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2019年03月07日

記憶の想起

最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。

記憶力

記憶の想起

記憶をどうやって思い出しているのだろうか?

では、固定された記憶を、私たちはどうやって思い出しているのだろうか?

記憶を蓄えられているニューロンの回路に何らかのきっかけによって信号が入れば、記憶を作ったときの信号の流れが再現され、結果的に記憶を思い出すと言われている。

しかし脳はどのようにして目的の回路を探し出し、思い出すための信号を送り込んでいるのだろう?
海馬海馬傍回.jpg

出来事の記憶であるエピソード記憶の中には、海馬から大脳皮質に移された後で、海馬を通じて思い出されるものもあると考えられている。
そのような記憶について、山口センター長は「記憶を思い出すときに手がかりとなる回路が海馬に残されており、その手がかりに基づいて大脳皮質から記憶の”部品”が拾い集められ、それらがもう一度海馬に流れ込むことによって出来事が再現される(思い出される)のではないか」と言う仮説を考えている。

例えば、生まれた自分の子供を初めて抱いたときの記憶はどのようにして思い出されるのだろうか?

仮説に従ってみよう。
「赤ちゃんを初めて抱いた記憶」は、「赤ちゃん」という要素、「分娩室」という要素などから成り立っている。
さらに「赤ちゃん」は、「泣き顔(視覚情報ー後頭葉)」、「泣き声(聴覚情報ー側頭葉)」、「皮膚の感触(触覚情報ー頭頂葉)」
また、「分娩室」は、「分娩室の風景(視覚情報ー後頭葉)」、「分娩室のにおい(嗅覚情報ー前頭葉)」といった要素から成り立っている。
このような記憶は階層的な構造となっている。
海馬はこの階層構造の頂点に位置する。
大脳皮質は最下層に位置し、「泣き顔」や「泣き声」といった五感と直接の深い要素が蓄えられていると考えられている。

出来事の記憶を思い出すときには、海馬に残された”手がかり”の回路から海馬傍回、さらに大脳皮質へと信号が降りていく。
そして大脳皮質から「泣き顔」などの”部品”が集められ、海馬傍回で「赤ちゃん」などの概念になり、最終的には海馬まで届けられて『赤ちゃんを抱いた記憶』が再現されるという考えだ。

このような考えは、想起の仕組みを単純に理解するための仮説である。
「記憶のそうきの脳活動は調べられていますが、仕組みはまだよくわかっていません。明らかにすべきことがまだたくさんあります」(山口センター長)

海馬を通さず、同じ階層どうしの信号のやり取りもありうると考えられており、エピソード記憶の中にも、思い出すときに海馬を必要としないものもあると考えられている。
また、知識の記憶(意味記憶)を思い出すときは海馬は必要ないと考えられている。

参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
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タナカマツヘイ
総合診療科 医学博士 元外科学会専門医指導医、元消化器外科学会専門医指導医、元消化器外科化学療法認定医、元消化器内視鏡学会専門医、日本医師会産業医、病理学会剖検医
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