はなしあいて

もしも
不倫でないなら
あなたのことなど
見向きもしなかったでしょう

私に家庭があり
いろんなことに拘束され
自由が制限されているからこそ
あなたとの出会いが
運命のように思えただけなんです

きっとあなたのことなど
本当は好きではなかった
好きだと勘違いしていただけなんです
だって
道ならぬ恋だから
束の間の自由な
誰かの私ではない自分で
いられる相手なんだから
好きより先に
目の前にあった「私自身」を
追いかけたっだけです

不倫でないなら
きっとあなたのことなど
見向きもしなかったでしょう
あなたでなくても
その時に
「私」でいられる相手なら
簡単に恋に落ちた　と
勘違いすることでしょう

日常が
非日常になり
私は
ひとりの「私自身」になれるなんて
こんなに楽しいことはありませんから

夢中になってしまうのも
仕方がないのです
日頃
女性としての自分は
誰かの母
誰かの妻
どこかの嫁
誰かのどこかの
というまるで付属品のような存在

結婚で両親と同じ姓が消えて
両親からもらった下の名前も
誰かのママ
だれかの奥さん
どこかの嫁さん
と打って変わり
誰も下の名前を呼ぶ人も
下手したらいなくなっているんですよ

それが
下の名前で呼んでくれる誰かがいたら
「私自身」になれるなら
心が弾むこともあります

そんなものは長くは続かないかもしれませんが
その相手といる時は
家族のことを優先して
自分を後回しにしている「私」でなくて
「私」でいいんです
下の名前の「私」でいられるんです
少なくとも心が喜んでいるんです
いつか通り過ぎた時
ふと
あの人のこと　本当に好きだったかな
と思い起こし
好きとは違うかな
ま、いっか
とか思っているかもしれません

そもそも「不倫」という
言葉の魔法にかかっているのでしょう

重くなっていくだけの
本当は好きとかじゃない恋は
重くなりかけのときに
終わりにするほうが自分のためです
相手の嫌なところが
ひとつふたつ増えたら
いっきに魔法が解けてしまう
それが「不倫の恋」だと思います

ホンモノの恋の相手に出会えたとしたら
いつまでも「不倫」のままでなく
行動に移すことになると思います

不倫だからこそ
キレイ事を並べて
「私自身」でいる時間を惜しみながら
過ごすんです
相手を好きだから　よりも
私が私でいられる貴重な時間として
夢中になってしまうんです