吊り合いが取れない、習慣が違うという面ではいくらでも書きたてられる。
ひかるの田舎では人が亡くなった場合、頭を西向き、太陽が沈む方向にするのだ。
女房は北向きだと言う、さて布団やベッドにしても西向きと北向き、縁起が悪いので我が家ではやってはいけない事になる。
お互い譲らなければ夫婦喧嘩に発展する。
それでは子供達にどう教えようかという事になるが、我が家ではお母さんが亡くなった時は北向き、お父さんが亡くなった時は西向きにしろと言ってある。孫達の教育は自分達で判断しろ、と。
ひかるは長男なので南の島に住む両親の面倒を見ようと考え、まず一ヶ月間東京で同居する事をテスト的に試みた。
広い庭を用意、農業で長年生活した両親に家庭菜園をさせれば何んとか成るだろうという事で呼び寄せた。
すると、生活環境の違いがモロに出てきた。
周囲が12キロの小さな島、井戸はあるが汲み上げると海水だ。
現在のようにポリ容器のない時代だから飲料水は瓶に貯めて大事に使う。
それこそお金よりも一滴は貴重である。
水道が無いので食後の食器洗いも溜まり水で洗う。
呼び寄せた母親は、せめて食器洗いはさせてくれと言って、女房に一生懸命気を使う。
ところが水道を使った事がなく、ジャージャー流して洗う事は考えられない。
溜水で油ものの食器なども洗う。
女房がお願いだから、お母さんに食器洗いを止めさせてくれ、とてもじゃないが油がギトギトしていると言う。
下手をすると女房とのバトルへ展開する。
母に東京は水道料が基本料金で、いくら使っても料金は上がらない、流しぱなしでも問題ないと言って、何んとかバトルにならなかった。
共働きで子供達は学校、昼間隣近所に話し込む訳にもいかない。
退屈したのだろうか10日もすると島へ帰ると言い出した。
タイミング的にまだ早過ぎたかと考え、とりあえず島へ返した。
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