「肌の老化」を抑える5つの方法は? 皮膚科医が教える“肌のアンチエイジング”最新研究〈dot.〉
年とともに肌が老化していくのは仕方がないこと。弾力がなくなり、シワやたるみに悩む人も多いでしょう。それを少しでも遅らせるにはどうしたらいいか。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が肌のアンチエイジングについて解説します。
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アンチエイジングの研究は日進月歩です。とくに肌の老化に関して、近年、様々なことがわかってきました。肌の老化の要因は主に3つあります。炎症、過酸化脂質、糖化です。これらは紫外線、ストレス、不健康な食事などで引き起こされることが多く、これらの要素を制御することが、肌のアンチエイジングに重要です。今回は肌のアンチエイジングについて紹介したいと思います。
●抗酸化物質を取る
肌の老化の要因として、過酸化脂質があげられます。過酸化脂質は、脂質が酸化によって変性した化合物です。体内で起こる酸化ストレスや外部からの酸化剤の影響で、不飽和脂肪酸が過酸化反応を受け、過酸化脂質が生成されます。過酸化脂質は細胞膜の構造を損傷し、機能を低下させます。過酸化脂質は、紫外線、喫煙、ストレス、大気汚染などで増えることが知られています。
過酸化脂質の生成を防ぐには、抗酸化物質が有効です。食事やサプリから抗酸化物質を取り、活性酸素によるダメージを抑えることで、肌のアンチエイジングにつながる可能性があります。抗酸化物質として、ビタミンC、ビタミンE、アスタキサンチンなどを含む食品を積極的に食べることが推奨されています。多くの研究が抗酸化物質が老化や炎症を抑制し、肌の健康を維持することを示しています。
ただし、抗酸化物質の摂取にも注意が必要です。過剰な抗酸化物質摂取は、逆に酸化ストレスを引き起こすことがあります。また、ビタミンCやビタミンEなどの一部の抗酸化物質は、水溶性と脂溶性の両方が存在するため、適切な形態で摂取することが重要です。
●糖化を防ぐ
糖化とは、糖分とたんぱく質が結合し、結果としてコラーゲンやエラスチンなどのたんぱく質が劣化する現象です。この過程は、肌の弾力やハリを低下させ、シワやたるみの原因となります。シナモンやターメリックなどの糖化抑制食品には、糖化反応を遅らせる効果があることが研究で示されています。
しかし、抗酸化物質と同様に、糖化抑制食品を過剰に摂取することも避けるべきです。適量を守り、バランスの良い食事を心がけることが大切です。さらに、糖化抑制食品の効果を十分に発揮させるために、食品の摂取方法や調理法にも注意が必要です。例えば、シナモンは熱に弱いため、熱を加えずに摂取することが望ましいです。
●水分補給を怠らない
水分不足は肌の乾燥やたるみを引き起こすため、適切な水分補給が必要です。1日に約2リットルの水を摂取することを目標にしましょう。水分が適切に摂取されることで、体内の老廃物の排出が促され、新陳代謝が活性化されます。これにより、肌細胞の新陳代謝が円滑に行われ、健康で若々しい肌が維持されることが期待されます。さらに、水分摂取は皮膚のバリア機能の維持にも役立ち、外部刺激からの保護や皮膚の修復に寄与します。
一方で、過剰な水分摂取による水中毒(低ナトリウム血症)のリスクが存在します。適切な水分摂取量を守り、無理な水分摂取を避けることが重要です。バランスの良い食事と併せて、適切な水分補給を心掛けることで、肌の健康維持に役立ちます。
●健康的な脂質を取る
オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸を含む食品(魚、ナッツ、種子など)を食べることで、肌の水分バランスや弾力が保たれます。オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は、体内で生成されない必須脂肪酸であり、外部から摂取する必要があります。これらの脂肪酸は、細胞膜の構成成分であり、肌の水分バランスや弾力を維持する役割があります。特にオメガ3脂肪酸は、抗炎症作用があり、肌荒れやアトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患の予防や改善に効果があるとされています。
ただし、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取バランスが重要であることに注意が必要です。現代の食生活では、オメガ6脂肪酸が過剰に摂取されがちであり、その結果、炎症を引き起こす可能性があります。理想的なオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取比率は、1:4程度とされています。
●紫外線を避ける
紫外線は、太陽から地球に到達する電磁波の一部で、特にUVA(320−400nm)とUVB(280−320nm)が肌に影響を与えることが知られています。紫外線が肌に与えるダメージは、アンチエイジングに関連して重要です。紫外線は肌のコラーゲンを分解し、シワやたるみを引き起こすからです。コラーゲンは肌の弾力性や構造を維持するために重要な真皮の構成成分です。また、 紫外線はメラニン生成を促し、シミやそばかすができる原因となります。さらに、 紫外線は細胞のDNAに損傷を与え、長期的には皮膚がんのリスクを高めることがあります。
以上、肌のアンチエイジング対策を紹介しました。この中でいちばん重要なのが、紫外線対策です。イメージで言うと、紫外線で肌の老化が100進むのに対し、他に紹介したアンチエイジングは1か2くらい巻き戻せるくらいであると思ってください。つまり、十分な日焼け止め対策を行うことが、肌のアンチエイジングにとって最重要となります。SPF30以上の日焼け止めを選び、2時間ごとにこまめに塗り直すこと、日傘や広いつばの帽子を使用すること、屋外に出るときは紫外線に直接当たることがないように気をつけましょう。そのうえで、バランスの良い食事や生活習慣を維持することが、肌のアンチエイジングにより効果的です。アンチエイジングは他にも、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)に着目したNMNの摂取もありますが、それについては次回、説明したいと思います。
《引用)