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2015年11月25日
【しあわせのパン】出演者・感想・完全ネタバレ(セリフ完全再現
本日の映画紹介。
【しあわせのパン】
【出演者】
水縞りえ:原田知世
水縞尚:大泉洋
郵便屋さん:本多力
広川の旦那さん:中村靖日
広川の奥さん:池谷のぶえ
阿部さん:あがた森魚
陽子さん - 余貴美子
山下時生:平岡祐太
齋藤香織:森カンナ
未久:八木優希
未久のパパ:光石研
未久のママ:霧島れいか
阪本史生:中村嘉葎雄
阪本アヤ:渡辺美佐子
ナレーション(ヤギのソーヴァ):大橋のぞみ
〜〜〜Sponsords Link〜〜〜
【感想】
久しぶりの人の温かさの分かるよい映画でした。
深みがあって、何を言いたいかは、
見る人の受け取り方によって変わる映画。
ずるいですけどね〜。
3つのストーリーに分かれているから、
どれかのケースは当てはまってくるんです。
私としては、家族中心の2個目と3個目は、
とっても温かい気持ちになりました。
そのバランスを保つための脇役もいい。
なんかパンが食べたくてしょうがなくなりました。
細かなシーンが全て意味がある映画です。
これは何回か見ることで、目線変わるでしょう!
逆に皆さんの映画感想を聞いてみたい映画です。
一度見て、コメント欲しいくらいですよ!!!
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜〜りえのナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
初恋の相手はマーニだった。
諸学生のとき家の近くに図書館があって、
そこで立ち読みならぬ座り読みした月とマーニ。
少年マーニは自転車の籠に月を乗せて、
いつも東の空から西の空へと走っていきます。
ある日やせ細った月が言うのです。
「ねえマーニ。」
「太陽をとって。」
「いつも一緒にお空にいるととっても眩しくて。」
マーニは答えます。
「ダメだよ。太陽をとったら困っちゃうよ。」
「太陽をとったら君がいなくなっちゃうから。」
「夜に道を歩く人が迷っちゃうじゃないか。」
「大切なのは君が照らされていて、
君が照らしていると言うことなんだよ。」
マーニのことが大好きで。
私はずっとマーニを探していた。
だけどどんどん周りには、
好きじゃないものが増えていった。
大人になって働いて、いつの間にか大変で、
ただ1人の家族父が亡くなって大変で、
心がひとりで小さくなって、
もうマーニはいないのだと心に決めた。
そして東京で沢山の大変がたまった頃、
水縞君が月浦で暮らそうとそう言った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月浦のCAFEマーニ。
客の阿部へ手紙を届けた郵便屋さんは、
カフェに漂うコーヒーの匂いを深く嗅いだ。
水縞は言う。
「おはようございます。カンパーニュが焼けました。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
湖のほとりにあるCAFEマーニには、
りえさんの煎れるコーヒーと
水縞君の作る焼きたてのパン
季節のお野菜の料理。
そして遠くからのお客様が泊まれるよう
2階には温かいベットが用意されています。
一年ちょっと前この夫婦が月浦にやってきたとき、
なぜか私はこの2人を見つめていたいと思いました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「もう行かなきゃ。」
そう言ってりえの煎れたコーヒーと、
水縞が作ったカンパーニュを食べ終えて、
仕事に戻る郵便屋さん。
阿部を送り出したりえと水縞はカフェを出た。
向かったのは地獄耳の陽子さんのガラス工房。
「出来てるよ。鏡でしょ?あそこにかける。」
驚いて水縞は聞く。
「何で知ってるの?」
陽子は言った。
「私、耳だけは良く聞こえるから。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
地獄耳の陽子さんの作品が、
カフェには沢山並んでいるのです。
ひとつ良い事があると、
持っていた小銭をなんとなく貯める事にしています。
こんな風に2人のカフェは、
少しずつ出来上がって行くのです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夏のある日。
カフェに泊まりに来た若い女性、齋藤香織。
香織は近くの湖に行き友人に電話する。
「もしも〜し。今ビーチ。」
「お土産楽しみに待っててね。」
電話を切って深くため息をついた香織。
1人ボートに乗るが、転覆してしまう・・・
カフェにはもう1人客人が来ていた。山下時生。
久しぶりに訪れるが常連客の1人。
時生と話をしていると、
香織がずぶ濡れのまま帰って来た。
りえに言われてタオルを渡す時生。
その夜はトマトのパンとワインで夕食。
ワインを飲み続けた香織は酔っ払った。
明日が誕生日で本当は沖縄に行く予定だった香織。
しかし彼は急にドタキャンをしたと言う。
酔っ払い全てをりえと水縞に話した香織。
「もう帰らないでここに暮らしちゃおうかな〜。」
食事をしながら話を聞いていた時生は言う。
「ここにだっていろいろありますよ。」
そんな時生に絡みだす香織。
「時生君はここの人?」
「じゃあ毎日毎日静かで平和だ。」
「東京と違うもん。」
「東京で働くのってとっても大変なんですよ。」
それを聞いてイラっとした時生は聞く。
「でも好きで東京いるんですよね?」
それに対しても皮肉を言う香織。
「別に。生まれてからずっと東京だもん。」
「分からないと思うよ。君に。」
怒って席を立ち言った時生。
「それを恵まれてるって言うんじゃないですか?」
その夜、寝ようとしていた時生。
外から聞こえてくる声で寝付けずにいた。
外を見ると、香織が泣きながら騒いでいた。
「バカヤロー。」
それを見て笑ってしまった時生。
笑い声に気付いた香織は時生を見て言う。
「バカヤロー。」
翌朝二日酔いの香織。
りえは煎れたてのコーヒーを出していった。
「私もね。無理して笑うことあるんです。」
そして水縞の作ったパンを出して言う。
「素朴なパンもいいですよ〜。」
その日は香織の誕生日。
水縞夫婦は時生と香織を連れて買い物に行った。
広川さんの屋外販売所。
季節の野菜や果物、花が売られている。
そこで見つけたひまわりの花。
時生は一本のひまわりを買った。
買い物の帰り道、香織に話し掛けた時生。
「今日誕生日なんですよね?」
「これ。どうぞ。」
そう言ってひまわりの花を渡した。
香織は言う。
「暇なんだったらちょっと付き合って。」
そう言って誘ったのは湖のほとり、
日焼けするために日光浴。
そして時生のバイクに乗せてもらい、
シーサーやチンスコウを探しに町を回る。
見つからないなか、バイクはガス欠。
バイクを押して歩いていると、陽子が声をかけた。
「ちょっとあんたたち。沖縄土産探しているの?」
「いくついるの?」
そう言って香織に渡したもの・・・
『コロポックル』北海道に住むと言う妖精の木彫り。
陽子は言った。
「その人形持っていたら小さな幸せがくるらしいよ。」
香織は返した。
「私大きな幸せが欲しいの。」
一方水縞夫婦は買った野菜と果物で、
ジャムやパンを作っていた。
夜は屋外で夕食。香織の誕生日を祝った。
水縞が作ったのは、
お祝いの日に焼く特別なパン『クグロフ』。
他にも季節の野菜を使った料理が並ぶ。
香織の向かいに座った水縞は、
手でパンを半分にちぎってりえに渡した。
それを見て香織は素直にお礼を言った。
「あの。本当にありがとうございます。」
それに対してりえは言った。
「じゃあクグロフ食べましょうか。」
そう言って半分にナイフで切り、時生に渡した。
時生は半分に手でちぎり、香織に渡した。
食事を終わり夜空を見ていた香織と時生。
香織は時生に言う。
「かっこ悪い奴って思ったでしょ?」
時生は答えた。
「そうっすね〜。」
「でもかっこ悪い自分を知っている人が、
大人だと俺は思います。」
「だから香織さんを見たときに凄い笑えたんです。」
「一生懸命幸せになろうとしているんだな〜って。」
「もがいたことのある人間じゃないと、
幸せは無いと思います。」
「もがいてもがいて恥かいて、
いいじゃないですか香織さん。」
そして時生は自分の仕事の話をした。
電車のレールを切り替えるのが時生の仕事。
「レールは簡単に切り替わるのに、
俺の人生は簡単に切り替わらないんだなって。」
「線路がずっと続いているように見えても、
自分は北海道から出られないんですよ。」
「なんか俺、もがけないんです。」
時生の話を聞いて香織は答えた。
「それってさ。もがいてるじゃん。」
「来てみればいいじゃん東京に。一緒に行こう。」
時生を月を見ながら答えた。
「無理っすよ。仕事ないし・・・」
「でも俺、今日は月が綺麗に見える。」
翌朝目を覚ました香織。
1階に下りると時生の姿は無かった。
時生は今朝早く帰ったという。
「素朴なパンもいいですね。」
そう言って水縞の焼いたライ麦パンを購入した。
「会社のみんなに食べてもらおうと思って。」
「月浦のお土産です。」
そして帰ろうとした香織はりえに言った。
「私いままでで一番好きな誕生日でした。」
りえは答えた。
「これからもっと良い誕生日が着ますよ。」
水縞も香織に言う。
「また来てください。」
「いつでも家はここにありますから。」
最後に香織は2人に言った。
「時生君にいろいろ付き合ってくれて
ありがとうって伝えてもらえますか。」
バスを待つ香織は湖やカフェの近くの景色を見て、
「綺麗だな〜。悔しいけど綺麗。」
そう言った時だった、
バスの後ろからバイクに乗った時生が来た。
驚く香織の時生は言う。
「送るよ。乗って。」
「東京まで送ります。」
香織は笑顔で言った。
「マジで?じゃあよろしく頼むよ時雄君。」
香織の鞄の中ではコロポックルが揺れていた。
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
東京までの距離は1000キロ
誰にでも1人から2人になる瞬間があります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
遠くで2人の姿を見て微笑むりえと水縞だった。
りえは水縞に言う。
「時生君東京までちゃんと運転できるかな〜?」
水縞は答えた。
「大丈夫だよ。僕だって出来たんだから。」
「りえさん。ここで無理して笑うことないよ。」
「僕の欲しいものは1つだけですから。」
りえは聞く。
「何?ですか?」
水縞は答えた。
「内緒です。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
秋がやって来ました。
ほどよい日差し。ほどよい気温。ほどよい風。
こんな日は水島夫妻の散歩日和です。
秋はいろんなものが実る季節です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
栗拾いに出かけた2人。
そして栗を焼き、パンを作った2人。
誰もカフェにいないのを確認して、
こっそりガラス細工を置いて帰ろうとする陽子。
恒例となった行動に気付きりえが声をかける。
「陽子さん。栗のパン食べます?」
洗濯物を2人で干していると、
バス停の前で立っている女の子。
バスが来るが乗らずに、ただ立っている。
水島は言った。
「ホットミルク作っておくよ。」
うなずき女の子をむかえに行ったりえ。
女の子の名前は未久。
バスに乗らなかった理由は分からないが、
それについては何も聞かない水縞夫婦。
ホットミルクを飲んだ美久に水縞は言った。
「今から学校にパンの配達をしに行くから、
送って行ってあげようか?」
そして学校まで美久を送った水島。
学校では友達の中心にいた美久を見た。
学校が終わり家に帰った美久。
食卓テーブルには『買って食べて』の書置きと、
千円札が置かれていた。
無視して食卓に3つの容器を並べ座った美久。
そして持ち帰った給食の栗のパンを食べた。
その時帰って来た父。
学校に遅れていったことを聞く父に美久は言う。
「ママの作ったカボチャのポタージュ食べたい。」
次の日のバス停には、美久と父が並んで立っていた。
未久がバスに乗ったのを見て、父は1人カフェに来た。
「カボチャのパタージュスープってあるんですか?」
メニューにない注文で驚く水縞。
「えっ?」
その反応を見て話を変えた未久の父。
「いいです。コーヒーを1杯下さい。」
「ご夫婦でやっているんですか?」
「ここの出身じゃないですよね?」
水島は自分が札幌で、りえが東京と答えた。
「仕事辞められたんですか?」
そんな美久の父の質問に水縞は答える。
「好きな暮らしがしたいって思ったんです。」
「好きな場所で、好きな人と。」
「散歩して、食べたいもの食べて、パン焼いて。」
「自分たちが感じた季節を、
パンを食べてくれる方達に感じて欲しいんです。」
「ここの景色って毎日変わりますよね。」
「綺麗なだけじゃないです。」
そんな水縞の言葉に美久の父は言った。
「1人じゃなかったら出来ますよ。」
「誰かと一緒なら、出切る事ってあるんですよ。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
りえさんは訳も無く悲しくなることがあります。
そんな時水島君も私も悲しくなります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
学校の帰り道でカフェに立ち寄った美久。
りえは美久にカボチャのポタージュを出した。
それを見た美久は昔の母が作ったポタージュと、
それからの父と母の喧嘩など昔を思い出した。
母が出て行った時の事も・・・
「いらない。絶対にいらないから。」
「ごめんなさい。お邪魔しました。」
そう言ってカフェを出て行く美久。
翌日りえは美久へ手紙を出した。
『あったかいごはん作ってます。
お腹がすいたらきてください。』
水縞も美久の父へと手紙を出していた。
数日後の夜、美久がカフェに来た。
同じ日に美久の父もカフェに足を運んだ。
久しぶりの家族2人の夕食。
もちろんカボチャのポタージュも出した。
「カボチャのポタージュ・・・」
そう言うとカフェを飛び出した美久。
美久は悩んでいた。空を見上げて月を見た。
しばらくしてカフェに戻ってきた。
席に座るとポタージューを食べて言う。
「美味しいね。」
「でも、違うね。」
「ママのカボチャのスープとは違うね。」
「ママはもう戻らないんだよね?」
未久の父は言う。
「ママは戻らない。ごめんな。」
その話を聞いていた阿部さん。
いつも持ち歩いている大きな鞄を開けた。
中にはアコーディオンが入っていて、
何も言わずに演奏を始めた。
美久の父の目には涙がにじんでいた。
それを見た美久は父の側に行き言った。
「パパ。美久、パパと一緒に泣きたかった。」
水縞は1つのパンを出していった。
「お二人でどうぞ。」
父はパンをちぎって美久に渡した。
夕食を食べカフェを後にした未久と父。
「パパ。」
そう言って未久は父の手を握った。
美久と父が帰ったカフェでは、
「今夜の演奏代です。」
「りんごのハチミツパンです。」
そう言ってりえが阿部にパンを出した。
焼きたてのパンにハチミツをかけて、
阿部は冗談半分で言った。
「私は辛党なんですよ〜。」
「今夜はワイン頂いていいかな?」
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〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月浦に厳しい冬がやってきました。
そのお客様がやってきたのは、
月も凍りそうな夜のことでした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「少しの時間だけ寄せてもらってもいいですか?」
そんな電話が入り、駅にむかえに行った水縞。
客は老夫婦の阪本史生と妻のアヤ。
若い頃にアヤに告白して振られた史生。
史生は傷心旅行で月浦付近にいたが、
追いかけてきたアヤに月浦駅でプロポーズして、
結婚したと車の中で水嶋に話した。
「だから娘の名前は、
有珠の有と月浦の月で有月と付けましたんや。」
そしてカフェに着いた坂本夫婦。
咳き込むアヤに史生は言う。
「もうちょっとや。もうちょっとやで。」
りえがご飯を用意しようとすると史生は言った。
「すみません。こいつパンが嫌いなんです。」
「年寄りにはどうも苦手なもんで。」
しかしカフェには米は無く、
広川のもとへ米を貰いに行った水縞。
カフェを出るときに、りえに言った。
「ちゃんと見てて。何か変なんだよ。」
一方で史生とアヤは窓から外を見ていた。
「月が見えんな〜。」
そうアヤに言い『日之出湯』と書かれた暖簾と、
2人の結婚記念の懐中時計を見ていた。
懐中時計を止め、アヤの内服薬を捨てると、
史生はアヤを抱きしめた。
その時、吹雪だった空が晴れて月が見えた。
「そろそろ月を見に行こうか?」
「有月も待っているわ。」
史生はそう言ってアヤを連れ外に出ようとした。
止めるアヤだが聞かずに外に行こうとする。
水縞がちょうど帰ってきて、史生を連れ戻した。
「月ならこの窓からよく見えますから。」
カフェに戻った史生にりえは聞いた。
「一緒になられて何年ですか?」
史生は話し出す。
「50年近くになりますかね〜。」
「ずっと一緒に風呂屋やってきたんです。」
「地震で全部なくなりました。」
「有月も逝ってしもうて・・・
でも皆に温かいお風呂入ってもらおうと思って。」
「頑張って立て直してね〜。」
「地震のときにこいつ、残った風呂を見て、
これがホンマの露天風呂やなって笑ってました。」
「2人きりになってしまいました。」
「十分や。もう十分やなって、よう思うんです。」
「だってそうでしょ?」
「昨日できたことも今日はでけへん。」
「若いときはね、明日また違う自分がおるから
楽しみに出来るんですよ。」
「せやけど、なかなか出来なくなることばかりで・・・」
「あきません。」
そう言うと頭を抱えて泣き出す史生。
りえは坂本夫婦にポトフと、
炊き立てのご飯を差し出した。
ポトフを一口食べたアヤは、
カウンターに置かれた焼きたての豆パンを見て、
突然それを手に取り、口にいてた。
その行動に驚き史生は声をかけた。
「それパンや。食べられへんやろ。」
「パンおいしいんか?」
アヤはパンを食べて言った。
「美味しい。」
「お豆さんが入ったこのパン美味しいな。」
「私、明日もこのパン食べたいな。」
「お父さん。ごめんなさいね〜。」
泣きながら史生は言った。
「分かった。分かった。」
アヤは泣いている史生にパンをちぎって渡した。
その様子を見ていたりえは、
食器にパンを乗せ坂本夫婦に差し出して言った。
「アヤさん。明日もパン食べてください。」
その夜、1人パンの生地作りをしていた水縞。
それを見に来た史生。
「パンもええですな〜。」
そんな史生に水縞は言った。
「カンパーニュって言う言葉があるんです。」
「さてどういう意味でしょう?」
「ヒントです。もともとの語源は、
パンを分け合う人たちのことなんですが、
さてなんでしょう?」
答えを悩んでいた史生に水縞は続けて言う。
「史生さん。しばらく家で過ごしませんか?」
「もう少しいてくれたら、
ここから満月が見えるんですよ。」
チーズやじゃがいも、チキンや卵、
ワインを持ってくる仲間たち。
坂本夫婦にパンの作り方を教える水縞夫婦。
その夜は水縞夫婦、坂本夫婦を中心に、
阿部や郵便屋さん陽子さんに広川夫婦。
皆でワインを飲んで阿倍の演奏でダンスをする。
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
知ってますか?人は乾杯の数だけ幸せになれる。
ヨーロッパのどこかの国では、
そう言われているそうです。
何か良い事があったら乾杯して、
何か残念なことがあっても乾杯して、
1日の終わりを今日も誰かと乾杯と締めくくれたら、
それは幸せだと・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日りえが洗濯をしているからわらで、
月とマーニを読んでいたアヤは言った。
「お月さんがいてマーニがいる。
マーニがいてお月さんがいる。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月浦の真っ白な雪が、
りえさんの心を包んでいくのを私には分かりました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
数日後の満月の夜。
カフェの外で月を見た坂本夫婦。
綺麗な満月を見てアヤは史生に言う。
「綺麗ね〜。」
「月はずっとここにあるね〜。」
「明日も月浦にあるね〜。」
「これでお土産できましたわ〜。」
「お父さん。ありがとう。」
史生の持っていた懐中時計は動き出していた。
翌日帰ると言い出した坂本夫婦。
帰り際に史生は水縞に言った。
「カンパーニュの意味分かりましたわ。」
「共にパンを分け合う人々。」
「家族って言う意味違います?」
水縞は答えた。
「史生さん惜しいです。仲間って言う意味なんです。」
「でもそれが、家族の原点だと僕は思ってます。」
月浦駅で坂本夫婦を見送った、水縞夫婦。
りえは水縞に言った。
「ずっと。ずっと見てて私のこと。」
「水縞君のことも見てるから。」
「ありがとう水縞君。」
「私のためにここに来てくれて。」
春になって史生から手紙が届いた。
〜〜史生の手紙〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
りえさん、尚さん。
冬の頃はいろいろお世話になりました。
アヤはこの春亡くなりました。
マーニさんに行った時、
アヤには残された命が短くて、
私は月浦でそのまま一緒に
死ねるものなら死のうと考えていました。
だけどそれは大変傲慢でした。
アヤが前は食べなかったパンを
おいしそうに食べている姿を見て、
私は恥ずかしながら、
人間は最後の最後まで
変化し続けることを始めて気付いたのです。
アヤは懸命に生きてそして死んでいきました。
それを全て私は見届けることが出来たのです。
今私は風呂屋の番台にもう一度座って、
マーニさんのこと、
尚さんが焼いたおいしいパンのこと、
りえさんのスープ思い出しています。
あそこには自分たちの信じることを
心を込めてやっていく、
そんな地に足のついた
人間らしい暮らしがありました。
カンパーニュ。仲間と一緒に。
それこそ幸せがあるような気がいたします。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その日の夕食。
豆パンをちぎって、りえに渡す水縞。
りえは笑いながら水縞に言った。
「水島君。見つけたよ。」
「見つけた。私のマーニ。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この日、水島君の
たった一つの欲しいものが手に入ったようです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2人がお店を始めて、2周年目の記念日。
『しあわせのパン』と書いたメッセージカードと一緒に、
香織と時生、未久と美久の父、坂本さんなど
沢山の関わった人にパンを送る水縞夫婦。
その日の夕方。
出かけていたりえが走って帰って来た。
「来年のお客さん決まったよ〜。」
水縞は聞く。
「ずいぶん先のお客さん入ったんだね。」
「どこから来るの?」
りえは自分のお腹を指差して言った。
「ここ。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幸せって何なのか、まだ私には分かりません。
でも私は決めました。
水縞夫妻のところに生まれることを・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(終わり)
〜〜 関 連 商 品 〜〜
〜〜RIKUのメインブログ〜〜
・【アフィリエイトで稼ぐ】超初心者からの挑戦(リアルタイム)
〜〜RIKUのサブブログ〜〜
・「携帯・スマホゲーム」DORAKENを実際に攻略して・・・
・☆馬の気持ち☆
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【しあわせのパン】
【出演者】
水縞りえ:原田知世
水縞尚:大泉洋
郵便屋さん:本多力
広川の旦那さん:中村靖日
広川の奥さん:池谷のぶえ
阿部さん:あがた森魚
陽子さん - 余貴美子
山下時生:平岡祐太
齋藤香織:森カンナ
未久:八木優希
未久のパパ:光石研
未久のママ:霧島れいか
阪本史生:中村嘉葎雄
阪本アヤ:渡辺美佐子
ナレーション(ヤギのソーヴァ):大橋のぞみ
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【感想】
久しぶりの人の温かさの分かるよい映画でした。
深みがあって、何を言いたいかは、
見る人の受け取り方によって変わる映画。
ずるいですけどね〜。
3つのストーリーに分かれているから、
どれかのケースは当てはまってくるんです。
私としては、家族中心の2個目と3個目は、
とっても温かい気持ちになりました。
そのバランスを保つための脇役もいい。
なんかパンが食べたくてしょうがなくなりました。
細かなシーンが全て意味がある映画です。
これは何回か見ることで、目線変わるでしょう!
逆に皆さんの映画感想を聞いてみたい映画です。
一度見て、コメント欲しいくらいですよ!!!
【あらすじ】(ネタバレあり)
〜〜りえのナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
初恋の相手はマーニだった。
諸学生のとき家の近くに図書館があって、
そこで立ち読みならぬ座り読みした月とマーニ。
少年マーニは自転車の籠に月を乗せて、
いつも東の空から西の空へと走っていきます。
ある日やせ細った月が言うのです。
「ねえマーニ。」
「太陽をとって。」
「いつも一緒にお空にいるととっても眩しくて。」
マーニは答えます。
「ダメだよ。太陽をとったら困っちゃうよ。」
「太陽をとったら君がいなくなっちゃうから。」
「夜に道を歩く人が迷っちゃうじゃないか。」
「大切なのは君が照らされていて、
君が照らしていると言うことなんだよ。」
マーニのことが大好きで。
私はずっとマーニを探していた。
だけどどんどん周りには、
好きじゃないものが増えていった。
大人になって働いて、いつの間にか大変で、
ただ1人の家族父が亡くなって大変で、
心がひとりで小さくなって、
もうマーニはいないのだと心に決めた。
そして東京で沢山の大変がたまった頃、
水縞君が月浦で暮らそうとそう言った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月浦のCAFEマーニ。
客の阿部へ手紙を届けた郵便屋さんは、
カフェに漂うコーヒーの匂いを深く嗅いだ。
水縞は言う。
「おはようございます。カンパーニュが焼けました。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
湖のほとりにあるCAFEマーニには、
りえさんの煎れるコーヒーと
水縞君の作る焼きたてのパン
季節のお野菜の料理。
そして遠くからのお客様が泊まれるよう
2階には温かいベットが用意されています。
一年ちょっと前この夫婦が月浦にやってきたとき、
なぜか私はこの2人を見つめていたいと思いました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「もう行かなきゃ。」
そう言ってりえの煎れたコーヒーと、
水縞が作ったカンパーニュを食べ終えて、
仕事に戻る郵便屋さん。
阿部を送り出したりえと水縞はカフェを出た。
向かったのは地獄耳の陽子さんのガラス工房。
「出来てるよ。鏡でしょ?あそこにかける。」
驚いて水縞は聞く。
「何で知ってるの?」
陽子は言った。
「私、耳だけは良く聞こえるから。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
地獄耳の陽子さんの作品が、
カフェには沢山並んでいるのです。
ひとつ良い事があると、
持っていた小銭をなんとなく貯める事にしています。
こんな風に2人のカフェは、
少しずつ出来上がって行くのです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夏のある日。
カフェに泊まりに来た若い女性、齋藤香織。
香織は近くの湖に行き友人に電話する。
「もしも〜し。今ビーチ。」
「お土産楽しみに待っててね。」
電話を切って深くため息をついた香織。
1人ボートに乗るが、転覆してしまう・・・
カフェにはもう1人客人が来ていた。山下時生。
久しぶりに訪れるが常連客の1人。
時生と話をしていると、
香織がずぶ濡れのまま帰って来た。
りえに言われてタオルを渡す時生。
その夜はトマトのパンとワインで夕食。
ワインを飲み続けた香織は酔っ払った。
明日が誕生日で本当は沖縄に行く予定だった香織。
しかし彼は急にドタキャンをしたと言う。
酔っ払い全てをりえと水縞に話した香織。
「もう帰らないでここに暮らしちゃおうかな〜。」
食事をしながら話を聞いていた時生は言う。
「ここにだっていろいろありますよ。」
そんな時生に絡みだす香織。
「時生君はここの人?」
「じゃあ毎日毎日静かで平和だ。」
「東京と違うもん。」
「東京で働くのってとっても大変なんですよ。」
それを聞いてイラっとした時生は聞く。
「でも好きで東京いるんですよね?」
それに対しても皮肉を言う香織。
「別に。生まれてからずっと東京だもん。」
「分からないと思うよ。君に。」
怒って席を立ち言った時生。
「それを恵まれてるって言うんじゃないですか?」
その夜、寝ようとしていた時生。
外から聞こえてくる声で寝付けずにいた。
外を見ると、香織が泣きながら騒いでいた。
「バカヤロー。」
それを見て笑ってしまった時生。
笑い声に気付いた香織は時生を見て言う。
「バカヤロー。」
翌朝二日酔いの香織。
りえは煎れたてのコーヒーを出していった。
「私もね。無理して笑うことあるんです。」
そして水縞の作ったパンを出して言う。
「素朴なパンもいいですよ〜。」
その日は香織の誕生日。
水縞夫婦は時生と香織を連れて買い物に行った。
広川さんの屋外販売所。
季節の野菜や果物、花が売られている。
そこで見つけたひまわりの花。
時生は一本のひまわりを買った。
買い物の帰り道、香織に話し掛けた時生。
「今日誕生日なんですよね?」
「これ。どうぞ。」
そう言ってひまわりの花を渡した。
香織は言う。
「暇なんだったらちょっと付き合って。」
そう言って誘ったのは湖のほとり、
日焼けするために日光浴。
そして時生のバイクに乗せてもらい、
シーサーやチンスコウを探しに町を回る。
見つからないなか、バイクはガス欠。
バイクを押して歩いていると、陽子が声をかけた。
「ちょっとあんたたち。沖縄土産探しているの?」
「いくついるの?」
そう言って香織に渡したもの・・・
『コロポックル』北海道に住むと言う妖精の木彫り。
陽子は言った。
「その人形持っていたら小さな幸せがくるらしいよ。」
香織は返した。
「私大きな幸せが欲しいの。」
一方水縞夫婦は買った野菜と果物で、
ジャムやパンを作っていた。
夜は屋外で夕食。香織の誕生日を祝った。
水縞が作ったのは、
お祝いの日に焼く特別なパン『クグロフ』。
他にも季節の野菜を使った料理が並ぶ。
香織の向かいに座った水縞は、
手でパンを半分にちぎってりえに渡した。
それを見て香織は素直にお礼を言った。
「あの。本当にありがとうございます。」
それに対してりえは言った。
「じゃあクグロフ食べましょうか。」
そう言って半分にナイフで切り、時生に渡した。
時生は半分に手でちぎり、香織に渡した。
食事を終わり夜空を見ていた香織と時生。
香織は時生に言う。
「かっこ悪い奴って思ったでしょ?」
時生は答えた。
「そうっすね〜。」
「でもかっこ悪い自分を知っている人が、
大人だと俺は思います。」
「だから香織さんを見たときに凄い笑えたんです。」
「一生懸命幸せになろうとしているんだな〜って。」
「もがいたことのある人間じゃないと、
幸せは無いと思います。」
「もがいてもがいて恥かいて、
いいじゃないですか香織さん。」
そして時生は自分の仕事の話をした。
電車のレールを切り替えるのが時生の仕事。
「レールは簡単に切り替わるのに、
俺の人生は簡単に切り替わらないんだなって。」
「線路がずっと続いているように見えても、
自分は北海道から出られないんですよ。」
「なんか俺、もがけないんです。」
時生の話を聞いて香織は答えた。
「それってさ。もがいてるじゃん。」
「来てみればいいじゃん東京に。一緒に行こう。」
時生を月を見ながら答えた。
「無理っすよ。仕事ないし・・・」
「でも俺、今日は月が綺麗に見える。」
翌朝目を覚ました香織。
1階に下りると時生の姿は無かった。
時生は今朝早く帰ったという。
「素朴なパンもいいですね。」
そう言って水縞の焼いたライ麦パンを購入した。
「会社のみんなに食べてもらおうと思って。」
「月浦のお土産です。」
そして帰ろうとした香織はりえに言った。
「私いままでで一番好きな誕生日でした。」
りえは答えた。
「これからもっと良い誕生日が着ますよ。」
水縞も香織に言う。
「また来てください。」
「いつでも家はここにありますから。」
最後に香織は2人に言った。
「時生君にいろいろ付き合ってくれて
ありがとうって伝えてもらえますか。」
バスを待つ香織は湖やカフェの近くの景色を見て、
「綺麗だな〜。悔しいけど綺麗。」
そう言った時だった、
バスの後ろからバイクに乗った時生が来た。
驚く香織の時生は言う。
「送るよ。乗って。」
「東京まで送ります。」
香織は笑顔で言った。
「マジで?じゃあよろしく頼むよ時雄君。」
香織の鞄の中ではコロポックルが揺れていた。
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
東京までの距離は1000キロ
誰にでも1人から2人になる瞬間があります。
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遠くで2人の姿を見て微笑むりえと水縞だった。
りえは水縞に言う。
「時生君東京までちゃんと運転できるかな〜?」
水縞は答えた。
「大丈夫だよ。僕だって出来たんだから。」
「りえさん。ここで無理して笑うことないよ。」
「僕の欲しいものは1つだけですから。」
りえは聞く。
「何?ですか?」
水縞は答えた。
「内緒です。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
秋がやって来ました。
ほどよい日差し。ほどよい気温。ほどよい風。
こんな日は水島夫妻の散歩日和です。
秋はいろんなものが実る季節です。
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栗拾いに出かけた2人。
そして栗を焼き、パンを作った2人。
誰もカフェにいないのを確認して、
こっそりガラス細工を置いて帰ろうとする陽子。
恒例となった行動に気付きりえが声をかける。
「陽子さん。栗のパン食べます?」
洗濯物を2人で干していると、
バス停の前で立っている女の子。
バスが来るが乗らずに、ただ立っている。
水島は言った。
「ホットミルク作っておくよ。」
うなずき女の子をむかえに行ったりえ。
女の子の名前は未久。
バスに乗らなかった理由は分からないが、
それについては何も聞かない水縞夫婦。
ホットミルクを飲んだ美久に水縞は言った。
「今から学校にパンの配達をしに行くから、
送って行ってあげようか?」
そして学校まで美久を送った水島。
学校では友達の中心にいた美久を見た。
学校が終わり家に帰った美久。
食卓テーブルには『買って食べて』の書置きと、
千円札が置かれていた。
無視して食卓に3つの容器を並べ座った美久。
そして持ち帰った給食の栗のパンを食べた。
その時帰って来た父。
学校に遅れていったことを聞く父に美久は言う。
「ママの作ったカボチャのポタージュ食べたい。」
次の日のバス停には、美久と父が並んで立っていた。
未久がバスに乗ったのを見て、父は1人カフェに来た。
「カボチャのパタージュスープってあるんですか?」
メニューにない注文で驚く水縞。
「えっ?」
その反応を見て話を変えた未久の父。
「いいです。コーヒーを1杯下さい。」
「ご夫婦でやっているんですか?」
「ここの出身じゃないですよね?」
水島は自分が札幌で、りえが東京と答えた。
「仕事辞められたんですか?」
そんな美久の父の質問に水縞は答える。
「好きな暮らしがしたいって思ったんです。」
「好きな場所で、好きな人と。」
「散歩して、食べたいもの食べて、パン焼いて。」
「自分たちが感じた季節を、
パンを食べてくれる方達に感じて欲しいんです。」
「ここの景色って毎日変わりますよね。」
「綺麗なだけじゃないです。」
そんな水縞の言葉に美久の父は言った。
「1人じゃなかったら出来ますよ。」
「誰かと一緒なら、出切る事ってあるんですよ。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
りえさんは訳も無く悲しくなることがあります。
そんな時水島君も私も悲しくなります。
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学校の帰り道でカフェに立ち寄った美久。
りえは美久にカボチャのポタージュを出した。
それを見た美久は昔の母が作ったポタージュと、
それからの父と母の喧嘩など昔を思い出した。
母が出て行った時の事も・・・
「いらない。絶対にいらないから。」
「ごめんなさい。お邪魔しました。」
そう言ってカフェを出て行く美久。
翌日りえは美久へ手紙を出した。
『あったかいごはん作ってます。
お腹がすいたらきてください。』
水縞も美久の父へと手紙を出していた。
数日後の夜、美久がカフェに来た。
同じ日に美久の父もカフェに足を運んだ。
久しぶりの家族2人の夕食。
もちろんカボチャのポタージュも出した。
「カボチャのポタージュ・・・」
そう言うとカフェを飛び出した美久。
美久は悩んでいた。空を見上げて月を見た。
しばらくしてカフェに戻ってきた。
席に座るとポタージューを食べて言う。
「美味しいね。」
「でも、違うね。」
「ママのカボチャのスープとは違うね。」
「ママはもう戻らないんだよね?」
未久の父は言う。
「ママは戻らない。ごめんな。」
その話を聞いていた阿部さん。
いつも持ち歩いている大きな鞄を開けた。
中にはアコーディオンが入っていて、
何も言わずに演奏を始めた。
美久の父の目には涙がにじんでいた。
それを見た美久は父の側に行き言った。
「パパ。美久、パパと一緒に泣きたかった。」
水縞は1つのパンを出していった。
「お二人でどうぞ。」
父はパンをちぎって美久に渡した。
夕食を食べカフェを後にした未久と父。
「パパ。」
そう言って未久は父の手を握った。
美久と父が帰ったカフェでは、
「今夜の演奏代です。」
「りんごのハチミツパンです。」
そう言ってりえが阿部にパンを出した。
焼きたてのパンにハチミツをかけて、
阿部は冗談半分で言った。
「私は辛党なんですよ〜。」
「今夜はワイン頂いていいかな?」
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月浦に厳しい冬がやってきました。
そのお客様がやってきたのは、
月も凍りそうな夜のことでした。
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「少しの時間だけ寄せてもらってもいいですか?」
そんな電話が入り、駅にむかえに行った水縞。
客は老夫婦の阪本史生と妻のアヤ。
若い頃にアヤに告白して振られた史生。
史生は傷心旅行で月浦付近にいたが、
追いかけてきたアヤに月浦駅でプロポーズして、
結婚したと車の中で水嶋に話した。
「だから娘の名前は、
有珠の有と月浦の月で有月と付けましたんや。」
そしてカフェに着いた坂本夫婦。
咳き込むアヤに史生は言う。
「もうちょっとや。もうちょっとやで。」
りえがご飯を用意しようとすると史生は言った。
「すみません。こいつパンが嫌いなんです。」
「年寄りにはどうも苦手なもんで。」
しかしカフェには米は無く、
広川のもとへ米を貰いに行った水縞。
カフェを出るときに、りえに言った。
「ちゃんと見てて。何か変なんだよ。」
一方で史生とアヤは窓から外を見ていた。
「月が見えんな〜。」
そうアヤに言い『日之出湯』と書かれた暖簾と、
2人の結婚記念の懐中時計を見ていた。
懐中時計を止め、アヤの内服薬を捨てると、
史生はアヤを抱きしめた。
その時、吹雪だった空が晴れて月が見えた。
「そろそろ月を見に行こうか?」
「有月も待っているわ。」
史生はそう言ってアヤを連れ外に出ようとした。
止めるアヤだが聞かずに外に行こうとする。
水縞がちょうど帰ってきて、史生を連れ戻した。
「月ならこの窓からよく見えますから。」
カフェに戻った史生にりえは聞いた。
「一緒になられて何年ですか?」
史生は話し出す。
「50年近くになりますかね〜。」
「ずっと一緒に風呂屋やってきたんです。」
「地震で全部なくなりました。」
「有月も逝ってしもうて・・・
でも皆に温かいお風呂入ってもらおうと思って。」
「頑張って立て直してね〜。」
「地震のときにこいつ、残った風呂を見て、
これがホンマの露天風呂やなって笑ってました。」
「2人きりになってしまいました。」
「十分や。もう十分やなって、よう思うんです。」
「だってそうでしょ?」
「昨日できたことも今日はでけへん。」
「若いときはね、明日また違う自分がおるから
楽しみに出来るんですよ。」
「せやけど、なかなか出来なくなることばかりで・・・」
「あきません。」
そう言うと頭を抱えて泣き出す史生。
りえは坂本夫婦にポトフと、
炊き立てのご飯を差し出した。
ポトフを一口食べたアヤは、
カウンターに置かれた焼きたての豆パンを見て、
突然それを手に取り、口にいてた。
その行動に驚き史生は声をかけた。
「それパンや。食べられへんやろ。」
「パンおいしいんか?」
アヤはパンを食べて言った。
「美味しい。」
「お豆さんが入ったこのパン美味しいな。」
「私、明日もこのパン食べたいな。」
「お父さん。ごめんなさいね〜。」
泣きながら史生は言った。
「分かった。分かった。」
アヤは泣いている史生にパンをちぎって渡した。
その様子を見ていたりえは、
食器にパンを乗せ坂本夫婦に差し出して言った。
「アヤさん。明日もパン食べてください。」
その夜、1人パンの生地作りをしていた水縞。
それを見に来た史生。
「パンもええですな〜。」
そんな史生に水縞は言った。
「カンパーニュって言う言葉があるんです。」
「さてどういう意味でしょう?」
「ヒントです。もともとの語源は、
パンを分け合う人たちのことなんですが、
さてなんでしょう?」
答えを悩んでいた史生に水縞は続けて言う。
「史生さん。しばらく家で過ごしませんか?」
「もう少しいてくれたら、
ここから満月が見えるんですよ。」
チーズやじゃがいも、チキンや卵、
ワインを持ってくる仲間たち。
坂本夫婦にパンの作り方を教える水縞夫婦。
その夜は水縞夫婦、坂本夫婦を中心に、
阿部や郵便屋さん陽子さんに広川夫婦。
皆でワインを飲んで阿倍の演奏でダンスをする。
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
知ってますか?人は乾杯の数だけ幸せになれる。
ヨーロッパのどこかの国では、
そう言われているそうです。
何か良い事があったら乾杯して、
何か残念なことがあっても乾杯して、
1日の終わりを今日も誰かと乾杯と締めくくれたら、
それは幸せだと・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日りえが洗濯をしているからわらで、
月とマーニを読んでいたアヤは言った。
「お月さんがいてマーニがいる。
マーニがいてお月さんがいる。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
月浦の真っ白な雪が、
りえさんの心を包んでいくのを私には分かりました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
数日後の満月の夜。
カフェの外で月を見た坂本夫婦。
綺麗な満月を見てアヤは史生に言う。
「綺麗ね〜。」
「月はずっとここにあるね〜。」
「明日も月浦にあるね〜。」
「これでお土産できましたわ〜。」
「お父さん。ありがとう。」
史生の持っていた懐中時計は動き出していた。
翌日帰ると言い出した坂本夫婦。
帰り際に史生は水縞に言った。
「カンパーニュの意味分かりましたわ。」
「共にパンを分け合う人々。」
「家族って言う意味違います?」
水縞は答えた。
「史生さん惜しいです。仲間って言う意味なんです。」
「でもそれが、家族の原点だと僕は思ってます。」
月浦駅で坂本夫婦を見送った、水縞夫婦。
りえは水縞に言った。
「ずっと。ずっと見てて私のこと。」
「水縞君のことも見てるから。」
「ありがとう水縞君。」
「私のためにここに来てくれて。」
春になって史生から手紙が届いた。
〜〜史生の手紙〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
りえさん、尚さん。
冬の頃はいろいろお世話になりました。
アヤはこの春亡くなりました。
マーニさんに行った時、
アヤには残された命が短くて、
私は月浦でそのまま一緒に
死ねるものなら死のうと考えていました。
だけどそれは大変傲慢でした。
アヤが前は食べなかったパンを
おいしそうに食べている姿を見て、
私は恥ずかしながら、
人間は最後の最後まで
変化し続けることを始めて気付いたのです。
アヤは懸命に生きてそして死んでいきました。
それを全て私は見届けることが出来たのです。
今私は風呂屋の番台にもう一度座って、
マーニさんのこと、
尚さんが焼いたおいしいパンのこと、
りえさんのスープ思い出しています。
あそこには自分たちの信じることを
心を込めてやっていく、
そんな地に足のついた
人間らしい暮らしがありました。
カンパーニュ。仲間と一緒に。
それこそ幸せがあるような気がいたします。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その日の夕食。
豆パンをちぎって、りえに渡す水縞。
りえは笑いながら水縞に言った。
「水島君。見つけたよ。」
「見つけた。私のマーニ。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この日、水島君の
たった一つの欲しいものが手に入ったようです。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2人がお店を始めて、2周年目の記念日。
『しあわせのパン』と書いたメッセージカードと一緒に、
香織と時生、未久と美久の父、坂本さんなど
沢山の関わった人にパンを送る水縞夫婦。
その日の夕方。
出かけていたりえが走って帰って来た。
「来年のお客さん決まったよ〜。」
水縞は聞く。
「ずいぶん先のお客さん入ったんだね。」
「どこから来るの?」
りえは自分のお腹を指差して言った。
「ここ。」
〜〜女の子のナレーション〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幸せって何なのか、まだ私には分かりません。
でも私は決めました。
水縞夫妻のところに生まれることを・・・
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(終わり)
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