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2017年11月11日
鴨にはやっぱりねぎだと思う
いつのまにか今年も鍋料理の恋しい季節になった。一年経つのは本当に早い。
まもなくすると、忘年会やクリスマスパーティーなどと称して、身内や友人たちと鍋を囲むことも多い時期になる。もてなす側になることもしばしばだが、そんなとき、心強い存在になるのが、お取り寄せの鍋セットだ。便利なことはさることながら、なによりも、普段あまり口にすることのできない、全国各地の鍋料理を手軽に味わえるのが楽しい。とりわけ気に入っているのが、水炊きで有名な、福岡の博多華味鳥さんの鍋セット。以前、友人から贈ってもらったことがきっかけで、すっかり、こちらのお店のファンになり、時折お世話になっている。
鴨の脂が溶け込んだ、うまみたっぷりのスープで、体がぽかぽかと温まる。
そもそもが公園のカモを見るたび、鴨南蛮の絵を頭に浮かべてしまう、ふとどきな鴨肉好きである。そんな私にとって、しめの蕎麦タイムは、まさにこのうえない至福の瞬間だ・・・。
さてさて、実は鴨の鍋というと、必ず思い出す料理がある。
それは、「鴨とクレソンのお鍋」
20年前、中年男女の不倫を描いて大ヒットした映画「失楽園」に登場する、鍋料理だ。
私は当時この「失楽園」を、友人につきあうかたちで、劇場まで見に行った。しかし、そもそもがニガテな類の話であったので、物語の世界にさっぱり感情移入できず、終始ひねくれた見方をしてしまい、失礼ながら、ツッコミどころばかりを探すかたちになってしまった。そのツッコミどころの一つがこの「鴨とクレソンのお鍋」だったのである。
うまく説明できないが、私は、シャレてるつもりなんだかそうでないんだかよくわからないこの「鴨とクレソンのお鍋」という料理の名前の響きを、みごと笑いのツボにヒットさせてしまい、静かな映画館で、プチ窮地に陥った。
主人公の男女(役所広司&黒木瞳)は、たしかこの鍋を、劇中、二度ほどつつきあう。そのたび、ひどくきどった調子で
女「私の好きな鴨とクレソンのお鍋・・・」
男「きっと僕も好きになる・・・」
みたいな、背中がむずがゆくなるような、愛のささやき漫才みたいなことを始めるのが、まずもっておかしかったのだが、なにより、黒木瞳があの魅惑のボイスで、神妙に「お鍋お鍋」言うのが完全どツボにはまってしまい、いよいよもって我慢ならなくなってしまったのだった。ああいうときって不思議なものだ。おそらく普段だったら「何これ」と一笑いすれば、それですむ程度のことなのだが、笑ってはいけないという緊張が、ますます笑いを引き寄せる。私は、寄せては返す笑いの波を、荷物に顔をうずめながら、なんとかやり過ごそうと必死になっていた。
そこへもってきてだ。
あろうことか、今度は場内に、ぷぅという間の抜けた、どなたかの発された、明らかな放屁音が響いたのである。
出物腫物ところ嫌わずとはいうけれど、アナタそれは反則でしょうよ。(どこのだれかは知らないけれど)
その後の数分間に渡る、笑いの大魔王との壮絶な闘いは今思い出しても、お腹のあたりがしくしくとなります。約2時間で6パックが形成されてしまうんじゃないかというぐらい、腹筋をイジメました。声を出して笑えないってどうしてあんなに苦しいのでしょう。
そんなこんなで、鴨鍋の話に戻るのだが、「鴨とクレソンのお鍋」はきっとおいしい。脂ののった鴨肉と、ほろ苦いクレソンの取り合わせはあわないはずがないもの。だけど、私は、あえて焼きねぎをたっぷり入れた、スタンダードな鴨鍋のスタンスでこれからも突っ走りたいと思う。というのも、私の現在の住環境では、鍋にできるほどの山盛りのクレソンを入手できる機会はなかなかないし、なにより、「鴨とクレソンのお鍋」では、どうにもあの映画を思い出してしまって、恥ずかしいものな・・・
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