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2019年03月10日

感情と記憶力

最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。

記憶力

感情と記憶力

感情をともなう出来事はよく記憶される

よく覚えている出来事と
すぐに忘れてしまう出来事がある。

例えば、1週間前の昼食に食べたものは覚えていないかもしれない。
しかし、同じ1週間前の昼食でも、とても美味しいものやまずいものを食べていれば、覚えているかもしれない。
これは、なぜだろう?

海馬は大脳辺縁系(古い大脳皮質、両生類から出現)の一部で、記憶にとって重要な場所である。
この海馬へ情報が送られる経路には二つある。
扁桃体と海馬.jpg

一つは、”感情処理の中枢”である『扁桃体(扁桃は日本語でアーモンド)』を経由して海馬へと送られる経路。
もう一つは、『嗅周囲皮質』を通って海馬に送られる経路だ。

東北大学大学院生命科学研究科の飯島敏夫教授らは、ニューロンが興奮すると光を発するような色素を使って、マウスの脳で海馬へどのように情報が伝わっていくかを、扁桃体と嗅周囲皮質と海馬という三つの場所を含むように工夫した脳のスライス標本を作り調べた。

「嗅周囲皮質だけ、もしくは扁桃体だけを刺激した時には、情報が伝達される回路があるにもかかわらず、海馬まで情報が伝わりませんでした。ところが、嗅周囲皮質と扁桃体を同時に刺激すると、情報が海馬へ伝わっていくことがわかりました」(飯島教授)。
扁桃体MRI.jpg

飯島教授らの実験は、電気刺激を感覚情報に見たてているので、刺激がどの感覚に相当するのかわからない。
しかし、次のような可能性があるという。
「食事をとった時に、比較的直感的な、匂いや料理の色、形の情報が扁桃体を経由すると、美味しそうだという感情をともなう情報になります。また、食べ物のより詳細な視覚情報や味覚、嗅覚情報が嗅周囲皮質経由で海馬への神経回路に入ってきます。
この情報は、扁桃体経由の情動的な入力情報に助けられて海馬へ伝達されやすくなり、美味しい食事を食べたことがよく記憶に残るのかもしれません」(飯島教授)。

好きなものはよく覚える

小学校4年生のH・Kくんのお母さんによると、H・Kくんは漢字はなかなか覚えられないが、カードゲームの「ポケットモンスター(通称ポケモン)のモンスターの名前は驚くほどよく覚えているという。
これは、好きだという感情をともなうポケモンの情報が、扁桃体から海馬へと送られている可能性があると飯島教授はいう。

参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
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タナカマツヘイ
総合診療科 医学博士 元外科学会専門医指導医、元消化器外科学会専門医指導医、元消化器外科化学療法認定医、元消化器内視鏡学会専門医、日本医師会産業医、病理学会剖検医
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