2024年01月24日
寒ブリ600匹、珠洲で初水揚げ 漁師ら「被災地に元気を」 港被害も早期再開・能登地震
石川県珠洲市の蛸島漁港に22日未明、活気が久しぶりに戻った。
最大震度7を観測した能登半島地震の影響で、港は大きな被害を受けたが、突貫工事で整備。市内の漁港では今年初めてとなる漁で寒ブリ約600匹が水揚げされた。「被災地に元気を」「こんなものじゃない」。漁師たちの言葉に熱がこもった。
21日深夜、甲板に冷たい雨が打ち付ける中、現場を取り仕切る田川長蔵さん(37)が乗船した「第三十一長久丸」など2社の漁船計4隻が相次ぎ港を出た。目指すは昨年末に定置網を仕掛けた沖合。田川さんらは前日の調査で魚が網に掛かっているのを確認したが、機械トラブルで水揚げは断念し、満を持しての出港となった。
22日未明、4隻がほぼそろって帰港すると、漁師たちが次々と下船し、慌ただしく作業が始まった。「もっと入れろ」「次、次」。田川さんらの声が響き、生きのいい寒ブリが詰まった網をクレーンで持ち上げてはフォークリフトで運んだ。
もう一社の「第一八幡丸」の船頭、端名哲士さん(59)は、避難中に母かず子さん(87)を亡くした。「少しでも魚を揚げて、被災地が活気づけば」との思いから、船首に立った。
この日の水揚げは「普段より少ない」(田川さん)計約600匹にとどまった。それでも漁師の多くが定置網漁の早期再開にこだわった。
蛸島は、年間十数億円の水揚げ高のある市内最大の漁港。大型漁船も寄港できる岸壁の多くは、地震で船が近づけないほど剥がれ落ちた。県漁業協同組合すず支所参事の山崎幸治さん(61)によると「ほぼ壊滅状態で、とても漁なんて考えられなかった」。
県内では少なくとも漁船233隻が津波で転覆や沈没、流出するなどし、珠洲市内は105隻を数える。田川さんら一部の漁師は倒壊で家を失ったが、蛸島漁港は深刻な津波被害を免れ、漁船は無事だった。
出漁に向けて、港と主要道を結ぶ道路の亀裂は、漁業支援者らが応急工事で整備。断水で製氷できないため、金沢市から運び込んだ。
この日捕れた寒ブリは、直ちにトラックで金沢市内の市場に運ばれた。「まだまだこんなものじゃない。今後はもっと捕れるはず」。田川さんはこう力を込めた。
時事通信 1/23(火)