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2018年06月02日

ビットコインは使い物にならない?「ビットコインキャッシュ」誕生の意外な理由

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実物通貨と仮想通貨、日常と非日常、ヒトとAIの境界線がどんどんなくなりつつある今、私たちはどうやって生きていけばいいのか?
構想・執筆に2年。「愛」がテーマという注目のエンターテイメント小説『マルチナ、永遠のAI。』が話題を呼んでいる。
ビットコイン、ブロックチェーン、ディープラーニング……正確な技術論と、その道の世界的権威の見解をもとに緻密に描いた作品で、SFではない、小説風の解説書という。

『エフエムふくやま』でも、「ページをめくる手が止まらなかった」と紹介され、映像化したいというオファーが舞い込んできたという大村氏の特別寄稿をお送りする。
(構成・寺田庸二)



● なぜ、ビットコインは 実生活では利用されない?


仮想通貨と言えば、何をおいてもビットコインでしょう。
 人類史上はじめて誕生した仮想通貨というブランドがありますし、すでにビットコイン決済ができる量販店なども登場しています。

 ただし、ここを勘違いしないでいただきたいのですが、客はビットコインで支払っても、そのときのレートで円に換算され、店舗側は「円」で代金を受け取っています。

 実際に、商品の値段がビットコインで表記されることはありません。
 1万円の商品はあくまでも1万円で、そのときのビットコインの価格が100万円なら、0.01ビットコインで支払えるという、厳密には「ビットコインの疑似決済」です。

 さて、このビットコインですが、今後、広範囲にわたる店舗決済や銀行の送受金のような「実体経済と連動した」使われ方はしないと私は個人的に思っています。

 むしろ、USBメモリ程度のハードウォレットに価値を保存できますので、「金(ゴールド)よりも手軽なデジタルゴールド」のような位置付けになっていくと感じています。

 私がそう思う理由は、ビットコインの「トランザクション問題」です。

 ビットコインは、極めて処理能力の低い仮想通貨です。

 第24回連載でブロックチェーンやビットコインのマイニングの基礎的な解説をしましたが、ビットコインのブロックの生成時間はおよそ10分と決まっています。

 そして、この新たなブロックには約4000件のトランザクション(取引)が記録されます。
 すなわち、「4000件÷600秒」で、ビットコインが1秒間に処理できるトランザクションは約6〜7件です。

 まだほとんどの人がビットコインを使っていなかった時代にはこれでよかったのですが、2017年に入ると一気にビットコインが過熱しました。

 そして、まず日本の取引所でビットコインを購入し、そのビットコインを海外の取引所に送金して、そのビットコインでアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)を買う投資家が爆発的に増えました。
 しかも、これは日本のみならず、世界中で発生した現象です。

 結果、ビットコインはトランザクションを処理しきれなくなり、俗に言う「送金詰まり」が多発するようになりました。



 


● 着金までに4日も!


たとえば、2017年11月に私が海外の取引所でしか買えないあるアルトコインを買おうと、日本の取引所から海外の取引所にビットコインを送金したのですが、着金するまでに4日も要しました。

 しかも、当時はビットコインの送金を抑制しようと、手数料が約4000円もかかったのです。
 その4日間にアルトコインは暴騰してしまい、結局買えなかった私は、渋々日本の取引所にそのビットコインを戻しました。
 これで、手数料だけで往復で8000円の損失です。

 これのどこが、「送金が速くて手数料が安い仮想通貨なんだ」と嘆息しました。

 ちなみに、このときのビットコインの送金詰まりはおよそ20万件ありました。

 ただし、このトランザクション問題については様々なアプローチで改善策が議論されています。




 


● ビットコインキャッシュは ビットコインの改善版


そこで考えられたのが、ビットコインのブロックサイズの1MBを拡張しようというアイデアです。

 そして生まれたのが、ブロックサイズが8MBのビットコインキャッシュなのです。

 私もその一人ですが、「ビットコインキャッシュのほうがビットコインよりも優れている」と主張する人の根拠はここにあります。

 ただし、かなり専門的な話になるので割愛しますが、ブロックサイズそのものが大きくなると、マイニング業者との伝搬で広域なネットワークが必要になるなど、ビットコインキャッシュがトランザクション問題を完全に解決したとは言い難い状況です。

 ただし、ブロックサイズを8MBと8倍にすれば、処理できるトランザクションの件数も当然増えるわけですが、前述のような「送金詰まり」という問題はビットコインキャッシュにも起こりえますので、あくまでも理論上はビットコインキャッシュのほうがビットコインよりもトランザクション処理において優位性がある、ということだけ覚えておいてください。

 また、ブロックを大きくするのではなく、ブロックに入れるデータサイズを小さくする技術もすでに完成しており、このアルゴリズムは「Segwit2x」と呼ばれます。ただし、そのためには世界中の取引所がSegwit2xに対応しなければなりません。
 ところが、現在、取引所は新顧客の獲得や、扱うアルトコインの増大などに追われていて、Segwit2xでビットコインの送受金をしている比率は、2018年3月20日現在、たったの約102%にとどまっています。

 さて、今回はビットコインの処理能力の遅さをテーマに解説しましたが、現在、仮想通貨に懐疑的な人は、処理能力ではなく、そもそも仮想通貨の必然性に疑問を抱いているのではないでしょうか。



 


● IoT時代に AIと仮想通貨は両輪の技術


もっとも、それも無理のない話だと思います。
 なぜなら、仮想通貨というのはまったく新しいイノベーションであり、現在は数十メートル置きに公衆電話が設置されているのに、わざわざ携帯電話を使う人を奇異な目で見ているような状況だからです。

 しかし、すべてのものがインターネットにつながるIoTの時代が到来し、決済手段に仮想通貨が当たり前のように使われ始めたら、そのときにはじめて仮想通貨の利便性に気付くのかもしれません。

 もっとも、IoTともなると、仮想通貨やブロックチェーンだけで実現するのは不可能です。当然、AIと連動しなければなりません。

 このAIは、「ディープラーニング」と呼ばれる自力学習をする「子どものAI」と、人が一から教えて丸暗記させる「大人のAI」に分かれます。
 同じAIといえども、両者でどれほどの違いが出るのかは、第1回連載の中で「子どものAI」であるGoogle翻訳と、「大人のAI」である別の翻訳サービス(X翻訳)に同じ英文を日本語に翻訳させて、まったく異なる結果になるケースを紹介していますので、そちらを併せてお読みいただけたら幸いです。




大村あつし
IT書籍から小説まで幅広く手がける作家・ライター
エクセルのマクロ言語の解説書の売上部数は150万部を超えている。
1997年に、その後国内最大規模となるマイクロソフト・オフィス製品のポータルサイト「moug」を一人で立ち上げる。
2003年にはIT系資格試験の「VBAエキスパート」を中心メンバーとして創設。
2007年に処女小説『エブリ リトル シング』が17万部のベストセラーとなり、中華圏や韓国での翻訳出版や2回の舞台化(2008年井上和香、2009年内山理名主演)。『エブリ リトル シング』は、第1話の「クワガタと少年」が多くの私立中学の入学試験に出題され、全国の予備校で話題となり、YouTubeで再生回数が18.5万回の人気動画に。第2弾小説の『無限ループ』も5万部に。
2006年に、TOKYO MX(東京メトロポリタンテレビジョン)やテレビ神奈川など全国13の独立放送局で、AIとIoTをテーマとした90分の特別番組「IT その扉の向こうに」の司会に抜擢されたことでAIやIoTに傾倒する。
著書に、ベストセラーとなった『かんたんプログラミングExcel VBA』シリーズ(全16冊)、『Excel VBA本格入門――日常業務の自動化からアプリケーション開発まで』『人生は数式で考えるとうまくいく』『仕事がうまくいく0.7の法則』など多数。静岡県富士市在住。







引用元:ダイヤモンド・オンライン
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180602-00166275-diamond-bus_all


 




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