2019年04月10日
独創性の違いはどこから生まれる?
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
コラム
独創性の違いはどこから生まれる?
デザインの訓練を受けている人の脳では、右脳が左脳を抑制している
「ひらめき力」には、問題の答えを思いつく能力の他にも、衣服や建物などの個性的なデザインを思いつく能力も含まれる。
デザインの訓練を受けている人とそうではない人では、デザインを考えている時の脳の活動に違いが見られることが、fMRIを使った実験で明らかになった。
協力:山本三幸(筑波大学人間系研究員)
ファッションや広告などのデザイナーは、日頃からデザインの訓練を重ねており、そうでない人たちよりも個性的なデザインを思いつく。
デザインのひらめき力に、脳の活動はどのように関係しているのだろうか?
デザイン中の脳の活動を見てみる
筑波大学人間系の山本三幸博士は、デザインのひらめき力が高い人とそうでない人とで、デザインを考えている時の脳の働きに違いがあるのかどうかを調べるために、以下のような実験を行った。
「デザインのひらめき力が高い」人たちの候補として、実験の被験者に選ばれたのは、デザインを専門的に勉強している筑波大学の学生20人であった。
デザインのひらめき力を測る方法として、15本のペンの絵を学生たちに見せた後、思いつく限りの新しいペンをデザインして描いてもらったのである。
彼らと対象になる「一般の人たち」として、筑波大学に通う、他の学部の学生たち20人が、同じ作業を行っている。
学生たちには、MRIという装置の中に入って、新しいペンのデザインを考えてもらう。
脳内で活発に働いている場所を特定するためにfMRIという方法をとった。
これにより、デザインをしている最中に、脳内のどこが活発に働いているのかを知ることができるのである。
装置から出た後、学生は自分の考えたデザインを描き、4人のプロのデザイナーに、それぞれの学生が作成したデザイン画を評価してもらった。
学生によってデザインできた数は異なるが、一つ一つのデザインについてオリジナリティ(独創性)の点数が付けられた。
その点数に、デザインの数を掛け合わせた点数が、学生それぞれに対して付けられた「創造性=ひらめき」の点数である。
結果、デザインを勉強している学生グループの平均点は、他の学生グループの平均点より2倍近くも高かった。
つまり、彼らは一般の人より「デザインのひらめき力が高い」人とみなせる。
デザインの訓練を受けていると、右脳が左脳を抑えるようになる?
デザインを勉強している学生グループと、その他の学生グループでは、デザインをしている時の脳の働きに何か違いがあるのだろうか?
それを知るために、それぞれの創造性の点数と関連して活動が変化している脳領域を調べると、大脳皮質の「前頭前野」と「下頭頂葉」という領域が、それにあたることがわかってきた。
まず、一般の学生グループの脳では、デザインをしているさなか、大脳皮質の前頭前野が活発に働いていた。
一方、デザインのひらめき力が高いとみなされる学生グループの脳では、右脳(右半球)の前頭前野では活動が見られたが、左脳(左半球)の前頭前野では活動がほとんど見られなかったのである。
また、右の前頭前野と左の前頭前野の活動の差が大きいほど、学生が持つ創造性の点数の値は高くなっていた。
これらのことから、山本博士は、「左脳の前頭前野の働きが、右脳の前頭前野によって、何らかの仕組みで抑えられたことによって、芸術的なひらめき力が高められたのかもしれません」と語っている。
この他にも、ひらめき力が高い学生は、一般の学生グループに比べて、下頭頂葉という領域の活動が低いという違いも見られた。
下頭頂葉は、大脳皮質の上部に人がっており、視覚に関連がある領域だ。
ここの活動が低いほど、創造性の点数は低くなっていることから、山本博士は「一般の学生はここの領域を使って、常識的な発想をしており、ひらめき力の高い学生たちはここの領域の働きが抑えられていることで、独創的なアイデアが生まれているのではないでしょうか」と語る。
今回、山本博士は視覚を使う芸術活動について研究を行った。
しかし、音楽や言語が関わってくる芸術活動でこのような実験をしてみたときには、他の領域に差が出るのではないか、と山本博士は考えている。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2014年7月15日発行
コラム
独創性の違いはどこから生まれる?
デザインの訓練を受けている人の脳では、右脳が左脳を抑制している
「ひらめき力」には、問題の答えを思いつく能力の他にも、衣服や建物などの個性的なデザインを思いつく能力も含まれる。
デザインの訓練を受けている人とそうではない人では、デザインを考えている時の脳の活動に違いが見られることが、fMRIを使った実験で明らかになった。
協力:山本三幸(筑波大学人間系研究員)
ファッションや広告などのデザイナーは、日頃からデザインの訓練を重ねており、そうでない人たちよりも個性的なデザインを思いつく。
デザインのひらめき力に、脳の活動はどのように関係しているのだろうか?
デザイン中の脳の活動を見てみる
筑波大学人間系の山本三幸博士は、デザインのひらめき力が高い人とそうでない人とで、デザインを考えている時の脳の働きに違いがあるのかどうかを調べるために、以下のような実験を行った。
「デザインのひらめき力が高い」人たちの候補として、実験の被験者に選ばれたのは、デザインを専門的に勉強している筑波大学の学生20人であった。
デザインのひらめき力を測る方法として、15本のペンの絵を学生たちに見せた後、思いつく限りの新しいペンをデザインして描いてもらったのである。
彼らと対象になる「一般の人たち」として、筑波大学に通う、他の学部の学生たち20人が、同じ作業を行っている。
学生たちには、MRIという装置の中に入って、新しいペンのデザインを考えてもらう。
脳内で活発に働いている場所を特定するためにfMRIという方法をとった。
これにより、デザインをしている最中に、脳内のどこが活発に働いているのかを知ることができるのである。
装置から出た後、学生は自分の考えたデザインを描き、4人のプロのデザイナーに、それぞれの学生が作成したデザイン画を評価してもらった。
学生によってデザインできた数は異なるが、一つ一つのデザインについてオリジナリティ(独創性)の点数が付けられた。
その点数に、デザインの数を掛け合わせた点数が、学生それぞれに対して付けられた「創造性=ひらめき」の点数である。
結果、デザインを勉強している学生グループの平均点は、他の学生グループの平均点より2倍近くも高かった。
つまり、彼らは一般の人より「デザインのひらめき力が高い」人とみなせる。
デザインの訓練を受けていると、右脳が左脳を抑えるようになる?
デザインを勉強している学生グループと、その他の学生グループでは、デザインをしている時の脳の働きに何か違いがあるのだろうか?
それを知るために、それぞれの創造性の点数と関連して活動が変化している脳領域を調べると、大脳皮質の「前頭前野」と「下頭頂葉」という領域が、それにあたることがわかってきた。
まず、一般の学生グループの脳では、デザインをしているさなか、大脳皮質の前頭前野が活発に働いていた。
一方、デザインのひらめき力が高いとみなされる学生グループの脳では、右脳(右半球)の前頭前野では活動が見られたが、左脳(左半球)の前頭前野では活動がほとんど見られなかったのである。
また、右の前頭前野と左の前頭前野の活動の差が大きいほど、学生が持つ創造性の点数の値は高くなっていた。
これらのことから、山本博士は、「左脳の前頭前野の働きが、右脳の前頭前野によって、何らかの仕組みで抑えられたことによって、芸術的なひらめき力が高められたのかもしれません」と語っている。
この他にも、ひらめき力が高い学生は、一般の学生グループに比べて、下頭頂葉という領域の活動が低いという違いも見られた。
下頭頂葉は、大脳皮質の上部に人がっており、視覚に関連がある領域だ。
ここの活動が低いほど、創造性の点数は低くなっていることから、山本博士は「一般の学生はここの領域を使って、常識的な発想をしており、ひらめき力の高い学生たちはここの領域の働きが抑えられていることで、独創的なアイデアが生まれているのではないでしょうか」と語る。
今回、山本博士は視覚を使う芸術活動について研究を行った。
しかし、音楽や言語が関わってくる芸術活動でこのような実験をしてみたときには、他の領域に差が出るのではないか、と山本博士は考えている。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2014年7月15日発行
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