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2019年05月27日

リスク社会論からトップダウンで作家の執筆脳を考える−中島敦の「山月記」を交えて2

2 リスク社会論とは

 近代の変容に着目した現代社会論にポストモダン論とリスク社会論がある。ポストモダンとは、例えば、近代化における民族解放とか共産主義の理念や目的が失われた時代のことである。一方、リスクとは、人間が何かを選択したときに生じる不確実な損害のことであり、危害や損失の生じる恐れがある危険一般とは異なる。
 橋爪(2016)によると、リスク社会では人間の主体性が社会の根本的な前提になっていて、特に新しいリスクによって特徴づけられる。チェルノブイリの原発事故や東日本大震災、そして地球温暖化のように大きな破壊的な結果が生じ、しかもそのリスクが生じる確率が非常に低くて、どのくらいの確率で起こりうるか計算できない。また、責任という概念を破壊する。温暖化による生態系の破壊は、誰に責任があり、誰が損害を補償するのか考えれば自明なことである。

花村嘉英(2005)「リスク社会論からトップダウンで作家の執筆脳を考える−中島敦の「山月記」を交えて」より
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花村嘉英
花村嘉英(はなむら よしひさ) 1961年生まれ、立教大学大学院文学研究科博士後期課程(ドイツ語学専攻)在学中に渡独。 1989年からドイツ・チュービンゲン大学に留学し、同大大学院新文献学部博士課程でドイツ語学・言語学(意味論)を専攻。帰国後、技術文(ドイツ語、英語)の機械翻訳に従事する。 2009年より中国の大学で日本語を教える傍ら、比較言語学(ドイツ語、英語、中国語、日本語)、文体論、シナジー論、翻訳学の研究を進める。テーマは、データベースを作成するテキスト共生に基づいたマクロの文学分析である。 著書に「計算文学入門−Thomas Mannのイロニーはファジィ推論といえるのか?」(新風舎:出版証明書付)、「从认知语言学的角度浅析鲁迅作品−魯迅をシナジーで読む」(華東理工大学出版社)、「日本語教育のためのプログラム−中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで(日语教育计划书−面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用)」南京東南大学出版社、「从认知语言学的角度浅析纳丁・戈迪默-ナディン・ゴーディマと意欲」華東理工大学出版社、「計算文学入門(改訂版)−シナジーのメタファーの原点を探る」(V2ソリューション)、「小説をシナジーで読む 魯迅から莫言へーシナジーのメタファーのために」(V2ソリューション)がある。 論文には「論理文法の基礎−主要部駆動句構造文法のドイツ語への適用」、「人文科学から見た技術文の翻訳技法」、「サピアの『言語』と魯迅の『阿Q正伝』−魯迅とカオス」などがある。 学術関連表彰 栄誉証書 文献学 南京農業大学(2017年)、大連外国語大学(2017年)
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