2014年10月12日
9月の米失業率の改善 FRBの利上げ時期の見極めは「LMCI」に注目
■市場予想を上回った9月の雇用統計
10月3日に米労働省が9月の雇用統計(速報値、季節調整済み)を発表した。非農業部門の雇用者数が市場予想を上回って24万8000人増となり、失業率は2008年7月以来6年ぶりの低水準となる5.9%となった。
この結果が市場予想より好調だったため、2015年半ばにはFRB(米連邦準備理事会)が緩和後初の利上げに踏み切るのではないかとの予想も出始めている。
雇用者数の伸びは8月に20万人台を割り込んでいましたが、9月は21万人程度増加という市場予測を上回ったことで、7〜9月の伸びが月平均22万人強となりペースが安定したと見ることができる。9月は民間サービス部門の雇用者数が20万7千人増えたことで、雇用全体を牽引した形です。雇用が伸びた業種は専門職で、特に雇用サービスやコンサルティングが伸びています。小売り、医療も伸び、建設部門では1万6000人の増加となった。但し、自動車関連がプラスに転じたとはいうものの、製造業全体の雇用増加は鈍いままである。今回の雇用統計が11月4日に行われる議会中間選挙前としては最後の統計となるため、オバマ大統領は演説でもこの統計を示して力強い景気回復であることを強調しているが、家計所得の減少という逆風は吹いたままとなっている。
■雇用統計は楽観できるか
以上の様に雇用統計はかなり改善されたと見られる数字が発表されましたが、平均時間当たり賃金が減少しているなど、必ずしも楽観できません。また、失業率の低下には、職探しを諦めた人の増加が貢献しているという指摘もあります。それは労働参加率が1978年以来の低水準である62.7%を示したからです。
それでも昨年9月から260万人の雇用が増えたことは確かです。ただ、平均時給は前月から横ばいで、インフレ率を僅かに上回る2%増であるため、景気が良くなったと実感できる人は少ないでしょう。
一方、U6失業率(本人の意に反して職探しを諦めた人や正規雇用を臨みながらもパートタイムで働く人を含めた失業率)は11.8%で、これは2008年10月以来の低水準を示しています。
とはいえ、6ヶ月以上の長期失業者数は295万4000人と8月から僅かに下がった程度であり、労働参加率(働く意欲のある人の割合)は62.7%と0.1ポイント減で、やはり職探しを諦めた人が多いことを示しています。
■市場の反応
それでも非農業部門の雇用者数が市場予測を上回った事に間違いないといえる。また、失業率が5.9%に低下したことも予測を下回った良い数字となった。このように雇用者数の数字はプラスの経済見通しを示そうとしているものの、賃金上昇が見られないことで、今後の消費支出が伸びるとは考えにくい状況である。
それでも市場は一息付けたようで、市場関係者は今回の雇用統計の数字を受け、FRBの利上げ開始は来年7月になると予想している。しかし一部では6月であろうという予想もでている。
またエコノミストの多くは第3四半期の経済成長率を年率で3%程度になると予想しながらも、FRBが早期利上げをする条件にはならないとみている。それは、FRB当局者の一部が、ここ数週間のインフレ率が極めて低いことから経済に余剰資源がかなり存在していることを示していると、警告しているからだ。また、賃金の伸びが鈍いことも利上げ観測を抑えている。
そのため、市場関係者は、雇用統計の数字が良くとも、FRBの利上げ開始は来年半ばであろうと見ることができる。但し、雇用統計の結果は、FRB内部でのゼロ金利解除に向けた議論を加速させるであろう。
■FRBの方針に影響するか
前述の通り、雇用統計の結果が良好だったことを受け、FRBの緩和終了後の最初の利上げは、2015年半ばであろうと期待されている。つまり、それ以上の前倒しは無いであろうとの予想だ。
また、FRBは時間当たり賃金の変化を重視しており、今回市場が雇用統計に大きく反応しなかったのは、この時間当たり賃金がFRBの期待に応えていないためである。FRBはかねてから利上げの条件として雇用情勢の改善を上げているが、特に賃金の伸びとインフレ率が期待通りでは無いことが、利上げに慎重にさせるはずだからだ。さらにFRBはフルタイム勤務を希望しているにもかかわらずパートタイムで働いている人数の改善が鈍いことも重視している。結局、FRBは利上げに慎重な姿勢を崩していないが、それでも出口戦略に関する議論が加速することは間違いなであろう。FRBは28〜29日のFOMC(連邦公開市場委員会)で量的緩和政策の終了を決めるであろうと見られている。その際、ゼロ金利政策の解除時期についても議論されるはずだ。
■FRBが注目する「LMCI(労働市場情勢指数)」
FRBは10月6日に、新たに開発した指数であるLMCI(労働市場情勢指数)を公表した。その結果、労働市場は夏場に失速したが、9月にはLMCIが2.5ポイント上昇し、勢いを取り戻したことを示した。
LMCIは失業率、平均時給、フルタイムが見つからないためパートタイムで働いている人数など、19の労働関連指数から算出されており、LMCIは景気拡大局面では上昇し、景気後退(リセッション)曲面では低下します。従って、米経済がリセッションを脱した2009年半ば以来では、LMCIが低下したのは2ヶ月のみだ。
ちなみに2014年1月と2月のLMCIは3ポイントの伸びで、これは労働市場の回復が鈍化していることが読み取れる。3月は4.9ポイント上昇し、4月は2012年2月以来の高水準である7.1ポイントを示した。
ところが5月から8月にかけて再び減速し、それが9月で要約上昇に転じたため、FRBが利上げ時期を巡る議論を活発化させる可能性が高まった。とはいっても8月の2.0が2.5になっただけで、相変わらず低い水準だ。
イエレンFRB議長が、失業率は必ずしも労働市場の全容を示していない、と語っていることは、逆にLMCIを重視していることを示しているのだろう。つまり、利上げ時期を見極めるには、LMCIの今後の数値に注目する必要がある。
10月3日に米労働省が9月の雇用統計(速報値、季節調整済み)を発表した。非農業部門の雇用者数が市場予想を上回って24万8000人増となり、失業率は2008年7月以来6年ぶりの低水準となる5.9%となった。
この結果が市場予想より好調だったため、2015年半ばにはFRB(米連邦準備理事会)が緩和後初の利上げに踏み切るのではないかとの予想も出始めている。
雇用者数の伸びは8月に20万人台を割り込んでいましたが、9月は21万人程度増加という市場予測を上回ったことで、7〜9月の伸びが月平均22万人強となりペースが安定したと見ることができる。9月は民間サービス部門の雇用者数が20万7千人増えたことで、雇用全体を牽引した形です。雇用が伸びた業種は専門職で、特に雇用サービスやコンサルティングが伸びています。小売り、医療も伸び、建設部門では1万6000人の増加となった。但し、自動車関連がプラスに転じたとはいうものの、製造業全体の雇用増加は鈍いままである。今回の雇用統計が11月4日に行われる議会中間選挙前としては最後の統計となるため、オバマ大統領は演説でもこの統計を示して力強い景気回復であることを強調しているが、家計所得の減少という逆風は吹いたままとなっている。
■雇用統計は楽観できるか
以上の様に雇用統計はかなり改善されたと見られる数字が発表されましたが、平均時間当たり賃金が減少しているなど、必ずしも楽観できません。また、失業率の低下には、職探しを諦めた人の増加が貢献しているという指摘もあります。それは労働参加率が1978年以来の低水準である62.7%を示したからです。
それでも昨年9月から260万人の雇用が増えたことは確かです。ただ、平均時給は前月から横ばいで、インフレ率を僅かに上回る2%増であるため、景気が良くなったと実感できる人は少ないでしょう。
一方、U6失業率(本人の意に反して職探しを諦めた人や正規雇用を臨みながらもパートタイムで働く人を含めた失業率)は11.8%で、これは2008年10月以来の低水準を示しています。
とはいえ、6ヶ月以上の長期失業者数は295万4000人と8月から僅かに下がった程度であり、労働参加率(働く意欲のある人の割合)は62.7%と0.1ポイント減で、やはり職探しを諦めた人が多いことを示しています。
■市場の反応
それでも非農業部門の雇用者数が市場予測を上回った事に間違いないといえる。また、失業率が5.9%に低下したことも予測を下回った良い数字となった。このように雇用者数の数字はプラスの経済見通しを示そうとしているものの、賃金上昇が見られないことで、今後の消費支出が伸びるとは考えにくい状況である。
それでも市場は一息付けたようで、市場関係者は今回の雇用統計の数字を受け、FRBの利上げ開始は来年7月になると予想している。しかし一部では6月であろうという予想もでている。
またエコノミストの多くは第3四半期の経済成長率を年率で3%程度になると予想しながらも、FRBが早期利上げをする条件にはならないとみている。それは、FRB当局者の一部が、ここ数週間のインフレ率が極めて低いことから経済に余剰資源がかなり存在していることを示していると、警告しているからだ。また、賃金の伸びが鈍いことも利上げ観測を抑えている。
そのため、市場関係者は、雇用統計の数字が良くとも、FRBの利上げ開始は来年半ばであろうと見ることができる。但し、雇用統計の結果は、FRB内部でのゼロ金利解除に向けた議論を加速させるであろう。
■FRBの方針に影響するか
前述の通り、雇用統計の結果が良好だったことを受け、FRBの緩和終了後の最初の利上げは、2015年半ばであろうと期待されている。つまり、それ以上の前倒しは無いであろうとの予想だ。
また、FRBは時間当たり賃金の変化を重視しており、今回市場が雇用統計に大きく反応しなかったのは、この時間当たり賃金がFRBの期待に応えていないためである。FRBはかねてから利上げの条件として雇用情勢の改善を上げているが、特に賃金の伸びとインフレ率が期待通りでは無いことが、利上げに慎重にさせるはずだからだ。さらにFRBはフルタイム勤務を希望しているにもかかわらずパートタイムで働いている人数の改善が鈍いことも重視している。結局、FRBは利上げに慎重な姿勢を崩していないが、それでも出口戦略に関する議論が加速することは間違いなであろう。FRBは28〜29日のFOMC(連邦公開市場委員会)で量的緩和政策の終了を決めるであろうと見られている。その際、ゼロ金利政策の解除時期についても議論されるはずだ。
■FRBが注目する「LMCI(労働市場情勢指数)」
FRBは10月6日に、新たに開発した指数であるLMCI(労働市場情勢指数)を公表した。その結果、労働市場は夏場に失速したが、9月にはLMCIが2.5ポイント上昇し、勢いを取り戻したことを示した。
LMCIは失業率、平均時給、フルタイムが見つからないためパートタイムで働いている人数など、19の労働関連指数から算出されており、LMCIは景気拡大局面では上昇し、景気後退(リセッション)曲面では低下します。従って、米経済がリセッションを脱した2009年半ば以来では、LMCIが低下したのは2ヶ月のみだ。
ちなみに2014年1月と2月のLMCIは3ポイントの伸びで、これは労働市場の回復が鈍化していることが読み取れる。3月は4.9ポイント上昇し、4月は2012年2月以来の高水準である7.1ポイントを示した。
ところが5月から8月にかけて再び減速し、それが9月で要約上昇に転じたため、FRBが利上げ時期を巡る議論を活発化させる可能性が高まった。とはいっても8月の2.0が2.5になっただけで、相変わらず低い水準だ。
イエレンFRB議長が、失業率は必ずしも労働市場の全容を示していない、と語っていることは、逆にLMCIを重視していることを示しているのだろう。つまり、利上げ時期を見極めるには、LMCIの今後の数値に注目する必要がある。
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