現在の飽食時代、パンの耳で過ごす事等、考えられないかも知れませんが、日記に昭和40年当時の状況を見る事が出来ます。
「3月29日、月曜日、今日は朝から会社は休み、給料日は目の前だけど、どうしても金が不足。
しかたないので、電子工学、図解パルス工学、電気論の3冊、2000円相当を古本屋に売りに行った。
売りたくない気持ちは山々、そうかと言って、飯を食べずに過ごす訳にもいかない。
ある一軒の古本屋に入り、買ってくれと頼むと、今はその本ありますから、との事で、この本屋を出る。
この場に成って、自分ではよく分からない程の本に対する未練が出てきて、そのまま帰る事にした。
やっぱりどんな事があっても、参考書だけは、今後売るような事はしないようにしよう。
仕方ないので、今日は朝から食パン1個で、1日中過ごす。腹の虫がグーグー鳴っている。
ペンさえも、いつもと違い、ふらふら千鳥足、残る2日間の我慢だ。明日の仕事は元気でいこう。12時記す」
ひかるにとって、パンの耳は、本当の命の源で、どれ程有難いと思った事か。
1日をパン1個で過ごした日が、どれほどあったのだろうか。
絶えるかもしれない、命の恐怖に、何かを残したい、毎日の行動を記録し、自分を励まし、耐えたのです。
そして、生命力の強さ、偉大さをつくづく痛感させられました。
上京時、父はやっとの思いで一万7千円のお金を用意してくれました。
当時は、高校卒業の初任給が一万7千円くらいでしたので、1カ月以内に底をつくのは目に見えており、急いで働かなければ、夜学は続行出来ません。
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