2022年10月12日
「あの人」

ふと思い出す、決して思い出そうとしているわけじゃないんだけど
あの人のまとっていた匂い
爽やかだけど少し甘くもあって、そこにハイライトの燻されたような男らしい渋さの混じった、あたしにとっては切ない香り
そんな香りの片鱗を街中で感じた時
あの人の顔に似つかない、低音が強く響くどぎついHIPHOP、若くして亡くなった尾崎豊、同年代は誰も知らないようなイギリスロック
あの人が好きだったそんな曲達がどこかで流れていた時、サブスクの再生の候補に挙がってきた時
あの人はどんな人だったか?
あんなに好きだったはずだけどもうはっきりとは思い出せないや
でもあなたも身近にいる人の顔や身体のパーツとか詳しく思い出せって言われても思い出せないでしょ
そういうものなんだと思う
ふと淡くイメージできるのは、あの白い肌と色素の薄いサラサラの髪、薄茶色の瞳、意外と逞しい身体
この間夢に出てきた時はすごく鮮明だったはずなんだけどね
あの人と過ごした2年と半分
別れは案外あっさりだった
これで良かったんだって自分に言い聞かせて次の日は普通に出勤した
周りに話すときも泣いたりしなかった
だけどなんでか思いがけない時に勝手に涙が出たりする
不思議なもんだよね
あたしはあの人と別れた後、いろんな出会いがあった
でも会う男みんな、前の女が忘れられないってさ
こぞってそう言うんだ、
言われる度に傷ついたよ
でも不思議とすんなり受け入れてる自分もいて、
そういえばこの間出会った男も尾崎を歌ってたよ
実はその瞬間あの人の事を考えてたんだ、あたし
ほんとに忘れられてないのはあたしの方なのかもね、なんて
あの人はもう違う女と出会っていたりするんだろうか、わかんない
いまはもう連絡も取っていないし、昔のトークや写真だって全部消したんだ
付き合っていた時はベタだけど、運命だって思ったりもした
今思えば趣味も考え方も何もかも違ってて、性格が合うなんて1mmも言えなかったのに、笑っちゃうよね
でもそんなこと関係なかったんだ
ただひたすらに愛していた、あの人があたしのものになればいいのにって本気で思ってた
そんなの無理だってわかってるけど、そういうことを考える度に酷く寂しい気持ちになったんだ
あの人に会ってひどく傷ついたこともあったけど、もちろん楽しかったことも、大切な経験もあった、
あの人との思い出はあたしの1部となって今のあたしを作り上げている、今ではそうも思う
だから後悔なんてしないよ
ありがとう、あたしの愛していたあの人。

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