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2015年11月29日
趙氏孤児(邦題:『運命の子』)
今日はたまたま京劇のチャンネルで趙氏孤児を上演していて、ついつい面白そうで見入ってしまった。その後で興味がわいたので2010年に公開された陳凱歌監督の趙氏孤児もついでに見た。前々からこの中国では有名な物語を見たいと思っていたのだが、一日に二つのバージョンで見ることになった。
趙氏孤児は春秋時代の晋国の話で司馬遷の『史記』などでも取り上げられているかなり古い時代の話である。後に元の時代に劇で上演されるようになり、中国人は誰でも知っている有名な話で京劇や映画やドラマにもたびたびなっている。映画版の趙氏孤児は邦題が『運命の子』となっているが、いまいちピンと来ない題名だ。まだ台湾版や英語版のサクリファイス(犠牲)という題のほうがしっくり来る。
ストーリーは晋国の宰相であった趙盾という人の一族が、その息子の趙朔将軍の代に陰謀によって謀反の疑いを掛けられて家族皆殺しになる。ただし趙朔将軍の生まれたばかりの子供だけは医者の程嬰によって隠されて育てられる。それを察した殺害者は国のすべての赤ん坊を殺すよう命令を出す。程嬰にも生まれたばかりの子供がいたが、程嬰は自分の子供を趙家の子供として身代わりに差し出して趙家の子供は難を逃れる。その趙家の子供が大きくなって親の仇討ちを果たすという物語である。
赤ん坊が全員殺されるところを隠されて生き残り、後に仇討ちを果たすというモチーフは旧約聖書のモーセの場合もそうであるし、イエス・キリストにも同じような伝説があるから古くから東西である英雄生誕と仇討ちの話のパターンの一つであるようだ。
京劇版と映画版とでは細部の設定が異なっており、京劇版では趙氏孤児の母親の姫様は主君の姉であることから殺害されず後に子供と対面する。映画版ではこの姫様を范冰冰が演じており、姫様は子供を産んで程嬰に託すとすぐに自殺してしまう。また京劇版ではわざわざ程嬰が趙氏の子供を守るために自分の子供を身代わりに差し出すことになっているが、映画版では誤解がもとで自分の子供が趙氏の子供として殺されてしまう。
二つの劇を比較して感激できるのは京劇版のほうで、感情表現などが巧みでつい見入ってしまう。映画版の方はこの物語に新しい解釈を提出していてキャストも豪華なのだが、今一つ感動できなかった。確かにいくら程嬰が託された子供を守るためとはいえ、自分の子供を差し出すのは現代の道徳観からすればやや引っかかるものがあるのはわかる。だがその非合理の故に悲劇性が増すということもあるので、こればかりは京劇版の従来の解釈のままでよかったのではなかろうか。香港版の映画やドラマ版もあるようなので、各種見比べて見るのもいいだろう。
趙氏孤児は春秋時代の晋国の話で司馬遷の『史記』などでも取り上げられているかなり古い時代の話である。後に元の時代に劇で上演されるようになり、中国人は誰でも知っている有名な話で京劇や映画やドラマにもたびたびなっている。映画版の趙氏孤児は邦題が『運命の子』となっているが、いまいちピンと来ない題名だ。まだ台湾版や英語版のサクリファイス(犠牲)という題のほうがしっくり来る。
ストーリーは晋国の宰相であった趙盾という人の一族が、その息子の趙朔将軍の代に陰謀によって謀反の疑いを掛けられて家族皆殺しになる。ただし趙朔将軍の生まれたばかりの子供だけは医者の程嬰によって隠されて育てられる。それを察した殺害者は国のすべての赤ん坊を殺すよう命令を出す。程嬰にも生まれたばかりの子供がいたが、程嬰は自分の子供を趙家の子供として身代わりに差し出して趙家の子供は難を逃れる。その趙家の子供が大きくなって親の仇討ちを果たすという物語である。
赤ん坊が全員殺されるところを隠されて生き残り、後に仇討ちを果たすというモチーフは旧約聖書のモーセの場合もそうであるし、イエス・キリストにも同じような伝説があるから古くから東西である英雄生誕と仇討ちの話のパターンの一つであるようだ。
京劇版と映画版とでは細部の設定が異なっており、京劇版では趙氏孤児の母親の姫様は主君の姉であることから殺害されず後に子供と対面する。映画版ではこの姫様を范冰冰が演じており、姫様は子供を産んで程嬰に託すとすぐに自殺してしまう。また京劇版ではわざわざ程嬰が趙氏の子供を守るために自分の子供を身代わりに差し出すことになっているが、映画版では誤解がもとで自分の子供が趙氏の子供として殺されてしまう。
二つの劇を比較して感激できるのは京劇版のほうで、感情表現などが巧みでつい見入ってしまう。映画版の方はこの物語に新しい解釈を提出していてキャストも豪華なのだが、今一つ感動できなかった。確かにいくら程嬰が託された子供を守るためとはいえ、自分の子供を差し出すのは現代の道徳観からすればやや引っかかるものがあるのはわかる。だがその非合理の故に悲劇性が増すということもあるので、こればかりは京劇版の従来の解釈のままでよかったのではなかろうか。香港版の映画やドラマ版もあるようなので、各種見比べて見るのもいいだろう。
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タグ:中国映画