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2017年12月31日
加賀の千代(かがのちよ)
ちょいとお前さん
ちょいと・・ちょいとお前さん!
えっ
えっじゃないよ
ぼんやりしているけどね、今日は大晦日だよ
大 晦 日!!!
分かってるよ
そこでお前が顔中口にして「大晦日!!!」って言わなくたって
世間中どこに行っても大晦日だよ
明日はお正月なんだよ
えっ??
なんで今日の大晦日が分かってて
明日のお正月でえっ??って来るんだよこの人は・・・
ねぇどうすんだよ
なにが?
なにがじゃないよ
方々の店から支払いをして下さいって付けが山になってるだろ
この付けの山がお前さんの目に入らないのかい?
入らない
俺の目は紙くず籠じゃない
何言ってんの
見えないのかって言ってんの
見えてるよ
どうすんだよ
払ってくださいって言ってんだから
払うしかないじゃないか
払うしかないじゃないかって
あたしはお足がないんだよ
あたしもお足がないよ
両方で無いんじゃしょうがないじゃないか
しょうがないから井上のご隠居さんの所に行ってお足を借りてきておくれ
ご隠居さんのとこで?
それは駄目だよ
あのご隠居さんはのべつ借りにいってんだ
今日も行ったらまた来たのかって怒られちゃうよ
大丈夫だよ
井上のご隠居さんはお前を可愛くってしょうがないから
そんなことねぇだろ
子供でもねぇ孫でもねぇ可愛いわけねぇ
そういうもんじゃないんだよ
子供だから可愛い、孫だから可愛いってもんじゃない
お他人様でも気性が合えば引き立っても下さる
人間ばかりだけじゃないよ犬や猫をご覧
可愛がる人は膝に乗せたり懐に入れたり
自分の子供以上じゃないか
へぇ
生き物だけじゃないよ
植木だってそう朝顔だって可愛がる人がいるんだから
朝顔?
膝に乗せたり懐に入れたり・・・
いま私たち夫婦に必要なのは笑いじゃなくってお金なの
分かってる
うすうすと・・
分かってるんだったらちゃんと話を聞きなさいよ
あのね昔こんな話があるの
・
加賀の国にお千代さんって人がいてね
この人が大変歌がお上手でね国中の評判
この評判が加賀の国のお殿様の耳に入ってある日
御膳にしこうせよっと御達しがあったんだよ
・
しこうせよったってねあんなのは言われてすぐ出来るもんじゃないよ
俺だってね、いっぺんしか出来たことねんだから
なに?
四光 (しこう)だろ
松に坊主に桜に桐・・・
花札の話をしるんじゃないの
お殿様の前に出ることを伺候(しこう)って言うの
雨が降ると五光っと言うの
真面目に聞いておくれよ
・
お千代さんがお城へ上がる
広い座敷へ通されて頭を下げて待っていると
目の前の御簾が上がると加賀のお殿様
千代
苦しゅうない面を上げい
お千代さんが恐る恐る顔をあげてみると加賀のお殿様
梅鉢のご紋が付いていたからその時とっさに詠んだのが
見やぐれば香りも高き梅の花
これを聞いて殿様はお喜びになり
お褒めの言葉だけではない
大変なご褒美まで頂戴した
また国中の評判となったそうだ
・
・・・朝顔どうしたの?
これからそういう話になるんだよ
・
ある夏の日お千代さんが水を汲みに井戸に行くと
井戸の釣瓶(つるべ)に朝顔がつるを撒きつけて花が咲いていた
井戸の水をくむにはつるを切ったり花を捨てなくてはいけない
そういう事をするのはしのびないと方々から水を貰って歩いた
この時に詠んだのは
朝顔に釣瓶とられて貰い水
・
朝顔にだってこれだけ可愛がる人がいるんだから
ご隠居さんがお前のこと可愛がるの分かる話だろ
俺は朝顔か・・・
じゃなにご隠居さんの所にいくら借りてくればいいの?
そうだねぇ
二十円貸してくださいっと
そう言ってきておくれ
二十円!!それは駄目だよ
井上のご隠居さんはいつも行っても一円か二円しか借りねぇんだよ
それを二十円って言ったら驚いちゃうよ
あまり心の臓が強くねぇんだから
二十円ないと勘定が追い付かないの?
そうだねぇ
この付け全部で八円五〜六十銭だから
十円あればなんとかなる
じゃ十円って言わせてくれ
そのほうが俺も頼みやすい
それがものが分からないって言うんだよ
八円五〜六十銭の勘定のところに十円貸して下さいって言ってみなさい
お前は度々の事だから半分の五円にしておけって言われたら
たすきに短し帯に長しでしょうがないだろ
だから二十円って言って半分になっても勘定が追い付く
これが掛値って言うんだよ良く覚えておきなさい
分かりました
じゃ行ってくるから
ちょいと今日はね手ぶらで行くんじゃないよ
これをご隠居さんの所に持ってって
なに・・えっ町内の菓子屋の饅頭
駄目だよ町内の饅頭は皮ばっか厚くってあんこが少ししか入ってないんだよ
ご隠居さんのところはね、隣町の饅頭屋で買うんだけどこれはうまいよ
あんこの周りに皮の薄〜い饅頭でうめぇんだ
こんな饅頭を持って行っても
あのね食べても食べなくてもいいの
今日は義理をかけに持って行くんだからね
こんなもんでも持っていったら嫌だとは言えないだろ
向こうに行ったら女中のお清さんが出てくる
・
そうしたらねいきなりこれを出すんじゃなくって
「ご隠居さんはいらっしゃいますか?」って聞くんだ
それでいるって言ったらこれを差し出して
「これをご隠居さんのお目にかけてください」
いないって言ったら渡したらいけないよ
・
そうですかって言って町内を一回りしてきて
頃合いを見計らってまたご隠居さんはいらっしゃいますかって聞きなさい
ご隠居さんが戻ってくるまで町内をグルグルと回ってないといけないよ
いいかいしっかりやっておくれよ
今日お金を借りられないと年が越せないからね
へぇい
うちのかかぁいろいろ知ってるね
朝顔に釣瓶とられて貰い水
うめぇこと言うなぁ
・
・
・
こんばんわ
は〜い
あら、まぁ甚兵衛さんじゃないですか
お久しぶりです
ご隠居さんいますか?
はい、いますよ
いなければいないって言ってください
町内ひとまわりしてきますから
別にそんなことしなくってもいいんですよ
いるんですから
これをご隠居さんの目にものを見せてください!
あのご隠居さん、甚兵衛さんが
なんだい甚兵衛さんが来た
あぁなんだい久しぶりだなぁ
こっちへ通して・・・なんだいそんなものを持ってきたのか
これは気を使ったな
あとでお茶と一緒に出してあげなさい
あぁ甚兵衛さんか久しぶりだなぁ
いいからそこへお座りよ
・
お前は変った男だ
来るとなると日に二度も三度も来るのに
来ないとなるとまるきし顔を出さない
私はお前さんのことが好きなんだ
日に一遍はお前の顔を見ないとどうも体の塩梅が悪い
・
聞いたらうちに何か持ってきてくれたそうだね
いいんだよ気を使わなくっても
あたしもそんなの持っていくことねぇって言ったんですけどね
かかぁが今日は義理をかけるために持って行けって言うから
しょうがなく持って来たんですよ
そういうとこが好きだよ・・・
なんていうかねぇ
まるっきり腹には隠しておけないむき出しの優しさって言うのかな
とげのある優しみって言うのかねぇ
そうだお前が持ってきてくれた饅頭を食べようじゃないか
いえ、いりません
いやいや遠慮しなくってもいいんだよ
遠慮じゃないんです
どうせ食べるんだったら戸棚の中に入ってる
隣町の饅頭食べたいんですけど
たまらないなぁお前は、あぁ結構だ結構だ
お清、お清、戸棚の饅頭を出して
どうせならね手前より奥の方が新しいから奥のを
あぁ奥の・・・うん
しかしお前がそういうものを持ってきたところを
見るとまぁ大概のことは察しがついた
お前また仕事を怠けたろ
良い腕してるのに惜しい男だね
それでこの暮れになって勘定が追い付かなくなって
私のところにお金を借りに来たってわけかい
そうなんです
そうかいわかったわかった
でいったいいくら要りようなんだい?
それなんですよ
今日は普段と違うので驚かないでもらいたいんですよ
はいはい、別に驚かないよ
いくらかそう言ってごらん
本当に驚かないで下さいよ
別に驚きはしない
はやくそう言ってごらんよ
・
・
・
お前がどきどきしてどうするんだよ
いくらかってそう言ってごらん
二十円貸してもらいたいんです!!
あははは
なんだいお前が驚くなって言うから
ちょいと構えてしまったじゃないかい
二十円あればいいのかい
はいこれ二十円持っていきなさい
いっいや!違うんです違うんです!!
本当は二十円なんかじゃないんです!!!
なんだいこっちは耳が遠いんだ
はっきりと言っておくれ
なんだい百二十円あれば足りるのかい
あのなんですね!
ご隠居さんは案外ものの分からない人なんですね!
なんだなぁちゃんと言ってくれないと
じゃ二百二十円あれば・・・
しまいには怒りますよ!!!!
怒らなくっていい
まぁまぁいいから落ち着きな
ちょいと待ちな
お清!お清!!!
ちょいとせがれの所に行っておくれ
なんだかね甚兵衛さんが暮れの支払いで大変なことになってるんだ!
急いで行って店にあるお金をありったけこっちに持ってくるように
えっいやいや後のことはなんとでも始末をつける
急いで行っておくれよ!
本当はいくらあればいいのか、ちゃんと言ってごらん
八円五〜六十銭
お清ょ〜行かなくっていいよ〜
どうしてそう前はそうめんどくさいんだい
八円五〜六十銭の勘定だったら上を見て十円って言っとけばいいじゃないか
それがものが分からないって言うんですよ
八円五〜六十銭の勘定のところに十円貸して下さいって言うとね
お前は度々の事だから半分の五円にしておけって言われたら
いのちみじかしこいせよおとめで、どうにもならないでしょ
だから二十円って言って半分になっても勘定が追い付く
これが掛値って言うんだよ良く覚えておきなさい
これからもあることだから
これからもあるのかい??
そうかそうかぁわかったわかった
うんうんうん
お清ょ横を向いて笑いなさい
はい改めてな十円あれば足りるんだな
ありがとうございます
十円出てきた
やっぱり俺は朝顔だ
なんだい?
朝顔に釣瓶とられて貰い水
さようなら
おい・・ちょっ待ちな待ちな
おまえ何か妙なこと言ったな
朝顔に釣瓶とられて貰い水・・・はてどこかで聞いたような
・・・わかった!
加賀の千代か?
ううん
かかの知恵
価格:1,479円 |
2017年12月13日
ケチな亡者
2017年12月05日
初めまして?
初めまして?
今まで落語のあらすじを掲載してますものです。ハンドネームが、どうしようか。
掲載の更新が遅くなってしまってすみません
今年になり結婚をし、妻が妊娠と退職、私の勤務先が変更になり、それに伴い家の購入(進行中)。
昨年の私には想像もつかない一年でした。
私もまだ30代前半なので、気長に更新していきます。好きな落語や簡単な分かり易いものから掲載していきます。
末永くよろしくお願いします。
今まで落語のあらすじを掲載してますものです。ハンドネームが、どうしようか。
掲載の更新が遅くなってしまってすみません
今年になり結婚をし、妻が妊娠と退職、私の勤務先が変更になり、それに伴い家の購入(進行中)。
昨年の私には想像もつかない一年でした。
私もまだ30代前半なので、気長に更新していきます。好きな落語や簡単な分かり易いものから掲載していきます。
末永くよろしくお願いします。
2017年12月04日
釣りの暇人
暇な奴がいたもんだ
どうした?
釣りをしてるのはまぁいいけど、
それを後ろで見てるやつがいるんだ
釣れたって自分の物になるわけじゃないのになぁ
そんな奴はいくらでもいるだろ
いくらでもいるって話じゃないんだよ
そいつは三時間もずっと見てるんだ
嘘だよそれは
そんな奴はいないよ
いや、嘘じゃないよ
だって俺は橋の上からずっと見てたんだから
どうした?
釣りをしてるのはまぁいいけど、
それを後ろで見てるやつがいるんだ
釣れたって自分の物になるわけじゃないのになぁ
そんな奴はいくらでもいるだろ
いくらでもいるって話じゃないんだよ
そいつは三時間もずっと見てるんだ
嘘だよそれは
そんな奴はいないよ
いや、嘘じゃないよ
だって俺は橋の上からずっと見てたんだから