2018年11月15日
どきどき旅行
〇女性が歌っていた(たしかアイドル)
〇しきりにハワイに行きたいと歌うが、子どもが聴いてもなんだかへんちくりんな歌詞
〇そのハワイに行きたさ加減がなんとなくトイレに駆け込みたい焦燥感に似ていて、学校で、”ハワイ”の部分を”トイレ”に置き換えて歌う、いかにも子供らしいくだらない替え歌が横行していた。
たったこれだけだったのだが、このたび、ひょんなことからその歌が岩崎良美の歌う
「どきどき旅行」という曲だったことがわかった。
Prime Music 対象曲(2018年10月現在):どきどき旅行(岩崎良美)@Amazon
それにしても「どきどき旅行」って・・・
小学1年生の夏休みの作文みたいなタイトル
さらに言うなら改めて聴くとこの曲、なんかどっかで聴き覚えのあるメロディーだと思ったら、サビの部分がローリングストーンズの「黒くぬれ!(Paint It, Black)」にそっくりじゃないの・・・
というわけで、曲の大枠をとらえただけでもつっこみどころの枚挙に暇がなさそうなこの「どきどき旅行」なのだが、やはりいちばんおもしろいのは歌詞。
はじめての彼氏とのハワイ旅行を前に浮かれまくる女性の歌なのだが、
よくよく聴いていると、どうやら盛りに盛り上がっているのは女性だけな印象。
肝心の彼氏の方はというと、言い出しっぺは自分なものの、いざとなったら、彼女のあまりの興奮ぶりにいささか腰が引けているような感じが漂ってこなくもない。
しかし女性は畳み掛ける。「言い出したのはあなた」「黙りこんでるけど今さらやめる気じゃないでしょうね」「ハイビスカスを髪に飾りましょう!」(いやまだ行くと決まってねえし)などとなかなかのプレッシャーだ。極めつけには、なにがどうすればそんな心境に至るのかよくわからないのだが、恋愛感情が昇りつめたあげく「ハワイに行かせて!」とくる。「連れてって」ではなく「行かせて」。このフレーズから女性上位なふたりの恋愛関係が透けて見えてくるような気もするし、くわえて、なにやらセンシュアルな意味合いもわざと含ませているようにも受けとれるからおもしろい。
調べたところによると、この曲は安井かずみ(作詞)&加藤和彦(作曲)夫妻が作った曲とのこと。
なるほど「どきどき旅行」などといかにも拙い響きの曲名で一見おぼこい印象をあたえておきながら、いざふたを開ければコケティッシュな詞の世界がひろがっているあたりは、さすがは恋多き女でならした安井かずみ様の手によるものとはげしく納得。
加藤和彦&安井かずみ夫妻といえば、私にとってはだいぶ上の世代の方々だったのであまりお二人のことについてはくわしくないのだが、それでも昔から「仲睦まじいセレブなおしどり夫婦」という印象は持っていた。なので、安井さんが亡くなった後、たしか次の年だったかに加藤氏がわりとあっさり別な女性と再婚していたときはけっこう驚きだった。夫婦のことは夫婦にしかわからないというが、実際のところはどんなご夫婦だったのだろう。なんとなくこの「どきどき旅行」に登場するカップルにもお二人の関係性が投影されているような気がしなくもないが、このへんのことはなにやらくわしそうなドキュメンタリー本があるようなので、今度読んでみることにしよう。
それはそうと、肝心な歌い手の岩崎良美さんに言及するのをすっかり忘れてたが、歌がとってもお上手。
メロディが激しく上下するなかなか難しそうな曲ですが、なんなくサラリと歌いこなしておられます。
昔の歌はいろんな意味で聴きごたえがある。