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2019年09月13日

聴くに聴けないアルバム

もう20年以上興味を惹かれながら、いまだ聴けずじまいにいる洋楽のアルバムがある。
ブライアン・ジョーンズの「ジャジューカ」というアルバムがそれ。


The Pipe of Pan AT JAJOUKA
Brian Jones

このアルバムは、ローリング・ストーンズの初代リーダーだったブライアン・ジョーンズが、27才の若さで謎の死を遂げる少し前にモロッコのジャジューカという小さな村に赴き、現地に伝わる祭祀音楽を録音・編集して作ったものだという。ブライアンの死後、1971年にリリースされている。私はこのアルバムの存在を中島らもさんのエッセイで知った。

中島さんはこのアルバムのあやしげなモロッコ音楽の世界にすっかり魅せられてしまって、霊感の強い友人に「これはおそらくあまり縁起のいい音楽じゃない」と忠告されながらもかまわず聴いているうちにとんでもない恐怖体験にみまわれたらしい。そのときの事の顛末は中島さんのエッセイ「獏の食べのこし」の中の「ロックンロールの呪い」という項に詳しいのだが、それを読んでからというもの、ローリング・ストーンズにも民族音楽にも興味があるので聴いてみたい気持ちは山々なのだが、怖くて聴くに聴けないアルバムになってしまった。悪魔的誘惑にかられお店で何度か手に取ってみたことはある。しかしいざとなると「獏の食べのこし」を思い出し、今一歩レジに持ち込む勇気が出ない。そうこうしているうちに当の中島らもさんが不慮の死を遂げたことでさらに恐怖は倍増。結局今の今まで聴けずじまいにいるというわけです・・・。それに「ジャジューカ」のジャケットに映るブライアン・ジョーンズのそこはかとなく不気味な姿もこれまた私の恐怖心を煽りたてる一因になっている。
このアルバムのジャケットは元々はモロッコの画家が描いたイラスト画だったらしいが、1995年にCDで再発になった際に写真を使ったアートワークに差し替えられている。複数の写真が並ぶなか、ジャケットのちょうど真ん中らへんに小さく、マタギのような恰好をしてすくっと立つブライアン・ジョーンズの姿が映っている。照れ隠しなのか口元には少し歪んだような笑みが浮かび、手もとはよく見ると胸元で合掌させてるようなのだが、なんだかもう体全体に黄泉の国に半分足を踏み入れているような言い知れぬ雰囲気が漂っている。ローリング・ストーンズきっての金髪ハンサムでしゃれ者だったかつての姿は見る影もない。調べてみるとこの写真はマイケル・クーパーという写真家が撮ったものらしい。彼もまた31才の若さでこの世を去っているんだそう。



England's Newest Hit Makers
The Rolling Stones

1964年のアルバム。グループの中心的存在だった頃のブライアン・ジョーンズ(一番左)。音楽性もさることながら卓越したファッションセンスなどビジュアル的にもずば抜けている。




Between the Buttons
The Rolling Stones

1967年のアルバム。死の2年前。この頃からもうすでになんだかかげろうのように影が薄くなり始めてる感じのブライアン・ジョーンズ(中央奥)。ミックとキースの台頭でバンド内での居場所を失くしつつあった頃らしい。


さて「ジャジューカ」だが、先日アマゾンをのぞいたらなんとプライム会員の特典でアルバム全6曲のうち4曲が無料で聴けるようになっていた!私は会員なので再生のボタンさえ押せばすぐにでもこのいわくつき?のアルバムが聴ける環境にあるのだが、ページは開いてみたもののやはり最後の最後でポチっとする勇気が出せずにいる。
自他共に認める無類のビビりな私には、どうやらこのアルバムを聴ける日はこれからも当分やってきそうにないみたい。






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posted by うたたねスナック at 17:07 | 音楽
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