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日曜東京〜第36回ジャパンC(GT)

注目のキタサンブラック(父ブラックタイド)は最内枠に入り、例によってこれが先行する。ラストインパクト、リアルスティールら層の厚いディープインパクト産駒勢がスローを嫌って先行することも考えられなくはないが、外国馬も今年はフランスとドイツのみということで、キタサンブラックを突いて先行するとは思えない。今年はペースが上がる気配がない。

とすると、キレ味勝負よりは底力勝負に徹したいゴールドアクター(父スクリーンヒーロー)が早めに動いてキタサンをけん制し、ラストインパクト、リアルスティールあたりが徐々に進出・・・という流れはなんとなくイメージできる。平均的な流れで、特に有力どころはどの馬にも均等にチャンスが分配される流れになりそう。

とすると、仕掛けのタイミングは非常に微妙だし、戦法によって結果が異なる可能性もある、まるでハンデ戦のような難しくも楽しいJCが展開される予感。こういう大激戦のレースになると、賞金が高い日本のGTでは、直線でバラけることはほとんどなく、インコースを通るのが絶対的に優位とされる東京コースは一番大事なところでゴチャつくことが多い。

近年ルール改正の影響はジョッキーの騎乗の粗さにも現れているが、そういうことがないことを願いつつ最終決断を下すと、今年はヨーロッパの馬にチャンスが久々にめぐってくる気がする。今年のJCは、フランスのイラプト(父ドゥバウィー)にした。

北米の馬たちは、スピード競馬のJCを好んで連続して来日することも珍しくなかったが、プライド高いヨーロッパの馬たちは、前年大敗したりするとたいていは翌年の来日を見送る。フランス馬イラプトは、いちおう昨年は完敗という評価で間違いないと思うが、それでも再び来日してきた。前年の完敗を受けてそれでもなお来日してきたのは、記憶が正しければ、同じくフランスのエルナンド以来ではないだろうか?

ひと昔前のヨーロッパといえば、フランケルに代表される「ガリレオ×デインヒル」の配合が、さすがにちょっとやりすぎだろうというくらいのブームになっていた。しかしいくら優秀な産駒を送るからといって、そんな偏差が大きい配合が長く続くはずもなく、替わって近年ヨーロッパで最も熱い血であるとされるようになったのが、イラプトの父ドゥバウィーである。

ドゥバウィーがヨーロッパで人気を博すようになった背景には、特にフランスが積極的な姿勢を見せる「スピード競馬への転換」が挙げられる。シーキングザゴールド(シーキングザパールらの父)を経由したミスタープロスペクターの血は完全なスピード血統で、少し前のヨーロッパの競馬のイメージを一新している。フランケル登場による影響も大きかった。

だからもう何年も外国馬が勝てなくなっているJCでも、過去のようにコテコテのヨーロッパ血統ではないだけに、外国馬にとって勝算希薄とされるJCでまったくのノーチャンスではなくなりつつあるのだ。少なくとも陣営は、昨年の競馬を完敗とはまったく認識していないのである。

前走カナダのG1をまくるような競馬で快勝したのは、確かに相手は微妙ではあったものの、あれはもうまったく力が違うという証拠。パスキエ騎手とは不動のコンビ(訂正:今回はブドー騎手に乗り替わり。パスキエと不動のコンビかと思ったが、ブドーとコンビなら、まあ響きは似ている)で、昨年は少しゴチャついたところに入ってしまった不利も多少響いてコンマ3秒差6着、巻き返しは十分期待できる。

正直、日本馬が外国馬を破るのはうれしい。ただ、外国馬が強くないと、JCなんてちっともおもしろくないというのが本音である。そろそろ、もういい加減に目を覚ましてほしい。そして、それがプライド高きフランス馬であるなら、日本の競馬を愛するファンとしても大歓迎である。

相手は迷ったが、ルージュバック(父マンハッタンカフェ)にした。スローの流れになると、ルージュバックのキレがモノを言う。そういう展開になる可能性が高いと思う。府中の1800m戦で強いというのは、今の底力をそんなに必要としない府中2400mには、厳しい流れになりやすい2000mよりもむしろ適性が高いとも思える。序盤から急がされないレースこそ、ルージュバックにとって適性が高いレースだと思う。

ルージュバックも戸崎騎手とは不動のコンビ、良いときも悪いときもすべて知り尽くした人馬のコンビである。そういうコンビだからこそ、この難しいレースを自分たちにとって優位な形に持っていくことができる。昔オルフェーヴルの池添騎手がダービーのときに語ったことばを思いだす。乗り替わりの馬には絶対に負けたくない・・・戸崎騎手にもその気持ちを貫いてほしい。

当然ここを狙っていたゴールドアクターは自らキタサンをつぶしにいくわけだから、ゴールドアクターとキタサンブラックはサバイバルの形になるはず。キタサンブラックの強さは認めるものの、私はゴールドアクターのほうが上だと思う。早くにJC参戦を決めた皐月賞馬ディーマジェスティ(父ディープインパクト)はいかにも府中向き、あとは力関係だろう。

福永騎手からルメールに乗り替わってきた菊花賞2着のレインボーライン(父ステイゴールド)と、福永騎手が選んだ形になったシュヴァルグラン(父ハーツクライ)は同格と思えるが、やっぱり枠の差はいかんともしがたく、レインボーラインを上に見たい。

ムーアが乗ると怖いリアルスティール(父ディープインパクト)もいちおう押さえるが、前が厳しくなったときは、大穴でヒットザターゲット(父キングカメハメハ)の大駆けの可能性も、完全には無視できないと思う。

このところアクシデントが多いだけに、とにかくクリーンで少しでも多くのファンが納得できる内容あるジャパンカップに期待したい。

◎ イラプト
〇 ルージュバック
▲ ゴールドアクター
△ レインボーライン、シュヴァルグラン、ディーマジェスティ、キタサンブラック、ヒットザターゲット

日曜京都〜第33回マイルCS(GT)


今年は大混戦といわれるマイルチャンピオンシップ、フルゲート18頭でも、何が勝っても驚けない組み合わせになった。メンバー構成を見ても、ただでさえ難解なレースなのに、週末の天候が崩れる可能性もある京都地方、ますます混迷を極めるのかもしれない。

そういう難しいレースこそ、基本に忠実にというスタンスで臨みたい。まずは京都外回りの芝のマイル戦という、かつては「最も荒れない」とされたコースで行われるGTであること。これがひとつのポイントにはなる。

よく言われることだが、京都コースは直線が平坦に近いコースであるにもかかわらず、3コーナーの大きな登って降っての坂があるため、前半に行きすぎてしまうとみな止まってしまうリスクがあるコース。当然前半は平均ペースで流れることが多い。

条件戦では、マイル戦のみならず、内回りのスプリント戦でも「なぜこんなにスローになった?」と首をひねりたくなるようなレースも時折目にする。まずは、このコースはそんなにペースが上がりませんよ、というのが定説である。

しかし今年はなんといってもミッキーアイル(父ディープインパクト)がいる。ここ3走は、松山騎手がうまくなだめながらの競馬で安定した成績を残しているが、今回は久々に浜中騎手へと手が戻った。凡走した香港スプリント以来だから、約1年ぶりのコンビ復活。

ミッキーアイルがどのくらいのペースで行くかにもよるが、松山騎手なら割と行かせてなだめるのに対し、浜中騎手は腕力で抑えこんでしまいたいタイプ。実は、マイル戦での折り合いは非常に心配で、ペースも読みにくいところがある。

ルメールで世界のモーリスを破ったネオリアリズム(父ネオユニヴァース)は、今回は"ムーア様"への乗り替わりで馬場も渋るとなると、妙に吊り上げられた人気に推される可能性が高い。行きたがるところもあるだけに、ミッキーアイルにつられて・・・の可能性もある。

昨年はモーリスがあまりにも強すぎたため、好走の4着ながちっとも惜しい感じがしなかったサトノアラジン(父ディープインパクト)が人気するくらいなら、いくら絶好調のルメールでも、同馬やネオリアリズム、ミッキーアイルらの間に割って入る、さらにはまとめて負かす組を探したい。

中心は大ベテランの8歳馬スノードラゴン(父アドマイヤコジーン)にした。スノードラゴンといえば、新潟で行われたスプリンターズSを一昨年勝ち、春の高松宮記念準優勝も加味されて、この年最優秀短距離馬に選出された。

しかし長欠を挟んだ今年は、前回のスプリンターズSではおそらく「8歳秋」という年齢のイメージもあってまったくの人気薄で5着。実はこのときも私はスノードラゴンに本命を打っていた。その根拠は、実はいろいろあった。

近年ではやや異色のイメージがあるがベストスプリンーターの1頭であることは間違いない。ここまで実に43走も無事に走り抜いてきたわけだが、このうち芝のマイルはデビューからの3戦のみ(すべて2着)。ダートのマイル戦1走(7着)を含め、勝ち鞍はない。

年齢のイメージとスプリンターの資質の高さから、おそらく一気の2F延長で、力は認めつつ馬券では嫌われることになる。少しズブさが見えたから・・・という理由でマイルのチャンピオンレースを勝てるほど甘くはない。

母の父はサンデーサイレンス産駒第1号のダービー馬となったタヤスツヨシ。タヤスツヨシ自身はどちらかといえばスピードタイプを産駒に送ったこともあって、スノードラゴンの短距離適性が高いのはわかる。ただ、ポイントはズブさとかタヤスツヨシとか、そういうことではない気がする。

スノードラゴンの父アドマイヤコジーン(その父コジーン)は、早熟とされたとおり2歳の王者に輝き、その後は大けがもあって長く低迷した馬。しかし、実は本格化を示したのが、今は亡き後藤浩輝騎手の涙の安田記念以降のことだったように思う。

母方は4代父ミルリーフ、今はやりのアルゼンチン血脈を継ぐ同エルセンタウロ(日本ではノーザンポラリスの母父シポールを輩出、しか私は知らない)、5代父に日本のスピード血統の祖となったバックパサーの影響がそれぞれスノードラゴンに現れている印象がある。

父母両系統から、古馬になっても衰えないどころか、しぶとく成長する血が集結しているのが、実はこのスノードラゴンなのである。事実、スノードラゴンは未勝利を勝ちあがるまでに4戦、1000万を勝ちあがるのに都合7戦、準オープンを勝ちあがるまでに計6戦という、実はそのキャリアの半数近くを条件馬として過ごした異色のGTホースなのだ。

そのスノードラゴンが、キャリアを重ねながら時計の短針が進むように少しずつ進化を続け、ついにGTタイトルを手にした。そういうシブくも優れた成長力は、少しくらい年齢を重ね、少しくらい距離が延びてもビクともしないと私は考えている。

前走も、人気薄の追い込み馬だから「嵌った」印象があるかもしれないが、いや、あれはむしろ脚を余していたように感じた。今回も意外とペースは上がらないかもしれないが、再び充実期に入りそうなスノードラゴンとベストパートナーの大野騎手に託す価値は十分あると考える。

相手は手広く買うが、お兄さんのマルカシェンクとのコンビが思いだされるガリバルディ(父ディープインパクト)と福永騎手をまず挙げたい。単穴は、血統的に道悪はむしろ歓迎のマジックタイム(父ハーツクライ)、あとは当然ネオリアリズム、そしてディサイファとフィエロ、サトノルパンのディープ牡馬3頭、もちろんサトノアラジンも押さえるが、大穴ではいつ激走があってももうすっかり慣れっこのクラレントを挙げておきたい。

◎ スノードラゴン
〇 ガリバルディ
▲ マジックタイム
△ ネオリアリズム、ディサイファ、フィエロ、サトノルパン、クラレント

日曜京都〜第54回エリザベス女王杯(GT)/日曜福島〜第52回農林水産省賞典福島記念(GV)

土日で5重賞というのもなかなかやっつけな感じがするが、競馬ファンにとっては楽しくて仕方がない週末であることは間違いない。個人的にも、過去に1度しか的中したことがないエリザベス女王杯と、はじめて買った1回だけしか的中がない福島記念が行われる今週は非常に楽しみ。

問題は天気、おそらく京都は好天に恵まれ良馬場で行われることになると思うが、福島は果たしてどうだろう?関東地方の一部(ウチの屋根の上)では今朝がたかなりの雨量を記録していたが、今調べてみたところ、福島も土日は天気に恵まれそう。日曜日は東西ともに良馬場で行われそうだ。

まずはエリザベス女王杯から見ていくことにする。

久々になるミッキークイーンと前走オールカマー5着を叩いたマリアライトのディープインパクト牝馬2騎が1枠を占めた。これがひとつ大きなポイントになる。ミッキークイーンはちょっと足元に不安が出た影響で、ここがぶっつけになる。ということは、宝塚記念を勝ったマリアライトが少し抜けた人気になる組み合わせか。

マリア陣営も「牝馬同士なら負けられない」とコメントしているが、確かに、ポテンシャルの比較でいえば、マリアライトの能力は頭1つ以上おそらく抜けているだろう。しかし外を回すと届かない京都でしかも外回り、前が残りやすいコースであることも事実。

今年は多少外差しも決まってはいるが、コーナーで外を回すとやっぱり可能性は低くなる。昨年のようにシブればよいが、良馬場だと、不器用で大外を回さざるを得ないタイプのマリアライトにとって、少なくともプラスになるコースではない。

そしてどうにも気になるのが、「牝馬同士」という点。今は中長距離でも牝馬のレベルは決して低くない時代であるということもそうだが、それ以上に、このエリザベス女王杯というレースは、落ち着いたベテラン牝馬によるレースという意味で、同じ芝の2200mのレースではあっても、他に似ているレースがまったくないという点がカギになる。

つまり、勝負どころに差し掛かるまで誰も動かず、非常に静かなレースになるのが、このエリザベス女王杯の特徴である。それだけに、底力勝負に持ち込みたいマリアライトにとって、実際のところ、あまり歓迎できる材料はないとさえ思える。

ミッキークイーンとしては、やはりマリアライトをじっと見る位置での競馬、おそらく最後方付近からの競馬になる。隣同士だからどうしても互いを意識しあうはず・・・今回は共倒れも十分考えられる。というか、そうなりそうなファクターが意外にも多いのである。

中心は、武豊騎手が非常にこころ強く感じられる芦毛の4歳馬マキシマムドパリ(父キングカメハメハ)にした。現在日本にはさまざまな系譜を継ぐ芦毛がいるが、快速ゼダーンの系統とはいえ、ハイエストオナーを経由した芦毛はリヴァーマンの影響で非常にタフな芦毛に出る場合がある。

昨年は幸騎手で秋華賞3着、馬体減が激しかった春のオークスでも、いつ止まってもおかしくないような手応えながらそれでもジリジリ伸びるのは、いかにもリヴァーマンの影響を受けたステイヤーのイメージがある。

武豊騎手はこのマキシマムドパリで先行したり追いこんでみたり、いろいろな経験を積ませている。自身はその中でこの馬にとってベストの乗り方をおそらくもうとっくにイメージできているはずである。私は――もちろん他の出方もあるが――武豊騎手は逃げの手を考えていると思う。

昨年の秋華賞では超強気な競馬で、幸騎手がこの馬の良さをフルに発揮して見せた。内回り10Fの秋華賞に対し、今回は外回り11F、多少大逃げになったとしても秋華賞ほど厳しいラップを踏む必要はない。どうせ勝負どころに差し掛かる前から手応えが怪しくなるのがマキシマムドパリ、おそらく3−7くらいの比重で後ろに意識がある有力どころは、その瞬間すべての意識を後ろ(マリアとミッキー)に集中させることになる。

同じ芦毛のメジロマックイーンがあそこまで大スターになったのは、武豊騎手が「ふつうの先行馬」ではなく、「まくり」という武器をマックイーンにさずけたから。こういう感覚の鋭さは、やっぱり武豊なのである。その研ぎ澄まされた感覚のすべてを、どうかマキシマムドパリの力に、なんとか注いでもらえないだろうか・・・

相手も、くしくも同じグレイソヴリン系で、しかしこちらはカロの系統の血をひくシャルール(父ゼンノロブロイ)にした。マキシマムドパリはケンマール経由の芦毛、こちらは黒鹿毛ながらも、ケンマール(その父カラムーン)と同じく発展した芦毛カルドゥンの血を引いている。名牝ファビラスラフインにも流れる血である。

・・・と、血統のことをゴチョゴチョ言えば多少はもっともらしく聞こえるかと思って書いたが、なんのことはない、クイーンスプマンテとテイエムプリキュアが演出した「大逃走劇」の再現を狙っているだけである。だって、後ろはみんな「もっと後ろ」を意識しているわけでしょ?だったらあの日の再現は十分可能なのである。

だいぶ外差しが決まってきてはいるが、だからこそ前のマークは薄くなる。それに先行勢が残していないわけではない。もともと残りやすいコース形態だけに、久々の「行った行った」がイメージできる。人気薄のときはやってくれる福永騎手、大先輩の背中を見て、今年の大逃走劇の助演男優賞を目指してもらいたい。

位置取りは後ろになるが、この馬も早目からまくるような競馬が合うヒルノマテーラ(父マンハッタンカフェ)の成長にもちょっと期待してみたい。単穴。押さえはムーアのタッチングスピーチ(父ディープインパクト)のこちらも成長に期待、力つけたアスカビレン(父ブラックタイド)、距離延長は明らかに吉と出そうなシュンドルボン(父ハーツクライ)、そして人気のディープ産駒2頭、大穴としてプロレタリアト(父ハーツクライ)あたりまでを押さえる。

◎ マキシマムドパリ
〇 シャルール
▲ ヒルノマテーラ
△ タッチングスピーチ、アスカビレン、シュンドルボン、ミッキークイーン、マリアライト


荒れるハンデ戦の福島記念(芝2000m)のほうは、ディープ産駒のゼーヴィントが人気すると思うが、とりあえずの予想だけ。

◎ マルターズアポジー(枠絶好、ハニーは外枠、単騎なら)
〇 マイネルラクリマ(ここ狙っていた感、復活ある)
▲ マイネグレヴィル(ハンデ魅力、イメージ的にこの時期の福島で一発)
△ マーティンボロ、ゼーヴィント、ダイワドレッサー、プロフェット、マイネルハニー

日曜東京〜第54回アルゼンチン共和国杯(GU)

土曜日は東西で2歳牡牝の重賞が行われ、日曜日には古馬の芝ダートそれぞれ重要な意味を持つ重賞が行われる。アルゼンチン共和国杯の予想を中心に見ていきたいとは思うが、まずは土曜京都のファンタジーSにもちょっと注目したい。

あの年日欧で「怪物」が豊作だった。「欧」の怪物、しかも日本でちょっと強い競馬をすると「怪物」がやたらと安売りされてしまう印象があるが、あちらは掛け値なしの本物の「怪物」、その娘が、注目のデビュー2戦目を迎える。

もちろん「怪物の娘」とは、他とはまったく違いますよというとてつもない可能性を感じさせたミスエルテ(母の父プルピット)であり、その父の名は、14戦無敗のまま引退した「欧州版オルフェーヴル」のフランケル(その父ガリレオ)である。

デビュー戦は、阪神外回りの稍重の芝のマイル戦を、かかっているというよりは、他とはまったくスピードが違うといった雰囲気の行きっぷりで中団に構え、直線では外に出してまったく追ったところなしの大楽勝だった。今回1F距離が短縮されてもまず問題ないだろう。

血統的には猛時計がマークされる日本の競馬で将来どこまで・・・の不安がないわけではないが、おそらくここは楽々通過できるレベルの通過点だろう。今なら1400でも大丈夫のはず。フランケルの初年度産駒のおそらくこれが日本での代表格・・・期待しかない。ここはなんとしても通過してほしい。

また、日曜京都ダートのみやこSのほうも、北米三冠レースすべてに出走して貴重な経験を得た芦毛のラニはもちろんだが、個人的にはやや重度だった骨折から2度目の復帰戦となり、今度こそ順調に行ってほしいインカンテーションの走りに、結果はともかく注目したい。

ということで、ここからは「馬券」に注目してAR共和国杯の予想に入ろう。

府中の芝2500mのハンデ戦という特殊で難しい条件となるAR共和国杯だが、モーリス、ゴールドアクターらを輩出したスクリーンヒーロー(父グラスワンダー)は別格としても、これまでに天皇賞馬アドマイヤジュピタ、トーセンジョーダンや、なんといっても昨年続く有馬記念を制したゴールドアクターがこのレースをステップとしてGTウィナーの仲間入りを果たしている。

実は、難しいAR共和国杯を予想する上で、この事実はかなり重要な意味を持ってくる。もちろん今年の勝ち馬が、上記の馬たち同様出世を約束されているわけではない。ただ、厳しい長距離GTや猛ペースを押し切った中距離GT、ましてや厳しいローテのジャパンCや有馬記念をこのレースの勝ち馬が制してしまうのは、単なる偶然ではない。

近年府中の2400m戦は、主にディープインパクト産駒ではあるが、牝馬の台頭が著しい。少し前のウオッカまでさかのぼると、実はここ10年で、かつて日本で最も底力を必要とするとされた府中の芝2400mGTを、全体の3割にも相当する「6回」も牝馬が制しているのである。

もちろん牝馬が国内最高峰レースを勝ったところで悪くはないし、ウオッカやジェンティルドンナのようなとてつもない牝馬が現れた偶然もあるが、今東京競馬場の良馬場の芝コースは、2400m戦なら割と誰でも走れてしまう可能性がもしかしたら高いのかもしれないという気がする。

実は現在は、「府中の芝2500m」こそ、最も底力を要するコースになっているのではないか・・・という憶測も、上記のGTホースたちの活躍から成り立たなくもない。今年も、そういうタフなコースでこそ・・・のタイプに注目したい。

ダイワメジャー産駒の芦毛・プレストウィック(54kg)にした。ダイワメジャー産駒というと、自身がそうだったように、産駒にもスピードが伝わるケースが多いが、プレストウィックの走りは完全に母方の血が影響している。

母の父リナミクス(その父メンデス)は、自身はマイル〜中距離のスピードタイプだったが、フランスで2度のリーディングサイアーに輝き、代表産駒サガミクスは日本でもおなじみのO・ペリエで凱旋門賞を勝っている。先日の凱旋門賞でも、その産駒である牝馬のシルジャンズサガという芦毛が4着と健闘していた。

フランスの競馬自体がそうだが、やはりヨーロッパの血は、サンデーサイレンスに代表されるアメリカのパワーとスピードというタイプよりも、苦しくなって最後の最後のひと踏ん張りが利くシブい血のイメージ。そういう血が府中の2500mで良さにつながるのではないか。

ちなみに日本でも種牡馬として活躍したメンデスの芦毛は、必ず産駒に芦毛が伝わる特殊な遺伝子によるらしい。プレストウィックの芦毛もメンデス由来の芦毛である可能性が高い。だからどーしたという話ではあるが。

前走は札幌の芝2600m戦をルメールで敗れていたが、あれは池添騎手にうまく乗られてしまった印象が強い。今回は若い石川騎手の思い切った騎乗にも期待したい。そしてそういう競馬をしたときにこそ、この馬の良さが出そうな気がする。

相手は非常に難しいが、久々に蛯名騎手に乗り替わってきた55kgレコンダイト(父ハーツクライ)にした。年齢を重ねてから徐々にズブさを見せており、若いころとちがってある程度距離がないと結果が出なくなってきている。長距離冷遇の時代だけに、こういう特殊な距離のレースでは、蛯名騎手とのコンビ復活が大きなプラスになるはず。

レコンダイトを推すのを迷った理由は、やはりこのレースは「先につながる馬」を探したい意図があるから。もちろんレコンダイトに先がないわけではないが、もっとフレッシュな馬を本当なら狙いたいところ。

まだまだ実力不足は明らかだが、51kgならもしや・・・の可能性を重視して、将来楽しみなステイゴールド産駒トレジャーマップを少し買ってみたい。まだ準オープンの身ながら格上挑戦の形だが、しかしこの馬を知るファンは多い。なぜなら、トレジャーマップはあのゴールドシップの全弟だからである。

正直兄にはあまり似てほしくはなかったのだが、近走は兄と似たような「まくり」が板についてきている。いくら51kgとはいえ、さすがに府中の2500mをまくり切れる馬はいない。内枠だけに、ある程度位置にこだわって、吉田豊騎手には乗ってもらいたい。スタミナ勝負になれば、チャンスがなくはないはず。

押さえは58kgでもシュヴァルグラン(父ハーツクライ)の実績は揺るがないし、前が速くなるときにはムスカテール(父マヤノトップガン)のシブい末脚にも魅力、行けばしぶとい57kgクリールカイザー(父キングヘイロー)、58kgフェイムゲーム(父ハーツクライ)は去勢の効果が現れると怖い。あとは一発に託したときのショウナンバッハ(父ステイゴールド)はあくまでも展開待ちか。

人気しそうなモンドインテロ(父ディープインパクト)は、前走札幌芝2600m戦では、大楽勝かに思われながら最後は実力馬トゥインクルに詰められ、かなり苦しい競馬だった。府中の芝2500mは、展開によっては少し疑問符がつく気もするのだが・・・

◎ プレストウィック
〇 レコンダイト
▲ トレジャーマップ
△ フェイムゲーム、シュヴァルグラン、クリールカイザー、ムスカテール、ショウナンバッハ
   
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