ社の決済サービスは、特にタイで広く普及しており、3分の2のモバイル会社が同社のサービスを利用しているという統計もあります。タイでは、金融庁やマクドナルドのような政府機関と大企業も利用しており、その信頼性は高いようです。日本企業からは、SBIグループやSMBCグループなどがオミセ社に出資しています。
オミセゴーは、ICOによって資金調達されました。ICOについては、第14回の記事をご参考ください。
オミセゴーのICOは、2017年6月27日に行われ、7月14日には仮想通貨取引所で扱われるようになりました。調達金額は約2,500万米ドルです。ICO開始の時点では、1OMG=0.2738米ドルでしたが、7月14日の公開から約3カ月後には1OMG=10.06米ドル前後まで上昇しました。当初の価格の約36倍ですね。
またオミセ社は、タイで資産規模では5番目に大きい商業銀行であるアユタヤ銀行から非公開出資を受けています。アユタヤ銀行からオミセ社への出資には、「東南アジア及び日本にとってのストライプ社(オンライン決済処理ソフトウェアプラットフォーム)のような決済を可能にするものを目指す」という、未来の決済ネットワークにオミセゴーが含まれることを期待しての意図があるようです。
オミセ社の代表は、「OMGプラットフォームを作り上げるために新しいパートナーたちとともに資金を投機することができてとても嬉しく思っています。これによってオープン決済と他の商品と一定の比率で交換できるような未来を促進させられると思っています。さらに、我々の活動をアジア太平洋地域の他の国まで拡大させることができるようになります」と述べています。
オミセ社は、タイの携帯電話会社DTACからオンライン決済事業Paysbuyを買収した後、M&Aにも積極的に取り組んでいます。今後も、アジア圏を中心にさまざまな展開が期待されていますので、オミセ社の成長は仮想通貨全体の普及に貢献するかもしれません。
Fusion Coinのロードマップ
ハイブリッド銀行の構想実現に踏み出したFusion Coin(フュージョンコイン)
「Fusion Coin(フュージョンコイン)」
単位:XFC
総発行枚数:3,000万枚
フュージョンコインは、UAEに本社を置くフュージョンパートナーズ社によって2015年に開発され、2017年1月からオープンマーケット(自由に売買できる状態)になった仮想通貨です。
価格上昇を目指すだけの仮想通貨ではなく、フュージョンコインやビットコイン、ビットコインキャッシュ、リップル(XRP)を含む主要な仮想通貨を銀行業の中のひとつのツールとして捉え、フュージョンコインをハブとして「信頼度の高い金融サービスを提供し、世界中の誰もがアクセスできるように人々をつなぐ」というフュージョンバンキングの構想を掲げています。法定通貨を中心とする従来の金融システムに、仮想通貨を支えるブロックチェーンを含む革新的な技術を導入し、グローバルかつ安全で信頼できる金融サービスを提供することがフュージョンバンキングの目的です。
フュージョンパートナーズ社の代表らは、投資家から出資を募るものの経営権を与えない、かつ経営状況や開発状況も公開しないICOに対して否定的な考えを示しており、ICOを行わずに全て自己資金で開発を完了しました。「プロジェクトを進め、実現するためには、誰かがリスクを取らなければならない」という考えを持っています。
フュージョンバンキングについては、同社からさまざまな構想が発表されてきました。2018年6月にはロードマップが公開されています。計画は多少遅れていますが、徐々に実現に向けて前進しているようです。フュージョンバンキングは、オンラインバンクとして2019年内(5月以降)の開行が予定されています。
【以下、ロードマップから抜粋(日本語訳)】
■2018年 フェーズ1 (パートナーシップの締結)
銀行業の開始
仮想通貨のオフライン管理コンシェルジュサービス
仮想通貨と金(現物資産)を交換するサービス
仮想通貨と法定通貨を交換するサービス
■2019年 フェーズ2 (ハード面の充実化)
デビットカード(銀行カード)の発行
モバイルウォレットの開発
残高等を確認できるモバイルアプリの開発
仮想通貨と法定通貨の取引が可能なモバイルバンキングシステムの提供
■2020年 フェーズ3 (実業面のサービス提供)
仮想通貨貸し付け・ローン
企業融資
従来の法定通貨による銀行ローンの提供
■2021年 フェーズ4(事業拡大)
投資プラットフォーム
分散型暗号通貨取引所
決済システム
分散型銀行業
(※ロードマップは近日更新予定)
フュージョンバンキングは、信託業務・銀行業務を担うスウェーデンの銀行ライセンスによって運営されます。銀行オープン時の対応仮想通貨はフュージョンコインだけですが、順次その他の対応仮想通貨を増やしていく計画とのことです。
また、銀行で発行するフュージョンバンキングカードは、デビッドマスターカード・ユニオンペイが付いていますので、ATMでの出金も可能になるとのことです。フュージョンコインは、リップル(XRP)と同様、送金・決済スピードが速い特徴がありますので、銀行カードの実現は仮想通貨の決済利用を推し進めるかもしれません。
また、フュージョンバンキングの各種手数料はまだ発表されていませんが、フュージョンコインの場合、送金手数料は0.001%、売買手数料は0.0005%ですので、手数料もリーズナブルでしょう。
フュージョンバンキングは、オンラインバンクだけでなく、世界展開を視野に入れて構想されています。仮想通貨業界全体の発展と信頼度を上げるためには、従来の銀行との協力が不可欠であると考え、新銀行の開設を複数の国・地域で進めています。そのひとつが、ポルトガルでテスラの関連会社(テスラのスーパーチャージャーを生産する会社)と共同で準備している投資銀行です。共同出資しているのはあくまでも関連会社であり、本プロジェクトにイーロン・マスク氏は関わっていませんが、一部では注目を集めているようです。
また、フュージョンパートナーズ社はトーマス・エジソンの孫であるミッキー・エジソン氏が主宰するエジソン財団とパートナーシップを結んでいます。それに関連し、Qbanqオンラインバンキングサービスを行っているQDot Data Holdings, Inc.ともパートナーシップを締結し、フュージョンバンキングとは別のオンラインバンクも共同で設立します。
その新銀行も法定通貨と仮想通貨のハイブリッド銀行になり、VISAカードが発行される予定です。両社の技術を持ち寄り、今後ハイブリッドバンクの設立を希望する仮想通貨取引所や仮想通貨会社に銀行ライセンスを有したオンラインバンキングサービスを提供できることになります。
フュージョンバンキングは、仮想通貨を活用した自由な資産運用のプラットフォームを形成していく計画です。ここでいう「自由」には、3つの意味があります。「送金スピードの速さ」「手数料の安さ」「入出金制限からの解放」です。
送金スピードの速さは、国内送金であっても国外送金であっても数秒で完了するほど速く、地球の裏側へでもほとんど時間をかけずに送金できます。また、銀行の営業日や営業時間を気にする必要もありません。送りたいときに、送りたい人へ、送りたい分だけ送金できるということです。一見すると当たり前のことですが、実際にはなかなか実現できていません。
手数料は、前述の通りほとんどかかりません。1万ドル分を送金しても、手数料は0.1ドルです。ほとんど手数料を気にすることなく、気軽に送金できるでしょう。また、煩わしい入出金制限がなければ、数回に分けて送金したり、その都度面倒な手続きをしたり、手数料を払う必要もありません。
安心してできる資産運用や資産保全の形は、人の数だけあります。「仮想通貨を持つことで安心する人」や「法定通貨を持つことで安心する人」「現物資産を持つことで安心する人」など、さまざまなニーズにフュージョンバンキングは応えられるでしょう。
フュージョンバンキングは、仮想通貨と法定通貨の両方を取り扱うハイブリッド銀行として、さまざまな仮想通貨と法定通貨の交換が可能で、金などの現物資産への交換もでき、今後はさらに他の資産への交換ができる準備も進めていくようですから、利便性は向上しそうです。
ロードマップには、預金業務や貸付業務を含む銀行業の展開、決済アプリの開発、デビットカードの発行、モバイルウォレットの開発、モバイルアプリの開発、モバイルバンキングシステムの開発、仮想通貨取引所との提携などが公開されています。ロードマップには含まれていませんが、アメリカの大手取引所のビットフェニックスとの提携も決まっているそうです。
さらに提携企業として、「SALT(ソルト)」「Spectre(スペクター)」「TenX(テンエックス)」「komodo(コモド)」「Monaco(モナコ)」などの仮想通貨企業もロードマップに公開されました。
ソルトは、「Secured Automated Lending Technology」の略で、単位はSALT、総発行枚数1億2,000万枚の仮想通貨です。ソルトの特徴は、仮想通貨を法定通貨に換えることなく、必要なときに保有している仮想通貨に応じて法定通貨を借りられることです。担保可能な仮想通貨は、2018年の時点ではビットコイン、イーサリアム、リップルですが、今後はフュージョンコインなどの他の仮想通貨も追加する計画です。
スペクター(スペクターコイン/SpectreCoin)は、単位はXSPEC、総発行枚数2,000万枚の仮想通貨です。スペクターコインは匿名性が強く、プライバシー性の高い仮想通貨として知られています。イーサリアムのブロックチェーン上のスマートコントラクトを利用し、法定通貨などの値動きを予想して投機を行う「分散型市場予測プラットフォーム」を運営しています。分散型予測市場のメリットは、市場予測の正確性と透明性が増すことです。仲介者(ブローカー)を排除すれば、バイナリーオプションやFX取引につきまとう不透明性を取り除くことができます。
テンエックスは、単位はPAY、総発行枚数(上限)は2億521万8,256枚の仮想通貨です。仮想通貨業界で初めて、ウォレットとカードを紐付けて使うことができる仮想通貨デビットカードを発行しています。ウォレットから通貨を移動させて使用できるカードはありましたが、ウォレットに通貨を置いたまま決済に使用できる点がテンエックスの特徴です。
コモドは、単位はKMD、総発行枚数2億枚の仮想通貨です。Atomic Swaps(アトミックスワップ)という技術を採用しており、ブロックチェーンが異なる通貨同士を、取引所などを介さずにユーザー同士で直接取引できます。コモドと交換可能な法定通貨は32種類あり、フュージョンコインと同様に仮想通貨と法定通貨をつなぐゲートウェイになると期待されています。
モナコは、単位はMCO、総発行枚数3,158万7,682枚の仮想通貨です。香港を本拠地とするクレジットカード会社「モナコ」によって発行され、仮想通貨を使用したデビットカード決済が可能です。大きな特徴は、複数の仮想通貨をモナコのアカウント内に保管ができることです。しかも、世界中で手数料なしで出金できます。
また、フュージョンバンキングでは、オフラインで仮想通貨を保管できるコールドウォレットやハードウェアウォレット、そしてそれらを管理するコンシェルジュサービスも、ハードウェアウォレットメーカーの「Ledger(レジャー)」や「TREZOR(トレザー)」と提携して行っていく計画です。
金などの現物資産との交換については、金の所有権をブロックチェーンで管理する「Digix(ディジックス)」や「Global Gold(グローバルゴールド)」と提携して進めているそうです。
ロードマップに掲載されている他にも、分散型金融取引プラットフォームの「Waves(ウェーブス)」や、モバイルゲーム特化型のアルトコイン「MobileGo(モバイルゴー)」との提携も決まっています。新しく開発された仮想通貨ATMで、フュージョンバンキングのアカウント開設やフュージョンコインの取引もできるようになります。
さらに、仮想通貨貸付(レンディング)やローン、企業融資などの金融サービスも2020年以降を目安に開始。それらを展開させることで、2021年以降は投資プラットフォームの構築や、分散型仮想通貨取引所の開設、決済システムの開発など、さまざまなサービスを世界中で提供していくそうです。
フュージョンバンキングの存在は、仮想通貨業界全体の信頼度向上に貢献し、普及を促進していくでしょう。
引用元:マイナビニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190503-00000005-mynavin-life
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