雑誌で見つけた時からそう思っていた。
それが伊豆の「望水」。
プライベートガゼボ。
ふたりで、海を見ながら温泉に入る。
とにかく彼氏をつくる。
そう決めた。
合コンにも行った。
「彼氏と行きたい温泉があるんだ」
と、みんなに言った。
言ってみるもので、二つ年上の職場の先輩の慎吾から声をかけられた。
「僕でどう?」
タイプじゃない。
細い男性がいいけれど、慎吾は、ちょっと・・・。
でも、悪い人じゃない。
そして、カップルで温泉に行きたい。
妥協するかどうするか。
単刀直入に尋ねてみた。
「わたしを、この温泉に連れてくれる?」
雑誌を見せた。
「いいよ」
「値段、そこそこするよ」
「そんなこと分っているよ」
そう言って慎吾が笑った。
なんとなく、慎吾が良い人に見えてきた。
別に嫌いなわけじゃない。
そういえば、いつも、優しいし、誰からも嫌われていない。
何よりも、あこがれの旅館に泊まってみたい。
付き合ってみょうかなあ・・・。
あれから3年。
ふたりは、幸せな家庭を築いている。
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