大阪市を廃止し、四つの特別区に再編する都構想。間近に迫った住民投票は、大阪市以外の自治体にもかかわる見過ごせない課題を投げかけている。
長年日本に住みながら日本国籍を持たない外国人が投票できない問題だ。納税などの義務を果たし、日本人と同じように暮らす人々が、地域の課題について意思表示できないのは不合理である。定住外国人に地方選挙権を認めようという動きはここ10年停滞しているが、これを機に実現をめざすべきだ。
都構想の住民投票の根拠となる大都市地域特別区設置法は、投票権について、公職選挙法を準用すると定めている。その公選法は、有権者を「日本国民」に限っている。
このため、在日コリアンら外国籍のまま大阪市で暮らす人は参加できない。なぜ地域の今後を決める重要な投票の権利がないのかという疑問や不満、無念の声が相次いでいる。
大都市法が8年前に議員立法で成立した際は、こうした問題は意識されていなかったという。市民団体などが、先の通常国会に法改正を求める請願を出したが、ほとんど議論されなかった。大都市法の改正にとどまらず、問題の根本にある公選法の見直しが不可欠である。
定住外国人の参政権は、外交や国防が絡む国政選挙とは切り離し、地方選挙を対象に1990年代から活発に議論され始めた。93年に大阪府岸和田市議会が付与を求める決議をした後、同様の動きが各地の自治体で続いた。95年には最高裁が、在日韓国人の請求を退けつつも、「永住者らに地方選挙権を与えることは憲法上、禁止されていない」として、立法政策にゆだねる考えを示している。
国政の場でも、公明党などが何度か法案を国会に出し、90年代末には自民・自由・公明3党の連立政権合意書に付与が明記されたが、自民党内の反対が根強く実現しなかった。2010年に民主党政権が法案提出を断念した後、議論自体が低調なまま今に至っている。
一方、自治体が条例で実施する住民投票では、市町村合併の是非を問うものを中心に、日本国籍のない外国人も参加した事例が200を超えた。政府は労働力不足を背景に、外国人を広く受け入れる政策を進めており、ともに暮らす住民として迎える姿勢が問われている。
投票したければ日本国籍を取得すればよいとの声も少なくないが、母国の国籍へのこだわりは自然な感情だろう。二重国籍を禁止しつつ地方選挙権も認めない日本は、先進国のなかで特異な存在だ。待ったなしの課題であると認識すべきだ。
朝日新聞10月30日【(社説)外国人と投票 地方選の門戸を開く時】より引用
問題提起としてはその通りだと思いますが。。。
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