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2019年03月08日

記憶の形成(まとめ)

最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。

記憶力

記憶の形成(まとめ)

記憶はこうして作られる

整理してみる
神経伝達.jpg

ニューロンは電気信号と化学信号を巧みに使い分ける。
軸索を伝わる電気信号(活動電位)は軸索の末端まで『途切れることなく』、『電圧が下がることもなく』、伝わる(2月21日 「信号伝達」)。
軸索の末端と次のニューロンもつなぎ目『シナプス』には隙間があり、これを飛び越えるためにニューロンは化学信号を使う(2月21日 「信号伝達A」)。
シナプスを越えた信号は次のニューロンの『細胞体』に集まる。
数千以上のシナプスから集まる信号量が多ければ、このニューロンは発火する。
少ない場合には沈黙し、信号はここで『途切れて』しまう(2月24日 「信号伝達B」)。
信号を途切れさせないためには、シナプスから細胞体へと多くの信号を入力させることだ。
シナプスのスパイン.jpeg
L-LTP の形成.jpg

ニューロンにはシナプスでの信号伝達効率がを上げる仕組みが備わっている。
比較的短時間で効果がなくなるE-LTP(3月1日 「短期記憶のしくみ」)と、長時間続くL-LTP(3月3日 「長期記憶のしくみ」)だ。

一方、脳全体のシステムを考えた場合、記憶の中でも特に出来事の記憶『エピソード記憶』については、『海馬』で整理整頓が行われている。
海馬で整理され、一時的に蓄えらえたエピソード記憶は、最終的には大脳皮質に移されるらしい。
エピソード記憶を思い出すときには、記憶が固定された大脳皮質のニューロンの回路に信号が入り、『過去の信号の流れ』が『再現』されるようだ。

エピソード記憶以外の記憶についても簡単に紹介しよう。

自転車の乗り方など、”体で覚える”『手続き記憶』と関係が深いのは、『小脳』だ。
運動の指令は、大脳から直接手足の筋肉へと送られる経路と、小脳を中継して送られる経路がある。
また、運動がうまくできたか失敗したかについての信号を小脳に戻す回路もある。
仮に自転車の練習で転んだ場合、失敗を知らせる信号が小脳に送られる。
すると失敗の原因となった指令を出した小脳の回路のシナプスでは、信号伝達が悪くなる。

エピソード記憶の場合には、主に信号伝達をよくすることで記憶が作られていたが、
手続き記憶の場合には、逆に、余分な信号伝達を断ち切って必要な回路だけを残すことで、
体の動かし方(手続き)を記憶している。

このほか、『意味記憶』については、エピソード記憶から時間や空間の情報が失われたものと考えられている(2月26日 「記憶の種類」)。
『思い込み』の記憶である『プライミング』は大脳皮質が働いていると考えられているが、詳しいことはよくわかっていない(2月26日 「記憶の種類」)。

参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
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タナカマツヘイ
総合診療科 医学博士 元外科学会専門医指導医、元消化器外科学会専門医指導医、元消化器外科化学療法認定医、元消化器内視鏡学会専門医、日本医師会産業医、病理学会剖検医
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