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2017年07月05日

「プロ入りも危うかった」鎌田大地がドイツ移籍を勝ち取るまでの成長物語

鳥栖だけがポテンシャルを評価し複数回の練習参加を打診。
 サガン鳥栖のMF鎌田大地は、1996年8月5日に愛媛県で生まれた。早くからその才能を開花させ、小学6年生の時には全国制覇を経験。そして、中学は故郷を離れてガンバ大阪ジュニアユースに進み、U-13のJリーグ選抜にも選出された。
 
 誰もがその才能に惚れ込み、将来を嘱望された鎌田は、20歳を迎えたここにきてフランクフルト移籍が濃厚となり、一気に注目度が上がっている。
 
 しかし、これまでのキャリアはすべてが順風満帆とは言えなかった。怪我の影響もありG大阪ユースには昇格できず、京都の東山高校(京都)に進学した。
 
 チーム自体は強豪高とは言えなかったが、個のポテンシャルは順調に開花し、3年時には複数のJクラブで練習参加。古巣のG大阪からも呼ばれた。しかし、結局はどこからも正式オファーを勝ち取れなかった。
 
 プロフットボーラーという夢が潰えようとしていたなか、しかし、鳥栖だけは違った。他クラブの練習参加はすべて1回のみだったが、鳥栖だけは試合見学なども含め、その後も複数回呼び寄せている。
 
「一度くらいの練習参加だけでは彼の良さは見抜けない」
 
 当時を知る関係者はそう語る。その言葉通り、鎌田は鳥栖のトレーニングで回数を重ねるごとに持ち前の攻撃センスを発揮し始める。そして、2年契約の正式オファーを提示され、2015年シーズンからの加入が決定。ギリギリでプロ入りを勝ち取った。
 
 ここまでの物語ならば、才能がある選手の若かりし頃の契約苦労話で終わるのだが、その後に鎌田を大きく成長させた出会いがあった。
 
 大きな存在だったのが、2015年から鳥栖監督に就任した森下仁志(現ザスパクサツ群馬監督)だ。鳥栖のサッカーを形作るとともに若手の育成にも力を注いだ指揮官との出会いが、鎌田の才能を一気に開花させることになる。
 
 余談ではあるが、今や鳥栖の中心選手として活躍する福田晃斗も、森下監督の徹底的な指導で大きく成長したひとりだ。
 
 森下監督の寵愛を受けた18歳の天才司令塔は、加入年度の11節・松本山雅FC戦で、Jデビュー戦でゴールという鮮烈なパフォーマンスを見せる。そのままコンスタントに出場機会を確保し、1年目は21試合で3ゴールという成績を残した。同年8月にはU-22日本代表のトレーニングキャンプにも招集された。



海外クラブとコネクションのある代理人と契約する。
 プロ1年目に首脳陣の期待以上の活躍を見せ、A契約選手としての条件を満たした鎌田。この時点ですでに、幼いころからの夢でもあった海外移籍への想いをさらに募らせていく。同時期には海外クラブとの強いコネクションを持つ代理人と契約するなど、自らの夢を叶えるべく動き出す。そして、ピッチでもさらなる飛躍を誓うのだ。
 
 残念ながら恩師の森下監督はチームを去ってしまったが、その後任となったマッシモ・フィッカデンティ監督の下、プロ2年目の2016年シーズンもレギュラーに君臨。28試合で7ゴールとフィニッシャーとしての才能も開花させた。

 とはいえ、同年には再び挫折も味わっている。U-23代表の一員として5月にトゥーロン国際大会に参加したが結果を残せず、リオデジャネイロ五輪の最終メンバーに食い込めなかったのだ。チーム中では下の世代だったとはいえ、悔しい想いをした。
 
 それでも飛躍的な成長を遂げてチームの主力となった鎌田に対して鳥栖は、オフに新たに2年契約を提示。本人は海外クラブからの話を3月まで待ったが正式オファーは届かず、結局は残留を決断している。
 
 そして、3年目も引き続き鳥栖のトップ下として活躍。そうした中で前述した代理人の働きもあって、ブンデスリーガのフランクフルトから正式オファーが届くに至った。契約が残り1年半のため、違約金と育成費を合わせて計2億円が提示されているという。
 
 現時点で公式リリースは出ていないが、6月21日の松江シティ戦(天皇杯2回戦)を前に竹原社長が「近く正式に発表して会見する」と認めたことで、もはや今夏の移籍は決定的となった。
 
 かねてから海外移籍への想いを口にしていた鎌田は、今オフにドイツやスペインに渡って試合を視察し、自身のモチベーションを高めていた。今年5月には一般女性と結婚。フランクフルトには長谷部誠もいるだけに、生活面の心配も少ない。
 
 G大阪ユースに昇格できず、Jクラブ入りも危うく、リオ五輪行きも逃した鎌田は、それでも不屈の精神、そして何よりも技術と閃きで自らの道を切り開いてきた。
 
 欧州初挑戦でフランクフルトの一員としていかなるプレーを見せてくれるのか、楽しみでならない。
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