2015年07月13日
海外での株式売却益課税回避策を防止する「出国税」
2015年7月1日以降に出国する人について、「出国税」(正式には「国外転出時課税制度」)の適用が始まりました。租税条約上は、株式などの売却益は売却した者が居住している国に課税権があるとされていますが、1億円以上の株式などを持つ富裕層が海外に出国する際、その時点において株式などを譲渡したものとみなして課税されるようになりました。
これは、富裕層がシンガポール、香港などの株式売却益に税金がかからない国で株式を売り、売却益に対する課税を逃れることを防ぐのが目的です。この「出国税」は、先進国の多くで既に導入されています。
ビジネスの海外進出に障壁となる可能性も
しかし、出国税については以下のような問題点が存在します。出国税は、含み益という未実現利益を課税対象とするため、納税資金が不足することも充分に考えらます。また、株式などの売却益が課税される国で売却した場合には、出国税との二重課税になるでしょう。二重課税防止制度として、日本には外国税額控除がありますが、海外でも同様に控除されるとは限りません。
ところで、政府は出国税の導入理由として、株式の売却益が課税されないシンガポールや香港など4カ国・地域の日本人永住者が、1996年に比べて2.6倍に増え、富裕層が節税のために永住権を得て移り住む例が多いことを挙げています。しかし、この増加割合はその他の国の日本人永住者の増加割合に比べ、特別に高いものではありません。海外での日本人永住者の増加は、課税回避よりもビジネスにおける「グローバル化の進展」が原因です。
ベンチャー企業や地方の中小企業経営者などは、自社株を含めた株などで1億円以上の資産を持つ人もいます。彼らがその資産を使って海外で事業を展開しようというのに、出国税で課税すれば、彼らのような海外でビジネス展開しようとする人たちを萎縮させることにもつながります。
富裕層に対する課税強化が次々に
この出国税以外にも、富裕層に対する課税強化が始まっています。2013年からは年末、海外に5000万円以上の資産を保有する資産家は、「国外財産調書」の提出を義務付けられました。また、今年1月からは、最高税率が所得税で45%、相続税で55%とそれぞれ5%引き上げられています。
さらに、「財産債務明細書」は、所得金額が2千万円超である場合に提出が義務付けられ、来年1月以降の提出分からは「財産債務調書」と格上げされ、提出範囲も年末における所有財産の価額の合計額が3億円以上であることなどへ拡大。記載項目も、従来よりも詳細になることが決定しました。
極めつけは、来年1月から導入されるマイナンバー制度です。これにより、富裕層にとっては所得だけでなく財産も確実に把握されることになる。結果、富裕層にとって天国のような現行の金融所得一律20%課税制度が、今後は累進課税や多段階課税になる可能性は高いと予想されます。このような富裕層に対する複数の課税強化には、厳しい日本の財政状況の中、消費税10%への引き上げを控える現状、税収増加の方法として富裕層課税強化以外に選択の余地はないという背景があるのでしょう。
出国税の対象となる人はどうすればよいのか?
もし、出国税の対象となってしまう場合、実際のところそれを回避するのは難しいでしょう。ただ、出国までに納税管理人を選定・届出をすれば、申告納付を翌年3月まで伸ばす方法があり、出国税の納税猶予の適用も受けられます。10年以内に帰国してその期間に株式などを売却しなかった場合には、課税の取り消しの手続きを行うことで、結果的に出国税の課税を回避できます。
株式などを売却した場合についても、出国時の価額より低い価額で売却した場合には、更正の請求手続きにより減額することも可能で、株式などの売却について現地で課税された場合も、同様に更正の請求手続きにより外国税額控除の適用を受けられるので、適正な手続きを忘れないことが重要です。
これは、富裕層がシンガポール、香港などの株式売却益に税金がかからない国で株式を売り、売却益に対する課税を逃れることを防ぐのが目的です。この「出国税」は、先進国の多くで既に導入されています。
ビジネスの海外進出に障壁となる可能性も
しかし、出国税については以下のような問題点が存在します。出国税は、含み益という未実現利益を課税対象とするため、納税資金が不足することも充分に考えらます。また、株式などの売却益が課税される国で売却した場合には、出国税との二重課税になるでしょう。二重課税防止制度として、日本には外国税額控除がありますが、海外でも同様に控除されるとは限りません。
ところで、政府は出国税の導入理由として、株式の売却益が課税されないシンガポールや香港など4カ国・地域の日本人永住者が、1996年に比べて2.6倍に増え、富裕層が節税のために永住権を得て移り住む例が多いことを挙げています。しかし、この増加割合はその他の国の日本人永住者の増加割合に比べ、特別に高いものではありません。海外での日本人永住者の増加は、課税回避よりもビジネスにおける「グローバル化の進展」が原因です。
ベンチャー企業や地方の中小企業経営者などは、自社株を含めた株などで1億円以上の資産を持つ人もいます。彼らがその資産を使って海外で事業を展開しようというのに、出国税で課税すれば、彼らのような海外でビジネス展開しようとする人たちを萎縮させることにもつながります。
富裕層に対する課税強化が次々に
この出国税以外にも、富裕層に対する課税強化が始まっています。2013年からは年末、海外に5000万円以上の資産を保有する資産家は、「国外財産調書」の提出を義務付けられました。また、今年1月からは、最高税率が所得税で45%、相続税で55%とそれぞれ5%引き上げられています。
さらに、「財産債務明細書」は、所得金額が2千万円超である場合に提出が義務付けられ、来年1月以降の提出分からは「財産債務調書」と格上げされ、提出範囲も年末における所有財産の価額の合計額が3億円以上であることなどへ拡大。記載項目も、従来よりも詳細になることが決定しました。
極めつけは、来年1月から導入されるマイナンバー制度です。これにより、富裕層にとっては所得だけでなく財産も確実に把握されることになる。結果、富裕層にとって天国のような現行の金融所得一律20%課税制度が、今後は累進課税や多段階課税になる可能性は高いと予想されます。このような富裕層に対する複数の課税強化には、厳しい日本の財政状況の中、消費税10%への引き上げを控える現状、税収増加の方法として富裕層課税強化以外に選択の余地はないという背景があるのでしょう。
出国税の対象となる人はどうすればよいのか?
もし、出国税の対象となってしまう場合、実際のところそれを回避するのは難しいでしょう。ただ、出国までに納税管理人を選定・届出をすれば、申告納付を翌年3月まで伸ばす方法があり、出国税の納税猶予の適用も受けられます。10年以内に帰国してその期間に株式などを売却しなかった場合には、課税の取り消しの手続きを行うことで、結果的に出国税の課税を回避できます。
株式などを売却した場合についても、出国時の価額より低い価額で売却した場合には、更正の請求手続きにより減額することも可能で、株式などの売却について現地で課税された場合も、同様に更正の請求手続きにより外国税額控除の適用を受けられるので、適正な手続きを忘れないことが重要です。
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