2011年08月22日
「各駅」
それは多くのジンコウブツがそうであるように、
ひとつの例外もなく
鉄のパイプにぶら下がっていて、
わずかに許された猶予のなか、
触れ合うことなく、
それでいながらにして
単独であることに否をつきつけられた、
とうかんかくにぶら下がっていた
吊革が
ひとつ平行線の交わりにあわせて
揺れる。
まったく異なっていて、
それらがまったく同じように動いて、
バラバラだったものが一個の現象において、
ひとつの風景になる。
「でね、」
「そう。そのあと。」
「ボストンバック、現代風の、バレーボール部が持ってるようなさ。」
「わかる。」
「そこから出してきたわけ。」
「アンドーナツでしょ。」
「そう。前に座ってた女がね、膝の上に置いたそのバックから。それでさ、食べてるわけよ。」
「うん。」
「ずーっと食べてる。バックの中にアンドーナツの菓子袋があってさ。」
「そこから食べてるんでしょ?」
「そう。で、だいたいわかるじゃん。そろそろ食べ終わるな、みたいな。」
「うん。」
「で、終わったんだよ。あんどーなつは。」
「ああ。」
「そしたらこんど、ちょっと違う箇所から同じ動きでバームクーヘンが出てきた。」
「うん。」
「それも食べてるわけ。」
「うん。」
「ずーっと。」
「うん。あの、カットしたようなやつでしょ?」
「そう。そういうバームクーヘン。」
「そのあと、お茶を飲んだんだ。」
「お茶を。そうだね。あんどーなつとバームクーヘンを食べたらお茶が飲みたくなる。」
「そのあと、ちいさいシュークリームみたいのあるだろ?」
「ああ、カルシューね、チョコの入った。」
「そうそう。今度それを食べだした。」
「うん。」
「ずーっとだよ。ずーっと食べてる。」
「うん。」
「そのあと、あの、80円くらいのあるだろ?なんていったかな、棒みたいな。」
「ポッキー?」
「違うよ、そうじゃなくて、ラングドシャとかあるやつ。」
「ああ、プチシリーズね。」
「そうか、そう、そんな名前のやつ。」
「それ食べだしたの?」
「そうなんだよ、それこそ、ラングドシャだよ。」
「よく食べるねー。」
「そのあと、チーズが挟んであるようなビッツ、OREO、ちいさい甘食、ずーっと食べてる。」
「お茶も飲んでる?」
「お茶も飲んでる。2時間ずーっとだぜ?その膝の上のスポーツばっくもさ、すっかりしぼんで。」
「それでどうなったの?」
「降りてった。」
「はぁー。」
「俺は信じられなかった。2時間ずーっと、俺はそれを見てたんだぜ?」
ひとつの例外もなく
鉄のパイプにぶら下がっていて、
わずかに許された猶予のなか、
触れ合うことなく、
それでいながらにして
単独であることに否をつきつけられた、
とうかんかくにぶら下がっていた
吊革が
ひとつ平行線の交わりにあわせて
揺れる。
まったく異なっていて、
それらがまったく同じように動いて、
バラバラだったものが一個の現象において、
ひとつの風景になる。
「でね、」
「そう。そのあと。」
「ボストンバック、現代風の、バレーボール部が持ってるようなさ。」
「わかる。」
「そこから出してきたわけ。」
「アンドーナツでしょ。」
「そう。前に座ってた女がね、膝の上に置いたそのバックから。それでさ、食べてるわけよ。」
「うん。」
「ずーっと食べてる。バックの中にアンドーナツの菓子袋があってさ。」
「そこから食べてるんでしょ?」
「そう。で、だいたいわかるじゃん。そろそろ食べ終わるな、みたいな。」
「うん。」
「で、終わったんだよ。あんどーなつは。」
「ああ。」
「そしたらこんど、ちょっと違う箇所から同じ動きでバームクーヘンが出てきた。」
「うん。」
「それも食べてるわけ。」
「うん。」
「ずーっと。」
「うん。あの、カットしたようなやつでしょ?」
「そう。そういうバームクーヘン。」
「そのあと、お茶を飲んだんだ。」
「お茶を。そうだね。あんどーなつとバームクーヘンを食べたらお茶が飲みたくなる。」
「そのあと、ちいさいシュークリームみたいのあるだろ?」
「ああ、カルシューね、チョコの入った。」
「そうそう。今度それを食べだした。」
「うん。」
「ずーっとだよ。ずーっと食べてる。」
「うん。」
「そのあと、あの、80円くらいのあるだろ?なんていったかな、棒みたいな。」
「ポッキー?」
「違うよ、そうじゃなくて、ラングドシャとかあるやつ。」
「ああ、プチシリーズね。」
「そうか、そう、そんな名前のやつ。」
「それ食べだしたの?」
「そうなんだよ、それこそ、ラングドシャだよ。」
「よく食べるねー。」
「そのあと、チーズが挟んであるようなビッツ、OREO、ちいさい甘食、ずーっと食べてる。」
「お茶も飲んでる?」
「お茶も飲んでる。2時間ずーっとだぜ?その膝の上のスポーツばっくもさ、すっかりしぼんで。」
「それでどうなったの?」
「降りてった。」
「はぁー。」
「俺は信じられなかった。2時間ずーっと、俺はそれを見てたんだぜ?」
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