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2012年10月19日

村上春樹「走ることについて語るときに僕のかたること(文春文庫) 痛みは避けがたいが苦しみはオプションとは? 文系ジョガー(体育会系や理系と言い切れないジョギング愛好家)のための優れた哲学書!!

走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)




痛みは避けがたいが苦しみはオプションとは? 

村上春樹 「走ることについて語るときに僕のかたること」(文春文庫)

文系ジョガー(体育会系や理系と言い切れないジョギング愛好家)のための

優れた哲学書!!

走ること。
一番シンプルで深いスポーツ。

「スポーツとは走ること」そんな言葉もあります。


僕自身は球技が苦手。
鉄棒とか床運動とか長距離だけは好きでした。

ボールの気持ちは分からないけど
自分の体ならコントロールできる
いや、してやる。

そんな気持ちを抱いていました。
ところが、大人になってから、
趣味としてジョギングを続けていると・・・


あら不思議、腰が安定するようになって、
ボーリングで今まで出したことのないようなスコアがでました。

スポーツが得意だった友人たちが
加齢とともに運動能力を劇手に落としていく中で
あれ、なんで、そんなことができないの?
俺ってこんなに球技上手だった?」的な。

スポーツとは走ること

色々な意味があるのでしょうが、
一つには、走ることで、全てのスポーツの基本である
腰が安定して来るという意味もあると実感です。

今までに、ハーフマラソン、フルマラソンにそれぞれ6回くらい参加したことがあります。
幸い全て完走。最高はフルの3時間58分。 

フルマラソンを走っている間に
ランナーの身体や心に何が起るか。

そのことは、自分が嫌というほど痛烈に経験しています。
知っているつもりでした

「村上春樹さんが書くとこうなるんだあ〜」
そんな思いで一杯です。

もともと、英語の翻訳をしていたこと、
マラソンが趣味であること、
神戸で育ったことなどは知っていました。

エッセイもたくさん読んでいます。
でも、この作品程、
村上春樹さんが自分自身の生き方や思いについて語っている作品はありません。

村上春樹さんは様々な事象や現象を言葉に紡ぐ優れた職人だと僕は思います。
その春樹さんが自分自身のこと、自分自身の内面、自分自身の生きる戦いについて
一番多く語っています。


走ること、特に長い距離を走ることは必然的に人間を裸にします。
自分の心の剥き出しの状態を観察することを、限界まで走ることは許してくれます

そんな「走ることについて」語ることは
剥き出しの自分について語ることを人に強いるのだ。

これは、村上春樹のファンにとっては、
本当にうれしい。

本当に、近づけたような気がしてくる。
例えて言うならば、
初めて泥酔しながら、朝まで語り明かしたような。
気恥ずかしさまで感じるような。

「おいおい、
そんなことまで、正直に言っちゃって本当に大丈夫?」
そんな感じです。


物書きとしての、また、ランナーとして、大切にしていること。
村上春樹さん自身の「哲学」に学ぶことが多いです。

Pain is inevitable, Suffering is optional. とは
あるマラソンランナーが走っている間に唱え続けるマントラだそうです。
村上氏によるとこの言葉は
「マラソンという競技の
一番大事な部分を簡潔に要約している」
とのこと。

前書きにこうあります。
「ここには『哲学』とまではいかないにせよ、
ある種の経験則のようなものはいくらか含まれていると思う。
たいしたものではないかもしれないが、
それは少なくとも僕が自分の身体を実際に動かすことによって、
オプショナルとしての苦しみを通して、
きわめて個人的に学んだものである。
汎用性はあまりないかもしれない。
でも何はともあれ、それが僕という人間なのだ

マラソンについて語っていることがびんびんと伝わって来ますよね。

マラソンを走ったことのある人が読めば、
走ることから自分の得た経験が、
村上春樹氏の思考と文章を通じて、
さらに深いものに深化、進化することを感じるはずです。

内容紹介
走ることについて語りつつ、小説家としてのありよう、
創作の秘密、そして「彼自身」を初めて説き明かした画期的なメモワール

もし僕の墓碑銘なんてものがあるとしたら、
“少なくとも最後まで歩かなかった”と刻んでもらいたい―
1982年の秋、専業作家としての生活を開始したとき路上を走り始め、
以来、今にいたるまで世界各地でフル・マラソンや
トライアスロン・レースを走り続けてきた。
村上春樹が「走る小説家」として自分自身について真正面から綴る。

村上/春樹
1949年、京都生まれ、早稲田大学文学部演劇科卒業。
79年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞、
82年『羊をめぐる冒険』で野間文芸新人賞、
85年『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で谷崎潤一郎賞、
96年『ねじまき鳥クロニクル』で読売文学賞、
99年『約束された場所で underground2』で桑原武夫学芸賞を受ける。
2006年、フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、
2007年、朝日賞、坪内逍遥大賞、2009年、エルサレム賞、『1Q84』で
毎日出版文化賞を受賞


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