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2019年03月12日

ビニール袋


あの日、わたしは本気で怒っていました。

むりやり心霊スポットに連れて行かれたからでした。

バイト先で仲良くなったA子はオカルト好きで自分でも霊感体質だと言いました。

わたしは霊感体質ではなかったし、そんな体質じゃなくて良かったと思っていますが、とにかく怖い話しが苦手でした。

理由は怖いからです。

怖いから本当に聞くのが嫌でした。

関わるのも嫌で「この話しを読んだ人は一週間以内に」みたいなのも、それらしい文章はすぐに読むのをやめました。

最近になってやっとオカルト板やこのスレを読むようになりました。

自分のペースでオカルトにも少し慣れようと思ったからです。

友達と旅行に行く機会が増えたせいで自分が怖がり過ぎで浮いてしまって、みんなに悪い気がしたし、自分が弱すぎる気がしたからです。

ある日、わたしは同じ時間にバイトとを上がったのでA子の車で送って貰うことになってました。

同じ時間で終わる時はいつも同乗させて貰ってたし、たいてい帰りにミスドやファミレスに寄り道してお喋りしました。

その日はもうひとり新しくバイトに入ったB子さんも同じ時間で終わり方向も一緒なのでA子の車で帰ることになりました。

B子はマジメそうで明るく感じがいい子でした。

それでA子の車に3人乗りました。

B子は面白いというかその場のテンションを上げる楽しい子です。

話しのはずみでA子とB子が盛り上がり、最近首吊り自殺があった公園に行こうという話しになりました。

夜9時過ぎでしたが、その公園は少し山裾を登った場所にあり、わたしは絶対嫌だと言いました。

ふたりでいる時はわたしが嫌がるとやめてくれるA子がその日はどうしても車からわたしを降ろしてくれません。

わたしは空気を悪くして申し訳ないと思いましたが、赤信号で止まった時、強引に助手席から降りる決心をしました

ところがです。

いくつも信号があるのに一度も赤信号に引っ掛からなかったのです。

とうとう山越えをする道路に入ってしまいました。

公園に着くとA子とB子は降りると言いました。

「公園の前を通過するだけ」と言っていたのに。

わたしは猛烈に腹が立ってきて「わたしは降りない」と言いました。

ところがB子が「ひとりで残るほうが怖くないですかぁ」と柳原加奈子みたいな調子で言うのです。

わたしはB子に悪気はなく、軽い気持ちでわたしをからかってるだけだとはわかっていましたが、本気で腹が立ちました。

怖がり過ぎる自分自身への腹立ちも強かったと思います。

言いなりの自分への腹立ちもあり、わたしはつまらないことを思いつきました。

「憑かれたふりをしてやろう」と思ったのです。

なんか陰湿だし、バカだったと思います。

公園は山裾の雑木林に囲まれていて、公園と言うよりグランドみたいなつくりになってました。

街燈みたいなのがグランドの周囲を囲んでいるからけっこう明るく人がいないけど思ったほど不気味ではなかったです。

で、わたしはわざと無表情を作り、おばけに憑かれたフりを装いましたがA子もB子も気付いてくれません。

わたしが不機嫌なのだと思っただけだったのでしょう。

公園の入り口から5段ほどのレンガの段差に外野を囲まれたグランドに降り真ん中あたりに進んだ時です。

わたしは立ち止まり、精一杯虚ろな目を作りながら一番遠くにある街燈を見つめました。

その街燈にはスーパーの白いビニール袋が引っ掛かかっていました。

A子とB子は「どしたん?」と言いながらわたしが見つめる街燈を見ました。

A子「白いの何?」

B子「ビニール袋やん?大丈夫(笑」

A子「降りる時メガネ置いてきたから見えなーい」

その時、ビニール袋が風をはらんで街燈から外れ、一直線にグランドをこちらに転がってきたのです!

わたし達3人は、B子の「キャー!」を合図にいっせいに走り出しました。

距離にすれば100m近くを一直線にこちらに転がってきたのです。

車に駆け込んだときビニール袋を見るとレンガの段差のところで止まったみたいでした。

A子が慌ててUターンさせてアクセルを踏んだ。

すぐにB子が「あれーっ!」と指さす方を見てしまったのです。

遠ざかる運動公園のフェンスにビニール袋がへばりついていました。

こっちを睨みながら見送っているようにしか見えませんでした。

それより何より、一番何より怖かったのは、ビニール袋が引っ掛かかっていた街燈が首吊り自殺があったまさにその場所だと後で知った時です。

最近の事件ですし、地元の発見者周辺からの情報でしたから、本当にその街燈がそれじゃないかと思うからです。
posted by まとめ at 08:00 | 怖い話
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