2015年08月10日
ヘイトスピーチ 意味
ヘイトスピーチ(英: hate speech)とは、人種、宗教、性的指向、性別、思想、職業、障害などの要素に起因する憎悪(ヘイト)を表す表現行為とされる。
日本語では「憎悪表現」「憎悪宣伝」「差別的表現」「差別表現」「差別言論」「差別煽動」、「差別煽動表現」などと訳される。
定義と様態
憎悪表現が”地域の平穏を乱すことをもって規制されるべき”と議論する場合には「憎悪を煽る表現」とも呼ばれる。「喧嘩言葉」と同様に相手方の内部に憎悪を生み出すような言論(表現)類型と考えられており、話者(表現者)の側の憎悪感情が問題とされる。また、「憎悪と敵意に満ちた言論」、「憎悪にもとづく発言」とも解説される。 ヘイトスピーチの対象は言論(speech)以外に表現(expression)全般に及び、例えば宗教的象徴を中傷する漫画や動画の公開や、歴史的経緯を踏まえた上で民家の庭先で十字架を焼却する行為、国旗の焼却行為や反戦の腕章を身につけること、デモ行進、ビラ配布行為といった非言語による意思表示形態なども「スピーチ」に含まれるとされ、議論の対象となっている。
『知恵蔵mini』(朝日新聞出版)では「匿名化され、インターネットなどの世界で発信されることが多い。定義は固まっていないが、主に人種、国籍、思想、性別、障害、職業、外見など、個人や集団が抱える欠点と思われるものを誹謗・中傷、貶す、差別するなどし、さらには他人をそのように煽動する発言(書き込み)のこと」を指すとされ、インターネットにおける書き込みも「スピーチ」に含むと解説している。また、それに続けて「ヘイトスピーチを行う目的は自分の」表現を挑発的に押し付ける「ことにあり、あらゆる手法を用いて他者を低めようとし」、表現に対する批判「にまともに耳を貸すことはない。」「憎悪、無力感、不信などを被害者に引き起こし、相互理解を深めようとする努力を無にする、不毛かつ有害な行為」と解説し、ヘイトスピーチ規制は全世界的に広がっているとした上で、規制の少ない国としてアメリカと日本を挙げている。さらに、同辞典2013年5月13日更新では「憎悪に基づく差別的な言動」であり、「人種や宗教、性別、性的指向など自ら能動的に変えることが不可能な、あるいは困難な特質を理由に、特定の個人や集団をおとしめ、暴力や差別をあおるような主張をすることが特徴」と解説された。また、朝日新聞2013年10月7日夕刊では「特定の人種や民族への憎しみをあおるような差別的表現」と定義され、在日韓国・朝鮮人への街頭活動が例とされた。
様態
憎悪バイアスをもたらす表現形態として、ジェンダー論の立場からは、ポルノグラフィ規制論とも関係する。個人に対する嫌がらせ表現などは侮辱罪やストーカー規制法などの対象となる。ほかに差別や偏見を動機した暴行等の犯罪をヘイトクライムといい、これも問題となっている。日本の市民団体によると、日本におけるヘイトスピーチの対象は在日、反原発運動、広島の平和運動、生活保護など多岐にわたるとされている。
また、ヘイトスピーチは多大な悪影響を及ぼすとして、様々な問題点が指摘されている。「互いの憎しみを煽る点」が最大の問題点であるという指摘や、デモで行われると言論への責任感が希薄となって気持ちが刺激され「対象への憎悪感はさらに増幅しやすい」という指摘、ヘイトスピーチが人種差別的な社会を構築してしまうという研究結果等があげられる。
喧嘩言葉
喧嘩言葉(英: fighting words)とは、挑発的に喧嘩を売る表現。
カナダ
カナダでは言論の自由は通常権利および自由に関するカナダ憲章第2章によって保護されているが、カナダの刑法319条で喧嘩言葉を含むいくつかの形態の処罰しうるヘイトスピーチを定義しこれらの自由を制限している。
公共憎悪煽動(319条)何人も公共の場の通信言辞によっていかなる識別可能な集団に対しても平和を侵害する恐れのある憎悪煽動は有罪とする。
− カナダ刑法319条第1項
アメリカ
1941年、リーフレットと既成宗教に対する罵詈雑言で通行人から反発を受けていたエホバの証人の信者のウォルター・チャプリンスキーが、公序を乱したとして逮捕された後、警察に対し「ファシスト野郎(damned facist)」「くそチンピラ(damned racketter)」と罵った。こうした言論に対し、1942年、アメリカ連邦裁判所は判事9人一致で修正第一条が保護する言論の範囲を超えていると判断した。(Chaplinsky判決)
表現の自由がいつもどのような状況でも絶対的に保障されるものではないことは、広く認識されている。禁止したり処罰したりすることがいかなる憲法上の問題も生じさせないような、明確に定義され注意深く限定された言論の種類が存在する。そうした種類の言論には、猥褻的、冒瀆的、名誉毀損的、侮辱的な言葉および、「喧嘩」言葉が含まれる。それらはまさに口に出されることによって他人の権利を侵害し、あるいは直接に治安の紊乱を煽る言論である。そうした発言は、本質的な点でいかなる思想の表明でもなく、真理へのステップとしてごくわずかな価値しか有しないので、そこからもたらされうるいかなる利益よりも、秩序と道徳における社会的利益のほうが明らかに重大であると認められる。
− Chaplinsky v. New Hampshire、1942 明戸隆浩 訳
「ユダヤ人を殺せ(Kill the Jews.)」「下品なユダヤ人(Dirty kikes.)」「そうだ、ユダヤ人はみな殺人者だ。我々が先に奴らを殺さねばわれわれが殺される(Yes. the Jews are all killers, murderers, If we don't kill them first, they will kill us.)」などと煽り、1000人から1500人の抗議者が叫び、破壊行為を生じさせた1946年の事件では、シカゴ市が起訴、100ドルの罰金刑とし、上訴裁判所、州裁判所は支持したが連邦最高裁は5対4で破棄した。
1972年、ジョニー・ウィルソンがベトナム戦争時、軍司令部を妨害しようとして警官に立ち退きを迫られ、「白人のくそったれめ、殺してやる(White son of a bitch, I'll kill you.」)と言って罪に問われた。最高裁は、ジョージア州法は「治安紊乱を起こす恐れのある不名誉な言葉あるいは侮辱的な言葉」を対象にしておりその範囲が曖昧すぎるとして、本質的に違憲の疑いがあり、破棄されなればならないとした。これにより、喧嘩言葉は有名無実化し、公共の場での人種差別的言論は事実上保護されるようになった。
日本語では「憎悪表現」「憎悪宣伝」「差別的表現」「差別表現」「差別言論」「差別煽動」、「差別煽動表現」などと訳される。
定義と様態
憎悪表現が”地域の平穏を乱すことをもって規制されるべき”と議論する場合には「憎悪を煽る表現」とも呼ばれる。「喧嘩言葉」と同様に相手方の内部に憎悪を生み出すような言論(表現)類型と考えられており、話者(表現者)の側の憎悪感情が問題とされる。また、「憎悪と敵意に満ちた言論」、「憎悪にもとづく発言」とも解説される。 ヘイトスピーチの対象は言論(speech)以外に表現(expression)全般に及び、例えば宗教的象徴を中傷する漫画や動画の公開や、歴史的経緯を踏まえた上で民家の庭先で十字架を焼却する行為、国旗の焼却行為や反戦の腕章を身につけること、デモ行進、ビラ配布行為といった非言語による意思表示形態なども「スピーチ」に含まれるとされ、議論の対象となっている。
『知恵蔵mini』(朝日新聞出版)では「匿名化され、インターネットなどの世界で発信されることが多い。定義は固まっていないが、主に人種、国籍、思想、性別、障害、職業、外見など、個人や集団が抱える欠点と思われるものを誹謗・中傷、貶す、差別するなどし、さらには他人をそのように煽動する発言(書き込み)のこと」を指すとされ、インターネットにおける書き込みも「スピーチ」に含むと解説している。また、それに続けて「ヘイトスピーチを行う目的は自分の」表現を挑発的に押し付ける「ことにあり、あらゆる手法を用いて他者を低めようとし」、表現に対する批判「にまともに耳を貸すことはない。」「憎悪、無力感、不信などを被害者に引き起こし、相互理解を深めようとする努力を無にする、不毛かつ有害な行為」と解説し、ヘイトスピーチ規制は全世界的に広がっているとした上で、規制の少ない国としてアメリカと日本を挙げている。さらに、同辞典2013年5月13日更新では「憎悪に基づく差別的な言動」であり、「人種や宗教、性別、性的指向など自ら能動的に変えることが不可能な、あるいは困難な特質を理由に、特定の個人や集団をおとしめ、暴力や差別をあおるような主張をすることが特徴」と解説された。また、朝日新聞2013年10月7日夕刊では「特定の人種や民族への憎しみをあおるような差別的表現」と定義され、在日韓国・朝鮮人への街頭活動が例とされた。
様態
憎悪バイアスをもたらす表現形態として、ジェンダー論の立場からは、ポルノグラフィ規制論とも関係する。個人に対する嫌がらせ表現などは侮辱罪やストーカー規制法などの対象となる。ほかに差別や偏見を動機した暴行等の犯罪をヘイトクライムといい、これも問題となっている。日本の市民団体によると、日本におけるヘイトスピーチの対象は在日、反原発運動、広島の平和運動、生活保護など多岐にわたるとされている。
また、ヘイトスピーチは多大な悪影響を及ぼすとして、様々な問題点が指摘されている。「互いの憎しみを煽る点」が最大の問題点であるという指摘や、デモで行われると言論への責任感が希薄となって気持ちが刺激され「対象への憎悪感はさらに増幅しやすい」という指摘、ヘイトスピーチが人種差別的な社会を構築してしまうという研究結果等があげられる。
喧嘩言葉
喧嘩言葉(英: fighting words)とは、挑発的に喧嘩を売る表現。
カナダ
カナダでは言論の自由は通常権利および自由に関するカナダ憲章第2章によって保護されているが、カナダの刑法319条で喧嘩言葉を含むいくつかの形態の処罰しうるヘイトスピーチを定義しこれらの自由を制限している。
公共憎悪煽動(319条)何人も公共の場の通信言辞によっていかなる識別可能な集団に対しても平和を侵害する恐れのある憎悪煽動は有罪とする。
− カナダ刑法319条第1項
アメリカ
1941年、リーフレットと既成宗教に対する罵詈雑言で通行人から反発を受けていたエホバの証人の信者のウォルター・チャプリンスキーが、公序を乱したとして逮捕された後、警察に対し「ファシスト野郎(damned facist)」「くそチンピラ(damned racketter)」と罵った。こうした言論に対し、1942年、アメリカ連邦裁判所は判事9人一致で修正第一条が保護する言論の範囲を超えていると判断した。(Chaplinsky判決)
表現の自由がいつもどのような状況でも絶対的に保障されるものではないことは、広く認識されている。禁止したり処罰したりすることがいかなる憲法上の問題も生じさせないような、明確に定義され注意深く限定された言論の種類が存在する。そうした種類の言論には、猥褻的、冒瀆的、名誉毀損的、侮辱的な言葉および、「喧嘩」言葉が含まれる。それらはまさに口に出されることによって他人の権利を侵害し、あるいは直接に治安の紊乱を煽る言論である。そうした発言は、本質的な点でいかなる思想の表明でもなく、真理へのステップとしてごくわずかな価値しか有しないので、そこからもたらされうるいかなる利益よりも、秩序と道徳における社会的利益のほうが明らかに重大であると認められる。
− Chaplinsky v. New Hampshire、1942 明戸隆浩 訳
「ユダヤ人を殺せ(Kill the Jews.)」「下品なユダヤ人(Dirty kikes.)」「そうだ、ユダヤ人はみな殺人者だ。我々が先に奴らを殺さねばわれわれが殺される(Yes. the Jews are all killers, murderers, If we don't kill them first, they will kill us.)」などと煽り、1000人から1500人の抗議者が叫び、破壊行為を生じさせた1946年の事件では、シカゴ市が起訴、100ドルの罰金刑とし、上訴裁判所、州裁判所は支持したが連邦最高裁は5対4で破棄した。
1972年、ジョニー・ウィルソンがベトナム戦争時、軍司令部を妨害しようとして警官に立ち退きを迫られ、「白人のくそったれめ、殺してやる(White son of a bitch, I'll kill you.」)と言って罪に問われた。最高裁は、ジョージア州法は「治安紊乱を起こす恐れのある不名誉な言葉あるいは侮辱的な言葉」を対象にしておりその範囲が曖昧すぎるとして、本質的に違憲の疑いがあり、破棄されなればならないとした。これにより、喧嘩言葉は有名無実化し、公共の場での人種差別的言論は事実上保護されるようになった。
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