2024年01月25日
就寝中に外からわめき声、外に出ても人の姿なし…家に戻ろうとしたら再び声「そうか川の中だ」
富山県魚津市の用水路に落ちていた80歳代の女性を、近所の人たちがチームプレーで助け出した。真冬の早朝、川同然の水量だった用水路にもひるまず、勇敢に対応した3人に、県東部消防組合は感謝状を贈った。(吉武幸一郎)
3人はいずれも魚津市並木町の無職米沢実さん(75)、会社役員稲沢衛さん(63)、アルバイト従業員で妻の恭子さん(60)。
昨年12月12日午前5時半頃、自宅2階で就寝していた米沢さんは、外からわめき声を聞いた。目を覚まし、窓から外をのぞいたが何も見えず、布団に戻った。しかし再び声が聞こえ、今度は外に出てみたが、やはり人の姿はない。家に戻ろうとしたところ、三度わめき声が聞こえた。「そうか、川の中だ」――。
自宅前を流れる鴨川用水路を恐る恐るのぞき込むと、水底の大きな石にしがみつき、流れに揺られる高齢女性の姿があった。雨で増水し、水深約40センチになった幅約4メートルの用水路の流れは速く、川のようだった。
気が動転しておろおろしている時、隣人の稲沢さんが犬の散歩をするため外に出てきた。稲沢さんはすぐに自宅に引き返して恭子さんに110番を依頼。気を取り直した米沢さんは用水路に入り、近くにあったハシゴから、稲沢さんと2人で女性を道路に引き上げた。
女性は「寒い寒い」と震えていたが、稲沢さんが着ていたコートをかけ、恭子さんは女性の手を握り、「大丈夫だから頑張って」と励まし続けた。女性は低体温症で入院したが、命に別条はなかった。県東部消防組合によると、女性は市内在住だが、なぜ落ちたのかはわからないという。
市役所では昨年12月27日、同消防組合管理者の村椿晃市長が3人に感謝状を贈った。米沢さんは「感謝状なんて恥ずかしいが、おばあちゃんが助かって良かった」と胸をなで下ろした。稲沢さんは「あの日は普段より少し早めに犬の散歩に出たのが幸いだった。とにかく無我夢中だった」と振り返った。村椿市長は「3人の勇敢な行動に心から感謝申し上げる。命を救うのは勇気が必要で、本当に素晴らしい」とたたえた。
読売新聞オンライン 1/24(水)