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2019年01月24日
何故だ
昔、まだ俺が小学生だった頃。
夏休みに入っていて、一日中家でゴロゴロしていた。
しかし、その日は家の近くのヨーカドーで母親と服を買いに行く予定だったので、準備を整えて家を出た。
ヨーカドーまでは徒歩では長く、自転車で行った。
その途中、歩道を自転車こいでいると向こうからよぼよぼの爺さんがふらふらと自転車をこいでいた。
俺は歩道の右側をこいでいたが、爺さんのふらふらな運転のせいで俺の自転車と危うくぶつかりそうになった。
俺がブレーキをかけたので間に合ったようなものだ。
「危ねえジジイだな・・・」と思ってその場から立ち去ろうとしたが、
爺さんが急に俺の腕を掴んで「何故避けられなかったーーーーーーーーーー!!!」と叫んだ。
「何故左に避けようとしなかったーーー!!!」と何回も繰り返し叫んだ。
俺は「爺さんの運転がいけないんだろ・・・」と思ったが、頑固な年寄りにそんなことを言っても時間の無駄なので、とりあえずひたすらに謝った。
「何故だーーーー!!!何故避けられなかったーーーー!!!!」
「すいません。これから気をつけます。」
「危ねぇだろーーー!!!!!」
「すいませんでした。」
とりあえず謝ったので先に進もうとしたら、爺さんがまた俺の腕を引っ張ってくる。
「何故だーーーーーー!!!」
いい加減ウザくなったので、無理やりに腕を払い、一目散にその場から逃げた。
ヨーカドーで仕事帰りの母親と合流し、服を二三点買った。
母親は食料品も買いたいから先に帰ってて、とのこと。
俺は一人で出入り口に向かい、駐輪場に入った。
するとさっきの爺さんが駐輪場のど真ん中に立っていて、俺のほうを睨み付けていた。
さすがに気味が悪くなり、俺の自転車へは向かわずにそのまま店へ戻った。
食料品売り場に行くと、丁度会計を終えた母親がいた。
事のあらましを説明すると、母親も「うーん」と首をかしげた後に一緒に駐輪場に戻ることにした。
「ほらあそこ。」
店の角のところ(駐輪場からは見えない)から、駐輪場の様子を二人で覗き込んだ。
すると、さっきの爺さんはもういなかった。
俺が「よかったー」と安堵の声を漏らす一方で、母親はまだ首をかしげていた。
そして駐輪場―――俺の自転車が置いてある場所―――に戻ると、俺は絶句した。
俺の自転車のタイヤが、前輪後輪共に穴を開けられ、パンクしていた。
しかも、サドルが誰かの手によって無理やり切断されている。
俺は、すぐ近くで自分の自転車を取り出していた母親のところに泣きついた。
俺が自分の自転車を指差すと、母親と俺は一緒にそこまで戻った。
母親は俺の自転車を見て、しずかに「交番に行きましょう。」と言った。
ヨーカドー近くの交番へ、二人で行った。
俺は怖くて、まだ震えながら泣いていた。
交番へ着くと、そこには優しそうな40くらいのおじさん警官が一人だけいた。
警官は、俺が泣いているのを見てただごとではないと思ったらしく、「どうされたんですか?」と驚き顔で尋ねた。
母親は、今までの全てのことを話した。
すると警官が、「なるほど・・・。じゃあ僕さ、そのおじいさんの特徴とか、覚えてるかな?」と俺に話しかけてきた。
俺はそのときパニックで何も思い出せなかったが、しばらく交番にいるうちに落ち着いてきて特徴を話し始めた。
茶色い服を着ていたこと、顔が細長かったこと、タモリのようなグラサンをかけていたこと。などを。
「どういう自転車に乗ってたか、って覚えてるかな?」と警官は尋ねてきた。
自転車・・・「やたらに前カゴが大きい自転車に乗ってました。」
警官は何かを考える素振りを見せ、俺に「店から一人で出たきたときには・・・自転車はもう壊されていたの?」と尋ねた。
そういえば、あのときはあの爺さんに夢中で、自転車のことなど気にしてなかった!
「分かりません。その人に見られてる、ってことでパニックになっちゃって・・・」
すると警官が、母親に「ちょっといいですか・・・」と言って交番の奥に行ってしまった。
十分くらいして母親と警官が戻ってきた。
母親が、警官に「いろいろとありがとうございました。」と言って礼を言い、深々とおじきをした。
交番からは徒歩で家へ帰った。
母親と警官がどういう話をしたかが気になったが、何度訊いても「大した話じゃないわよ」としか答えてくれなかった。
そしてその夜。
もう少しで眠るか・・・と夢うつつだった時。
家の玄関をバンバンと叩く音が聞こえた。
時間は夜中の1時。
しかも、「何故だーーーーー!!!」という叫び声と共に。
俺は震え上がった。
家がバレてる・・・
しかし、ふと疑問に思うことがあった。
俺は、母親と一緒の部屋で寝ている。
なのに、母親が一切起きない。
バンバン。
「危ねぇだろーーーーーー!!!」
こんなに大きな音を立てているのに。
母親は起きてこない。
俺は母親を起こした。
「何よ、こんな時間に・・・」
「何じゃないよ!ほら、音!!爺さんが玄関で!!」
まだ音は聞こえる。
しかし、母親は眉間にしわを寄せて「あなた・・・やっぱり・・・」と言って泣き出してしまった。
翌日。
ピンポーン。
と呼び鈴が鳴った。
「はーい」と母親が玄関を開ける。
「ああ、いらしてくれたのね。」
玄関の前には、若い男が私服姿で二人立っていた。
男たちは家に入り込み、リビングでくつろいでいた俺のところに来た。
男の一人が俺をひょいと持ち上げ、そのまま外へ連れ出そうとした。
俺は何が何だか分からず、母親のほうを見た。
すると母親は、俺のことを何かおぞましい物をみているかのような目で見てきた。
「え・・・?」
俺を担いでいた男がその手を離し、俺を床に落とした。
「痛てぇぇぇぇぇ!!」
俺は叫んだ。
俺はまた母親のほうを見たが、途端に視線を逸らされた。
もう一人の男が、床に仰向けに転がっている俺の腹に向かって思い切り頭突きしてきた。
「グエッ」
俺は声にもならぬ声を出した。
その男は一度のみならず、何度も頭突きしてきた。
俺は完全に意識を失ったが、意識を失う直前に全てを理解した。
いつの間にか部屋から出てきた父親の笑顔を見た瞬間に・・・・
やっぱりこの話分かりづらいか・・・
主人公は、ちょっと精神がおかしい子で、両親は世話に疲れていた。
それでも、普通に生活ができるようになるまでは・・・と思っていた。
主人公は、実は自転車など持っていなかった。
なのに「自転車が〜」などというから首をかしげた。
その夜、ありもしない音に怯える息子を見て
完全に理性を失った、と思った母親は、夫と相談して
障害者である息子を殺害することを決めた。
しかし、我が子を自らの手で殺すのはためらわれたので
殺し屋に頼むことにした。
どうせ幻覚を見ているのだから痛みも
感じずに死ねるだろう、と両親は思った。
母親は、完全に頭がイッちゃった息子を見て愛情のかけらも失っていた。
父親も、もうこれで障害者の世話をしなくて済むと思い、安堵した。
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