2021年06月04日
外務省への報告書解説と運航再開状況報告
ニュース外務省への報告書解説と運航再開状況報告、オンライン会議第7回業界2021/06/01新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたクルーズ産業について意見交換するため、スマートクルーズアカデミー(主宰=大阪大学・赤井伸郎教授)は5月28日、第7回目となるオンライン会議「クルーズ振興のための情報共有サロン型ONLINEコンファレンス」を開催した。
第一部は先だって中西外務大臣政務官へ提出した「観光旅客船内における感染症の拡大の予防及び感染症が拡大した際の国際的な対応の在り方に関する調査・研究業務」最終報告書(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100184032.pdf)の内容について、日本クルーズ学会事務局長でもある池田良穂大阪府立大学名誉教授が説明。続いて国際法の視点からの補足説明が、河野真理子早稲田大学法学学術院教授からなされた。
意見交換をはさんで第二部は世界のクルーズ再開状況についてのレポートが、以下の船社の代表者からなされた。
@ヨーロッパの動き
・コスタクルーズ
・MSCクルーズ
・プリンセス・クルーズなどカーニバル・コーポレーション&pcl
・ノルウェージャンクルーズライン
Aアジアの動き
・ゲンティンクルーズライン
・ロイヤルカリビアンインターナショナル
Bその他の動き
・シルバーシー・クルーズ
加えて4月に発足した日本国際クルーズ協議会(JICC)についての説明もなされた。最後にCDC(米国疾病予防管理センター)から出た試験航海についての指示に関する情報が赤井伸郎教授から提供された。
登壇した池田良穂名誉教授は、最終報告書についてプロジェクトの概要や有識者メンバーについて説明。当初は有識者間でも大きな認識の違いがあったとし、その理由として専門分野の違い、船舶・クルーズに関する知識の違い、各事案に対する認識の違い、海外からの情報による認識の違いなどを挙げた。そのうえで有識者会議の中で議論し、共通の認識に到達したと報告した。
その後、報告書の概要について説明。その目的として「ダイヤモンド・プリンセス」「コスタ・アトランチカ」の2隻のクルーズ客船の船内における新型コロナ集団感染を体験したことを挙げ、結果として水際で感染拡大をおさえ、国内・国外への感染拡大を防ぐことに成功したことで、その教訓や国際法等の議論を整理する必要があったとした。
この議論後の結果と提言として、以下の項目を挙げた。
@感染症拡大防止という国際共通利益のために、寄港国の管轄権が発揮されてしかるべき
A日本には寄港国としてより効率的に寄港国処理がとれる法的整備が望まれる
B便宜置籍国を含む旗国は、より信頼度の高い旗国としての役割が期待される
Cあるべきパンデミック国際法の中に、寄港国管轄権や国際協力を位置づけること
Dアジア域内で「信頼性のある港湾ネットワーク」を構築すること
E船内構造に係る情報、乗員訓練、乗客の心構えが現場対応に必要とされること
F国際関係機関(WHO、IMO、ILO等)における情報共有、議論、相互連携を進めること
Bに関して、昨年船内で感染症が発生したホーランド・アメリカ・ラインでは、オランダが旗国として、手を尽くしたことを事例として挙げた。
Cに関して、クルーズ船「ウエステルダム」が受け入れ港が見つからず3週間漂流したことを挙げ、「これは国際法に反している。基本的には受け入れなくてはいけない。WHOからむやみに寄港拒否をすることはできないとされている」と説明した。
同プロジェクトを終えて今後必要なこととしては、クルーズの再開はもとより、クルーズに関する風評被害の解消、寄港地の住民理解、乗客の心構え、アジア域内の寄港地間の連携の促進を挙げた。
特に風評被害に関しては、例えば船内の換気に関しては病院レベルであり、2隻のクルーズ船における感染症事例は水際対策の成功事例であること、またクルーズ船は病院船としても活用できることなどを挙げ、「科学的根拠に基づいた情報の発信が必要」と語った。
続いて国際法が専門の河野真理子早稲田大学法学学術院教授が登壇、説明の前に昨年「飛鳥U」のトライアルクルーズに乗船し、その高い感染症対策に驚いたと感想を述べた。
国際法から見たクルーズ船の特色として、乗客、乗員、船舶所有者、運航者が通常の商業船舶以上に多国籍であるゆえ、「旗国主義の限界がある」と述べた。旗国だけでなく寄港国に一定の権限を認める制度の増加が必要とした。
またクルーズ船の報道においては乗客にスポットが当たりがちだが、船員の権利への配慮も必要とした。具体的にはこのコロナ禍の影響として船員の交代問題が起きた。長期間交代できずに船舶に留まる船員が多かったという問題である。これに関しては、IMO、ILOだけでなく国連の事務総長が声明を出し、船員は不可欠な労働者(キーワーカーズ)であり配慮が必要としたことから、この問題はだいぶ解決しつつあると解説した。加えて2021年に入ってから、船員への優先的なワクチン接種を実現すべきという議論もなされているという。
現在、クルーズ船においては2005年にSARSを受けて作られた制定の国際保健規制(IHS)下で運航されているとし、ここでは船舶の寄港受入の拒否はできないとなっている。にもかかわらず、今回寄港を拒否する事例がおきた ことについては考えていかなければならないとした。
ただしこの規制下でも寄港国はどの港に入るかの指定をすることは可能で、寄港国は指定できる港、すなわち感染症に対応できる港を作っておくべきだと述べた。寄港地に関しては近隣の海外の港でも構わず、そのために国際的な協力体制を作っていくことが重要とした。
感染症が蔓延した後の船舶については国際間の協力の確保が必要で、乗客乗員の母国への送還など、人権に配慮した対応の必要性を述べ、国際的な規制が必要ではないかとの提案を行った。
その後、各船会社がエリアごとに自社の運航再開情報ならびに感染症対策を説明。MSCクルーズ、プリンセス・クルーズはすでに非接触決済など乗客のサービスのために身に着けられるデバイスを運用しているが、これは万一感染症が発生した場合の行動履歴の把握にもつながるという説明がされた。
欧州においてはコスタクルーズ、MSCクルーズなどが運航再開をしており、ギリシャや英国など今後続々と就航予定がある。アジアにおいてもゲンティンクルーズライン、ロイヤル・カリビアン・インターナショナルが台湾やシンガポールで運航再開をしており、ゲンティンクルーズラインは7月末より香港発着の無寄港クルーズも実施する。多くの船会社が乗客の国籍を限定し、無寄港もしくは国内クルーズを実施する。
シルバーシークルーズに関しては、ギリシャやガラパゴスで運航再開予定があるほか、オーストラリアでも7月末から運航再開予定がある。このオーストラリアクルーズに関してはワクチン接種の義務がない。各社ワクチン接種に関しては、乗員の多くがすでに接種しているが、その国の状況に合わせた条件にしていると語った。
続いてシルバーシークルーズの糸川雄介日本・韓国支社長が、自身が副会長を務める日本国際クルーズ協議会(JICC)について説明。その設立の目的として国際クルーズ船の日本発着・寄港を活性化し、日本におけるクルーズの振興、地方創生に寄与することとした。そのうえで国際クルーズの一日も早い再開のため、感染予防対策の徹底と安心・安全なクルーズを周知することに務めるとした。目標として2023年にクルーズ人口をコロナ前の19年同等まで戻したいと語った。
最後に米国CDC(疾病予防センター)から出た試験航海についての指示に関する情報提供が赤井伸郎教授からなされた。試験航海の手順やボランティアの乗客の条件、試験航海の内容などについて解説した。
第一部は先だって中西外務大臣政務官へ提出した「観光旅客船内における感染症の拡大の予防及び感染症が拡大した際の国際的な対応の在り方に関する調査・研究業務」最終報告書(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100184032.pdf)の内容について、日本クルーズ学会事務局長でもある池田良穂大阪府立大学名誉教授が説明。続いて国際法の視点からの補足説明が、河野真理子早稲田大学法学学術院教授からなされた。
意見交換をはさんで第二部は世界のクルーズ再開状況についてのレポートが、以下の船社の代表者からなされた。
@ヨーロッパの動き
・コスタクルーズ
・MSCクルーズ
・プリンセス・クルーズなどカーニバル・コーポレーション&pcl
・ノルウェージャンクルーズライン
Aアジアの動き
・ゲンティンクルーズライン
・ロイヤルカリビアンインターナショナル
Bその他の動き
・シルバーシー・クルーズ
加えて4月に発足した日本国際クルーズ協議会(JICC)についての説明もなされた。最後にCDC(米国疾病予防管理センター)から出た試験航海についての指示に関する情報が赤井伸郎教授から提供された。
登壇した池田良穂名誉教授は、最終報告書についてプロジェクトの概要や有識者メンバーについて説明。当初は有識者間でも大きな認識の違いがあったとし、その理由として専門分野の違い、船舶・クルーズに関する知識の違い、各事案に対する認識の違い、海外からの情報による認識の違いなどを挙げた。そのうえで有識者会議の中で議論し、共通の認識に到達したと報告した。
その後、報告書の概要について説明。その目的として「ダイヤモンド・プリンセス」「コスタ・アトランチカ」の2隻のクルーズ客船の船内における新型コロナ集団感染を体験したことを挙げ、結果として水際で感染拡大をおさえ、国内・国外への感染拡大を防ぐことに成功したことで、その教訓や国際法等の議論を整理する必要があったとした。
この議論後の結果と提言として、以下の項目を挙げた。
@感染症拡大防止という国際共通利益のために、寄港国の管轄権が発揮されてしかるべき
A日本には寄港国としてより効率的に寄港国処理がとれる法的整備が望まれる
B便宜置籍国を含む旗国は、より信頼度の高い旗国としての役割が期待される
Cあるべきパンデミック国際法の中に、寄港国管轄権や国際協力を位置づけること
Dアジア域内で「信頼性のある港湾ネットワーク」を構築すること
E船内構造に係る情報、乗員訓練、乗客の心構えが現場対応に必要とされること
F国際関係機関(WHO、IMO、ILO等)における情報共有、議論、相互連携を進めること
Bに関して、昨年船内で感染症が発生したホーランド・アメリカ・ラインでは、オランダが旗国として、手を尽くしたことを事例として挙げた。
Cに関して、クルーズ船「ウエステルダム」が受け入れ港が見つからず3週間漂流したことを挙げ、「これは国際法に反している。基本的には受け入れなくてはいけない。WHOからむやみに寄港拒否をすることはできないとされている」と説明した。
同プロジェクトを終えて今後必要なこととしては、クルーズの再開はもとより、クルーズに関する風評被害の解消、寄港地の住民理解、乗客の心構え、アジア域内の寄港地間の連携の促進を挙げた。
特に風評被害に関しては、例えば船内の換気に関しては病院レベルであり、2隻のクルーズ船における感染症事例は水際対策の成功事例であること、またクルーズ船は病院船としても活用できることなどを挙げ、「科学的根拠に基づいた情報の発信が必要」と語った。
続いて国際法が専門の河野真理子早稲田大学法学学術院教授が登壇、説明の前に昨年「飛鳥U」のトライアルクルーズに乗船し、その高い感染症対策に驚いたと感想を述べた。
国際法から見たクルーズ船の特色として、乗客、乗員、船舶所有者、運航者が通常の商業船舶以上に多国籍であるゆえ、「旗国主義の限界がある」と述べた。旗国だけでなく寄港国に一定の権限を認める制度の増加が必要とした。
またクルーズ船の報道においては乗客にスポットが当たりがちだが、船員の権利への配慮も必要とした。具体的にはこのコロナ禍の影響として船員の交代問題が起きた。長期間交代できずに船舶に留まる船員が多かったという問題である。これに関しては、IMO、ILOだけでなく国連の事務総長が声明を出し、船員は不可欠な労働者(キーワーカーズ)であり配慮が必要としたことから、この問題はだいぶ解決しつつあると解説した。加えて2021年に入ってから、船員への優先的なワクチン接種を実現すべきという議論もなされているという。
現在、クルーズ船においては2005年にSARSを受けて作られた制定の国際保健規制(IHS)下で運航されているとし、ここでは船舶の寄港受入の拒否はできないとなっている。にもかかわらず、今回寄港を拒否する事例がおきた ことについては考えていかなければならないとした。
ただしこの規制下でも寄港国はどの港に入るかの指定をすることは可能で、寄港国は指定できる港、すなわち感染症に対応できる港を作っておくべきだと述べた。寄港地に関しては近隣の海外の港でも構わず、そのために国際的な協力体制を作っていくことが重要とした。
感染症が蔓延した後の船舶については国際間の協力の確保が必要で、乗客乗員の母国への送還など、人権に配慮した対応の必要性を述べ、国際的な規制が必要ではないかとの提案を行った。
その後、各船会社がエリアごとに自社の運航再開情報ならびに感染症対策を説明。MSCクルーズ、プリンセス・クルーズはすでに非接触決済など乗客のサービスのために身に着けられるデバイスを運用しているが、これは万一感染症が発生した場合の行動履歴の把握にもつながるという説明がされた。
欧州においてはコスタクルーズ、MSCクルーズなどが運航再開をしており、ギリシャや英国など今後続々と就航予定がある。アジアにおいてもゲンティンクルーズライン、ロイヤル・カリビアン・インターナショナルが台湾やシンガポールで運航再開をしており、ゲンティンクルーズラインは7月末より香港発着の無寄港クルーズも実施する。多くの船会社が乗客の国籍を限定し、無寄港もしくは国内クルーズを実施する。
シルバーシークルーズに関しては、ギリシャやガラパゴスで運航再開予定があるほか、オーストラリアでも7月末から運航再開予定がある。このオーストラリアクルーズに関してはワクチン接種の義務がない。各社ワクチン接種に関しては、乗員の多くがすでに接種しているが、その国の状況に合わせた条件にしていると語った。
続いてシルバーシークルーズの糸川雄介日本・韓国支社長が、自身が副会長を務める日本国際クルーズ協議会(JICC)について説明。その設立の目的として国際クルーズ船の日本発着・寄港を活性化し、日本におけるクルーズの振興、地方創生に寄与することとした。そのうえで国際クルーズの一日も早い再開のため、感染予防対策の徹底と安心・安全なクルーズを周知することに務めるとした。目標として2023年にクルーズ人口をコロナ前の19年同等まで戻したいと語った。
最後に米国CDC(疾病予防センター)から出た試験航海についての指示に関する情報提供が赤井伸郎教授からなされた。試験航海の手順やボランティアの乗客の条件、試験航海の内容などについて解説した。
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