2013年01月15日
いざ、出陣!
静かだった。
昨日までの風が嘘のように、目覚めた朝は静寂に包まれていた。
早朝3時半、口を半開く妻の愛しい寝顔に目もくれず、しかし物音に細心の注意を払いながら、海の荒武者は漁の準備にとりかかる。
装備は昨日何度も点検した、ぬかりはない。
これならいかな大物が相手でも万全である。
必要具を補充したベストを荒くつかみながら、もう一方では獲物を収めるクーラーを高くかかげ、家から目前の駐車場へ小走り、そしてまた家の中へ。
頭には視線が見え隠れするちょっと深めのとっつあん帽、今日は暑くなりそうだ。
磯長靴や防寒着は既に車の中、エサは“かめや”に予約済み。
よし、ちょっと一息つこう。
我が家の漁具置きスペースにぼんやり目をやりながら“これから”を想像する・・・
荒々しい波の音、朝もやのかかる薄暗い磯、荒武者の洞窟探検家を思わせるヘッドライトが周囲を照らせば、徐々に、徐々にその漁場の全容が明らかになってきて・・・
―期待感に震えるこの瞬間がたまらないのだ―
そして思い浮かぶは釣りまくる姿ばかり。
足裏サイズ(30cm弱)はキープ、小物はリリースしようと心に誓う。
さて漁場の観察だ、潮は流れているか、海の色は濁っていないか、風を味方にできるか。
釣り座を決めたら実釣の準備。
海水を汲みマキエをこね、竿に糸を通し、ウキやハリをセットし、そして海へ向かい大きく竿をふって・・・。
よし、シミュレーションに問題はない。
最後に必釣の祈りこもった竿ケースを肩にかついで玄関へ・・・。
居間に飾ったチヌ(黒鯛)の魚拓を仰ぎ見つつ、ふと懐具合を確認する。
昨日“かめや”で買ったのは新しいウキ1700円、補充した1.25号のハリス1500円、技術修練の一助となる書籍“山陰の釣り”1000円・・・で残金4000円。
渡船代には十分、昼飯ぬきは仕方ない。
ちらと妻に目をやる。
大丈夫、いまだ夢の中、そーっとそーっと・・・
「ガサッ!」室内干しの洗濯物に竿ケースを当ててしまった。
そして妻は目を覚ます・・・。
「・・・ん、その格好どうしたん・・・?あれ、釣り?・・・(怒)釣り!?今日、スタッドレスタイヤ買いに行くって言ったじゃん!電球も取り替えるって約束よ!“笑の○学”見に行くのはどうなったん?釣りに行っちゃ駄目って言ったよね?何で?何で?何でー!!!(怒)」
パニックである。
いや、落ち着け、この暴れるお魚も落ち着けば何とかさばけるはずだ。
・・・いや何、昼には帰還する予定なんやけどね、ちゅうか“笑の○学”よりあんたの怒った顔の方がよっぽど、しかし何だね、今日は天気いいのかね、そういやお義父さんの誕生日そろそろじゃない、あっ、大山に初雪が・・・
「・・・うん、そういやお父さん再来週が誕生日やった・・・」。
よし喰い付いた。
バレ(逃がさ)ないように細心の注意を払いながら・・・
・・・来週にでも実家お邪魔しようか?プレゼント用意しとこうかね・・・
「うん、わかった・・・そうやね、うん・・・行ってらっひゃい・・・むにゃ」
最大の難関を華麗にさばいたのは、胸に“九州爆釣会”の文字を刻む海の荒武者。
大物の予感に胸ふくらませ・・・いざ、出陣!
昨日までの風が嘘のように、目覚めた朝は静寂に包まれていた。
早朝3時半、口を半開く妻の愛しい寝顔に目もくれず、しかし物音に細心の注意を払いながら、海の荒武者は漁の準備にとりかかる。
装備は昨日何度も点検した、ぬかりはない。
これならいかな大物が相手でも万全である。
必要具を補充したベストを荒くつかみながら、もう一方では獲物を収めるクーラーを高くかかげ、家から目前の駐車場へ小走り、そしてまた家の中へ。
頭には視線が見え隠れするちょっと深めのとっつあん帽、今日は暑くなりそうだ。
磯長靴や防寒着は既に車の中、エサは“かめや”に予約済み。
よし、ちょっと一息つこう。
我が家の漁具置きスペースにぼんやり目をやりながら“これから”を想像する・・・
荒々しい波の音、朝もやのかかる薄暗い磯、荒武者の洞窟探検家を思わせるヘッドライトが周囲を照らせば、徐々に、徐々にその漁場の全容が明らかになってきて・・・
―期待感に震えるこの瞬間がたまらないのだ―
そして思い浮かぶは釣りまくる姿ばかり。
足裏サイズ(30cm弱)はキープ、小物はリリースしようと心に誓う。
さて漁場の観察だ、潮は流れているか、海の色は濁っていないか、風を味方にできるか。
釣り座を決めたら実釣の準備。
海水を汲みマキエをこね、竿に糸を通し、ウキやハリをセットし、そして海へ向かい大きく竿をふって・・・。
よし、シミュレーションに問題はない。
最後に必釣の祈りこもった竿ケースを肩にかついで玄関へ・・・。
居間に飾ったチヌ(黒鯛)の魚拓を仰ぎ見つつ、ふと懐具合を確認する。
昨日“かめや”で買ったのは新しいウキ1700円、補充した1.25号のハリス1500円、技術修練の一助となる書籍“山陰の釣り”1000円・・・で残金4000円。
渡船代には十分、昼飯ぬきは仕方ない。
ちらと妻に目をやる。
大丈夫、いまだ夢の中、そーっとそーっと・・・
「ガサッ!」室内干しの洗濯物に竿ケースを当ててしまった。
そして妻は目を覚ます・・・。
「・・・ん、その格好どうしたん・・・?あれ、釣り?・・・(怒)釣り!?今日、スタッドレスタイヤ買いに行くって言ったじゃん!電球も取り替えるって約束よ!“笑の○学”見に行くのはどうなったん?釣りに行っちゃ駄目って言ったよね?何で?何で?何でー!!!(怒)」
パニックである。
いや、落ち着け、この暴れるお魚も落ち着けば何とかさばけるはずだ。
・・・いや何、昼には帰還する予定なんやけどね、ちゅうか“笑の○学”よりあんたの怒った顔の方がよっぽど、しかし何だね、今日は天気いいのかね、そういやお義父さんの誕生日そろそろじゃない、あっ、大山に初雪が・・・
「・・・うん、そういやお父さん再来週が誕生日やった・・・」。
よし喰い付いた。
バレ(逃がさ)ないように細心の注意を払いながら・・・
・・・来週にでも実家お邪魔しようか?プレゼント用意しとこうかね・・・
「うん、わかった・・・そうやね、うん・・・行ってらっひゃい・・・むにゃ」
最大の難関を華麗にさばいたのは、胸に“九州爆釣会”の文字を刻む海の荒武者。
大物の予感に胸ふくらませ・・・いざ、出陣!
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