2017年09月02日
視界不良のクロマグロ資源管理=「漁獲枠」の実効性に疑問〔深層探訪〕
まったく新しいわきが対策
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資源の枯渇が懸念される太平洋クロマグロの漁獲規制をめぐる韓国・釜山での国際会議で、日本が提案した、条件付きで漁獲枠拡大に道を開く新ルール導入が一部修正の上、認められた。政府関係者は、マグロ漁の抑制を迫られている国内漁業者の不満を和らげられる「ギリギリの合意内容」と胸をなで下ろすが、枠拡大の実現には厳しいハードルが課された。今回の合意を受け、漁業者がきちんとルールを守れる実効性のあるクロマグロ資源管理が可能になるのか、先行きはなお視界不良だ。
◇漁獲枠拡大に批判
1日まで5日間の日程で開かれた中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委員会は、日米韓など10カ国・地域で構成。太平洋でのクロマグロ漁獲量の半分以上を占める日本への風当たりは強く、条件付きで漁獲枠拡大を求めた日本提案には各国の強い批判が予想されていた。
クロマグロの資源減少を受け、WCPFCは2024年までに繁殖可能な親魚の資源量を約4.1万トンに回復させる目標を掲げ、漁獲規制を続けている。しかし、親魚の資源量は14年で約1.7万トンと目標の半分以下。専門家の間でも、目標達成前に漁獲枠拡大を可能にする日本提案は「資源管理の世界では考えられない」(学習院大学の阪口功法学部教授)との意見が強かった。
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◇漁業関係者は歓迎
実際、今回の会議では当初、日本案に対して米国、カナダなどから反対意見が噴出。しかし最終的には、約4.1万トンの資源回復目標の達成確率が「75%以上」になった場合という厳しい条件付きながら、漁獲枠拡大を認める新ルールの導入が決まった。ある漁業団体幹部は「漁業者の焦りや不安に一定の答えを出してもらった。一歩前進だ」と歓迎する。
交渉筋によると、今回の議論では日本提案に完全に同意した国こそなかったものの、日本と同じようにマグロ漁を行う韓国や台湾からは強い反対意見が出なかったという。
WCPFCの既存規制で割り振られた漁獲量の上限を守れていない日本は、他の魚を狙った定置網漁などでクロマグロが捕れてしまう実情を説明。昨年は韓国も漁獲枠を超過し、今年は米国やメキシコも枠を超える見込みとなっていることから、厳しい資源管理を主張してきた米やカナダなども反対意見を押し通せなかったようだ。
◇高いハードル
一方、日本政府は漁業者に何とか顔向けできる合意内容にこぎ着けた格好だが、親魚の資源の現状からみると、漁獲枠拡大を実現するのは容易ではない。資源回復目標の達成確率は現状で61.5%程度と75%には遠く及ばず、これが60%以下に下がれば漁獲制限は逆に強化される。
環境保護団体は、複数の加盟国が規制枠を守れない現状に、「国内の漁獲管理と監視体制の徹底が必要不可欠だ」(グリーンピース・ジャパン)と警鐘を鳴らす。サンマやサバなど他の魚種の資源管理も迫られる中、水産庁幹部は「まずマグロから国際的な資源管理を主導できるようにしたかった」と合意の成果を強調するが、実効性のある資源管理が進まなければ日本への批判が一気に高まる恐れもある。(釜山時事)
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