改正消費者契約法における消費者の利益を害する条項の無効とは?
最近はネット通販が普及していますが、商品の購入契約を交わすと、契約書の条項の中に利用者が契約の解除を申請しない限り、契約の更新手続きを了承したことになるというものがあります。
また、悪質なネット通販企業の中には、サンプル価格品を購入するだけで良いとなっていたのに、『契約条項にある通り、解約しない場合は定期購入契約に替わる』と言って、支払いを強要する業者もいます。
そんな消費者の利益を害する条項を無効としたのが改正消費者契約法の10条です。
【消費者契約法第10条】
消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
消費者契約法第10条では、違反規定が以下の@とAに分かれており、両方に該当する場合に、その契約条項は無効になるとしています。
【違反規定条項】
@法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する条項
A民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの
(最終更新日付:平成31年2月12日)
契約の自動更新は消費者契約法に抵触するのか?
契約の中によくある「自動更新」は@(法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する条項)の違反規定に該当します。
自動更新条項は解約の申し出をしないという「不作為」(何もしないこと)をもって新たに契約の申込みをしたものと見做し、契約を継続させるという規定であるため、@に抵触します。
ただし、Aの規定(民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの)にも反しなければ、無効にはなりません。
Aの規定にある民法第1条2項は俗に「信義則」といわれるものであり、契約の内容が消費者に対する信義に誠実でなければなりません。
信義則に反するかどうかは以下の判例があります。『消費者契約法の趣旨・目的に照らし、当該条項の性質、契約が成立するに至った経緯、消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考量して判断されるべきである』とされています。
ネット動画の定期視聴契約や雑誌の定期購読契約などは利用者から解約の申し出の無い限り、自動的に契約が更新され続けることになります。
自動更新の条項は利用者からすると、申込もしていないのに勝手に契約したことにされるため、不利益を受けたと言えなくもありません。
ただ、更新される契約というのは、元々利用者が申請したものであり、1年間延長したからといって身に覚えのないものを押し付けられるわけでもありません。逆に、更新の手続きという手間を省けるメリットがあります。
確かに、@の規定にある消費者の「不作為による新規契約の申込み」という違反行為は成立しますが、Aの「消費者の利益を一方的に害する」には該当しないため、10条に違反しているとまでは言えません。
消費者の利益を一方的に害する(不測の損害)とは?
同じ、自動更新でも新たな料金の発生するものは「消費者の利益を一方的に害するもの」と判断されることが多くなります。
例えば、『サンプル価格でサプリメントを購入する。解約の申し出がない場合は、1年間の定期購読の契約に切り替える』といった契約条項が記載されていたとします。
この場合、消費者が何もしなければ無条件に契約が成立し、消費者の認識の有無に関わらず、契約に基づく代金の支払いを負担させるものです。
このような契約条項は消費者に不測の損害を与える可能性が高く、10条の@とAの要件を満たすことから無効と判断されます。
適法処理は明確にアナウンスすることが重要!
上記のサンプル品の契約のケースで10条に反しないためには、利用者に対して無料期間が終わると解約の申し出をしない限り自動的に有料契約に切り替わることを明確にアナウンスし、利用者に契約解除の申請が必要であることを明示しておくことが重要になります。
例えば、当初の申込の際に、申込ボタンの近くに無料期間終了後に有料契約に切り替わることを記載し、その条項の確認ボタンにチェックを入れないと申込ができないシステムにしておくことです。
さらに、有料契約に切り替える前に解約方法の案内とともに、『○○日までに解約の申し出をしないと自動的に有料契約に切り替わります』という案内メールを利用者に送ると、より適法とされる可能性が高くなります。
10条に違反する可能性の高いのはネット上での自動更新条項です。
利用者が継続契約になることを認識できないような運用になっていると、契約自体が無効とされる可能性があるため、分かりやすいシステムの構築が肝心です。
なお、消費者契約法10条に違反しても罰則はありませんが、条項が無効となると今まで受領していた料金の返金が必要になります。コンプライアンスは企業の生命線と言えます。
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