彼から別れを言われた。
仕事も不本意な場所に移動になった。
35歳の千佳子は、大手企業の秘書課勤務だった。ところが、
「子会社の事務として行ってくれ」
と、言われた。
「将来、女性幹部を作りたいから、いろんな世界を見て欲しい」
そう言われたけれど、千佳子にとっては、屈辱だった。
どうしても納得できなかった。
しかも、付き合っていた彼は、千佳子の後輩と付き合い出した。
それも納得できない。
とにかく、文句のオンパレードを親友の知子にぶちまけた。
「どう思う?」
「ぜったい、わたし左遷されたんだ」
「なんで、わたしばかり、嫌な思いするの」
「だいたい、会社なんて、やっぱり男世界なんだ」
言っても、言っても収まらなかった。
知子が慰めてくれると思っていた。
ところが、一通り聞いた知子から出てきた言葉。
「野菜、楽しいよ」
「体にもいいし、いろいろ勉強になったわ」
「わたし、いつか、野菜食レストランしたいな・・・」
それ以上、文句を言えなくなった。
愚痴っている自分が寂しくなった。
なんとなく、新しいことをしたくなった。
「愚痴ってても、何も始まらないよ」
「言うだけ、言ってスッキリしたら、次に行こうよ」
知子は、笑っている。
「そうだね・・・」
そう言うしかなかった。
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