これは、お医者さんにも間違っている人がいるくらいで、インフルエンザと風邪を混同しているのです。
英語で風邪は『コールド』(cold)で、インフルエンザは一般に「フルー」(Flu、医学用語では『influenza』です。
そんな誤解が起こったのは昔(1900年頃)、ロシアからきたインフルエンザを、その時のお医者さんが「ロシア風邪」と訳したからです1918〜19年にかけて感染者6億人、死者4千万人〜5000万人もだして世界的に流行したインフルエンザは、日本では【スペイン風邪】と呼ばれています。流行したインフルエンザを「〇〇風」と呼ぶのが倣(なら)いになって、『風』と混合しやすいのです。
インフルエンザと普通の風邪は、全く違うウイルスです。風はアデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルスなど、ウイルスは40種類くらい知られています。しかし、それによって人が死ぬことはありません。 それに対して、インフルエンザはインフルエンザウイルスによって引き起こされます。
インフルエンザにかかると、高熱が出て、気管支炎、インフルエンザ肺炎、細菌性脳炎、脳症倦怠感などの合併症を引き起こす危険があり、、体力のない高齢者や幼児などはしばしば死ぬことがあります。
新型コロナウイルスによる猛威については言うまでもありませんが、このように、風邪とインフルエンザは
全く違う病気なのです。
インフルエンザは人が死ぬ危険性があるので、ワクチンが開発されたのです。風は命にかかわる病気ではないので、ワクチンなど作る必要もないのです。
風邪をひいたらのどが晴れて赤くなったり多少熱が出たりしますが、薬を飲んで熱を下げれば、日常生活にそれほど差し支えがありません。しかし、インフルエンザに罹ったら、高熱が出て、時に関節が痛くなったり、種々の神経症状が出ます。また合併症の危険もあるので、仕事どころではありません。
いまだに、風邪とインフルエンザを混同している人は多くいます。
インフルエンザに対しては、ワクチンを投与して、免疫の有用性をフルに使って対処します。インフルエンザで危険なのは、もともと肺炎がある人やまだ体力のない幼児や免疫が低下している老人です。
また、小児の場合、インフルエンザのウイルスで高熱になり、反応が過剰な時は、サイトカインと言われるホルモン様のものがたくさん出てきます。いろんな種類のサイトカインがたくさん出るために脳症を引き起こし、死に至る危険もあります。
新型コロナウイルスを始め、過去に猛威を振るった新型インフルエンザなどが発展途上国で流行してなくなるのはたいていは幼児、高齢者、もともと病気がある人などです。ことに、子どもの脳症を避けるためには、発熱を抑えねばなりません。
インフルエンザが流行する前にワクチンを投与しておけば、免疫が働いて、かかりにくくなります。。そのために、その年に流行しそうなインフルエンザのワクチンを用意しておくわけですが、ウイルスの型が違うと、あまり効果がみられないこともあります。
一般に体の免疫は、大きいものに対しては無能な面もありますが、小さいウイルス等に関しては極めて有用な働きをします。未知のウイルスが外国から入ってきても、人を五週間生かすことができる医療設備がある日本では、あんまり心配はいりません。一週間もすれば免疫ができて大体のウイルスを吹っ飛ばしてしまいます。ですが、医療設備の貧弱な国々では死者が出ます。SARSや新型インフルエンザの場合でも、死者が出たのはそういう地域でした。新型コロナウイルスの場合、ワクチンがない状態で感染が広がり、先進諸国でも医療崩壊を招き、そのためたくさんの死者が出てしまいました。
ともあれ、外来からの病原が細菌やカビのように大きくなってくると、意外と無能な面も出てきます。例えば、結核菌は大きな病原ですが、そのワクチンと称されるBCGなどはあまり役に立ちません。いくらBCGを接種してツベルクリン反応が陽性の人でも、排菌している結核の方の咳一つで感染してしまうなど、ほとんど無力です。ですから先進国でBCGを義務化している国はありません。しkし、私たちは最近のような大きな病原に対しては抗生物質という今日ロクな武器を持っていて、うまく免役と防護態勢を住み分けています。とはいえ、今回のコロナウイルスに関して、BCGを接種している人の多い日本やポルトガルでは死者が少ないというデータがあります。
タグ:風邪とインフルエンザ