2017年12月10日
日本代表、北朝鮮に勝利しハリルご満悦
サッカー日本代表は9日、味の素スタジアムでEAFF E−1サッカー選手権初戦の北朝鮮戦に臨み、1−0で勝利した。
2大会ぶりの優勝を目指す日本は、北朝鮮のするどいカウンターで何度も決定機を作られてしまう苦しい展開に。しかし、GK中村航輔が好セーブを連発してゴールを死守。なんとかスコアレスのままで後半ロスタイムに突入したが、試合終了間際に井手口陽介がミドルシュートを突き刺し、劇的勝利で白星スタートを切った。
試合後、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「少し運も味方した、いい勝利だった」と試合を総括。しかし、「もっと(相手の)裏を狙うべきだった」「今日の代表は、プレースピードが遅く、横パスが多かった」と不満もあらわに。「いいプレーをした選手たちもいた」と好セーブを幾度も見せた中村と、途中出場でチャンスを演出した伊東純也を名指しで評価しつつ、「できるだけ多くの選手を見たい」「次の試合では選手を入れ替えて臨む」と中国戦でのスタメン変更を示唆した。
日本は次戦、12日に中国代表と対戦する。
中村と伊東がチームにプラスをもたらした
こんばんは。少し運も味方した、いい勝利だった。相手チームがしっかり形を整えて守備をしていたので、ハーフタイムで「真ん中でビルドアップしようとすると、相手にカウンターのチャンスを与えてしまう」と指示した。ビルドアップで引っ掛けられるのであれば、もっと(相手の)裏を狙うべきだった。あまりにも未熟な形で戦った部分もあったが、最終的には勝利することができた。結果はよかったと思う。
──勝利以外にポジティブなものはあったか?(大住良之/フリーランス)
いいプレーをした選手たちもいた。特に若いGK(中村航輔)が、いろいろな場面で解決策を見つける姿を見せてくれた。そして伊東も、ボールを持ったら仕掛けて相手を抜いていくことができていた。そういう選手がチームにプラスをもたらしたと思う。1対1で相手を抜ける選手は(このチームには)多くはない。初めて代表でプレーする選手も少なくなかった。
多くの選手が不在の中、作っている途中段階のチームだ。相手はベストメンバーだったことを考えると、ポジティブなことは少なくない。最後まで意欲的に、焦らず我慢強くプレーできたと思う。(相手は)かなり低い位置でブロックを作っていたので、プレーしにくい試合だった。
背後へのボールを要求していたが、もらう動きも足りなかった。それぞれが、自分のクラブでやっているプレーをしてしまった試合でもあった。もっと前を向いて、背後を狙わないといけないと選手には要求していた。特に最前線でのプレーが効果的ではなく、相手のディフェンスの良さを目立たせる結果となってしまった。
プレースピードが遅く、横パスが多かった
──ハーフタイムの指示が実行できなかったのは、指示がうまく伝わらなかったのか? それとも選手に実行できる能力が不足していたからか?
選手の習慣を変えるのは難しい。たとえば日本は横パスが多く、背後を狙う選手が少ない。プレースピードが足りなければ、決定機を作ることもできない。また、非常に低いところでブロックを形成する相手のわなにはまった。(相手は)低いブロックでボールを奪ったあとのパスの精度も高かった。日本代表では見られないほどの高いテクニックを持つ選手もいた。この日本代表が、さらにいいプレーができるかどうかは分からない。
プレースピードを上げようと要求するのは簡単だ。今野(泰幸)や井手口にも、もっと前へ(パスを)出していこうと要求したが、前で受ける形ができていなかった。金崎(夢生)はクラブの時と同じようにサイドに流れるプレーをしていたが、この試合ではもっと中央でプレーすることを要求していた。一度話したからといって、その習慣を変えることは難しいと思う。
つまり、われわれが準備したことや出した指示が、すべてゲームで出たわけではない。強調して出した指示もあるが、うまくいかなかったところもある。今日は結果が良かったことも見ながら、続けていかないといけない。もっといいプレーが見られると私は期待している。彼らが一緒にプレーするのは今日が初めてだ。最後の30メートルでいいパスを出せる清武(弘嗣)タイプの選手がいなかったため、システムを変えることも行ったが、そうすることで出てくる影響もある。ただ今日の代表は、プレースピードが遅く、横パスが多かった。前線の選手も、あまり背後を狙わずに引いてきて足元でもらうシーンが多かった。背後を狙う動きには連動が必要だが、それをもたせるのは簡単ではない。
──今日の試合は緊張関係にある北朝鮮との対戦だったが、その緊張感が試合に影響を及ぼすことはあったか?(海外メディア)
われわれは政治の話をするために、ここに来ているわけではない。このサッカーの世界で、友情や信頼、そして喜びといったものを伝えたいと思っている。選手たち同士も(試合後に)握手をしていたし、私も相手チームと握手をした。私はサッカーファミリーの一員であることに誇りを持っている。
少しおかしくなっているこの世の中で、われわれはこの社会の最も良い部分を見せる世界にいる。そしてそれは喜ばしいことだ。欧州でもアフリカでも日本でも、どこの地域にもライバル意識というものはある、私はスポーツ面のライバル意識をもって戦っている。そこに政治は関係ない。そして今日の試合では、激しい試合ではあったが、スポーツに反するものはなかった。その意味で、両チームとも讃えたい。われわれの政治に対する答えは、このピッチで見せることができた。
──ワールドカップ(W杯)に向けて国内組がアピールする大会だが、中村や伊東以外にも評価できる選手はいたか?
先ほど中村の名前を挙げたが、今日は評価すべきプレー内容だった。これが彼にとってのデビュー戦だった。伊東も今回が初招集だったが、彼の仕掛ける能力や抜き去る能力など、サイドで違いを見せるプレーを評価したい。初めてプレーする室屋(成)や阿部(浩之)、そして高萩(洋次郎)や谷口(彰悟)など、もともとチェックしていた選手たちが、こういった試合でもっと(実力を)出せると思う。井手口も最後に貴重なゴールを挙げてくれたが、試合中に見せていたプレーはわれわれが知っている姿よりも疲労があるように感じられた。今野はしっかりしたプレーを見せてくれたが、クラブではセンターバックとしてプレーしている。
初めて集まって一緒にプレーするチームなので、あまり厳しい目では見るべきではない。代表が初めての選手もいる。例えば室屋は5〜6回、不要なファウルをしてしまった。アピールをしたい部分もあったのだろうが、未熟さも見せてしまった。どの選手も、2試合目はよりよいプレーを見せてくれるだろう。不運なけがで離脱した選手もいたが、彼らが残っていればより質の高いサッカーが見せられたと思う。ただし、今日の試合よりもよいゲームを見せられたかどうかは確約できない。
私にとって、この大会はW杯に向けてのテストの場でもあるので、できるだけ多くの選手を見てみたい。小林(悠)はクラブでたくさんのゴールを決めた。川崎(フロンターレ)では他の選手たちと連動できたが、ここに来れば別のチームメートとプレーすることになるので「自動化」が求められる。相手チームが、このような戦術を採って守備をすることは予想できていた。選手にはダイレクトプレーをするように、ダイヤゴナル(斜め)のパスを出すように求めた。しかし不運なことに、JリーグのFWは背後でもらうことに慣れていない。必要なことだが、1回練習したからといって、簡単に変えることはできない。
内容には満足していないが、初戦で勝利を収めることができたことは素直に喜びたいと思う。日本代表として考えたとき、全プレーヤーの中のベストプレーヤーだったとは言えないし、日本に何百人もトップレベルの選手がいるわけでもない。このチームの選手たちはベストを尽くしてくれたと思うし、ライオンのように戦ってくれたと思うので、彼らを非難することはできない。次の試合では、選手を入れ替えて臨みたい。機能性の部分を高めるのは難しいが、この大会で3勝することができればと思う。ただし、今後の試合はさらに難しい。今日の相手より、さらに攻撃的にくることも予想されるからだ。
北朝鮮代表、ヨルン・アンデルセン監督
今日は運が悪かった。良い試合だったし、対日本戦の戦略を作り、よい準備もできていた。そしてよく守った。日本に対しては2回、もしかしたら1回しか決定的なチャンスを与えなかった。私たちは見ても分かるように5〜6回、日本より多くのビッグチャンスを作った。ただし最後に1点取られてしまった。こうした試合で敗れるのは辛い。6年前も試合をしたが、日本を相手に最後の最後で点を取るのは難しい。今日の選手たちを誇りに思う。戦術もうまくいったし、俊敏に切り替えることもできたし、運動量もあってパスも正確だった。ただ足りなかったのがフィニッシュだった。
──対日本戦の戦術とは具体的にはどのようなものか?(大住良之/フリーランス)
日本のことをよく研究した。日本に良い選手が何人もいることも知っている。海外でプレーする選手は不在で、Jリーグの選手だけであることも知っていたが、それでもいい選手はいた。今回はとにかく日本にスペースを与えず、プレスをきつくして攻撃的にボールを奪っていくという戦術だった。そしてマイボールにしたら、素早く前線にいくということ。このやり方で、かなり長い時間をコントロールすることができた。ただし残念ながら先制することができず、逆に日本に1点目を決められてしまった。そこから追いつくことは、時間的にも非常に厳しかった。
──北朝鮮は4チームの中で最も完成度が高いと感じられたが、国内でどれくらいトレーニングをしたのか?(宇都宮徹壱/フリーランス)
褒めてくれてありがとう。われわれは非常に厳しいトレーニングを積んでいる。代表選手に対しては、1日2回トレーニングできるという契約を結んでいる。平日は、フィジカルも走り込みも、そして戦術も徹底的にトレーニングしている。そして週末は、自分たちのクラブに戻ってプレーをする。かなりのトレーニングを選手たちは積んでいる。
──第1試合の中国と韓国の試合をどう見たか?(韓国人記者)
この試合が終わったばかりなので、まずは選手たちとじっくり話す。というのも、今日の負け方は精神的に厳しかったからだ。明日はじっくり時間をとって、選手たちをリラックスさせてから次の試合のことを考える。おそらく月曜日から韓国戦の準備を始めると思う。今日の韓国についての情報はすでに入ってきている。とにかく今日は運が悪かったので、気持ちを整理して、それから次の試合を考えたい。韓国戦はゴールを決めることが大事になるが、面白い試合になると思う。
──運が悪かったということだが、日本にはどういう問題があると考えてこの試合に臨んだのか?
今は明かせないが、選手には日本の課題と弱点はしっかり話して戦術を立てて、日本に勝つために準備をした。本当に(勝敗を分けたのは)小さなことだ。その小さなことが生かせれば得点を決められたと思う。
──激しく守って素早くカウンターというのは、日本が目指すスタイルでもある。日本のやりたいサッカーで圧倒したことは、チームにとって自信になったのでは?(田村修一/フリーランス)
負けは負けなので、選手たちはロッカールームで沈んでいた。それでも(今日の戦いを)誇りに思うし、われわれは今大会に参加しているどのチームにも勝てると思うが、負けることもある。それでもわれわれの戦術には誇りを持っている。現実問題として、こういう強い相手と戦うチャンスがわれわれにはあまりない。いつもはマレーシアやフィリピンのような相手と戦っているので、そうなるとわれわれは攻撃力に重点を置いた試合になる。そういう中で、今日は強い相手に対して激しく守って、切り替えも早くして戦えた。前半は2〜3回、後半は5〜6回のチャンスを作った。自分たちはこういう速いサッカーをすることを好む。そしてこういう強い相手に対して良い試合をしたと思う。
※質問者に関しては、掲載許諾の確認が取れた方のみ明記しています。記名のない方は確認が取れていない方ですので、拒否されている訳ではありません。
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