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2015年11月25日
【しあわせのパン】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現
本日の映画紹介。
【しあわせのパン】
【出演者】
水縞りえ:原田知世
水縞尚:大泉洋
郵便屋さん:本多力
広川の旦那さん:中村靖日
広川の奥さん:池谷のぶえ
阿部さん:あがた森魚
陽子さん - 余貴美子
山下時生:平岡祐太
齋藤香織:森カンナ
未久:八木優希
未久のパパ:光石研
未久のママ:霧島れいか
阪本史生:中村嘉葎雄
阪本アヤ:渡辺美佐子
ナレーション(ヤギのソーヴァ):大橋のぞみ
〜〜〜Sponsords Link〜〜〜
【感想】
久しぶりの人の温かさの分かるよい映画でした。
深みがあって、何を言いたいかは、
見る人の受け取り方によって変わる映画。
ずるいですけどね〜。
3つのストーリーに分かれているから、
どれかのケースは当てはまってくるんです。
私としては、家族中心の2個目と3個目は、
とっても温かい気持ちになりました。
そのバランスを保つための脇役もいい。
なんかパンが食べたくてしょうがなくなりました。
細かなシーンが全て意味がある映画です。
これは何回か見ることで、目線変わるでしょう!
逆に皆さんの映画感想を聞いてみたい映画です。
一度見て、コメント欲しいくらいですよ!!!
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜〜りえのナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
初恋の相手はマーニだった。
諸学生のとき家の近くに図書館があって、
そこで立ち読みならぬ座り読みした月とマーニ。
少年マーニは自転車の籠に月を乗せて、
いつも東の空から西の空へと走っていきます。
ある日やせ細った月が言うのです。
「ねえマーニ。」
「太陽をとって。」
「いつも一緒にお空にいるととっても眩しくて。」
マーニは答えます。
「ダメだよ。太陽をとったら困っちゃうよ。」
「太陽をとったら君がいなくなっちゃうから。」
「夜に道を歩く人が迷っちゃうじゃないか。」
「大切なのは君が照らされていて、
君が照らしていると言うことなんだよ。」
マーニのことが大好きで。
私はずっとマーニを探していた。
だけどどんどん周りには、
好きじゃないものが増えていった。
大人になって働いて、いつの間にか大変で、
ただ1人の家族父が亡くなって大変で、
心がひとりで小さくなって、
もうマーニはいないのだと心に決めた。
そして東京で沢山の大変がたまった頃、
水縞君が月浦で暮らそうとそう言った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月浦のCAFEマーニ。
客の阿部へ手紙を届けた郵便屋さんは、
カフェに漂うコーヒーの匂いを深く嗅いだ。
水縞は言う。
「おはようございます。カンパーニュが焼けました。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
湖のほとりにあるCAFEマーニには、
りえさんの煎れるコーヒーと
水縞君の作る焼きたてのパン
季節のお野菜の料理。
そして遠くからのお客様が泊まれるよう
2階には温かいベットが用意されています。
一年ちょっと前この夫婦が月浦にやってきたとき、
なぜか私はこの2人を見つめていたいと思いました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「もう行かなきゃ。」
そう言ってりえの煎れたコーヒーと、
水縞が作ったカンパーニュを食べ終えて、
仕事に戻る郵便屋さん。
阿部を送り出したりえと水縞はカフェを出た。
向かったのは地獄耳の陽子さんのガラス工房。
「出来てるよ。鏡でしょ?あそこにかける。」
驚いて水縞は聞く。
「何で知ってるの?」
陽子は言った。
「私、耳だけは良く聞こえるから。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
地獄耳の陽子さんの作品が、
カフェには沢山並んでいるのです。
ひとつ良い事があると、
持っていた小銭をなんとなく貯める事にしています。
こんな風に2人のカフェは、
少しずつ出来上がって行くのです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夏のある日。
カフェに泊まりに来た若い女性、齋藤香織。
香織は近くの湖に行き友人に電話する。
「もしも〜し。今ビーチ。」
「お土産楽しみに待っててね。」
電話を切って深くため息をついた香織。
1人ボートに乗るが、転覆してしまう・・・
カフェにはもう1人客人が来ていた。山下時生。
久しぶりに訪れるが常連客の1人。
時生と話をしていると、
香織がずぶ濡れのまま帰って来た。
りえに言われてタオルを渡す時生。
その夜はトマトのパンとワインで夕食。
ワインを飲み続けた香織は酔っ払った。
明日が誕生日で本当は沖縄に行く予定だった香織。
しかし彼は急にドタキャンをしたと言う。
酔っ払い全てをりえと水縞に話した香織。
「もう帰らないでここに暮らしちゃおうかな〜。」
食事をしながら話を聞いていた時生は言う。
「ここにだっていろいろありますよ。」
そんな時生に絡みだす香織。
「時生君はここの人?」
「じゃあ毎日毎日静かで平和だ。」
「東京と違うもん。」
「東京で働くのってとっても大変なんですよ。」
それを聞いてイラっとした時生は聞く。
「でも好きで東京いるんですよね?」
それに対しても皮肉を言う香織。
「別に。生まれてからずっと東京だもん。」
「分からないと思うよ。君に。」
怒って席を立ち言った時生。
「それを恵まれてるって言うんじゃないですか?」
その夜、寝ようとしていた時生。
外から聞こえてくる声で寝付けずにいた。
外を見ると、香織が泣きながら騒いでいた。
「バカヤロー。」
それを見て笑ってしまった時生。
笑い声に気付いた香織は時生を見て言う。
「バカヤロー。」
翌朝二日酔いの香織。
りえは煎れたてのコーヒーを出していった。
「私もね。無理して笑うことあるんです。」
そして水縞の作ったパンを出して言う。
「素朴なパンもいいですよ〜。」
その日は香織の誕生日。
水縞夫婦は時生と香織を連れて買い物に行った。
広川さんの屋外販売所。
季節の野菜や果物、花が売られている。
そこで見つけたひまわりの花。
時生は一本のひまわりを買った。
買い物の帰り道、香織に話し掛けた時生。
「今日誕生日なんですよね?」
「これ。どうぞ。」
そう言ってひまわりの花を渡した。
香織は言う。
「暇なんだったらちょっと付き合って。」
そう言って誘ったのは湖のほとり、
日焼けするために日光浴。
そして時生のバイクに乗せてもらい、
シーサーやチンスコウを探しに町を回る。
見つからないなか、バイクはガス欠。
バイクを押して歩いていると、陽子が声をかけた。
「ちょっとあんたたち。沖縄土産探しているの?」
「いくついるの?」
そう言って香織に渡したもの・・・
『コロポックル』北海道に住むと言う妖精の木彫り。
陽子は言った。
「その人形持っていたら小さな幸せがくるらしいよ。」
香織は返した。
「私大きな幸せが欲しいの。」
一方水縞夫婦は買った野菜と果物で、
ジャムやパンを作っていた。
夜は屋外で夕食。香織の誕生日を祝った。
水縞が作ったのは、
お祝いの日に焼く特別なパン『クグロフ』。
他にも季節の野菜を使った料理が並ぶ。
香織の向かいに座った水縞は、
手でパンを半分にちぎってりえに渡した。
それを見て香織は素直にお礼を言った。
「あの。本当にありがとうございます。」
それに対してりえは言った。
「じゃあクグロフ食べましょうか。」
そう言って半分にナイフで切り、時生に渡した。
時生は半分に手でちぎり、香織に渡した。
食事を終わり夜空を見ていた香織と時生。
香織は時生に言う。
「かっこ悪い奴って思ったでしょ?」
時生は答えた。
「そうっすね〜。」
「でもかっこ悪い自分を知っている人が、
大人だと俺は思います。」
「だから香織さんを見たときに凄い笑えたんです。」
「一生懸命幸せになろうとしているんだな〜って。」
「もがいたことのある人間じゃないと、
幸せは無いと思います。」
「もがいてもがいて恥かいて、
いいじゃないですか香織さん。」
そして時生は自分の仕事の話をした。
電車のレールを切り替えるのが時生の仕事。
「レールは簡単に切り替わるのに、
俺の人生は簡単に切り替わらないんだなって。」
「線路がずっと続いているように見えても、
自分は北海道から出られないんですよ。」
「なんか俺、もがけないんです。」
時生の話を聞いて香織は答えた。
「それってさ。もがいてるじゃん。」
「来てみればいいじゃん東京に。一緒に行こう。」
時生を月を見ながら答えた。
「無理っすよ。仕事ないし・・・」
「でも俺、今日は月が綺麗に見える。」
翌朝目を覚ました香織。
1階に下りると時生の姿は無かった。
時生は今朝早く帰ったという。
「素朴なパンもいいですね。」
そう言って水縞の焼いたライ麦パンを購入した。
「会社のみんなに食べてもらおうと思って。」
「月浦のお土産です。」
そして帰ろうとした香織はりえに言った。
「私いままでで一番好きな誕生日でした。」
りえは答えた。
「これからもっと良い誕生日が着ますよ。」
水縞も香織に言う。
「また来てください。」
「いつでも家はここにありますから。」
最後に香織は2人に言った。
「時生君にいろいろ付き合ってくれて
ありがとうって伝えてもらえますか。」
バスを待つ香織は湖やカフェの近くの景色を見て、
「綺麗だな〜。悔しいけど綺麗。」
そう言った時だった、
バスの後ろからバイクに乗った時生が来た。
驚く香織の時生は言う。
「送るよ。乗って。」
「東京まで送ります。」
香織は笑顔で言った。
「マジで?じゃあよろしく頼むよ時雄君。」
香織の鞄の中ではコロポックルが揺れていた。
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
東京までの距離は1000キロ
誰にでも1人から2人になる瞬間があります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
遠くで2人の姿を見て微笑むりえと水縞だった。
りえは水縞に言う。
「時生君東京までちゃんと運転できるかな〜?」
水縞は答えた。
「大丈夫だよ。僕だって出来たんだから。」
「りえさん。ここで無理して笑うことないよ。」
「僕の欲しいものは1つだけですから。」
りえは聞く。
「何?ですか?」
水縞は答えた。
「内緒です。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
秋がやって来ました。
ほどよい日差し。ほどよい気温。ほどよい風。
こんな日は水島夫妻の散歩日和です。
秋はいろんなものが実る季節です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
栗拾いに出かけた2人。
そして栗を焼き、パンを作った2人。
誰もカフェにいないのを確認して、
こっそりガラス細工を置いて帰ろうとする陽子。
恒例となった行動に気付きりえが声をかける。
「陽子さん。栗のパン食べます?」
洗濯物を2人で干していると、
バス停の前で立っている女の子。
バスが来るが乗らずに、ただ立っている。
水島は言った。
「ホットミルク作っておくよ。」
うなずき女の子をむかえに行ったりえ。
女の子の名前は未久。
バスに乗らなかった理由は分からないが、
それについては何も聞かない水縞夫婦。
ホットミルクを飲んだ美久に水縞は言った。
「今から学校にパンの配達をしに行くから、
送って行ってあげようか?」
そして学校まで美久を送った水島。
学校では友達の中心にいた美久を見た。
学校が終わり家に帰った美久。
食卓テーブルには『買って食べて』の書置きと、
千円札が置かれていた。
無視して食卓に3つの容器を並べ座った美久。
そして持ち帰った給食の栗のパンを食べた。
その時帰って来た父。
学校に遅れていったことを聞く父に美久は言う。
「ママの作ったカボチャのポタージュ食べたい。」
次の日のバス停には、美久と父が並んで立っていた。
未久がバスに乗ったのを見て、父は1人カフェに来た。
「カボチャのパタージュスープってあるんですか?」
メニューにない注文で驚く水縞。
「えっ?」
その反応を見て話を変えた未久の父。
「いいです。コーヒーを1杯下さい。」
「ご夫婦でやっているんですか?」
「ここの出身じゃないですよね?」
水島は自分が札幌で、りえが東京と答えた。
「仕事辞められたんですか?」
そんな美久の父の質問に水縞は答える。
「好きな暮らしがしたいって思ったんです。」
「好きな場所で、好きな人と。」
「散歩して、食べたいもの食べて、パン焼いて。」
「自分たちが感じた季節を、
パンを食べてくれる方達に感じて欲しいんです。」
「ここの景色って毎日変わりますよね。」
「綺麗なだけじゃないです。」
そんな水縞の言葉に美久の父は言った。
「1人じゃなかったら出来ますよ。」
「誰かと一緒なら、出切る事ってあるんですよ。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
りえさんは訳も無く悲しくなることがあります。
そんな時水島君も私も悲しくなります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
学校の帰り道でカフェに立ち寄った美久。
りえは美久にカボチャのポタージュを出した。
それを見た美久は昔の母が作ったポタージュと、
それからの父と母の喧嘩など昔を思い出した。
母が出て行った時の事も・・・
「いらない。絶対にいらないから。」
「ごめんなさい。お邪魔しました。」
そう言ってカフェを出て行く美久。
翌日りえは美久へ手紙を出した。
『あったかいごはん作ってます。
お腹がすいたらきてください。』
水縞も美久の父へと手紙を出していた。
数日後の夜、美久がカフェに来た。
同じ日に美久の父もカフェに足を運んだ。
久しぶりの家族2人の夕食。
もちろんカボチャのポタージュも出した。
「カボチャのポタージュ・・・」
そう言うとカフェを飛び出した美久。
美久は悩んでいた。空を見上げて月を見た。
しばらくしてカフェに戻ってきた。
席に座るとポタージューを食べて言う。
「美味しいね。」
「でも、違うね。」
「ママのカボチャのスープとは違うね。」
「ママはもう戻らないんだよね?」
未久の父は言う。
「ママは戻らない。ごめんな。」
その話を聞いていた阿部さん。
いつも持ち歩いている大きな鞄を開けた。
中にはアコーディオンが入っていて、
何も言わずに演奏を始めた。
美久の父の目には涙がにじんでいた。
それを見た美久は父の側に行き言った。
「パパ。美久、パパと一緒に泣きたかった。」
水縞は1つのパンを出していった。
「お二人でどうぞ。」
父はパンをちぎって美久に渡した。
夕食を食べカフェを後にした未久と父。
「パパ。」
そう言って未久は父の手を握った。
美久と父が帰ったカフェでは、
「今夜の演奏代です。」
「りんごのハチミツパンです。」
そう言ってりえが阿部にパンを出した。
焼きたてのパンにハチミツをかけて、
阿部は冗談半分で言った。
「私は辛党なんですよ〜。」
「今夜はワイン頂いていいかな?」
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〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月浦に厳しい冬がやってきました。
そのお客様がやってきたのは、
月も凍りそうな夜のことでした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「少しの時間だけ寄せてもらってもいいですか?」
そんな電話が入り、駅にむかえに行った水縞。
客は老夫婦の阪本史生と妻のアヤ。
若い頃にアヤに告白して振られた史生。
史生は傷心旅行で月浦付近にいたが、
追いかけてきたアヤに月浦駅でプロポーズして、
結婚したと車の中で水嶋に話した。
「だから娘の名前は、
有珠の有と月浦の月で有月と付けましたんや。」
そしてカフェに着いた坂本夫婦。
咳き込むアヤに史生は言う。
「もうちょっとや。もうちょっとやで。」
りえがご飯を用意しようとすると史生は言った。
「すみません。こいつパンが嫌いなんです。」
「年寄りにはどうも苦手なもんで。」
しかしカフェには米は無く、
広川のもとへ米を貰いに行った水縞。
カフェを出るときに、りえに言った。
「ちゃんと見てて。何か変なんだよ。」
一方で史生とアヤは窓から外を見ていた。
「月が見えんな〜。」
そうアヤに言い『日之出湯』と書かれた暖簾と、
2人の結婚記念の懐中時計を見ていた。
懐中時計を止め、アヤの内服薬を捨てると、
史生はアヤを抱きしめた。
その時、吹雪だった空が晴れて月が見えた。
「そろそろ月を見に行こうか?」
「有月も待っているわ。」
史生はそう言ってアヤを連れ外に出ようとした。
止めるアヤだが聞かずに外に行こうとする。
水縞がちょうど帰ってきて、史生を連れ戻した。
「月ならこの窓からよく見えますから。」
カフェに戻った史生にりえは聞いた。
「一緒になられて何年ですか?」
史生は話し出す。
「50年近くになりますかね〜。」
「ずっと一緒に風呂屋やってきたんです。」
「地震で全部なくなりました。」
「有月も逝ってしもうて・・・
でも皆に温かいお風呂入ってもらおうと思って。」
「頑張って立て直してね〜。」
「地震のときにこいつ、残った風呂を見て、
これがホンマの露天風呂やなって笑ってました。」
「2人きりになってしまいました。」
「十分や。もう十分やなって、よう思うんです。」
「だってそうでしょ?」
「昨日できたことも今日はでけへん。」
「若いときはね、明日また違う自分がおるから
楽しみに出来るんですよ。」
「せやけど、なかなか出来なくなることばかりで・・・」
「あきません。」
そう言うと頭を抱えて泣き出す史生。
りえは坂本夫婦にポトフと、
炊き立てのご飯を差し出した。
ポトフを一口食べたアヤは、
カウンターに置かれた焼きたての豆パンを見て、
突然それを手に取り、口にいてた。
その行動に驚き史生は声をかけた。
「それパンや。食べられへんやろ。」
「パンおいしいんか?」
アヤはパンを食べて言った。
「美味しい。」
「お豆さんが入ったこのパン美味しいな。」
「私、明日もこのパン食べたいな。」
「お父さん。ごめんなさいね〜。」
泣きながら史生は言った。
「分かった。分かった。」
アヤは泣いている史生にパンをちぎって渡した。
その様子を見ていたりえは、
食器にパンを乗せ坂本夫婦に差し出して言った。
「アヤさん。明日もパン食べてください。」
その夜、1人パンの生地作りをしていた水縞。
それを見に来た史生。
「パンもええですな〜。」
そんな史生に水縞は言った。
「カンパーニュって言う言葉があるんです。」
「さてどういう意味でしょう?」
「ヒントです。もともとの語源は、
パンを分け合う人たちのことなんですが、
さてなんでしょう?」
答えを悩んでいた史生に水縞は続けて言う。
「史生さん。しばらく家で過ごしませんか?」
「もう少しいてくれたら、
ここから満月が見えるんですよ。」
チーズやじゃがいも、チキンや卵、
ワインを持ってくる仲間たち。
坂本夫婦にパンの作り方を教える水縞夫婦。
その夜は水縞夫婦、坂本夫婦を中心に、
阿部や郵便屋さん陽子さんに広川夫婦。
皆でワインを飲んで阿倍の演奏でダンスをする。
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
知ってますか?人は乾杯の数だけ幸せになれる。
ヨーロッパのどこかの国では、
そう言われているそうです。
何か良い事があったら乾杯して、
何か残念なことがあっても乾杯して、
1日の終わりを今日も誰かと乾杯と締めくくれたら、
それは幸せだと・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日りえが洗濯をしているからわらで、
月とマーニを読んでいたアヤは言った。
「お月さんがいてマーニがいる。
マーニがいてお月さんがいる。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月浦の真っ白な雪が、
りえさんの心を包んでいくのを私には分かりました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
数日後の満月の夜。
カフェの外で月を見た坂本夫婦。
綺麗な満月を見てアヤは史生に言う。
「綺麗ね〜。」
「月はずっとここにあるね〜。」
「明日も月浦にあるね〜。」
「これでお土産できましたわ〜。」
「お父さん。ありがとう。」
史生の持っていた懐中時計は動き出していた。
翌日帰ると言い出した坂本夫婦。
帰り際に史生は水縞に言った。
「カンパーニュの意味分かりましたわ。」
「共にパンを分け合う人々。」
「家族って言う意味違います?」
水縞は答えた。
「史生さん惜しいです。仲間って言う意味なんです。」
「でもそれが、家族の原点だと僕は思ってます。」
月浦駅で坂本夫婦を見送った、水縞夫婦。
りえは水縞に言った。
「ずっと。ずっと見てて私のこと。」
「水縞君のことも見てるから。」
「ありがとう水縞君。」
「私のためにここに来てくれて。」
春になって史生から手紙が届いた。
〜〜史生の手紙〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
りえさん、尚さん。
冬の頃はいろいろお世話になりました。
アヤはこの春亡くなりました。
マーニさんに行った時、
アヤには残された命が短くて、
私は月浦でそのまま一緒に
死ねるものなら死のうと考えていました。
だけどそれは大変傲慢でした。
アヤが前は食べなかったパンを
おいしそうに食べている姿を見て、
私は恥ずかしながら、
人間は最後の最後まで
変化し続けることを始めて気付いたのです。
アヤは懸命に生きてそして死んでいきました。
それを全て私は見届けることが出来たのです。
今私は風呂屋の番台にもう一度座って、
マーニさんのこと、
尚さんが焼いたおいしいパンのこと、
りえさんのスープ思い出しています。
あそこには自分たちの信じることを
心を込めてやっていく、
そんな地に足のついた
人間らしい暮らしがありました。
カンパーニュ。仲間と一緒に。
それこそ幸せがあるような気がいたします。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その日の夕食。
豆パンをちぎって、りえに渡す水縞。
りえは笑いながら水縞に言った。
「水島君。見つけたよ。」
「見つけた。私のマーニ。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この日、水島君の
たった一つの欲しいものが手に入ったようです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2人がお店を始めて、2周年目の記念日。
『しあわせのパン』と書いたメッセージカードと一緒に、
香織と時生、未久と美久の父、坂本さんなど
沢山の関わった人にパンを送る水縞夫婦。
その日の夕方。
出かけていたりえが走って帰って来た。
「来年のお客さん決まったよ〜。」
水縞は聞く。
「ずいぶん先のお客さん入ったんだね。」
「どこから来るの?」
りえは自分のお腹を指差して言った。
「ここ。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幸せって何なのか、まだ私には分かりません。
でも私は決めました。
水縞夫妻のところに生まれることを・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(終わり)
〜〜 関 連 商 品 〜〜
〜〜RIKUのメインブログ〜〜
・【アフィリエイトで稼ぐ】超初心者からの挑戦(リアルタイム)
〜〜RIKUのサブブログ〜〜
・「携帯・スマホゲーム」DORAKENを実際に攻略して・・・
・☆馬の気持ち☆
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【しあわせのパン】
【出演者】
水縞りえ:原田知世
水縞尚:大泉洋
郵便屋さん:本多力
広川の旦那さん:中村靖日
広川の奥さん:池谷のぶえ
阿部さん:あがた森魚
陽子さん - 余貴美子
山下時生:平岡祐太
齋藤香織:森カンナ
未久:八木優希
未久のパパ:光石研
未久のママ:霧島れいか
阪本史生:中村嘉葎雄
阪本アヤ:渡辺美佐子
ナレーション(ヤギのソーヴァ):大橋のぞみ
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【感想】
久しぶりの人の温かさの分かるよい映画でした。
深みがあって、何を言いたいかは、
見る人の受け取り方によって変わる映画。
ずるいですけどね〜。
3つのストーリーに分かれているから、
どれかのケースは当てはまってくるんです。
私としては、家族中心の2個目と3個目は、
とっても温かい気持ちになりました。
そのバランスを保つための脇役もいい。
なんかパンが食べたくてしょうがなくなりました。
細かなシーンが全て意味がある映画です。
これは何回か見ることで、目線変わるでしょう!
逆に皆さんの映画感想を聞いてみたい映画です。
一度見て、コメント欲しいくらいですよ!!!
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜〜りえのナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
初恋の相手はマーニだった。
諸学生のとき家の近くに図書館があって、
そこで立ち読みならぬ座り読みした月とマーニ。
少年マーニは自転車の籠に月を乗せて、
いつも東の空から西の空へと走っていきます。
ある日やせ細った月が言うのです。
「ねえマーニ。」
「太陽をとって。」
「いつも一緒にお空にいるととっても眩しくて。」
マーニは答えます。
「ダメだよ。太陽をとったら困っちゃうよ。」
「太陽をとったら君がいなくなっちゃうから。」
「夜に道を歩く人が迷っちゃうじゃないか。」
「大切なのは君が照らされていて、
君が照らしていると言うことなんだよ。」
マーニのことが大好きで。
私はずっとマーニを探していた。
だけどどんどん周りには、
好きじゃないものが増えていった。
大人になって働いて、いつの間にか大変で、
ただ1人の家族父が亡くなって大変で、
心がひとりで小さくなって、
もうマーニはいないのだと心に決めた。
そして東京で沢山の大変がたまった頃、
水縞君が月浦で暮らそうとそう言った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月浦のCAFEマーニ。
客の阿部へ手紙を届けた郵便屋さんは、
カフェに漂うコーヒーの匂いを深く嗅いだ。
水縞は言う。
「おはようございます。カンパーニュが焼けました。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
湖のほとりにあるCAFEマーニには、
りえさんの煎れるコーヒーと
水縞君の作る焼きたてのパン
季節のお野菜の料理。
そして遠くからのお客様が泊まれるよう
2階には温かいベットが用意されています。
一年ちょっと前この夫婦が月浦にやってきたとき、
なぜか私はこの2人を見つめていたいと思いました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「もう行かなきゃ。」
そう言ってりえの煎れたコーヒーと、
水縞が作ったカンパーニュを食べ終えて、
仕事に戻る郵便屋さん。
阿部を送り出したりえと水縞はカフェを出た。
向かったのは地獄耳の陽子さんのガラス工房。
「出来てるよ。鏡でしょ?あそこにかける。」
驚いて水縞は聞く。
「何で知ってるの?」
陽子は言った。
「私、耳だけは良く聞こえるから。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
地獄耳の陽子さんの作品が、
カフェには沢山並んでいるのです。
ひとつ良い事があると、
持っていた小銭をなんとなく貯める事にしています。
こんな風に2人のカフェは、
少しずつ出来上がって行くのです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夏のある日。
カフェに泊まりに来た若い女性、齋藤香織。
香織は近くの湖に行き友人に電話する。
「もしも〜し。今ビーチ。」
「お土産楽しみに待っててね。」
電話を切って深くため息をついた香織。
1人ボートに乗るが、転覆してしまう・・・
カフェにはもう1人客人が来ていた。山下時生。
久しぶりに訪れるが常連客の1人。
時生と話をしていると、
香織がずぶ濡れのまま帰って来た。
りえに言われてタオルを渡す時生。
その夜はトマトのパンとワインで夕食。
ワインを飲み続けた香織は酔っ払った。
明日が誕生日で本当は沖縄に行く予定だった香織。
しかし彼は急にドタキャンをしたと言う。
酔っ払い全てをりえと水縞に話した香織。
「もう帰らないでここに暮らしちゃおうかな〜。」
食事をしながら話を聞いていた時生は言う。
「ここにだっていろいろありますよ。」
そんな時生に絡みだす香織。
「時生君はここの人?」
「じゃあ毎日毎日静かで平和だ。」
「東京と違うもん。」
「東京で働くのってとっても大変なんですよ。」
それを聞いてイラっとした時生は聞く。
「でも好きで東京いるんですよね?」
それに対しても皮肉を言う香織。
「別に。生まれてからずっと東京だもん。」
「分からないと思うよ。君に。」
怒って席を立ち言った時生。
「それを恵まれてるって言うんじゃないですか?」
その夜、寝ようとしていた時生。
外から聞こえてくる声で寝付けずにいた。
外を見ると、香織が泣きながら騒いでいた。
「バカヤロー。」
それを見て笑ってしまった時生。
笑い声に気付いた香織は時生を見て言う。
「バカヤロー。」
翌朝二日酔いの香織。
りえは煎れたてのコーヒーを出していった。
「私もね。無理して笑うことあるんです。」
そして水縞の作ったパンを出して言う。
「素朴なパンもいいですよ〜。」
その日は香織の誕生日。
水縞夫婦は時生と香織を連れて買い物に行った。
広川さんの屋外販売所。
季節の野菜や果物、花が売られている。
そこで見つけたひまわりの花。
時生は一本のひまわりを買った。
買い物の帰り道、香織に話し掛けた時生。
「今日誕生日なんですよね?」
「これ。どうぞ。」
そう言ってひまわりの花を渡した。
香織は言う。
「暇なんだったらちょっと付き合って。」
そう言って誘ったのは湖のほとり、
日焼けするために日光浴。
そして時生のバイクに乗せてもらい、
シーサーやチンスコウを探しに町を回る。
見つからないなか、バイクはガス欠。
バイクを押して歩いていると、陽子が声をかけた。
「ちょっとあんたたち。沖縄土産探しているの?」
「いくついるの?」
そう言って香織に渡したもの・・・
『コロポックル』北海道に住むと言う妖精の木彫り。
陽子は言った。
「その人形持っていたら小さな幸せがくるらしいよ。」
香織は返した。
「私大きな幸せが欲しいの。」
一方水縞夫婦は買った野菜と果物で、
ジャムやパンを作っていた。
夜は屋外で夕食。香織の誕生日を祝った。
水縞が作ったのは、
お祝いの日に焼く特別なパン『クグロフ』。
他にも季節の野菜を使った料理が並ぶ。
香織の向かいに座った水縞は、
手でパンを半分にちぎってりえに渡した。
それを見て香織は素直にお礼を言った。
「あの。本当にありがとうございます。」
それに対してりえは言った。
「じゃあクグロフ食べましょうか。」
そう言って半分にナイフで切り、時生に渡した。
時生は半分に手でちぎり、香織に渡した。
食事を終わり夜空を見ていた香織と時生。
香織は時生に言う。
「かっこ悪い奴って思ったでしょ?」
時生は答えた。
「そうっすね〜。」
「でもかっこ悪い自分を知っている人が、
大人だと俺は思います。」
「だから香織さんを見たときに凄い笑えたんです。」
「一生懸命幸せになろうとしているんだな〜って。」
「もがいたことのある人間じゃないと、
幸せは無いと思います。」
「もがいてもがいて恥かいて、
いいじゃないですか香織さん。」
そして時生は自分の仕事の話をした。
電車のレールを切り替えるのが時生の仕事。
「レールは簡単に切り替わるのに、
俺の人生は簡単に切り替わらないんだなって。」
「線路がずっと続いているように見えても、
自分は北海道から出られないんですよ。」
「なんか俺、もがけないんです。」
時生の話を聞いて香織は答えた。
「それってさ。もがいてるじゃん。」
「来てみればいいじゃん東京に。一緒に行こう。」
時生を月を見ながら答えた。
「無理っすよ。仕事ないし・・・」
「でも俺、今日は月が綺麗に見える。」
翌朝目を覚ました香織。
1階に下りると時生の姿は無かった。
時生は今朝早く帰ったという。
「素朴なパンもいいですね。」
そう言って水縞の焼いたライ麦パンを購入した。
「会社のみんなに食べてもらおうと思って。」
「月浦のお土産です。」
そして帰ろうとした香織はりえに言った。
「私いままでで一番好きな誕生日でした。」
りえは答えた。
「これからもっと良い誕生日が着ますよ。」
水縞も香織に言う。
「また来てください。」
「いつでも家はここにありますから。」
最後に香織は2人に言った。
「時生君にいろいろ付き合ってくれて
ありがとうって伝えてもらえますか。」
バスを待つ香織は湖やカフェの近くの景色を見て、
「綺麗だな〜。悔しいけど綺麗。」
そう言った時だった、
バスの後ろからバイクに乗った時生が来た。
驚く香織の時生は言う。
「送るよ。乗って。」
「東京まで送ります。」
香織は笑顔で言った。
「マジで?じゃあよろしく頼むよ時雄君。」
香織の鞄の中ではコロポックルが揺れていた。
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
東京までの距離は1000キロ
誰にでも1人から2人になる瞬間があります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
遠くで2人の姿を見て微笑むりえと水縞だった。
りえは水縞に言う。
「時生君東京までちゃんと運転できるかな〜?」
水縞は答えた。
「大丈夫だよ。僕だって出来たんだから。」
「りえさん。ここで無理して笑うことないよ。」
「僕の欲しいものは1つだけですから。」
りえは聞く。
「何?ですか?」
水縞は答えた。
「内緒です。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
秋がやって来ました。
ほどよい日差し。ほどよい気温。ほどよい風。
こんな日は水島夫妻の散歩日和です。
秋はいろんなものが実る季節です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
栗拾いに出かけた2人。
そして栗を焼き、パンを作った2人。
誰もカフェにいないのを確認して、
こっそりガラス細工を置いて帰ろうとする陽子。
恒例となった行動に気付きりえが声をかける。
「陽子さん。栗のパン食べます?」
洗濯物を2人で干していると、
バス停の前で立っている女の子。
バスが来るが乗らずに、ただ立っている。
水島は言った。
「ホットミルク作っておくよ。」
うなずき女の子をむかえに行ったりえ。
女の子の名前は未久。
バスに乗らなかった理由は分からないが、
それについては何も聞かない水縞夫婦。
ホットミルクを飲んだ美久に水縞は言った。
「今から学校にパンの配達をしに行くから、
送って行ってあげようか?」
そして学校まで美久を送った水島。
学校では友達の中心にいた美久を見た。
学校が終わり家に帰った美久。
食卓テーブルには『買って食べて』の書置きと、
千円札が置かれていた。
無視して食卓に3つの容器を並べ座った美久。
そして持ち帰った給食の栗のパンを食べた。
その時帰って来た父。
学校に遅れていったことを聞く父に美久は言う。
「ママの作ったカボチャのポタージュ食べたい。」
次の日のバス停には、美久と父が並んで立っていた。
未久がバスに乗ったのを見て、父は1人カフェに来た。
「カボチャのパタージュスープってあるんですか?」
メニューにない注文で驚く水縞。
「えっ?」
その反応を見て話を変えた未久の父。
「いいです。コーヒーを1杯下さい。」
「ご夫婦でやっているんですか?」
「ここの出身じゃないですよね?」
水島は自分が札幌で、りえが東京と答えた。
「仕事辞められたんですか?」
そんな美久の父の質問に水縞は答える。
「好きな暮らしがしたいって思ったんです。」
「好きな場所で、好きな人と。」
「散歩して、食べたいもの食べて、パン焼いて。」
「自分たちが感じた季節を、
パンを食べてくれる方達に感じて欲しいんです。」
「ここの景色って毎日変わりますよね。」
「綺麗なだけじゃないです。」
そんな水縞の言葉に美久の父は言った。
「1人じゃなかったら出来ますよ。」
「誰かと一緒なら、出切る事ってあるんですよ。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
りえさんは訳も無く悲しくなることがあります。
そんな時水島君も私も悲しくなります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
学校の帰り道でカフェに立ち寄った美久。
りえは美久にカボチャのポタージュを出した。
それを見た美久は昔の母が作ったポタージュと、
それからの父と母の喧嘩など昔を思い出した。
母が出て行った時の事も・・・
「いらない。絶対にいらないから。」
「ごめんなさい。お邪魔しました。」
そう言ってカフェを出て行く美久。
翌日りえは美久へ手紙を出した。
『あったかいごはん作ってます。
お腹がすいたらきてください。』
水縞も美久の父へと手紙を出していた。
数日後の夜、美久がカフェに来た。
同じ日に美久の父もカフェに足を運んだ。
久しぶりの家族2人の夕食。
もちろんカボチャのポタージュも出した。
「カボチャのポタージュ・・・」
そう言うとカフェを飛び出した美久。
美久は悩んでいた。空を見上げて月を見た。
しばらくしてカフェに戻ってきた。
席に座るとポタージューを食べて言う。
「美味しいね。」
「でも、違うね。」
「ママのカボチャのスープとは違うね。」
「ママはもう戻らないんだよね?」
未久の父は言う。
「ママは戻らない。ごめんな。」
その話を聞いていた阿部さん。
いつも持ち歩いている大きな鞄を開けた。
中にはアコーディオンが入っていて、
何も言わずに演奏を始めた。
美久の父の目には涙がにじんでいた。
それを見た美久は父の側に行き言った。
「パパ。美久、パパと一緒に泣きたかった。」
水縞は1つのパンを出していった。
「お二人でどうぞ。」
父はパンをちぎって美久に渡した。
夕食を食べカフェを後にした未久と父。
「パパ。」
そう言って未久は父の手を握った。
美久と父が帰ったカフェでは、
「今夜の演奏代です。」
「りんごのハチミツパンです。」
そう言ってりえが阿部にパンを出した。
焼きたてのパンにハチミツをかけて、
阿部は冗談半分で言った。
「私は辛党なんですよ〜。」
「今夜はワイン頂いていいかな?」
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〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月浦に厳しい冬がやってきました。
そのお客様がやってきたのは、
月も凍りそうな夜のことでした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「少しの時間だけ寄せてもらってもいいですか?」
そんな電話が入り、駅にむかえに行った水縞。
客は老夫婦の阪本史生と妻のアヤ。
若い頃にアヤに告白して振られた史生。
史生は傷心旅行で月浦付近にいたが、
追いかけてきたアヤに月浦駅でプロポーズして、
結婚したと車の中で水嶋に話した。
「だから娘の名前は、
有珠の有と月浦の月で有月と付けましたんや。」
そしてカフェに着いた坂本夫婦。
咳き込むアヤに史生は言う。
「もうちょっとや。もうちょっとやで。」
りえがご飯を用意しようとすると史生は言った。
「すみません。こいつパンが嫌いなんです。」
「年寄りにはどうも苦手なもんで。」
しかしカフェには米は無く、
広川のもとへ米を貰いに行った水縞。
カフェを出るときに、りえに言った。
「ちゃんと見てて。何か変なんだよ。」
一方で史生とアヤは窓から外を見ていた。
「月が見えんな〜。」
そうアヤに言い『日之出湯』と書かれた暖簾と、
2人の結婚記念の懐中時計を見ていた。
懐中時計を止め、アヤの内服薬を捨てると、
史生はアヤを抱きしめた。
その時、吹雪だった空が晴れて月が見えた。
「そろそろ月を見に行こうか?」
「有月も待っているわ。」
史生はそう言ってアヤを連れ外に出ようとした。
止めるアヤだが聞かずに外に行こうとする。
水縞がちょうど帰ってきて、史生を連れ戻した。
「月ならこの窓からよく見えますから。」
カフェに戻った史生にりえは聞いた。
「一緒になられて何年ですか?」
史生は話し出す。
「50年近くになりますかね〜。」
「ずっと一緒に風呂屋やってきたんです。」
「地震で全部なくなりました。」
「有月も逝ってしもうて・・・
でも皆に温かいお風呂入ってもらおうと思って。」
「頑張って立て直してね〜。」
「地震のときにこいつ、残った風呂を見て、
これがホンマの露天風呂やなって笑ってました。」
「2人きりになってしまいました。」
「十分や。もう十分やなって、よう思うんです。」
「だってそうでしょ?」
「昨日できたことも今日はでけへん。」
「若いときはね、明日また違う自分がおるから
楽しみに出来るんですよ。」
「せやけど、なかなか出来なくなることばかりで・・・」
「あきません。」
そう言うと頭を抱えて泣き出す史生。
りえは坂本夫婦にポトフと、
炊き立てのご飯を差し出した。
ポトフを一口食べたアヤは、
カウンターに置かれた焼きたての豆パンを見て、
突然それを手に取り、口にいてた。
その行動に驚き史生は声をかけた。
「それパンや。食べられへんやろ。」
「パンおいしいんか?」
アヤはパンを食べて言った。
「美味しい。」
「お豆さんが入ったこのパン美味しいな。」
「私、明日もこのパン食べたいな。」
「お父さん。ごめんなさいね〜。」
泣きながら史生は言った。
「分かった。分かった。」
アヤは泣いている史生にパンをちぎって渡した。
その様子を見ていたりえは、
食器にパンを乗せ坂本夫婦に差し出して言った。
「アヤさん。明日もパン食べてください。」
その夜、1人パンの生地作りをしていた水縞。
それを見に来た史生。
「パンもええですな〜。」
そんな史生に水縞は言った。
「カンパーニュって言う言葉があるんです。」
「さてどういう意味でしょう?」
「ヒントです。もともとの語源は、
パンを分け合う人たちのことなんですが、
さてなんでしょう?」
答えを悩んでいた史生に水縞は続けて言う。
「史生さん。しばらく家で過ごしませんか?」
「もう少しいてくれたら、
ここから満月が見えるんですよ。」
チーズやじゃがいも、チキンや卵、
ワインを持ってくる仲間たち。
坂本夫婦にパンの作り方を教える水縞夫婦。
その夜は水縞夫婦、坂本夫婦を中心に、
阿部や郵便屋さん陽子さんに広川夫婦。
皆でワインを飲んで阿倍の演奏でダンスをする。
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
知ってますか?人は乾杯の数だけ幸せになれる。
ヨーロッパのどこかの国では、
そう言われているそうです。
何か良い事があったら乾杯して、
何か残念なことがあっても乾杯して、
1日の終わりを今日も誰かと乾杯と締めくくれたら、
それは幸せだと・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日りえが洗濯をしているからわらで、
月とマーニを読んでいたアヤは言った。
「お月さんがいてマーニがいる。
マーニがいてお月さんがいる。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月浦の真っ白な雪が、
りえさんの心を包んでいくのを私には分かりました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
数日後の満月の夜。
カフェの外で月を見た坂本夫婦。
綺麗な満月を見てアヤは史生に言う。
「綺麗ね〜。」
「月はずっとここにあるね〜。」
「明日も月浦にあるね〜。」
「これでお土産できましたわ〜。」
「お父さん。ありがとう。」
史生の持っていた懐中時計は動き出していた。
翌日帰ると言い出した坂本夫婦。
帰り際に史生は水縞に言った。
「カンパーニュの意味分かりましたわ。」
「共にパンを分け合う人々。」
「家族って言う意味違います?」
水縞は答えた。
「史生さん惜しいです。仲間って言う意味なんです。」
「でもそれが、家族の原点だと僕は思ってます。」
月浦駅で坂本夫婦を見送った、水縞夫婦。
りえは水縞に言った。
「ずっと。ずっと見てて私のこと。」
「水縞君のことも見てるから。」
「ありがとう水縞君。」
「私のためにここに来てくれて。」
春になって史生から手紙が届いた。
〜〜史生の手紙〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
りえさん、尚さん。
冬の頃はいろいろお世話になりました。
アヤはこの春亡くなりました。
マーニさんに行った時、
アヤには残された命が短くて、
私は月浦でそのまま一緒に
死ねるものなら死のうと考えていました。
だけどそれは大変傲慢でした。
アヤが前は食べなかったパンを
おいしそうに食べている姿を見て、
私は恥ずかしながら、
人間は最後の最後まで
変化し続けることを始めて気付いたのです。
アヤは懸命に生きてそして死んでいきました。
それを全て私は見届けることが出来たのです。
今私は風呂屋の番台にもう一度座って、
マーニさんのこと、
尚さんが焼いたおいしいパンのこと、
りえさんのスープ思い出しています。
あそこには自分たちの信じることを
心を込めてやっていく、
そんな地に足のついた
人間らしい暮らしがありました。
カンパーニュ。仲間と一緒に。
それこそ幸せがあるような気がいたします。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その日の夕食。
豆パンをちぎって、りえに渡す水縞。
りえは笑いながら水縞に言った。
「水島君。見つけたよ。」
「見つけた。私のマーニ。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この日、水島君の
たった一つの欲しいものが手に入ったようです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2人がお店を始めて、2周年目の記念日。
『しあわせのパン』と書いたメッセージカードと一緒に、
香織と時生、未久と美久の父、坂本さんなど
沢山の関わった人にパンを送る水縞夫婦。
その日の夕方。
出かけていたりえが走って帰って来た。
「来年のお客さん決まったよ〜。」
水縞は聞く。
「ずいぶん先のお客さん入ったんだね。」
「どこから来るの?」
りえは自分のお腹を指差して言った。
「ここ。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幸せって何なのか、まだ私には分かりません。
でも私は決めました。
水縞夫妻のところに生まれることを・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(終わり)
〜〜 関 連 商 品 〜〜
〜〜RIKUのメインブログ〜〜
・【アフィリエイトで稼ぐ】超初心者からの挑戦(リアルタイム)
〜〜RIKUのサブブログ〜〜
・「携帯・スマホゲーム」DORAKENを実際に攻略して・・・
・☆馬の気持ち☆
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2015年11月21日
【麦子さんと】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現)
本日の映画紹介。
【麦子さんと】
【出演者】
小岩麦子:堀北真希
小岩憲男(兄):松田龍平
赤池彩子(母):余貴美子
井本まなぶ(タクシー運転手):温水洋一
ミチル(墓地の受付):麻生祐未
麻生春男(旅館店主):ガダルカナル・タカ
麻生夏枝(旅館女将):ふせえり
麻生千蔵(春男の息子):岡山天音
やまだ(麦子の同僚):田代さやか
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【感想】
静かな映画です。
基本的に私の好きなタイプの映画。
主人公の考え方が変わっていくタイプの映画。
一人一人の役者さんの表情に注目です。
みんな実力者の俳優揃いなので、
演技を見ていて面白かったです。
ストーリー性に後一押しあったなら〜。
でも、この手の映画はこれくらいで良いのかも!
それが持ち味なんですね!
母の思いを感じたいときに見る映画です。
基本的に家庭環境的に感情移入はしにくいので、
その中でも見ていられる映画という点では、
良かったんだな〜。って感想書いていて思います。
【あらすじ】(ネタバレあり)
ある町に着いた小岩麦子は駅員に話しかけられた。
「本当に会ったこと無い?」
「なんか会った事あるような気がするんだけどな〜」
麦子は駅を出てタクシーに乗った。
八幡浜旅館までと伝えた麦子は帽子を脱いだ。
ミラー越しに麦子を見た運転手の井本まなぶは、
「なっ!!!」
と後ろを見た。
前を見ずに運転する井本に麦子は、
「前!前!前!」
自転車に乗った警察官をひいてしまう井本。
直ぐにタクシーを降りた井本は声をかける。
小さな町では警察官も知り合い。
鼻血を出す程度でおとがめなし。
タクシーに戻った井本は麦子に、
「昔の知り合いにあまりに似てたもんで。」
そして警察に再び話しかける井本。
「昔ここにいた彩子さんって覚えてない?」
警察は答えた。
「誰ですか?」
「鼻血出ちゃったじゃないですか。」
麦子は自分の持っていたポケットティッシュを、
警察官に渡した。
再び走り出したタクシーで井本は言った。
「30年くらい前かな?」
「君にそっくりな子がいてさ〜」
「赤池彩子ちゃんって言うんだけど。」
「みんな彩子ちゃんに夢中だったもんな〜」
それを聞いて麦子は答えた。
「もしかしてその彩子って言う人、
この人だったりして?」
そう言って骨箱を見せた麦子。
「その彩子って言う人、私の母親っぽいんだけど。」
またもや後部席を見る井本。
「だから前!」
怒られて前に視線を戻した井本は言う。
「そうか〜。彩子ちゃん亡くなったのか〜」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
バイトから家に帰った麦子。
マンションの前で兄の憲男が、
中年のオバサンと話をしていた。
「だから帰れって言ってるだろ。」
中年のオバサンさんは麦子を見て言う。
「麦ちゃん?」
それをあしらう様に憲男は言った。
「二度と来ないで。さようなら。」
家に入った麦子は憲男に聞いた。
「今の誰?」
憲男は答えた。
「ババアだよ。」
「ババアって言ったら母親だろ。」
戸惑う麦子に憲男は、
「そっかお前小さかったから覚えてないか。」
「あれババアだよ!」
「大体何年も連絡無かったに、
今更一緒に暮らそうなんて虫が良すぎるよ。」
「親父が死んでから3年間、
俺がこの家の家賃やら何やら
やりくりしてきたわけだし・・・」
「俺がさ。今はお前の親父だし、
母親みたいなもんじゃん。」
「だからさ。どうだっていいだろババアなんて。」
麦子は答えた。
「お兄ちゃんがいればいい。」
「本当感謝しているよ。」
その後もグチグチとお金について話す兄。
「あ〜。もう感謝してるって言ってるでしょ!」
次に日バイト先に来た彩子。
「麦ちゃん大きくなったね〜」
「お兄ちゃんから聞いていると思うけど。」
麦子は言った。
「私はあなたと暮らす気ないので。」
「今更あなたのお世話にならなくても、
2人でやっていくんで。」
母は続けた。
「一緒に生活したら、
その分楽になると思うんだけど。」
「このままだと今まで通り、
入金するの大変になると思うんだけど。」
麦子は驚いた。
「えっ?」
憲男の言っていることとは違い、
彩子は毎月15万入金していた。
その夜、彩子と憲男は家で話していた。
一緒に住むことを反対していた憲男。
しかし結論として一緒に暮らすことになった。
憲男は麦子に言う。
「一緒に住むことになったから。」
「正直言って、入金無かったらきついでしょ?」
彩子も麦子に言った。
「麦ちゃ〜ん。よろしくね〜。」
彩子の引っ越しが終わると、憲男は麦子に言う。
「俺さ〜。近々家をでようと思ってるんだよね。」
「だってあいつ、うぜ〜じゃん。」
「それに彼女から、
同棲したいって言われてるんだよね〜。」
嫌がる麦子の意見は聞かず、
数日後に憲男は引っ越していった。
残された麦と母。
彩子の目覚まし時計の音は大きく、
それでも目覚めない彩子。
週刊誌を捨てていいと伝えると、
単行本まで捨てる始末。
日々の慣れない生活が続いた。
毎日コンビニ生活の麦子だが、
彩子は手料理を作ってくれた。
どう接してよいのか分からない麦子。
ある日麦子は食材を買いに出かけ、
帰りの遅い彩子に料理を作った。
帰ってきた彩子に聞く。
「ねえ。豚カツ好きだっけ?」
彩子は答えた。
「私最近脂っこいものダメなんだよね〜。」
「どうして?」
麦子は言った。
「聞いただけ。」
しかし、麦子の作った豚カツを見つけた彩子。
「あれっ?この豚カツ麦ちゃんが作ったの?」
「ひょっとして?これ私に?」
麦子は照れながら答えた。
「そういうわけじゃないけど、余ったから。」
喜んだ彩子は言う。
「これ頂こうかな?」
強がる麦子。
「じゃあ勝手に食べれば。」
豚カツを口にして彩子は満面の笑みで、
「麦ちゃん。美味しいよ!」
しかし彩子はトイレに駆け込んだ母。
トイレから出て来た彩子は言う。
「ごめんね。ちょっと体調悪くてさ。」
心配そうに聞く麦子。
「ねえ。どっか悪いの?」
今度は彩子が強がり言う。
「ちょっと寝れば全然大丈夫。」
「麦ちゃん。ちょっとお願いしたいんだけど。」
「足が痺れちゃって。」
「ちょっとマッサージしてくれない?」
麦子は不機嫌そうに彩子に言う。
「私も疲れてるんだけど。」
そう言いながらもマッサージをしてあげた麦子。
ある日麦子は憲男の職場に行った。
「お願い。30万でもいいの。」
声優の専門学校へ入るための
入学資金を借りようとお願いしたのだった。
憲男は麦子に言った。
「悪いけど俺も金ねえし、無理だわ。」
「ババアに頼めば?」
「何時までも夢ばっかり追いかけないで、
俺みたいに真面目に働けば?」
そんな上から目線の憲男に麦子は、
「何よ偉そうに。もういい。」
そう言ってその場を後にした。
麦子が家に帰ると入学の資料が届いていた。
しかし、それを勝手に開けて見ていた彩子。
麦子の不満は爆発した。
「ねえこれ。何勝手にあけてるの?」
「それに台所何なの?散らかしぱっなしだし。」
「いつも寝てばっかじゃん。」
そのタイミングでなる目覚まし時計。
「だからうるさいって。」
そう言って目覚まし時計を投げつけた。
それでも怒らずに笑いながらに言う彩子。
「私に何かできることがあったら言ってね。」
「頼りないかもしれないけど、一応母親だし。」
麦子は怒りながら続けた。
「私あなたのこと母親だと思ってないから。」
数日後。彩子が死んだ。
駆けつけた麦子に憲男は言う。
「ババア。末期の肝臓がんだって。」
「意味分かんねえよな。」
「いきなり訪ねて来たと思ったら、
急に死にやがって。」
「まあ。ざまあねえよな。」
「家の家賃はどうするんだよって話だよ。」
そして麦子と憲男だけで彩子の葬儀を行なった。
骨となった彩子を見て憲男は言った。
「こんなに小さくなっちゃうんだもんな」
彩子の遺骨の前で憲男は泣いていた。
家に戻ると憲男は麦子に言った。
「四十九日のとき仕事休めないかも。」
「納骨くらい1人で大丈夫だろ。」
頷き憲男に聞いた麦子。
「あの人もしかして、
一緒に暮らそうって言ったのって、
自分が死ぬの近いって分かって・・・」
「そんな訳無いか・・・」
憲男は答えた。
「たまたまっしょ!」
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
タクシーは八幡浜旅館に着いた。
旅館に入ると店主の春夫と女将の夏枝が
麦子の顔を見て驚いた。
夏枝は昔の彩子の写真を持って来た。
初めて見た若かった頃の彩子の写真。
それは麦子と瓜二つであった。
「似すぎてて気持ち悪いな〜」
そう言った麦子に対して夏枝は言う。
「アイドル歌手目指してただけあって、
違う感じだったよね〜」
「本当あの時の佐江子ちゃんは可愛くて、
本物のアイドルみたいだったよ。」
旅館には彩子の娘が来たと知り、
続々と集まってくる町民たち。
みんな彩子との思い出話をする。
それは彩子を中心とした同窓会の様になっていた。
翌日麦子は墓地を訪れた。
受付にいたミチルは麦子を見て言った。
「信じられないわね〜。」
「綾子ちゃんが。まだ若いのに。」
「それにしてもそっくりね〜。」
しかし埋葬許可書がないと言われ、
埋葬が出来ない事になった麦子。
兄に電話したが直ぐには届かない。
宿に泊まるお金のない麦子を、
ミチルが家に泊めてくれた。
彩子と仲が良かったと話すミチル。
「綾子ちゃんが歌手目指して、
上京するまでよく遊んでたの。」
「実際難しかったんだろうけど、
彩子ちゃん本気で頑張ってたんだよ。」
翌日ミチルは観光案内をしてくれた。
そして作ってくれた料理は、
以前に彩子が作ってくれたカボチャ炊き込みご飯。
町民は皆、彩子にそっくりな麦子に優しかった。
ミチルの姿に彩子を照らし合わせた麦子。
麦子は声優を目指していることを教えた。
そしてミチルに言う。
「ミチルさん見たいな人が、
お母さんだったら良かったのにな。」
それを聞きミチルは言った。
「彩子ちゃんだって良いお母さんでしょ。」
すぐに反論した麦子。
「あの人はお母さんじゃないです。」
町で会った八幡浜旅館の息子の千蔵に誘われ、
町の祭りに行った麦子。
千蔵は麦子に井本とミチルの話をした。
井本は昔、彩子のストーカーだったという噂。
ミチルはバツイチで子供がいるとの話。
祭り会場のステージでは町民の演奏。
このイベントは40周年。
司会者は麦子を見て突然言った。
「これは珍しい人が着てますね。」
「以前この町に住んでいた、
赤池彩子さんのお嬢さんがお見えになってます。」
「せっかくなんで、
ステージに上がってきてもらいましょう。」
観客から拍手を送られ、
嫌々ながらもステージに上がった麦子。
「麦子ちゃんにステージに上がってもらうと、
まるでタイムスリップした気分になりますね。」
「タイムスリップついでに麦子ちゃんにも、
赤いスイートピー歌ってもらいましょうかね〜。」
断る麦子だが、半強制で曲が流れ出す。
しかし歌えない麦子・・・
祭り会場で麦子は夏枝に会った。
麦子は夏枝に言った。
「お祭り凄い盛り上がってるみたいですね〜。」
夏枝は返した。
「でも昔はもっと盛り上がったのよ。」
「綾子ちゃんが歌ったときが、
ピークだったんじゃないかな?」
そんな話に水を差したのは千蔵。
「ババアさ〜。金貸して。」
相変わらずの態度を見て麦子は言う。
「私帰ろうかな?」
帰るとミチルはご飯を作って待っていた。
そんなミチルに麦子は言う。
「子供に会いたいと思わないんですか?」
ミチルは答えた。
「え〜。誰かから聞いちゃった?」
「もちろん会いたいよ。」
「今は会わないほうがいいかなって・・・」
「麦子さんなら分かると思うけど、
お互いいろいろあるじゃない。」
麦子は言った。
「私には良く分からないです。」
翌朝、麦子をボウリングに誘った井本。
井本に麦子は彩子のことを聞いた。
「あの人のこと好きだったんですか?」
井本は答えた。
「そりゃ好きだったけど、
俺だけじゃなかったけどね〜。」
麦子は続けて聞く。
「まさか、告白とかしてないですよね?。」
井本は昔の事を話した。
「彩子ちゃんが上京するとき、
たまたま駅で会ったんだよね。」
「歌手になること、
ずっと両親に反対されてたんだよね。」
「それでついに家を飛び出そうと決心したんだよ。」
「最後に気持ちだけでも伝えようかと思ったけど、
結局言えなかったよ・・・」
家を出た彩子は凄い荷物を抱えて駅にいた。
そこで井本に会い井本に話したという。
反対していた両親がお金や荷物まで渡してくれた。
鍋やら目覚まし時計やら沢山を・・・
「向こうじゃ起こしてくれる人いないだろうって、
目覚まし時計まで無理やり渡されちゃった。」
「本当。おかしいよね。頑張らなきゃだね。私。」
その話を聞き、
自分が投げた目覚まし時計を思い出した麦子。
その後ミチルと合流して居酒屋に行った麦子。
お酒が入りミチルに絡む麦子。
「なんで子供に会わないの?」
「いつでも会おうと思えば会えるのに何で?」
ミチルは濁す。
「それは色々と事情があるじゃない。」
麦子は食い下がらず続ける。
「はあ?どんな事情があるって言うんですか?」
ミチルは言い訳を始めた。
「別れた旦那だってまだ若いし、
再婚だってするでしょ?」
「そしたら新しいお母さん、
子供たちは迎えるわけでしょ?」
「そしたら私って・・・」
麦子はミチルの言葉を遮り言った。
「そんなのそっちが勝手に決めているだけで、
子供には関係ないでしょ!」
その言葉を聞いて逆に質問するミチル。
「麦子ちゃんはどんな事情があるにせよ、
お母さんに会いに着て欲しかった?」
麦子は答えた。
「私は別に親なんてどうでもいい。」
それを聞いてミチルは悲しそうな顔をした。
その顔を見て麦子は続けた。
「悲しそうな顔するのやめて欲しいんだけど。」
「何そうやって悲壮感だしまくってるの?」
「結局会えないのはさ、
自分で理由膨らましているだけじゃん。」
「それなのに、
私も会いたいの〜。辛いの〜。って顔して。
自分を正当化して逃げているだけじゃん。」
「いい大人が本当にバカみたい。」
大人の対応をするミチル。
「そうよね〜。麦子ちゃんの言う通りね。」
「麦子ちゃんは、
本当に会いに着て欲しいって思わなかった?」
「会いたいって思わなかった?」
麦子は答える。
「私は一度も思ったことは無かったです。」
「あの人が死んだ時だって、
まったく悲しくなかったし。」
「ミチルさんの子供も、
会いたいと思わないんじゃないですか?」
「もしかしたらミチルさんが死んだときも、
私みたいに涙1つ見せないかもしれないですよ。」
ずっと話を聞いていた井本がとめた。
「麦子ちゃん。
そんなガキみたいなこと言うの止めなよ。」
麦子は怒った。
「ガキってなんですか?」
「私別に間違ったこと言ってないと思うけど。」
井本は諭した。
「それがガキだって言ってるんだよ。」
「本当はお母さんに
会いたくてしかたなかったくせに。」
「もっと素直になったほうがいいんじゃないの?」
「ミチルちゃんは彩子ちゃんじゃないんだよ。」
「お母さんにいえなかったこと、
ミチルちゃんにぶつけたって仕方ないでしょ。」
「麦子ちゃん。佐江子ちゃんはもういないんだよ。」
「麦子ちゃんも色々辛かっただろうし、
腹立つことも色々あるだろうけど、
もう許してあげなよ。」
「麦子ちゃんのお母さんは1人しかいないんだよ。」
「彩子ちゃん1人なんだよ。」
その日麦子は、遺骨を抱えて旅館へ言った。
ミチルの家には泊まり難く、旅館で一泊した。
翌日。いよいよ納骨の朝。
旅館を後にしようとした麦子。
そこに千蔵が来て夏枝に言う。
「ねえ、一万円貸してよ。」
夏枝は鼻で笑い言う。
「どうせパチンコでも行くんでしょ?」
笑った夏枝を千蔵は突き倒した。
その瞬間麦子は千蔵の頬をぶっていた。
墓地に着くとミチルがいた。
「昨日は泊まるとこ大丈夫だったの?」
酷い事を言ったはずなのに、
優しく大人の対応をするミチル。
麦子は素直に謝った。
「昨日は私酔っ払っていろいろすみませんでした。」
「私ってガキですね。」
「昨日井本さんが言ってたことその通りだなって。」
「ずっとお母さんに会いたいって思ってたのに、
実際会ったらどう接していいか分からなくて。」
「ミチルさんも子供にあってあげてください。」
「きっと会いたいって思っているはずですよ。」
そしてミチルと共に納骨を終えた麦子。
「お母さんがっかりしただろうな〜。」
「結局最後まで心開かなかったし。」
麦子の言葉にミチルは言った。
「がっかりなんてしてないわよ。」
「私ね。佐江子ちゃんが東京行った後、
一度だけ会ったことがあるのよ。」
「お母さんのお墓参りに来たことがあってね。」
「そのときおなかの中には麦子ちゃんがいて。」
「歌手になる夢はかなわなかったけど、
今人生で一番幸せだって。」
「その時の彩子ちゃん、ものすごい綺麗だった。」
「麦子ちゃんに会えて嬉しかったはずよ。」
「でも安心したわ。」
「麦子ちゃんいつも彩子ちゃんのこと、
あの人って呼んでたけど、
今日はちゃんとお母さんって呼んでるから。」
麦子は言った。
「私お母さんにひどい事言ったんです。」
「母親と思ってないって・・・」
「そしたら、
母親じゃなければ何?父親と思ってるの?
ってくだらないこと言って笑ってたけど、
そのときのお母さん。凄い悲しそうだった。」
「その悲しそうな顔、毎日思い出すの。」
そう言って泣き出した麦子。
ミチルはそっと後ろから抱きしめた。
納骨が終わるり墓地を出ると、
井口が駅まで送ろうと待っていた。
そんな井口に麦子は言った。
「電車まで時間があるし歩いていきます。」
「歩きたい気分なんです。」
「いろいろとありがとうございました。」
井本のタクシーからは、
『赤いスイートピー』が流れていた。
駅まで歩く麦子。
麦子は『赤いスイートピー』を口ずさんでいた。
道ですれ違った警察官は、
以前渡したポケットティッシュを出して言う。
「これさ、こないだもらったやつ。」
「その中にさ、こんなの挟まってたんだけど。」
「これ大事なやつじゃないの?」
「返しておくから。」
それはなくしたと思っていた納骨許可証。
そして麦子は憲男に電話した。
「今から帰る。」
「来てよかったよ。本当はもっと居たいくらいだし。」
憲男は言う。
「もう少しゆっくりしていけば?」
麦子は答えた。
「そういうわけにはいかないよ。」
「帰ってバイトして、入学金ためなきゃだし。」
憲男は思い出したように言った。
「埋葬許可書探すときに家の中見たら、
ババアの通帳があって、
大した金額は入ってなかったんだけど、
それにメモが入っていて、
『少ないお金だけど麦子の夢に使ってください』
って書いてあったよ。」
「良かったな。じゃあ気をつけて帰れよ。」
横を通り過ぎた自転車。
その後ろに乗る小さな女の子。
自分と母と照らし合わせた麦子の脳裏に、
母の顔が思い出された。
駅につくと駅員は言った。
「なんかどっかで会ったような?」
「もしかして芸能人の人?」
麦子は笑った。
(終わり)
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【麦子さんと】
【出演者】
小岩麦子:堀北真希
小岩憲男(兄):松田龍平
赤池彩子(母):余貴美子
井本まなぶ(タクシー運転手):温水洋一
ミチル(墓地の受付):麻生祐未
麻生春男(旅館店主):ガダルカナル・タカ
麻生夏枝(旅館女将):ふせえり
麻生千蔵(春男の息子):岡山天音
やまだ(麦子の同僚):田代さやか
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【感想】
静かな映画です。
基本的に私の好きなタイプの映画。
主人公の考え方が変わっていくタイプの映画。
一人一人の役者さんの表情に注目です。
みんな実力者の俳優揃いなので、
演技を見ていて面白かったです。
ストーリー性に後一押しあったなら〜。
でも、この手の映画はこれくらいで良いのかも!
それが持ち味なんですね!
母の思いを感じたいときに見る映画です。
基本的に家庭環境的に感情移入はしにくいので、
その中でも見ていられる映画という点では、
良かったんだな〜。って感想書いていて思います。
【あらすじ】(ネタバレあり)
ある町に着いた小岩麦子は駅員に話しかけられた。
「本当に会ったこと無い?」
「なんか会った事あるような気がするんだけどな〜」
麦子は駅を出てタクシーに乗った。
八幡浜旅館までと伝えた麦子は帽子を脱いだ。
ミラー越しに麦子を見た運転手の井本まなぶは、
「なっ!!!」
と後ろを見た。
前を見ずに運転する井本に麦子は、
「前!前!前!」
自転車に乗った警察官をひいてしまう井本。
直ぐにタクシーを降りた井本は声をかける。
小さな町では警察官も知り合い。
鼻血を出す程度でおとがめなし。
タクシーに戻った井本は麦子に、
「昔の知り合いにあまりに似てたもんで。」
そして警察に再び話しかける井本。
「昔ここにいた彩子さんって覚えてない?」
警察は答えた。
「誰ですか?」
「鼻血出ちゃったじゃないですか。」
麦子は自分の持っていたポケットティッシュを、
警察官に渡した。
再び走り出したタクシーで井本は言った。
「30年くらい前かな?」
「君にそっくりな子がいてさ〜」
「赤池彩子ちゃんって言うんだけど。」
「みんな彩子ちゃんに夢中だったもんな〜」
それを聞いて麦子は答えた。
「もしかしてその彩子って言う人、
この人だったりして?」
そう言って骨箱を見せた麦子。
「その彩子って言う人、私の母親っぽいんだけど。」
またもや後部席を見る井本。
「だから前!」
怒られて前に視線を戻した井本は言う。
「そうか〜。彩子ちゃん亡くなったのか〜」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
バイトから家に帰った麦子。
マンションの前で兄の憲男が、
中年のオバサンと話をしていた。
「だから帰れって言ってるだろ。」
中年のオバサンさんは麦子を見て言う。
「麦ちゃん?」
それをあしらう様に憲男は言った。
「二度と来ないで。さようなら。」
家に入った麦子は憲男に聞いた。
「今の誰?」
憲男は答えた。
「ババアだよ。」
「ババアって言ったら母親だろ。」
戸惑う麦子に憲男は、
「そっかお前小さかったから覚えてないか。」
「あれババアだよ!」
「大体何年も連絡無かったに、
今更一緒に暮らそうなんて虫が良すぎるよ。」
「親父が死んでから3年間、
俺がこの家の家賃やら何やら
やりくりしてきたわけだし・・・」
「俺がさ。今はお前の親父だし、
母親みたいなもんじゃん。」
「だからさ。どうだっていいだろババアなんて。」
麦子は答えた。
「お兄ちゃんがいればいい。」
「本当感謝しているよ。」
その後もグチグチとお金について話す兄。
「あ〜。もう感謝してるって言ってるでしょ!」
次に日バイト先に来た彩子。
「麦ちゃん大きくなったね〜」
「お兄ちゃんから聞いていると思うけど。」
麦子は言った。
「私はあなたと暮らす気ないので。」
「今更あなたのお世話にならなくても、
2人でやっていくんで。」
母は続けた。
「一緒に生活したら、
その分楽になると思うんだけど。」
「このままだと今まで通り、
入金するの大変になると思うんだけど。」
麦子は驚いた。
「えっ?」
憲男の言っていることとは違い、
彩子は毎月15万入金していた。
その夜、彩子と憲男は家で話していた。
一緒に住むことを反対していた憲男。
しかし結論として一緒に暮らすことになった。
憲男は麦子に言う。
「一緒に住むことになったから。」
「正直言って、入金無かったらきついでしょ?」
彩子も麦子に言った。
「麦ちゃ〜ん。よろしくね〜。」
彩子の引っ越しが終わると、憲男は麦子に言う。
「俺さ〜。近々家をでようと思ってるんだよね。」
「だってあいつ、うぜ〜じゃん。」
「それに彼女から、
同棲したいって言われてるんだよね〜。」
嫌がる麦子の意見は聞かず、
数日後に憲男は引っ越していった。
残された麦と母。
彩子の目覚まし時計の音は大きく、
それでも目覚めない彩子。
週刊誌を捨てていいと伝えると、
単行本まで捨てる始末。
日々の慣れない生活が続いた。
毎日コンビニ生活の麦子だが、
彩子は手料理を作ってくれた。
どう接してよいのか分からない麦子。
ある日麦子は食材を買いに出かけ、
帰りの遅い彩子に料理を作った。
帰ってきた彩子に聞く。
「ねえ。豚カツ好きだっけ?」
彩子は答えた。
「私最近脂っこいものダメなんだよね〜。」
「どうして?」
麦子は言った。
「聞いただけ。」
しかし、麦子の作った豚カツを見つけた彩子。
「あれっ?この豚カツ麦ちゃんが作ったの?」
「ひょっとして?これ私に?」
麦子は照れながら答えた。
「そういうわけじゃないけど、余ったから。」
喜んだ彩子は言う。
「これ頂こうかな?」
強がる麦子。
「じゃあ勝手に食べれば。」
豚カツを口にして彩子は満面の笑みで、
「麦ちゃん。美味しいよ!」
しかし彩子はトイレに駆け込んだ母。
トイレから出て来た彩子は言う。
「ごめんね。ちょっと体調悪くてさ。」
心配そうに聞く麦子。
「ねえ。どっか悪いの?」
今度は彩子が強がり言う。
「ちょっと寝れば全然大丈夫。」
「麦ちゃん。ちょっとお願いしたいんだけど。」
「足が痺れちゃって。」
「ちょっとマッサージしてくれない?」
麦子は不機嫌そうに彩子に言う。
「私も疲れてるんだけど。」
そう言いながらもマッサージをしてあげた麦子。
ある日麦子は憲男の職場に行った。
「お願い。30万でもいいの。」
声優の専門学校へ入るための
入学資金を借りようとお願いしたのだった。
憲男は麦子に言った。
「悪いけど俺も金ねえし、無理だわ。」
「ババアに頼めば?」
「何時までも夢ばっかり追いかけないで、
俺みたいに真面目に働けば?」
そんな上から目線の憲男に麦子は、
「何よ偉そうに。もういい。」
そう言ってその場を後にした。
麦子が家に帰ると入学の資料が届いていた。
しかし、それを勝手に開けて見ていた彩子。
麦子の不満は爆発した。
「ねえこれ。何勝手にあけてるの?」
「それに台所何なの?散らかしぱっなしだし。」
「いつも寝てばっかじゃん。」
そのタイミングでなる目覚まし時計。
「だからうるさいって。」
そう言って目覚まし時計を投げつけた。
それでも怒らずに笑いながらに言う彩子。
「私に何かできることがあったら言ってね。」
「頼りないかもしれないけど、一応母親だし。」
麦子は怒りながら続けた。
「私あなたのこと母親だと思ってないから。」
数日後。彩子が死んだ。
駆けつけた麦子に憲男は言う。
「ババア。末期の肝臓がんだって。」
「意味分かんねえよな。」
「いきなり訪ねて来たと思ったら、
急に死にやがって。」
「まあ。ざまあねえよな。」
「家の家賃はどうするんだよって話だよ。」
そして麦子と憲男だけで彩子の葬儀を行なった。
骨となった彩子を見て憲男は言った。
「こんなに小さくなっちゃうんだもんな」
彩子の遺骨の前で憲男は泣いていた。
家に戻ると憲男は麦子に言った。
「四十九日のとき仕事休めないかも。」
「納骨くらい1人で大丈夫だろ。」
頷き憲男に聞いた麦子。
「あの人もしかして、
一緒に暮らそうって言ったのって、
自分が死ぬの近いって分かって・・・」
「そんな訳無いか・・・」
憲男は答えた。
「たまたまっしょ!」
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
タクシーは八幡浜旅館に着いた。
旅館に入ると店主の春夫と女将の夏枝が
麦子の顔を見て驚いた。
夏枝は昔の彩子の写真を持って来た。
初めて見た若かった頃の彩子の写真。
それは麦子と瓜二つであった。
「似すぎてて気持ち悪いな〜」
そう言った麦子に対して夏枝は言う。
「アイドル歌手目指してただけあって、
違う感じだったよね〜」
「本当あの時の佐江子ちゃんは可愛くて、
本物のアイドルみたいだったよ。」
旅館には彩子の娘が来たと知り、
続々と集まってくる町民たち。
みんな彩子との思い出話をする。
それは彩子を中心とした同窓会の様になっていた。
翌日麦子は墓地を訪れた。
受付にいたミチルは麦子を見て言った。
「信じられないわね〜。」
「綾子ちゃんが。まだ若いのに。」
「それにしてもそっくりね〜。」
しかし埋葬許可書がないと言われ、
埋葬が出来ない事になった麦子。
兄に電話したが直ぐには届かない。
宿に泊まるお金のない麦子を、
ミチルが家に泊めてくれた。
彩子と仲が良かったと話すミチル。
「綾子ちゃんが歌手目指して、
上京するまでよく遊んでたの。」
「実際難しかったんだろうけど、
彩子ちゃん本気で頑張ってたんだよ。」
翌日ミチルは観光案内をしてくれた。
そして作ってくれた料理は、
以前に彩子が作ってくれたカボチャ炊き込みご飯。
町民は皆、彩子にそっくりな麦子に優しかった。
ミチルの姿に彩子を照らし合わせた麦子。
麦子は声優を目指していることを教えた。
そしてミチルに言う。
「ミチルさん見たいな人が、
お母さんだったら良かったのにな。」
それを聞きミチルは言った。
「彩子ちゃんだって良いお母さんでしょ。」
すぐに反論した麦子。
「あの人はお母さんじゃないです。」
町で会った八幡浜旅館の息子の千蔵に誘われ、
町の祭りに行った麦子。
千蔵は麦子に井本とミチルの話をした。
井本は昔、彩子のストーカーだったという噂。
ミチルはバツイチで子供がいるとの話。
祭り会場のステージでは町民の演奏。
このイベントは40周年。
司会者は麦子を見て突然言った。
「これは珍しい人が着てますね。」
「以前この町に住んでいた、
赤池彩子さんのお嬢さんがお見えになってます。」
「せっかくなんで、
ステージに上がってきてもらいましょう。」
観客から拍手を送られ、
嫌々ながらもステージに上がった麦子。
「麦子ちゃんにステージに上がってもらうと、
まるでタイムスリップした気分になりますね。」
「タイムスリップついでに麦子ちゃんにも、
赤いスイートピー歌ってもらいましょうかね〜。」
断る麦子だが、半強制で曲が流れ出す。
しかし歌えない麦子・・・
祭り会場で麦子は夏枝に会った。
麦子は夏枝に言った。
「お祭り凄い盛り上がってるみたいですね〜。」
夏枝は返した。
「でも昔はもっと盛り上がったのよ。」
「綾子ちゃんが歌ったときが、
ピークだったんじゃないかな?」
そんな話に水を差したのは千蔵。
「ババアさ〜。金貸して。」
相変わらずの態度を見て麦子は言う。
「私帰ろうかな?」
帰るとミチルはご飯を作って待っていた。
そんなミチルに麦子は言う。
「子供に会いたいと思わないんですか?」
ミチルは答えた。
「え〜。誰かから聞いちゃった?」
「もちろん会いたいよ。」
「今は会わないほうがいいかなって・・・」
「麦子さんなら分かると思うけど、
お互いいろいろあるじゃない。」
麦子は言った。
「私には良く分からないです。」
翌朝、麦子をボウリングに誘った井本。
井本に麦子は彩子のことを聞いた。
「あの人のこと好きだったんですか?」
井本は答えた。
「そりゃ好きだったけど、
俺だけじゃなかったけどね〜。」
麦子は続けて聞く。
「まさか、告白とかしてないですよね?。」
井本は昔の事を話した。
「彩子ちゃんが上京するとき、
たまたま駅で会ったんだよね。」
「歌手になること、
ずっと両親に反対されてたんだよね。」
「それでついに家を飛び出そうと決心したんだよ。」
「最後に気持ちだけでも伝えようかと思ったけど、
結局言えなかったよ・・・」
家を出た彩子は凄い荷物を抱えて駅にいた。
そこで井本に会い井本に話したという。
反対していた両親がお金や荷物まで渡してくれた。
鍋やら目覚まし時計やら沢山を・・・
「向こうじゃ起こしてくれる人いないだろうって、
目覚まし時計まで無理やり渡されちゃった。」
「本当。おかしいよね。頑張らなきゃだね。私。」
その話を聞き、
自分が投げた目覚まし時計を思い出した麦子。
その後ミチルと合流して居酒屋に行った麦子。
お酒が入りミチルに絡む麦子。
「なんで子供に会わないの?」
「いつでも会おうと思えば会えるのに何で?」
ミチルは濁す。
「それは色々と事情があるじゃない。」
麦子は食い下がらず続ける。
「はあ?どんな事情があるって言うんですか?」
ミチルは言い訳を始めた。
「別れた旦那だってまだ若いし、
再婚だってするでしょ?」
「そしたら新しいお母さん、
子供たちは迎えるわけでしょ?」
「そしたら私って・・・」
麦子はミチルの言葉を遮り言った。
「そんなのそっちが勝手に決めているだけで、
子供には関係ないでしょ!」
その言葉を聞いて逆に質問するミチル。
「麦子ちゃんはどんな事情があるにせよ、
お母さんに会いに着て欲しかった?」
麦子は答えた。
「私は別に親なんてどうでもいい。」
それを聞いてミチルは悲しそうな顔をした。
その顔を見て麦子は続けた。
「悲しそうな顔するのやめて欲しいんだけど。」
「何そうやって悲壮感だしまくってるの?」
「結局会えないのはさ、
自分で理由膨らましているだけじゃん。」
「それなのに、
私も会いたいの〜。辛いの〜。って顔して。
自分を正当化して逃げているだけじゃん。」
「いい大人が本当にバカみたい。」
大人の対応をするミチル。
「そうよね〜。麦子ちゃんの言う通りね。」
「麦子ちゃんは、
本当に会いに着て欲しいって思わなかった?」
「会いたいって思わなかった?」
麦子は答える。
「私は一度も思ったことは無かったです。」
「あの人が死んだ時だって、
まったく悲しくなかったし。」
「ミチルさんの子供も、
会いたいと思わないんじゃないですか?」
「もしかしたらミチルさんが死んだときも、
私みたいに涙1つ見せないかもしれないですよ。」
ずっと話を聞いていた井本がとめた。
「麦子ちゃん。
そんなガキみたいなこと言うの止めなよ。」
麦子は怒った。
「ガキってなんですか?」
「私別に間違ったこと言ってないと思うけど。」
井本は諭した。
「それがガキだって言ってるんだよ。」
「本当はお母さんに
会いたくてしかたなかったくせに。」
「もっと素直になったほうがいいんじゃないの?」
「ミチルちゃんは彩子ちゃんじゃないんだよ。」
「お母さんにいえなかったこと、
ミチルちゃんにぶつけたって仕方ないでしょ。」
「麦子ちゃん。佐江子ちゃんはもういないんだよ。」
「麦子ちゃんも色々辛かっただろうし、
腹立つことも色々あるだろうけど、
もう許してあげなよ。」
「麦子ちゃんのお母さんは1人しかいないんだよ。」
「彩子ちゃん1人なんだよ。」
その日麦子は、遺骨を抱えて旅館へ言った。
ミチルの家には泊まり難く、旅館で一泊した。
翌日。いよいよ納骨の朝。
旅館を後にしようとした麦子。
そこに千蔵が来て夏枝に言う。
「ねえ、一万円貸してよ。」
夏枝は鼻で笑い言う。
「どうせパチンコでも行くんでしょ?」
笑った夏枝を千蔵は突き倒した。
その瞬間麦子は千蔵の頬をぶっていた。
墓地に着くとミチルがいた。
「昨日は泊まるとこ大丈夫だったの?」
酷い事を言ったはずなのに、
優しく大人の対応をするミチル。
麦子は素直に謝った。
「昨日は私酔っ払っていろいろすみませんでした。」
「私ってガキですね。」
「昨日井本さんが言ってたことその通りだなって。」
「ずっとお母さんに会いたいって思ってたのに、
実際会ったらどう接していいか分からなくて。」
「ミチルさんも子供にあってあげてください。」
「きっと会いたいって思っているはずですよ。」
そしてミチルと共に納骨を終えた麦子。
「お母さんがっかりしただろうな〜。」
「結局最後まで心開かなかったし。」
麦子の言葉にミチルは言った。
「がっかりなんてしてないわよ。」
「私ね。佐江子ちゃんが東京行った後、
一度だけ会ったことがあるのよ。」
「お母さんのお墓参りに来たことがあってね。」
「そのときおなかの中には麦子ちゃんがいて。」
「歌手になる夢はかなわなかったけど、
今人生で一番幸せだって。」
「その時の彩子ちゃん、ものすごい綺麗だった。」
「麦子ちゃんに会えて嬉しかったはずよ。」
「でも安心したわ。」
「麦子ちゃんいつも彩子ちゃんのこと、
あの人って呼んでたけど、
今日はちゃんとお母さんって呼んでるから。」
麦子は言った。
「私お母さんにひどい事言ったんです。」
「母親と思ってないって・・・」
「そしたら、
母親じゃなければ何?父親と思ってるの?
ってくだらないこと言って笑ってたけど、
そのときのお母さん。凄い悲しそうだった。」
「その悲しそうな顔、毎日思い出すの。」
そう言って泣き出した麦子。
ミチルはそっと後ろから抱きしめた。
納骨が終わるり墓地を出ると、
井口が駅まで送ろうと待っていた。
そんな井口に麦子は言った。
「電車まで時間があるし歩いていきます。」
「歩きたい気分なんです。」
「いろいろとありがとうございました。」
井本のタクシーからは、
『赤いスイートピー』が流れていた。
駅まで歩く麦子。
麦子は『赤いスイートピー』を口ずさんでいた。
道ですれ違った警察官は、
以前渡したポケットティッシュを出して言う。
「これさ、こないだもらったやつ。」
「その中にさ、こんなの挟まってたんだけど。」
「これ大事なやつじゃないの?」
「返しておくから。」
それはなくしたと思っていた納骨許可証。
そして麦子は憲男に電話した。
「今から帰る。」
「来てよかったよ。本当はもっと居たいくらいだし。」
憲男は言う。
「もう少しゆっくりしていけば?」
麦子は答えた。
「そういうわけにはいかないよ。」
「帰ってバイトして、入学金ためなきゃだし。」
憲男は思い出したように言った。
「埋葬許可書探すときに家の中見たら、
ババアの通帳があって、
大した金額は入ってなかったんだけど、
それにメモが入っていて、
『少ないお金だけど麦子の夢に使ってください』
って書いてあったよ。」
「良かったな。じゃあ気をつけて帰れよ。」
横を通り過ぎた自転車。
その後ろに乗る小さな女の子。
自分と母と照らし合わせた麦子の脳裏に、
母の顔が思い出された。
駅につくと駅員は言った。
「なんかどっかで会ったような?」
「もしかして芸能人の人?」
麦子は笑った。
(終わり)
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2015年11月15日
【彼岸島】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現)
本日の映画紹介。
【彼岸島】
【出演者】
宮本明:石黒英雄
宮本篤:渡辺大
青山冷:水川あさみ
雅:山本耕史
斉藤ケン:弓削智久
ユキ:滝本美織
ポン:森脇史登
西山:足立理
加藤:半田晶也
涼子:大村彩子
雷鬼:深水元基
幻鬼:坂上和子
五十嵐(吸血鬼):山本龍二
師匠:阿見201
大沢:パク・トンハ
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【感想】
以外に面白かった。
ストーリーをギュっと縮めた感は否めませんが、
それが逆にスピード感を持たせていたと思います。
無駄に後半CG使わなくても良かったかな〜
それくらいですが、内容としては面白い。
さすが原作が人気コミックだけあります。
最後が続くように思わせる作り方。
あれ個人的に嫌いです。
はっきりして欲しいですよね〜
あれはどの映画に関しても私に原点ポイント!
しかし、良くこの人選でここまで・・・
【あらすじ】(ネタバレあり)
吸血鬼に襲われた島民。
それを助けた宮本篤に島民は言う。
「見方なのか?」
「ああなんでだろ?」
「あんたが美味しそうなんだよ。」
篤は傷ついた人間に言った。
「こいつの血が体の中に入って感染したんだ。」
「もう直ぐあなたは死に、
そして奴らの仲間として復活する。」
そう言って感染した島民を殺した。
宮本明は高校に通っていた。
妹を振ったという理由で、不良にからまれる。
必死に逃げる明を助けたのは青山冷だった。
冷は失踪した明の兄、篤の免許証を渡した。
「事情は言えない。」
「でも篤さん、ちゃんと生きているわ。」
「明君。お兄さんに会ってみたいと思わない?」
その夜、幼馴染のケンたちにその話をした明。
次の日、明たちは冷を探した。
そして町で見かけた冷のあとをつけた。
冷は男と歩いて町の外れの廃墟へ入った。
そこで明たちが見たのは、
若い女性の首筋から血を吸う男。
驚き逃げた明たちを追って来た男。
足を擦りむいたユキの血の匂いに反応した男。
ユキを見つけるが、それをかばったケンが捕まり、
首筋をかまれてしまう。
助けようとした明。
力の差がありすぎて、捕まりそうになった時、
フォークリフトに乗った冷が、男をひいて助けた。
フォークリフトから降りた冷は、ハンマーを持ち、
動くはずの無い男の頭を何度も叩く。
それを見た明は冷に言った。
「もう死んでるだろ?」
冷は言い返す。
「まだよ。こいつは人間じゃない。吸血鬼なの。」
帰り道に明は冷に聞いた。
「彼女置いていくのか?」
冷は答えた。
「死んだ人にかまっている暇はないの。」
ケンも冷に聞いた。
「あの化け物、本当に吸血鬼なのか?」
「だったら俺もいずれ吸血鬼に?」
冷は答えた。
「あなたは血を吸われただけよ。」
「あいつの血が体内に入らない限り、
感染することはない。」
明は再び聞いた。
「なんでそんな化け物とつるんでた?」
冷は答えた。
「あいつは私の監視役よ。」
「私が奴らを裏切らないように見張ってたの。」
「2年前、
私の住む島に1人の吸血鬼が現れたの。」
「そいつは島の人間を次々に襲い、
吸血鬼にして島を支配しようとしたの。」
「そして、そのうち血が足りなくなり、
私はその調達係りをやらされてるの。」
「明君なら私たちを助けてくれると思ったの。」
「宮本篤の弟なら。」
「吸血鬼たちと命がけで戦っているわ。」
「お願い。私と一緒に奴等と戦って。」
「このままだと篤さんも危ないの。」
明の動く心が分かってか、ケンは横から口を挟んだ。
「あんたの言うことは信じられない。」
しかし明の意志は動いていた。
「俺1人でも行く。」
「島に行って兄貴を救い出す。」
「兄貴を見殺しにするなんて出来ないよ。」
そんな明にケンは言う。
「だったら1人で死んでこいよ。」
冷の住む島は表向きには存在しない島。
警察も信じてくれず、動くこともない。
明は竹刀を持ち冷の待つ船に向かった。
来ないと言っていたケンもバットを持って現れた。
後を追うように、ユキも西山もポンも来た。
一足遅れて加藤も・・・
ユキを見てケンは言う。
「ユキ。お前はダメだ。」
「いざって言うとき守ってやれるか分からねえ。」
ユキは言い返す。
「私たち何時だって一緒だったじゃない。」
「私だけ置いてけぼりにしないでよ。」
こうして冷の運転する船に乗った6人。
6人は表向き存在しない彼岸島に向かった。
地図にもないコンパスも反応しない島。
島に着いた7人。
人気のない奇妙な島を見てケンは言った。
「まるで墓場みたいだな。」
島中に彼岸花が生えていた。
彼岸花は毒性の強い花で、通称死人花とも呼ばれる。
昔は土葬した死体を、
動物が掘り荒らすのを防ぐために埋められた花。
島にある村についた一行。
急に変な音が聞こえ、冷は走り出した。
同時に真っ暗な民家に明かりがともり、
1人の老婆(幻鬼)が出てきた。
「こんな夜中に、
ほっつき歩いていると化け物に襲われるよ。」
その瞬間、多数の吸血鬼が襲ってきた。
抵抗できないまま捕まってしまった6人。
冷だけは走ってどこかへと消えていた・・・
牢屋に入れられた6人。
その屋敷からは人間の悲鳴が聞こえてくる。
守衛の吸血鬼は、その悲鳴を聞いて6人に言う。
「エサが1人死ねば、
次はお前たちの中の誰かが餌食になる。」
「誰が一番最初に選ばれるか楽しみだな〜」
そのころ冷は雅のもとにいた。
おびえる冷に雅は言った。
「人間の目は正直だ。」
「どんなに虚勢をはろうと嘘はつけん。」
「お前の目に今どんな感情が浮かんでいると思う?」
「不安と恐怖だ。」
そして冷の前に、
自分がハンマーで殺したはずの吸血鬼が現われた。
雷鬼と呼ばれる吸血鬼は死んでなかった。
雷鬼の情報で6人が島に来ることが分かったのだ。
おびえる冷に雅は言った。
「冷。本当に私を殺すつもりだったのか?」
そう言って小刀を冷に渡し、自分の首元につける雅。
「お前に寝首をかっ切られると思うとゾクゾクするよ。」
「憎しみと絶望に染まった血は極上の味だと聞く。」
「冷。本当か嘘か試してみよう。」
そう言って雅は冷の首筋から血を吸った。
一方牢には幻鬼が入ってきて、
その中の1名を餌食に連れて行こうとしていた。
皆をかばい自ら餌食になろうと牢屋を出たケン。
「明。あとは頼んだぞ。」
そう言うと牢屋を出て暴れだすケン。
狙いは守衛の持つ鍵。
ケンは取り押えられ連れて行かれるも、
ケンの狙い通り守衛は鍵を落とし、
それを手に入れることに成功する。
牢屋から抜け出す事に成功した5人と、
吸血鬼の実体実験場に連れて行かれたケン。
明とユキはケンを助けに行こうとするが、
それを止める西本。
「このまま飛び込んでも全滅するのがおちだろ。」
「ケンちゃんの気持ちを無駄にするな。」
それでもケンの元へと走り出すユキ。
ユキを追って明も向かった。
襲ってくる吸血鬼をナタで倒し、ケンを助けた明。
西本と待ち合わせ場所に約束した、
彼岸島の高台を目指した。
西本と加藤とポンも高台を目指していた。
しかしモタモタし前に進まないポン。
「ポン。頼むからもたもたするなよ。」
「てめえいつもドン臭いんだよ。」
そう言われたポンは、
「いざとなったら、また僕のこと見捨てるくせに。」
「もうお前たちのことなんか信じない。」
と言い出だし1人別行動をした。
必死で吸血鬼から逃げる明とケンとユキ。
山道を歩いていると一人の男が襲いかかってきた。
その顔を見てビックリする明。
その男は明たちを吸血鬼と思った篤であった。
明を見て驚いた篤は聞いた。
「お前たち、もしかして冷に連れてこられたのか?」
「それにしてもなぜ、のこのこ付いて来たんだ!」
明は答えた。
「だって。兄貴が心配だったから・・・」
篤は怒り言った。
「誰が心配してくれって頼んだ。余計なお世話だ。」
明たちは篤に守られて高台へとたどり着いた。
そこでまっていた西本と加藤。
合流したあと篤は、
旧日本軍の施設である隠れ家に皆を連れて行った。
ついてすぐに明は篤に聞く。
「兄貴。ポン探しに行っていいかな?」
篤は答えた。
「ダメだ。この周辺は危険だ。」
「むやみに動くと死ぬぞ。」
どこか昔と雰囲気の違う、冷血な篤。
優しかった兄貴を思い出しショックを受ける明。
そんな時、血だらけで戻ってきたポン。
「どうして探してくれなかったの?」
「僕だけ仲間はずれか・・・」
「みんな仲間だと思ってたのに・・・」
「昔から貧乏くじばかり引かされてたよな〜」
「それがお前たちの本心なんだよ。」
「腹の中じゃ僕のこと見下しているんだよ。」
明は答えた。
「違うって。」
そんな明の言葉を聞かずに、
「みんな許さない。」
怒鳴ったポンの目は赤く光り、牙が伸びていた。
そして明に襲い掛かるポン。
同時にライ鬼を筆頭に多数の吸血鬼たちが襲ってきた。
篤は明に言った。
「明何してる。早くそいつを切れ。」
それでもポンを切ることができない明。
見かねて篤はポンの頭に刀を差した。
「兄貴何やっているんだよ。ポンが死んじゃうだろ。」
そう言ってポンを抱きしめる明。
しかし吸血鬼たちは襲ってくる。
明を無理やり連れて逃げる篤。
逃げ続ける篤の前に現われた雅。
「私に挨拶もなしに立ち去るつもりか?」
「また腕を上げたな。」
「お前の目は憎しみで溢れている。」
「憎しみは人を生かして力を与える。」
そういう雅すらも無視して逃げるが、
途中でユキが吸血鬼に捕まってしまう。
ユキを助けようとする明。
しかしそれをも制して逃げる事に専念する篤。
逃げ切ることができたが、明は篤を殴り言う。
「なんでユキを見捨てた。」
「ポンだってそうだ。」
「何も殺すこと無かっただろ。」
篤は答えた。
「非情にならなければ、
ここでは生きていけないんだ。」
そして1つだけユキを救う方法があると、
4人をある場所へ連れて行く篤。
道の途中で明は篤に聞いた。
「涼子さんは?一緒じゃなかったの?」
篤の恋人だった涼子。
その名前を出され全ての経緯を話す篤。
「涼子は死んだ。俺のせいだ。」
「この島は涼子の生まれ故郷だった。」
当時、島にきた篤は結婚の了承を得た。
しかし島にある神社の尊堂で見たのは、
閉じ込められていた吸血鬼、雅であった。
目の前で雅に血を吸われて死んだ涼子。
何十年も監禁されていた雅を、
外に出したのが篤であったのだ。
そのころ雅はユキの元へ・・・
怖がるユキに、
「そんな顔するな。」
「本当の地獄はまだこれからだ。」
「私が究極の力を手にしたとき、
人間どもは知ることになる。」
「本当の絶望とはどんなものか・・・」
「やつらの泣き叫ぶ顔を眺めがら、
命を吸い尽くしてやるんだ。」
「これ以上の楽しみはない。」
篤は彼岸島で家族を殺された生き残り、
レジスタンスたちのもとへ4人を連れて行った。
そこにいる師匠と呼ばれる男は篤に言う。
「雅の首を取りに行ったんじゃなかったのか?」
答えずに篤は師匠にお願いした。
「弟たちをしばらくここで預かってもらえますか?」
それを聞いていた明は言う。
「この人たちの力を借りて、
ユキの救出に向かうんじゃないのか?」
「初めから俺たちを騙すつもりでここに来たのか?」
篤は制するように明に言う。
「少しは自分の力をわきまえろ。」
それを聞き明は師匠へ言った。
「お願いします。」
「吸血鬼と戦いかたを教えて下さい。」
師匠は答えた。
「私を切ってみろ。」
そう言うと明に向かって槍を振りかざした師匠。
「死にたくなければ本気で戦え。」
「生かす心無くして生きる価値なし。」
「とっとと吸血鬼の餌食になるがいい。」
明は本気で師匠に立ち向かっていった。
潜在能力に長けた明は師匠の槍を切り落とした。
「己の力を信じろ。」
その夜4人は、
ユキを助けようとしてくれないことを愚痴っていた。
それを聞いていた大沢は言う。
「半年前仲間が吸血鬼に襲われ、
我々に牙をむいてきた。」
「そのとき師匠は何のためらいも無く、
その子の頭を切った。」
「俺たちは決して助けない。」
「それが彼岸島だ。俺たちの戦いなんだ。」
明の修行は続いた。
それは壮絶なものであった。
しかし明はユキとポンを思い出し喰らいついた。
それを見ていた師匠は言う。
「悲しみや怒りは人を作る。」
数日後、
力をつけた明は1人ユキを助けに行こうとした。
明は師匠に向かって言う。
「俺はあなたたちのようにはなれません。」
「自分の気持ちを押し殺して生きるくらいなら、
真っ向から戦いを挑んで死んだほうがましだ。」
「奴らになくて俺たちにあるものってなんだよ?」
「心だろ。人を思う気持ちだろ。」
「それこそが一番の人間の武器だと信じてる。」
それを聞いた師匠は言う。
「やはり兄弟だな。」
「篤も雅の元へ向かった。」
「お前と同じ言葉を残してな。」
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一足先に雅のもとへ向った篤。
1人で吸血鬼と戦っていた。
何とか雷鬼と幻鬼を倒すも、ユキを囮に囲まれた篤。
勝ち誇って雅は言った。
「丸メガネ。そのまま私の前に跪くがいい。」
その時、絶体絶命の篤を助けたのは冷。
難を逃れた篤だが、そんな篤に雅は言う。
「中で待っているぞ丸メガネ。」
「私の気が変わらぬうちに娘を助けに来い。」
明らかに待ち伏せしている事は分かっている。
しかしそれでも砦に向った篤と冷。
雅を前に冷は言う。
「あんただけは刺し違えても殺してやる。」
しかし雅はあざ笑いながら言う。
「ここがどんな場所か忘れたわけじゃあるまいな。」
そう言って篤と冷を閉じ込める。
同時に人間の数十倍はある、
鬼と呼ばれる化け物が入ってきた。
侠気に満ちた鬼は、
篤と冷、吊り下げられたユキと追い詰める。
それを助けに現れたのは明。
同時に師匠を筆頭にレジスタンスも一斉に乗り込んだ。
それでも動じない鬼と雅。
師匠を見て冷は言った。
「ごめんなさい。勝手な真似をして。」
そんな冷に師匠も言う。
「もう少しで大事なものを失うところであった。」
鬼を任せて雅のもとへ向った篤。
雅は篤を待ち構えていた。
「やっと2人きりになれた。」
「私を生み出したのは人間のエゴと侠気だ。」
「人間も吸血鬼も本性は変わらん。」
「強いものが弱いものを支配する。」
「それが全てだ。」
「お前は俺の右腕にふさわしい男だ。」
「早くこっちの世界に来い。」
そう言った雅に篤は返す。
「願いは一つ。涼子の敵をとることだ。」
刀をあわす篤と雅。
しかし絶対的な力の差。
「愚かな・・・」
そう言って篤を切り裂く雅。
雅は自分の血を篤に垂らそうとした。
篤を吸血鬼に変えようと・・・
鬼を師匠と共に倒し、
間一髪で篤を助けに来た明。
雅を相手に篤と2人で立ち向かった。
一方で鬼はまだ生きていた。
残されたレジスタンスとケン、西本、加藤、ユキ。
は鬼を爆破して倒して砦の外へと逃げた。
冷は1人雅の元へ走った。
冷がたどり着いたとき、決着はつこうとしていた。
圧倒的な強さの雅は、
「楽しかったよ。」
そう言うと篤の体に刀を差した。
しかし篤は諦めていなかった。
自分の体に刀を差し、
後ろにいた雅の体へ刀を突き刺した。
そして明に言う。
「諦めるな。早く首をきれ。」
「俺ごと首を切れ。」
明は篤を交わしながらも雅の首をはねた。
首を切り落とされながらも話す雅。
「やってくれたな、丸メガネ・・・」
切り落とされた雅の首に、更に刀を差す明。
そして傷つく篤のもとへ。
しかし篤は言った。
「来るな!近づくんじゃない。」
「お前に教えたはずだ。」
「感染した奴には一切情けをかけるな。」
「それがこの島で生き延びる鉄則だ。」
「明。俺のためにここまで来てくれてありがとうな。」
「お前のおかげで、俺は自分を取り戻せた。」
「人として死ねる気がする。」
「お前には仲間を連れて帰るっていう、
大事な仕事が残っているんだ。」
「冷。明を頼んだ。」
「明。ちゃんとユキちゃんに気持ち伝えろよ。」
鬼を爆破した衝撃で砦は崩れ落ちる。
何とか脱出した明と冷。
明たちは彼岸島を脱出する。
師匠に頭を下げた明。
「兄貴とポン。よろしくお願いします。」
師匠は言った。
「安心しろ。必ず見つけて弔っておく。」
船に乗り帰る5人。
ユキは言った。
「私達いろんなものを抱えて、
生きていかなきゃいけないのね。」
明は空を見上げてしずかに目を閉じた。
その時・・・
明は何かの気配に感じて彼岸島に目を向ける。
首だけとなった雅の目が開いて、
彼岸島に雷が落ちた・・・
(終わり)
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【彼岸島】
【出演者】
宮本明:石黒英雄
宮本篤:渡辺大
青山冷:水川あさみ
雅:山本耕史
斉藤ケン:弓削智久
ユキ:滝本美織
ポン:森脇史登
西山:足立理
加藤:半田晶也
涼子:大村彩子
雷鬼:深水元基
幻鬼:坂上和子
五十嵐(吸血鬼):山本龍二
師匠:阿見201
大沢:パク・トンハ
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【感想】
以外に面白かった。
ストーリーをギュっと縮めた感は否めませんが、
それが逆にスピード感を持たせていたと思います。
無駄に後半CG使わなくても良かったかな〜
それくらいですが、内容としては面白い。
さすが原作が人気コミックだけあります。
最後が続くように思わせる作り方。
あれ個人的に嫌いです。
はっきりして欲しいですよね〜
あれはどの映画に関しても私に原点ポイント!
しかし、良くこの人選でここまで・・・
【あらすじ】(ネタバレあり)
吸血鬼に襲われた島民。
それを助けた宮本篤に島民は言う。
「見方なのか?」
「ああなんでだろ?」
「あんたが美味しそうなんだよ。」
篤は傷ついた人間に言った。
「こいつの血が体の中に入って感染したんだ。」
「もう直ぐあなたは死に、
そして奴らの仲間として復活する。」
そう言って感染した島民を殺した。
宮本明は高校に通っていた。
妹を振ったという理由で、不良にからまれる。
必死に逃げる明を助けたのは青山冷だった。
冷は失踪した明の兄、篤の免許証を渡した。
「事情は言えない。」
「でも篤さん、ちゃんと生きているわ。」
「明君。お兄さんに会ってみたいと思わない?」
その夜、幼馴染のケンたちにその話をした明。
次の日、明たちは冷を探した。
そして町で見かけた冷のあとをつけた。
冷は男と歩いて町の外れの廃墟へ入った。
そこで明たちが見たのは、
若い女性の首筋から血を吸う男。
驚き逃げた明たちを追って来た男。
足を擦りむいたユキの血の匂いに反応した男。
ユキを見つけるが、それをかばったケンが捕まり、
首筋をかまれてしまう。
助けようとした明。
力の差がありすぎて、捕まりそうになった時、
フォークリフトに乗った冷が、男をひいて助けた。
フォークリフトから降りた冷は、ハンマーを持ち、
動くはずの無い男の頭を何度も叩く。
それを見た明は冷に言った。
「もう死んでるだろ?」
冷は言い返す。
「まだよ。こいつは人間じゃない。吸血鬼なの。」
帰り道に明は冷に聞いた。
「彼女置いていくのか?」
冷は答えた。
「死んだ人にかまっている暇はないの。」
ケンも冷に聞いた。
「あの化け物、本当に吸血鬼なのか?」
「だったら俺もいずれ吸血鬼に?」
冷は答えた。
「あなたは血を吸われただけよ。」
「あいつの血が体内に入らない限り、
感染することはない。」
明は再び聞いた。
「なんでそんな化け物とつるんでた?」
冷は答えた。
「あいつは私の監視役よ。」
「私が奴らを裏切らないように見張ってたの。」
「2年前、
私の住む島に1人の吸血鬼が現れたの。」
「そいつは島の人間を次々に襲い、
吸血鬼にして島を支配しようとしたの。」
「そして、そのうち血が足りなくなり、
私はその調達係りをやらされてるの。」
「明君なら私たちを助けてくれると思ったの。」
「宮本篤の弟なら。」
「吸血鬼たちと命がけで戦っているわ。」
「お願い。私と一緒に奴等と戦って。」
「このままだと篤さんも危ないの。」
明の動く心が分かってか、ケンは横から口を挟んだ。
「あんたの言うことは信じられない。」
しかし明の意志は動いていた。
「俺1人でも行く。」
「島に行って兄貴を救い出す。」
「兄貴を見殺しにするなんて出来ないよ。」
そんな明にケンは言う。
「だったら1人で死んでこいよ。」
冷の住む島は表向きには存在しない島。
警察も信じてくれず、動くこともない。
明は竹刀を持ち冷の待つ船に向かった。
来ないと言っていたケンもバットを持って現れた。
後を追うように、ユキも西山もポンも来た。
一足遅れて加藤も・・・
ユキを見てケンは言う。
「ユキ。お前はダメだ。」
「いざって言うとき守ってやれるか分からねえ。」
ユキは言い返す。
「私たち何時だって一緒だったじゃない。」
「私だけ置いてけぼりにしないでよ。」
こうして冷の運転する船に乗った6人。
6人は表向き存在しない彼岸島に向かった。
地図にもないコンパスも反応しない島。
島に着いた7人。
人気のない奇妙な島を見てケンは言った。
「まるで墓場みたいだな。」
島中に彼岸花が生えていた。
彼岸花は毒性の強い花で、通称死人花とも呼ばれる。
昔は土葬した死体を、
動物が掘り荒らすのを防ぐために埋められた花。
島にある村についた一行。
急に変な音が聞こえ、冷は走り出した。
同時に真っ暗な民家に明かりがともり、
1人の老婆(幻鬼)が出てきた。
「こんな夜中に、
ほっつき歩いていると化け物に襲われるよ。」
その瞬間、多数の吸血鬼が襲ってきた。
抵抗できないまま捕まってしまった6人。
冷だけは走ってどこかへと消えていた・・・
牢屋に入れられた6人。
その屋敷からは人間の悲鳴が聞こえてくる。
守衛の吸血鬼は、その悲鳴を聞いて6人に言う。
「エサが1人死ねば、
次はお前たちの中の誰かが餌食になる。」
「誰が一番最初に選ばれるか楽しみだな〜」
そのころ冷は雅のもとにいた。
おびえる冷に雅は言った。
「人間の目は正直だ。」
「どんなに虚勢をはろうと嘘はつけん。」
「お前の目に今どんな感情が浮かんでいると思う?」
「不安と恐怖だ。」
そして冷の前に、
自分がハンマーで殺したはずの吸血鬼が現われた。
雷鬼と呼ばれる吸血鬼は死んでなかった。
雷鬼の情報で6人が島に来ることが分かったのだ。
おびえる冷に雅は言った。
「冷。本当に私を殺すつもりだったのか?」
そう言って小刀を冷に渡し、自分の首元につける雅。
「お前に寝首をかっ切られると思うとゾクゾクするよ。」
「憎しみと絶望に染まった血は極上の味だと聞く。」
「冷。本当か嘘か試してみよう。」
そう言って雅は冷の首筋から血を吸った。
一方牢には幻鬼が入ってきて、
その中の1名を餌食に連れて行こうとしていた。
皆をかばい自ら餌食になろうと牢屋を出たケン。
「明。あとは頼んだぞ。」
そう言うと牢屋を出て暴れだすケン。
狙いは守衛の持つ鍵。
ケンは取り押えられ連れて行かれるも、
ケンの狙い通り守衛は鍵を落とし、
それを手に入れることに成功する。
牢屋から抜け出す事に成功した5人と、
吸血鬼の実体実験場に連れて行かれたケン。
明とユキはケンを助けに行こうとするが、
それを止める西本。
「このまま飛び込んでも全滅するのがおちだろ。」
「ケンちゃんの気持ちを無駄にするな。」
それでもケンの元へと走り出すユキ。
ユキを追って明も向かった。
襲ってくる吸血鬼をナタで倒し、ケンを助けた明。
西本と待ち合わせ場所に約束した、
彼岸島の高台を目指した。
西本と加藤とポンも高台を目指していた。
しかしモタモタし前に進まないポン。
「ポン。頼むからもたもたするなよ。」
「てめえいつもドン臭いんだよ。」
そう言われたポンは、
「いざとなったら、また僕のこと見捨てるくせに。」
「もうお前たちのことなんか信じない。」
と言い出だし1人別行動をした。
必死で吸血鬼から逃げる明とケンとユキ。
山道を歩いていると一人の男が襲いかかってきた。
その顔を見てビックリする明。
その男は明たちを吸血鬼と思った篤であった。
明を見て驚いた篤は聞いた。
「お前たち、もしかして冷に連れてこられたのか?」
「それにしてもなぜ、のこのこ付いて来たんだ!」
明は答えた。
「だって。兄貴が心配だったから・・・」
篤は怒り言った。
「誰が心配してくれって頼んだ。余計なお世話だ。」
明たちは篤に守られて高台へとたどり着いた。
そこでまっていた西本と加藤。
合流したあと篤は、
旧日本軍の施設である隠れ家に皆を連れて行った。
ついてすぐに明は篤に聞く。
「兄貴。ポン探しに行っていいかな?」
篤は答えた。
「ダメだ。この周辺は危険だ。」
「むやみに動くと死ぬぞ。」
どこか昔と雰囲気の違う、冷血な篤。
優しかった兄貴を思い出しショックを受ける明。
そんな時、血だらけで戻ってきたポン。
「どうして探してくれなかったの?」
「僕だけ仲間はずれか・・・」
「みんな仲間だと思ってたのに・・・」
「昔から貧乏くじばかり引かされてたよな〜」
「それがお前たちの本心なんだよ。」
「腹の中じゃ僕のこと見下しているんだよ。」
明は答えた。
「違うって。」
そんな明の言葉を聞かずに、
「みんな許さない。」
怒鳴ったポンの目は赤く光り、牙が伸びていた。
そして明に襲い掛かるポン。
同時にライ鬼を筆頭に多数の吸血鬼たちが襲ってきた。
篤は明に言った。
「明何してる。早くそいつを切れ。」
それでもポンを切ることができない明。
見かねて篤はポンの頭に刀を差した。
「兄貴何やっているんだよ。ポンが死んじゃうだろ。」
そう言ってポンを抱きしめる明。
しかし吸血鬼たちは襲ってくる。
明を無理やり連れて逃げる篤。
逃げ続ける篤の前に現われた雅。
「私に挨拶もなしに立ち去るつもりか?」
「また腕を上げたな。」
「お前の目は憎しみで溢れている。」
「憎しみは人を生かして力を与える。」
そういう雅すらも無視して逃げるが、
途中でユキが吸血鬼に捕まってしまう。
ユキを助けようとする明。
しかしそれをも制して逃げる事に専念する篤。
逃げ切ることができたが、明は篤を殴り言う。
「なんでユキを見捨てた。」
「ポンだってそうだ。」
「何も殺すこと無かっただろ。」
篤は答えた。
「非情にならなければ、
ここでは生きていけないんだ。」
そして1つだけユキを救う方法があると、
4人をある場所へ連れて行く篤。
道の途中で明は篤に聞いた。
「涼子さんは?一緒じゃなかったの?」
篤の恋人だった涼子。
その名前を出され全ての経緯を話す篤。
「涼子は死んだ。俺のせいだ。」
「この島は涼子の生まれ故郷だった。」
当時、島にきた篤は結婚の了承を得た。
しかし島にある神社の尊堂で見たのは、
閉じ込められていた吸血鬼、雅であった。
目の前で雅に血を吸われて死んだ涼子。
何十年も監禁されていた雅を、
外に出したのが篤であったのだ。
そのころ雅はユキの元へ・・・
怖がるユキに、
「そんな顔するな。」
「本当の地獄はまだこれからだ。」
「私が究極の力を手にしたとき、
人間どもは知ることになる。」
「本当の絶望とはどんなものか・・・」
「やつらの泣き叫ぶ顔を眺めがら、
命を吸い尽くしてやるんだ。」
「これ以上の楽しみはない。」
篤は彼岸島で家族を殺された生き残り、
レジスタンスたちのもとへ4人を連れて行った。
そこにいる師匠と呼ばれる男は篤に言う。
「雅の首を取りに行ったんじゃなかったのか?」
答えずに篤は師匠にお願いした。
「弟たちをしばらくここで預かってもらえますか?」
それを聞いていた明は言う。
「この人たちの力を借りて、
ユキの救出に向かうんじゃないのか?」
「初めから俺たちを騙すつもりでここに来たのか?」
篤は制するように明に言う。
「少しは自分の力をわきまえろ。」
それを聞き明は師匠へ言った。
「お願いします。」
「吸血鬼と戦いかたを教えて下さい。」
師匠は答えた。
「私を切ってみろ。」
そう言うと明に向かって槍を振りかざした師匠。
「死にたくなければ本気で戦え。」
「生かす心無くして生きる価値なし。」
「とっとと吸血鬼の餌食になるがいい。」
明は本気で師匠に立ち向かっていった。
潜在能力に長けた明は師匠の槍を切り落とした。
「己の力を信じろ。」
その夜4人は、
ユキを助けようとしてくれないことを愚痴っていた。
それを聞いていた大沢は言う。
「半年前仲間が吸血鬼に襲われ、
我々に牙をむいてきた。」
「そのとき師匠は何のためらいも無く、
その子の頭を切った。」
「俺たちは決して助けない。」
「それが彼岸島だ。俺たちの戦いなんだ。」
明の修行は続いた。
それは壮絶なものであった。
しかし明はユキとポンを思い出し喰らいついた。
それを見ていた師匠は言う。
「悲しみや怒りは人を作る。」
数日後、
力をつけた明は1人ユキを助けに行こうとした。
明は師匠に向かって言う。
「俺はあなたたちのようにはなれません。」
「自分の気持ちを押し殺して生きるくらいなら、
真っ向から戦いを挑んで死んだほうがましだ。」
「奴らになくて俺たちにあるものってなんだよ?」
「心だろ。人を思う気持ちだろ。」
「それこそが一番の人間の武器だと信じてる。」
それを聞いた師匠は言う。
「やはり兄弟だな。」
「篤も雅の元へ向かった。」
「お前と同じ言葉を残してな。」
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一足先に雅のもとへ向った篤。
1人で吸血鬼と戦っていた。
何とか雷鬼と幻鬼を倒すも、ユキを囮に囲まれた篤。
勝ち誇って雅は言った。
「丸メガネ。そのまま私の前に跪くがいい。」
その時、絶体絶命の篤を助けたのは冷。
難を逃れた篤だが、そんな篤に雅は言う。
「中で待っているぞ丸メガネ。」
「私の気が変わらぬうちに娘を助けに来い。」
明らかに待ち伏せしている事は分かっている。
しかしそれでも砦に向った篤と冷。
雅を前に冷は言う。
「あんただけは刺し違えても殺してやる。」
しかし雅はあざ笑いながら言う。
「ここがどんな場所か忘れたわけじゃあるまいな。」
そう言って篤と冷を閉じ込める。
同時に人間の数十倍はある、
鬼と呼ばれる化け物が入ってきた。
侠気に満ちた鬼は、
篤と冷、吊り下げられたユキと追い詰める。
それを助けに現れたのは明。
同時に師匠を筆頭にレジスタンスも一斉に乗り込んだ。
それでも動じない鬼と雅。
師匠を見て冷は言った。
「ごめんなさい。勝手な真似をして。」
そんな冷に師匠も言う。
「もう少しで大事なものを失うところであった。」
鬼を任せて雅のもとへ向った篤。
雅は篤を待ち構えていた。
「やっと2人きりになれた。」
「私を生み出したのは人間のエゴと侠気だ。」
「人間も吸血鬼も本性は変わらん。」
「強いものが弱いものを支配する。」
「それが全てだ。」
「お前は俺の右腕にふさわしい男だ。」
「早くこっちの世界に来い。」
そう言った雅に篤は返す。
「願いは一つ。涼子の敵をとることだ。」
刀をあわす篤と雅。
しかし絶対的な力の差。
「愚かな・・・」
そう言って篤を切り裂く雅。
雅は自分の血を篤に垂らそうとした。
篤を吸血鬼に変えようと・・・
鬼を師匠と共に倒し、
間一髪で篤を助けに来た明。
雅を相手に篤と2人で立ち向かった。
一方で鬼はまだ生きていた。
残されたレジスタンスとケン、西本、加藤、ユキ。
は鬼を爆破して倒して砦の外へと逃げた。
冷は1人雅の元へ走った。
冷がたどり着いたとき、決着はつこうとしていた。
圧倒的な強さの雅は、
「楽しかったよ。」
そう言うと篤の体に刀を差した。
しかし篤は諦めていなかった。
自分の体に刀を差し、
後ろにいた雅の体へ刀を突き刺した。
そして明に言う。
「諦めるな。早く首をきれ。」
「俺ごと首を切れ。」
明は篤を交わしながらも雅の首をはねた。
首を切り落とされながらも話す雅。
「やってくれたな、丸メガネ・・・」
切り落とされた雅の首に、更に刀を差す明。
そして傷つく篤のもとへ。
しかし篤は言った。
「来るな!近づくんじゃない。」
「お前に教えたはずだ。」
「感染した奴には一切情けをかけるな。」
「それがこの島で生き延びる鉄則だ。」
「明。俺のためにここまで来てくれてありがとうな。」
「お前のおかげで、俺は自分を取り戻せた。」
「人として死ねる気がする。」
「お前には仲間を連れて帰るっていう、
大事な仕事が残っているんだ。」
「冷。明を頼んだ。」
「明。ちゃんとユキちゃんに気持ち伝えろよ。」
鬼を爆破した衝撃で砦は崩れ落ちる。
何とか脱出した明と冷。
明たちは彼岸島を脱出する。
師匠に頭を下げた明。
「兄貴とポン。よろしくお願いします。」
師匠は言った。
「安心しろ。必ず見つけて弔っておく。」
船に乗り帰る5人。
ユキは言った。
「私達いろんなものを抱えて、
生きていかなきゃいけないのね。」
明は空を見上げてしずかに目を閉じた。
その時・・・
明は何かの気配に感じて彼岸島に目を向ける。
首だけとなった雅の目が開いて、
彼岸島に雷が落ちた・・・
(終わり)
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