2019年03月14日
まだまだ知りたい記憶の不思議
最終的には、心の働きの脳内メカニズムについて述べていきます。
記憶と脳のQ&A@
まだまだ知りたい記憶の不思議
記憶について知れば知るほど、新たに疑問が出てきた読者もいるだろう。
ここで、記憶と脳にまつわる様々な疑問を取り上げ、Q&A形式で答えていこう。
Q1 ニューロンは体の他の細胞と異なり、増殖することはないと聞きましたが?
A1 ニューロンは、通常、増殖能力はありません。
神経細胞が増殖して生まれ変わると、人格まで変わってしまうからです。
ヒトの高度な脳の働きは、記憶によって支えられていると言っても過言ではありません。
もし記憶を作っているニューロンが増殖してどんどん生まれ変わるとしたら、どうなるでしょうか?
せっかく作ったニューロンの回路は、ニューロンが生まれ変わるたびにズタズタになり、記憶は消えてしまうでしょう。
あなたがあなたで居られるのも、安定した記憶が維持されているからです。
ただし、海馬の中にあるニューロンの一種『顆粒細胞』は、増殖して増えることが近年わかってきました。
ニューロンは増えないという常識が覆されたのです。
海馬では、新たに増えたニューロンも記憶に使われているという説が出されています。
Q2 赤ちゃんの頃の記憶を覚えていないのはなぜですか?
A2 脳の成長と関係があります。
海馬が十分に機能し始めるのは3歳くらいになってからだと言われています。
つまりそれまで海馬が働かないわけですから、出来事の記憶、エピソード記憶を上手に作ることができないのです。
Q3 脳の記憶とコンピューターの記憶は何が違うのですか?
A3 コンピューターの記憶は、ありのままを全て覚えています。
あえて例えれば、写真のように視野の隅から隅まで記憶するわけです。
一方、脳の場合はコンピューターとは違い、重要なカギとなる部分を覚えます。
記憶を思い出すときには、覚えたものをそのまま読みだすのではありません。
カギとなる部分を手掛かりに、それまでの知識体系を引っ張り出しながら、これらを上手に組み合わせて記憶を作り出しているのです。
もう一つ、脳とコンピューターには大きな違いがあります。
コンピューターの場合は、記憶を作る際に自らの電子回路網が変化することはありません。
しかし脳の場合は、記憶をするたびにニューロンの回路網が変化していくのです。
Q4 記憶違いはどうして起こるのですか?
A4 脳は記憶を思い出すとき、手掛かりをもとに記憶を作り直す作業を行っています。
脳の各領域から記憶の“部品”を拾い集めてくるのです。
その過程で“部品”を集め損なったり、あるいは間違った“部品”が届けられたりすることがあると考えられています。
記憶違いが起きるのは、ある意味では当然と言えるのかもしれません。
Q5 例えば学校のそばを通るとチャイムの音が頭に思い浮かぶといったように、二つのことが結びついて記憶されていることが多いように感じます。
これはなぜですか?
A5 これについては、以下のような仮説があります。
あるAという印象的なことがあったとします。
このとき信号が流れたニューロンXでは、遺伝子の働きでタンパク質が合成されてL-LTP(後期長期増強)が発生し、長期記憶が作られているとします。
さて、このときに別のニューロンYから、Bということに対する関する信号入力がニューロンXにあったとします。
すでにニューロンXでは、Aということの信号を受けて、L-LTPによるタンンパク質の合成が進んでいます。
仮説では、Bの信号を受けたシナプスでも、このタンパク質が使われると考えられています。
この結果A、Bともに長期記憶となり、二つの記憶が結びつけられるというわけです。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
記憶と脳のQ&A@
まだまだ知りたい記憶の不思議
記憶について知れば知るほど、新たに疑問が出てきた読者もいるだろう。
ここで、記憶と脳にまつわる様々な疑問を取り上げ、Q&A形式で答えていこう。
Q1 ニューロンは体の他の細胞と異なり、増殖することはないと聞きましたが?
A1 ニューロンは、通常、増殖能力はありません。
神経細胞が増殖して生まれ変わると、人格まで変わってしまうからです。
ヒトの高度な脳の働きは、記憶によって支えられていると言っても過言ではありません。
もし記憶を作っているニューロンが増殖してどんどん生まれ変わるとしたら、どうなるでしょうか?
せっかく作ったニューロンの回路は、ニューロンが生まれ変わるたびにズタズタになり、記憶は消えてしまうでしょう。
あなたがあなたで居られるのも、安定した記憶が維持されているからです。
ただし、海馬の中にあるニューロンの一種『顆粒細胞』は、増殖して増えることが近年わかってきました。
ニューロンは増えないという常識が覆されたのです。
海馬では、新たに増えたニューロンも記憶に使われているという説が出されています。
Q2 赤ちゃんの頃の記憶を覚えていないのはなぜですか?
A2 脳の成長と関係があります。
海馬が十分に機能し始めるのは3歳くらいになってからだと言われています。
つまりそれまで海馬が働かないわけですから、出来事の記憶、エピソード記憶を上手に作ることができないのです。
Q3 脳の記憶とコンピューターの記憶は何が違うのですか?
A3 コンピューターの記憶は、ありのままを全て覚えています。
あえて例えれば、写真のように視野の隅から隅まで記憶するわけです。
一方、脳の場合はコンピューターとは違い、重要なカギとなる部分を覚えます。
記憶を思い出すときには、覚えたものをそのまま読みだすのではありません。
カギとなる部分を手掛かりに、それまでの知識体系を引っ張り出しながら、これらを上手に組み合わせて記憶を作り出しているのです。
もう一つ、脳とコンピューターには大きな違いがあります。
コンピューターの場合は、記憶を作る際に自らの電子回路網が変化することはありません。
しかし脳の場合は、記憶をするたびにニューロンの回路網が変化していくのです。
Q4 記憶違いはどうして起こるのですか?
A4 脳は記憶を思い出すとき、手掛かりをもとに記憶を作り直す作業を行っています。
脳の各領域から記憶の“部品”を拾い集めてくるのです。
その過程で“部品”を集め損なったり、あるいは間違った“部品”が届けられたりすることがあると考えられています。
記憶違いが起きるのは、ある意味では当然と言えるのかもしれません。
Q5 例えば学校のそばを通るとチャイムの音が頭に思い浮かぶといったように、二つのことが結びついて記憶されていることが多いように感じます。
これはなぜですか?
A5 これについては、以下のような仮説があります。
あるAという印象的なことがあったとします。
このとき信号が流れたニューロンXでは、遺伝子の働きでタンパク質が合成されてL-LTP(後期長期増強)が発生し、長期記憶が作られているとします。
さて、このときに別のニューロンYから、Bということに対する関する信号入力がニューロンXにあったとします。
すでにニューロンXでは、Aということの信号を受けて、L-LTPによるタンンパク質の合成が進んでいます。
仮説では、Bの信号を受けたシナプスでも、このタンパク質が使われると考えられています。
この結果A、Bともに長期記憶となり、二つの記憶が結びつけられるというわけです。
参考文献:ニュートン別冊 脳力のしくみ 2018年7月15日発行
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