鉄は、月経がある女性にとっては非常に不足しやすい栄養素で、そのため貧血や疲れ、冷え、めまいなどの不調を持つ人が非常に多いという現状があります。
普段の月経では、毎月20~140㎖の血液が失われています。妊娠や出産の場合には、さらに鉄の需要が高まります。
鉄が不足すると、低体温、冷え性、偏頭痛などの不調が表れますが、これは、体のエネルギー産出が低下することから生じる現象です。
細胞の中には【ミトコンドリア】という器官があり、そこではATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーが産出されています。体を動かすのも、体温を保つのも代謝するのも、すべてこのATPがないとできません。そして、このATPを作ると気に欠かせない酵素の一つが、鉄です。
つまり、鉄がないとATPの産生ができなくなるために、ガソリンを失った車のように体の働きがストップして、だるさ、冷え、頭が働かないといった支障が出てきます。月経で鉄を失いやすい女性に、冷え性や貧血が多いのはこのためです。
貧血症状だけでなく、イライラやうつなど、情緒が不安定になるのも、鉄欠乏よるエネルギー不足で起こります。実際に、厚生労働省が行った【平成26年患者調査】によると、気分障害(躁鬱含む)の患者数は、男性が41万8000人に対し、女性は約70万人と、圧倒的に女性が多いという結果が出ています。
冷えやめまい、イライラや不安感など、鉄欠乏の症状がある場合、一度、『フェリチン』の検査をお勧めします。 フェリチンとは、鉄を蓄えるタンパク質のこと。一般的な保険診療で調べる【血清鉄】が財布の中のお金だとすると、フェリチンは貯金残高です。体調によって血清鉄は大きく変化しますが、フェリチンは比較的安定しているため、体に蓄えられている鉄の目安としてより正確な指標になります。
フェリチンの至適値は諸説ありますが、当院では100±20ng/㎖としています。
40以下は鉄不足、200を超えると動脈硬化のリスクが増えるといわれているので、鉄過剰と診断します。 参考:満尾クリニック オフィシャルホームページ
http://www.drmituo.comをチェックしてご覧ください。
フェリチンが基準に達していない場合、対策は二つです。鉄分豊富な食品を摂ることと、サプリメントの補充です。
鉄が豊富な食材は、卵、肉、魚、レバー、大根葉、小松菜、ほうれん草など。吸収がいいのは、動物性食品に含まれる【ヘム鉄】です。植物性食品に含まれる【非ヘム鉄】は、ヘム鉄と比べると吸収率で劣るので、野菜だけで鉄を補うのは難しい場合もあります。 閉経前の女性は、鉄のサプリメントを常用することをお勧めします。
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