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2019年04月15日
黒い物体
初めまして。
早速 体験談を載せますが、これは今年の三月頃に書いて、記録していたものです。
ふと、大学に入ってから気付いた事があった。
大学の講義やバイト、或いは友人との約束もない休日というのは、案外と暇なものである。
高校時代は部活や塾などで時間を取られることが多かったからか、それは余計に感じることだった。
最近では、それにかこつけて昼前まで寝る堕落ぶりを見せている。
そんな偶の休日、私は散々読み返した小説を読んでいた。
ぱらぱらと何気なく頁を捲り、
「展開は当然知っているし、飽きてきたなあ」
などと欠伸を噛み殺していると、なにやら視界の隅っこで黒い物体が動いているのに気付いた。
襖に張り付いているようなのだが、それが妙な動き方で、少し動いては止まり、また動き始めるといった虫のような奴だった。
心なしか、その黒い物体の周囲が蠢いているようにも見える。
だが正直な話、虫とは考えたくない。
ゴキブリ等ならば、どんなに綺麗な家庭にも居るものだが、さすがにここまで堂々としていないだろう。
それにもし虫であるならば大きさが異常だ。
目算(とは言え、横目で見ているから不確かだが)で、15cmほどはあるのだから、もし虫であったら私も大暴れするしかない。
しかしこのままでは埒が明かない。
「虫じゃあ、ありませんように」
などと、完全に怖気付きながらも、ぱっとそちらを振り返ったのだが、(何もいないじゃないか)と、肩透かしを食らってしまった。
先ほどまでは確かに居たように思えた
「黒い物体」
は、その影も形も残していなかった。
すこし穴の開いた襖が閉じられているだけである。
あまりにも唐突な喪失であって、気持ち悪かったが、追求しても矢張り怖いので、私は特に何事もなかったかのように別の本を読み始めた。
わざとらしく、
「次はこっちでも読むかなあ」
と声をあげたのも、今思えば可笑しなことである。
それから30分ほど経ってか、黙々と頁をめくっていると、先の黒い物体がまたも視界の隅に現れたのだ。
やはり虫のように蠢き、確かな存在感がある。
今度はすぐさま振り返ったが、やはり何も居ない。
それがその日だけでも3回はあったと記憶している。
目の具合か、それとも頭でもおかしくなったのか。
前者ならば不安だけですむが、正直、この手の話はまず後者を疑われるものだ。
それに精神的なものだろうから、外傷判断も付かない。
幸いなことに、目の方はコンタクトの定期検査で、眼科の診断を受ける機会があったのだが、さしたる問題は無かった。
ならば残る可能性は後者なのだが、それは考えないようにしようと思う。
鼬ごっこになるのは目に見えているのだ。
そうして何日か過ごしている内に、やはり襖に黒い物体が蠢くことが時々だがあった。
もう前ほどに気にしなくなり、
「またか」
程度に流せるようになった。
しかしそれが逆に災いした。
先日気付いたのだが、冷静に横目で観察してみると、その黒い物体が、虫ではなく
「髪」
のような気がしてきたのである。
横目で襖を見てはいけない。
私の部屋のタブーである。
以上です。
最近は、それほど見かけないのでホッとしています。
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