2015年10月04日
世界一危険な神社 北海道太田神社
世界一危険な神社が、北海道にあるという。道内有数のパワースポットとしても知られ、道南五大霊場の1つにも数えられる山岳霊場「太田神社」だ。
霊場やパワースポットといったフレーズから、「かつて人身御供の儀式が頻繁に行われ、その怨念が現在でも残っていて......」といったように、霊的な意味で危険な場所だと勝手に想像しがちだが、別にそういうわけでは全くない。
ただ単純に、鳥居から本殿までの道のりが極めて過酷なのである。参道は世界一危険な「ヒグマの生息地」で、参拝には「本格的な登山装備で挑むことが推奨される」というのだ。確かに、入口に立てられた看板をみると、以下のような文言が赤字で書かれている。
本殿参拝に伴う敷地内等で発生した事故等については、当神社では一切の責任を負いません
およそ、神社の入り口で見かける注意書きとは思えない。いったい、その行程はどれほど過酷なのだろうか。
「エクストリーム参拝」って何だ!?
嘉吉年間(1441〜43年)に創立された「太田神社」は、北海道久遠郡せたな町にある山岳霊場。地元住民には「太田さん」などと呼ばれ親しまれているが、同町の観光協会によれば「地元の人間は、ほとんど参拝することがありません」とのことだ。
ネット上では、太田神社を参る行為を「エクストリーム参拝」だと揶揄する記述もみられる。これは、BMXやモトクロスなど、離れ業を売りとするスポーツを「エクストリームスポーツ」と呼ぶことからきたものだ。要は、それだけ太田神社の参拝が危険だということだ。
上の画像にあるのは、山のふもとにある太田神社の拝殿である。その「本殿」は、奥に見える山の岩肌が露出しているところ、ちょうど上から2本目の電線がかかっている辺りにあるのだという。これを見るだけで、その過酷な参道の様子が少しうかがえる。
それでは、その過酷な行程を順番にご紹介しよう。
太田神社の鳥居をくぐると、最初にぶつかる関門が「急すぎる石段」だ。
鳥居をくぐるとすぐに直面する全139段の石段は、平均45度の斜度を持つ。最も急なところで、その角度は50度に達する。道路標識でよく見る「斜度」で計算すると、その角度は100%を超える。その事実を鑑みれば、この石段がいかに急なのか分かるだろう。もちろん、手すりだけでなく安全のためのロープが設置されている。
ちなみに、石碑には「太田山神社」と書かれているが、せたな観光協会は「正式名称は、確かに『太田神社』で間違いありません」と語る。この表記の差も、参拝者を混乱させるワナかのように思ってしまうのは、少々穿ちすぎだろうか。
ようやくの思いで階段を登りきると、以降は草木の生い茂る獣道にも似た山道や足場が続く。ここでは、ブヨやハチ、マムシなど危険な生物が多数生息している。ヒグマが出没するのもこの周辺なので、十分な対策や注意が必須である。山道の途中には仏像が置かれた大石や女人堂があるそうだ。
山道を抜けると、辺りの風景はゴツゴツとした岩場になってくる。このあたりから、道の傾斜が厳しくなり、足を踏み外しての落下や落石の危険性も高まるという。一部の箇所では、歩きやすいよう鉄の階段が設置されている。
岩場を進むと、最後の関門ともいわれる「北尋坊の崖」が見えてくる。絶壁という言葉が当てはまるような、高さ7メートルにも及ぶ岩壁である。参拝者は、設置された鉄輪とロープを使い、まるでロッククライミングのように壁に挑む。これを登り切ったところに、太田神社の本殿が建っているのだ。
ここまでの所要時間は、およそ70〜100分。参拝というよりは、もう完全に「登山」に近い。それでは、過酷な参道を乗り越えた人だけが参拝できる、太田神社の本殿をご覧いただこう。
長く、険しい道のりを進んで来ただけあって、その達成感はひとしおだろう。感慨を込めた二礼二拍を終え、後ろを振り向くと――。
そこには、日本海や奥尻島が眼下に広がる「絶景」が広がっているのだ。この見事な風景を眺めるだけでも、本殿を目指す価値がありそうだ。
ちなみに、せたな観光協会では、「一人で行くのは不安だ」という人に向けて、太田神社の参拝ツアーを実施している。登山の専門家も同行するため、安全に「世界一危険な神社」を楽しめるツアーとなっている。
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