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2024年09月24日
【死刑にいたる病 (2022)】
『死刑にいたる病』は、2022年に公開されたサイコサスペンス映画で、話題になった作品です。映画のタイトルからしてすでに強烈ですが、見終わった後も、その独特な緊張感と不気味さが心に残ります。正直、見終わった後に「うわ、なんかすごいもの見ちゃったな」って感じる映画です。
物語の始まりは、平凡な大学生・雅也(演:岡田健史)が、かつて世間を騒がせた連続殺人犯の榛村(演:阿部サダヲ)から一通の手紙を受け取るところから始まります。この榛村は、9人の殺人罪で死刑判決を受けた男。彼は「自分は8人の殺人を認めるが、1件は冤罪だ」と雅也に訴えかけ、その無罪を証明してほしいと頼んできます。
雅也は、この手紙をきっかけに、榛村が起こした連続殺人事件を再調査し始めます。特に、榛村が無実を主張する「10人目の被害者」について深掘りしていくんですが、次第に事件の真相に近づくにつれて、雅也自身の内面も変化していくんですね。普通の学生だった彼が、犯罪の闇に引き込まれ、次第に自分の中の「悪」にも気づいていくという展開がスリリングです。
さらに、榛村というキャラクターがとにかく不気味! 阿部サダヲの怪演が光っていて、彼の話す言葉や、笑顔の裏に隠された異常性がじわじわと雅也に(そして観ている僕たちに)侵食していきます。「この人、何考えてるの?」っていう不安感がどんどん膨らんでいく感じが、サイコスリラー映画の醍醐味ですね。
まず、この映画の魅力は何と言っても、二人のキャラクターの関係性と緊張感にあります。阿部サダヲが演じる榛村は、見た目は普通のおじさんなんだけど、会話の節々から異常さが滲み出ています。一方で、彼は妙に魅力的でカリスマ性があって、雅也を次第に引き込んでいくんです。この「普通そうに見えるけど、実は何かがおかしい」というキャラクター描写が見事でした。阿部サダヲの演技は、ただ怖いだけじゃなくて、どこか人を魅了してしまう不思議な魅力があって、それが観客にも伝わってきます。
そして、雅也役の岡田健史もすごく良かったです。彼の演じる雅也は、最初は普通の青年で、ただ事件に興味を持っていただけだったのに、調査を進めるうちにどんどん変わっていきます。雅也がだんだんと事件に深入りして、いつの間にか榛村に精神的に支配されていく様子がリアルで、観ているこちらも一緒に不安な気持ちになってきます。映画の後半では、彼の心の中にどんどん「闇」が広がっていく感じが描かれていて、その変化がとてもスリリングでした。
また、物語全体のトーンがとてもダークで、特に音楽や映像がそれを強調しています。画面が暗く、全体的に静かな雰囲気が漂っていて、観ていると何とも言えない不気味な感覚が襲ってきます。音楽もどこか不協和音を感じさせるような不穏な曲が多く、常に緊張感が途切れません。しかも、途中から「これは一体何が真実で、何が嘘なのか?」と、どんどん混乱してくるんですよね。榛村が言っていることが本当なのか、それとも雅也がどこかで錯覚しているのか、観客自身も何が現実かわからなくなる瞬間があります。
ただ、この映画は決して単なるサスペンスやホラーではなく、もっと深いテーマが隠れているように感じます。それは「人間の中にある善と悪」です。榛村のような極端な悪人がいる一方で、普通の人間である雅也も、事件に関わる中で自分の中の「悪」に気づいていく。誰もが持っているけれど、普段は意識しない「悪」というものが、特定の状況で表に出てくる様子が描かれています。この点が、ただのスリラーを超えて、人間ドラマとしての深みを与えているんじゃないかと思います。
とはいえ、この映画には謎が多く残ります。ラストにかけて明かされる真実もあるんですが、それでも観終わった後に「結局、何が本当だったんだろう?」って考えさせられる部分が多いです。そういうモヤモヤした感じが残る作品ですが、それが逆にこの映画の魅力でもあります。明確な答えがないからこそ、観た後も頭の中でいろいろな考えが巡って、何度も思い返してしまうんです。
最後に、この映画は観る人によって解釈が分かれる作品だと思います。サイコスリラーとして楽しむのもアリですが、人間の内面に潜む闇や、善悪の境界線をテーマにした深いドラマとしても観ることができます。とにかく観終わった後に感じる不安感や、どこか心に残る奇妙な感覚がこの映画の特徴です。
総じて、『死刑にいたる病』は、サイコサスペンスとして非常に完成度の高い映画です。阿部サダヲと岡田健史の演技が光り、独特な緊張感とダークな雰囲気が最後まで観客を引き込んで離しません。観終わった後も、何か心に引っかかるものがあり、深く考えさせられる作品です。サスペンス好きや心理的なドラマが好きな人にはぜひおすすめしたい一作ですね。観た後に誰かと語り合いたくなる、そんな映画です!